魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0205:幽閉塔。

 アルバトロス王城内にある幽閉塔上層階にある貴賓用の牢へと足を運び、部屋の前に立ちます。中には元第二王子殿下とアリス・メッサリナという少女が一緒に罪を償っているのですが、果たして彼らにその意識はあるのかどうか。貴族は国の為に尽くすのが常。魔術師は術の研究研鑽を志とし、高みを目指す。

 アリス・メッサリナは王族を誑かしたという理由で首を刎ねられるはずでしたが、珍しい魔眼持ちということから生かされております。僕を始めとした魔術師団の者たちが殺すのには惜しいと、陛下へ進言したことが聞き入れられたからこそ。重い扉を警備の者が開いて、中へと足を踏み入れた瞬間。

 

「ハインツ!」

 

 鉄格子越しに高い声が響きました。全くこのお方は。僕は貴女に名前呼びを許した覚えなど微塵もないのですが。妻子持ちだというのに、こうも簡単に男に声を掛けるとはどういう意識の持ち主なのかと頭を抱えたくなります。部屋の奥には元第二王子殿下が僕に視線を向けておりますが、愛しい方を取られたとでも考えているのかあまりいい顔はされませんねえ。

 それならばきちんと彼女の心を射止めていてください。まあ一婦多夫を目指していたようですから、難しいのかもしれません。以前より元気がありませんので、少々弱っていらっしゃるので気になる所ではあります。気にしても仕方ない部分ではありますが。

 

 「お久しぶりです。調子は如何でしょうか?」

 

 「ねえ、ハインツ。お願い、ここから出して!」

 

 会うたびに同じことを言われる身にもなって頂きたい。魔眼について可能な限り調べ終わっているので興味はないのですが、彼女は時折不思議な言葉を発します。それが気になり時折こうして彼女と顔合わせを行っている次第。さて、今日は何が聞き出せるのか。以前は僕たちが住む世界がゲームの世界だと彼女は言いました。

 アルバトロス王国が舞台で第二王子殿下を始めとした側近の五人や僕やジークフリードさんと恋仲になる話だとか。彼女のいう通りならば僕は恋仲になるらしいのですが、魔力が少し高いくらいの方に興味が湧くはずもなく。魔術師として貴族として政略婚をした妻の方が優秀ですし、靡くことはないのですが。

 

 「残念ながら貴女がここから出ることは叶いません」

 

 貴女は死ぬまでこの場所で過ごして頂かねばならないのです。それだけのことを仕出かしたという自覚を持って頂きたい所ですが、夢見る少女には無理そうです。

 

 「……またその台詞。ねえ、アリアは現れたの?」

 

 確か、聖女さまにアリア・フライハイト嬢が居ましたね。僕も何度か彼女に会ったことがあります。黒髪の聖女さまより劣りますが、魔力量に関してならば特出されている方。実家であるフライハイト男爵家では聖樹が生まれ、魔石の鉱脈が見つかりました。

 フライハイト領は魔素の含有量が多いのでしょうね。だからこそアリア嬢のような魔力量に長けた方が生まれたと。エルさまとジョセさまの話では天馬の繁殖地候補となっております。

 今後が楽しみな領地なのですが、王都暮らしのアリス・メッサリナにそれを知る理由が見つかりません。アリア嬢が学院へ編入されたのは二学期からであり、男爵領から王都へと移動されたのも春頃で聖女さまとして本格的に活動を始めたのは大規模討伐遠征から。

 

 「アリアさま、ですか。残念ながら僕は知りません、どういうお方なのですか?」

 

 知ってはいますが、真実を告げる気は全くなく適当に言葉を合わせましょう。

 

 「最近、寒くなっているからもう冬でしょう。――アリアは誰とくっついたの?」

 

 人の話を聞いて欲しいのですが、いつもこの調子なので仕方ありませんね。しかし何故目の前の少女からアリア嬢の名前が出るのでしょうか。僕と彼女の話が噛み合うとは考え辛いですが、どうにか有益な情報を引き出したい所です。以前から断片的に情報を拾えていたのですが、ここにきて初めてアリア嬢の名前が出てきました。

 

 「申し訳ありません。僕は興味のある方以外の名前を覚え辛い質でして。貴女が指す誰とは一体?」

 

 「ハインツらしい。――えっとねアウグスト、ギド、アクセル。一体誰とくっついたのかなって」

 

 くすくすと笑う彼女は貴族や王族の男性を呼び捨てに。幽閉塔なので誰もおらず咎める者も居ないので問題はないですが。

 良かったですねえ、これが学院であれば白い目で見られて……嗚呼、貴女は貴族の女性のみなさまから白い目でみられていましたねえ。忠告も無視していたようですし、報告書では黒髪の聖女さまも彼女を説得したようですが聞き耳を持たず。成るべくして身を崩したというべきでしょうか。

 

 さて、これは真実を教えて差し上げるべきなのでしょうか。この場所から一生出ることは叶いませんが、彼女が事実を知って問題があるとは思えませんし。

 

 「そうですねえ。僕は学院の特別講師を――」

 

 「――ヴァレンシュタイン、もう良いだろう。俺たちの時間をこれ以上奪うな」

 

 「おや、失礼いたしました。では邪魔者はこれで失礼いたしましょう」

 

 確かに僕は彼にとって恋仲を裂く者なのでしょうね。この場に留まっても仕方ないですし、一度退散しますかと踵を返します。

 

 「アリス、あまり相手にするんじゃない。ヴァレンシュタインは魔術にしか興味ないんだぞ」

 

 「どうして振り向いてくれないんだろう……」

 

 背中に届く声。振り向くもなにも妻子持ちの僕がそのような行動に出れば問題がありすぎます。そもそも元殿下が言ったように魔術にしか興味がありません。

 しかしながらアリス・メッサリナの言葉には興味深いものがあります。この世界をゲームと称したこと、彼女が知らないはずの人物を何故か知っていること。魔眼については調べ終えていますが、新たな気になることが湧いて出てきました。とりあえず上層部へ報告をしなければと、少し先を急ぐのでした。

 

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