魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0214:会談後の廊下で。

 会談場所から出て、五人で勝手にウロウロする。コッソリというか堂々と帝国の兵士の方が、私たちの後ろに控えているけれど。

 私が無茶をしない為の見張り役で、おっかなびっくりと歩いている。手を出さない限り、兵士の方たちに手を出すつもりはない。出せば問答無用で魔術を発動させるけれど。大聖女さまもメンガーさまも中級までの魔術なら問題なく使えるそうだ。

 

 「黒髪の聖女さま、一体どちらに?」

 

 大聖女さまに声を掛けられた。当てもなく皇宮をウロウロするつもりだけど。銀髪くんとヒロインちゃんは軽量化の魔術を施し、捕縛用の縄で縛って私が縄を握ってる。

 銀髪くんは猿轡を噛まされているのでフガフガしているだけだが。ヒロインちゃんは『痛い』『酷い』『止めて』と訴えているけれど無視。繰り返しになるけれど、あの場に置いてきても良かったが、アルバトロスと亜人連合国の管理下に在る為に置いていく訳にはいかなかった。

 

 「少しやりたいことがありまして。――ああ、そうでした」

 

 いつまでも黒髪の聖女呼びもなんだし、わたしも大聖女さまと呼ぶのもなんだかなあ。メンガーさまにも四月の教室内の自己紹介をしただけで、今回初めて言葉を交わしたものなあ。

 お互いに名前を知っているとはいえ、ちゃんと名前を呼ぶ仲でもなかった。今回のことがきっかけでお互いの距離を詰めても問題ないだろう。メンガーさまと大聖女さまは初対面で、状況が状況だったから自己紹介なんてやる暇がなかった。

 

 「?」

 

 「?」

 

 人気の少ない広い廊下で立ち止まる。私の意図が全く分からない大聖女さまとメンガーさまに向かって口を開く。

 

 「アルバトロスで聖女を務めております、ナイ・ミナーヴァ子爵と申します」

 

 貴族になってこの名を紡ぐのは何度目だろう。アルバトロス王国では知られているだろうし、大聖女さまもメンガーさまも知っているから名乗る必要もないけれど。メンガーさまと大聖女さまの事を考えると私が一番先に名乗る方が正解だろうし。

 

 「聖王国にて大聖女を務めております、フィーネ・ミューラーと申します」

 

 「アルバトロス王国、メンガー伯爵家、エーリヒと申します」

 

 そういえば七大聖家の一つであるミューラー家って爵位ってどの位置になるのだろう。聖王国国内の事だし、大聖女を務めている方と分かれば問題はないか。今までの様子を見るに、メンガーさまは状況を正しく理解している。

 

 「私が黒髪黒目であることと東大陸の黒髪黒目信仰により、巻き込んでしまった形となりました。申し訳ございません」

 

 ゲームと言ったヒロインちゃんと、情報が少ない東大陸の帝国について詳しい事情を知っていた大聖女さま。仮定の話だけれど、この世界がゲームの世界で彼女たちが前世でプレイしていたとすれば合点がいく。

 よく覚えていたなと訝しんでしまう部分もあるが、商家やお貴族さまの家で暮らしていたなら、落ち着いた暮らしが出来るしゲームの舞台だと早い段階から知っていれば忘れないか。あとは五人全員が元黒髪黒目の可能性もあるしなあ。でも傍から見る限りじゃあ、私が黒髪黒目であり、彼ら彼女らは巻き込まれた形だろう。

 

 「あ、いえ。何かしら原因があったのかもしれませんし、黒髪の聖女さまが頭を下げることではないかと」

 

 大聖女さまには情報を貰っていたというのに、こうなっちゃったからなあ。対策も練っていたのに、召喚されてしまった。

 副団長さまが作った魔術具を信用し過ぎていたのと、帝国の使者がやって来てから時間が過ぎていたことで油断したのもある。儀式魔術なので発動したら逃れられないという理不尽さもあるけれど。もう少し外交的努力をしておくべきだったのだろうか。でも話し合いが出来るような使者の人じゃなかったもんなあ。

 

 「原因はまだ解明されておりませんし、そもそもアガレス帝国が問答無用で儀式を執り行ったというならば避けられません」

 

 メンガーさまが大聖女さまの後に続いて、フォローを入れてくれた。巻き込んでしまったけれど、二人とも大人の対応だった。

 

 「それに黒髪の聖女さまと一緒でなければ私たちの命はなかった可能性があります」

 

 「大聖女さまの仰る通りかと。帝国という異国の地で俺の価値なんて塵芥でしょう。貴女と一緒に召喚されて幸運でした」

 

 大聖女さまとメンガーさまが一度視線を合わせて、私に向き直る。

 

 「そう言って下さると助かります。――私の身を案じて、迎えが来るはずです。ただアルバトロスから距離はあるので今少し時間が掛かるでしょうが、お二人を必ず送り届けますので」

 

 クロが真っ先に来る気がする。一緒にジークとリンにロゼさんとヴァナルも。魔力を探れるはずだし、近くなればなるほど見つけやすいだろう。それならば、魔力駄々洩れ状態にしておくかワザと始終魔力を練っておくのも手かな。

 

 「竜の皆さまですね」

 

 「またあの光景が……帝国人は驚くでしょうね」

 

 教会がお金を使い込んでいた時、王都で竜の方が脅しを掛けてくれた光景を見ていたのか。申し訳ないことをしたかもしれないが、あれは必要なことだったし後悔はしていない。アレがなきゃ聖王国にも乗り込まなかったし、不思議な縁もあるものだ。

 

 「ね、ねえ……私は? 私は連れて帰って貰えるのっ!?」

 

 あ、ヒロインちゃんがいつの間にか復活していた。皇帝の熱烈アプローチに怯んで大人しくなっていたけれど、ようやく平常心を取り戻したようで。

 目隠しは継続しているので、メンガーさまがどうにかなる心配はないけれど騒がれると面倒ではある。メンガーさまはヒロインちゃんが幽閉されている理由は知っているし、大聖女さまも召喚されて第一皇子に突撃をかまそうとした説明で事情は知っているから何も言わない。

 

 「どうでしょうか。貴女の態度次第かと」

 

 というよりもアルバトロスの上層部次第なんだけれど、大人しくして貰うなら私が権利を握っていると勘違いされている方が都合が良い。

 

 「貴女、私と同じ平民だよね? どうしてアインに向かって偉そうな口をきいていたの?」

 

 あー……幽閉されていたから私が爵位を賜ったことを知らないのか。でも名乗りを上げたときは必ず『子爵』と告げている。話を聞いていれば簡単に推測できるけれど。ヒロインちゃんだから事実を都合よく改竄したり、思い込みが激しくてもおかしくはないか。

 

 「今は子爵を名乗っています。今回の件は拉致と同義、それを取り仕切った第一皇子殿下に抗議をしていただけ。何も問題はありません」

 

 「爵位、爵位を持っているの? 旅が終われば私も爵位を貰うはずなのに、どうして貴女だけ……!」

 

 幽閉されているのだから旅は無理だし、功績なんて残せないだろうに。ヒロインちゃんに残ったものは、悪名だけである。

 ふうと息を吐いてこれ以上彼女に構う必要はないだろうと、顔を背けてもう話すことはないと意志を示すけど、彼女は目隠しをしているから分からなかった。構わなければ相手にされていないと気付くだろう。私が縄を引っ張っているので、犬の散歩の主人のようにリードする側が主導権を握るのは当然で。

 

 「大聖女さま、メンガーさま行きましょう」

 

 「よろしいのですか?」

 

 「構っている時間が勿体ないですしね」

 

 「…………」

 

 困惑している大聖女さまと黙ったままのメンガーさまを引き連れて、広い皇宮内を堂々と闊歩し始めるのだった。

 

 

 

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