魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0226:次に出てくるのは誰。

第一皇子が近衛兵の方々によって会談の場から下げられた。彼の声がまだ届いているけれど、誰も気にする様子はなく。始まる前に直情な第一皇子が排除されたのは、アルバトロスと亜人連合国にとっては良い事だろう。

 

 ただ会談場所には皇帝と上層部しか居ないので、少し心もとないというべきか。やはり、ウーノさまが居ないと話が進み辛くなりそうだ。宰相閣下は有能だろうけれど、全権を握っている訳ではない。やはりそこは皇帝が握っているようで、最終決定は皇帝自身が下しているのだから。

 他の人たちも同席しているし、一筋縄ではいかないだろうなあ。第一皇子が退場しただけで、他にも皇子たちは居る。第一皇子殿下に成り代わって、皇太子の立場を手に入れたいと考えるだろうし。

 

 『居たわよ。こっちに来るのを邪魔されていたみたいね。彼女の邪魔をしていた子たちは眠らせておいたから、遅れてこちらへ来るんじゃないかしら』

 

 良かった。ウーノさまは無事だそうで、会談場所に姿を現すことを塞がれていたようだ。お婆さまが邪魔者は昏倒させたようなので、彼女が現れるのは時間の問題だろう。ふうと息を吐いて前を見る。皇帝を中心に宰相閣下、重臣の人たちに残りの皇子が数名。

 次は誰が喋り始めるのか観察している私を、見つめる人物がいた。誰だろうと同じように見つめていると、にへらと笑って一歩前に出た。座る為の椅子が用意されていない時点で、会談で喋る機会は与えられていないということなのに。誰も止めないし、他の皇子殿下が失脚したとしても関係ない。ウーノさまの地位が盤石なものになるならば、今仕出かしてくれた方が良いのだろう。

 

 「第六皇子、ゼクス・アガレス。今回の召喚儀式を第一皇子殿下に教えたのは俺なんだあ」

 

 公式な場というの言葉遣いがなっていない上に、皇子殿下の一人だというのに態度が軽い気がする。

 彼が今回の事の発端のようだ。どうやって召喚儀式を執り行ったのか興味があるのか、副団長さまの雰囲気が変わった。影の中に居るロゼさんも、テンションが上がっている。ロゼさんと副団長さまは本当に魔術が好きねと呆れてしまうが、そのお陰で古代魔術を習得することが出来たので文句は言えない。

 

 伸し上がる気はないけれど、お金儲けして自分の地位を盤石なものにしたいらしい。このままだと帝国貴族のどこかの家へ婿入りコースが確実。一生、皇宮で暮らす為に第一皇子殿下へと提案したんだって。本当はここではない何処かの世界から黒髪黒目を召喚するはずが、何の手違いか自分たちが住む世界の黒髪黒目を呼んでしまったと。

 

 「ねえ、俺をアルバトロスへ連れて行ってよ。君が竜を従えているというなら、金に困ることもなさそうだ。――」

 

 好き勝手な発言がまだ続いている。婿入りは嫌だけれど、贅沢が出来そうなので一緒に暮らすのはアリなんだとか。……食客扱いならばいけるかと一瞬考えを巡らすが、タダ飯喰らいは遠慮願う。ビキビキと顔が引きつっていくのが分かるけれど、言いたいだけ言わせてしまえばいいかと我慢していると、宰相閣下がまた皇帝へ耳打ちしている。自分で判断して欲しいなと陛下へ視線を変えると、第六皇子へと顔を向けた。

 

 「ゼクス。ここは会談の場、静かにしろ。――失礼した、彼の者へは確りと言い聞かせよう」

 

 「ええー……まあアピールは出来たから良いか」

 

 皇帝の言葉に凄く雑に返事をして、すっと後ろへ引いた第六皇子。なんだろう、何も言葉が出ないとでも言うべきか。ずっとしゃしゃり出たままだった第一皇子よりはマシだけれど、国政を司るとしたら軽すぎて心配極まりないけれど。

 

 「子が多い故か、教育が行き届いておらぬようで」

 

 公爵さまが嫌味で返した。男児十五人、女子五人の総勢二十名も居るのだから、教育に難があっても仕方ないのだろうか。アルバトロスもヴァンディリアはあまり帝国のことは言えない。本人の資質もあるのだろうけれど、教育失敗は周囲も何かしら問題があったのかもしれないし。

 

 「子が多いのは、吾が女好きな証左。教育が行き届かぬとも、周囲が吾や子を支えてくれる。問題ない」

 

 すごーくドヤ顔をした皇帝が、自信満々に言い切ってしまった。普通は恥じるべきことだけれど、女好きに特化しすぎて自信に昇華されているのが凄い。

 私も皇帝を見習うべきなのだろうか。身の回りでいつもいつも問題が起きるのは魔力量の多さが原因で、私の所為ではないと。何かしら問題が起こっても、周囲が助けてくれるから放置しても構わないと、彼のように言い切りたい。

 

 「…………」

 

 「……」

 

 皇帝の言葉に呆れてしまい、黙ったままの公爵さまとディアンさま。この二人から言葉を失わせるだなんて、驚いた。驚いたけれど、驚いた内容がかなり情けない気がするけれど。でも、周囲が支えてくれると言い切ったのは、周りには有能な者が多いということなのか。

 宰相閣下は苦労人みたいだけれど上手く皇帝を導いているようだし、他の面子もこの様子を静かに見守っている。必要以上に口を出さないのは、宰相閣下を信じているからだろうか。

 

 「さあ、今回の件を話し合おう。――宰相、皆よ、吾は宮へ戻りたいから早々に済ませよ」

 

 うん、ハーレムに戻りたいのね。私もアルバトロスへ早く戻りたい。竜に乗っても時間が掛かるだろうし、いつになれば戻れるのだろうか。聖王国はフィーネさまがアガレス帝国へと拉致されたことすら知らないだろうし、メンガーさまもお家の方は知らないだろう。

 心配しているだろうから、早く戻るべきなのだけれど。皇帝が言うように早く終わらせたくとも、手順や手続きもあるだろうし。面倒なことばかりだが、やるべきことはやっておかないと。また召喚されても問題だし、召還儀式の術式が東大陸の他国に流出して真似されても困る。

 

 『なんだか個性が強すぎないかしら?』

 

 お婆さま、言っちゃ駄目な台詞な気がします。それを言うと、メンガーさまの膝の上に居る髑髏の幽霊も問題だろうに。

 

 『あれは幽霊じゃないわよ。もう立派に精霊ね』

 

 浄化儀式の詠唱しても消えなかったのはその所為なのだろうか。あと数年早ければ浄化が成功していたのかも。

 出来れば出会いたくない類のモノだったけれど、出会ってしまったのだから仕方ない。帝国の土着している幽霊だから、アルバトロスへは行けないだろう。なので髑髏の幽霊とはアガレス帝国のみの付き合いだ。

 

 『精霊って認めない気ね……』

 

 認めるともっと偉大な精霊へと進化しそうなので、幽霊以外と認める訳にはいかない。お婆さまが私の耳元でくすくす笑いつつ、メンガーさまの膝上でどんよりしているしゃれこうべ。髑髏の幽霊を連れて帰るならば、帝国で適当な人材を拾って帰る。第六皇子はノーセンキューだ。

 

 本題に入ろうとした所で、帝国の壁門から一台の馬車がかなり急いでこちらを目指していた。

 

 ◇

 

 急いでこちらへとやって来た馬車から、ウーノさまがエスコートを受けながら降りてきた。議題の一つに入った所だったけれど、彼女の登場により一時中断。足早にやってきた彼女は、私たちの前に立って深々と頭を下げる。

 

 「陛下、アルバトロスの皆さま。遅れてしまいましたが、同席をお願い致したく。アガレス帝国第一皇女、ウーノと申します」

 

 頭を上げたあと同席の許可と名乗りを上げた。皇帝はウーノさまの同席を快く認めたあと、私たちへと顔を向けて同意を求める。

 

 「構わんよ」

 

 「ああ」

 

 公爵さまもディアンさまにもウーノさまに関する説明は終えてある。帝国でまともに話が出来そうな数少ない人だと告げているので、拒否をする理由はない。

 

 「ありがとうございます。先ほどはアインが無礼な態度を取り、私の頭では足りぬやもしれませんが申し訳ございませんでした」

 

 そういえば皇帝の口から殿下が不躾な態度を取った事への謝罪はなかったなあ。そこまで頭は回っていなかったのだろうし、宰相閣下も第一皇子の対処だけで手一杯だったか。国それぞれに内情をいろいろと抱えているよねえ。アルバトロスも元第二王子がああなってしまったのだから。

 

 「今度こそ始めようぞ。ウーノ、吾の代わりを務めてくれ」

 

 あれ、皇帝はウーノさまに割と信頼をしているようだ。ハーレムを維持する為に本能的に選んだのかもしれないけれど。ウーノさまが皇帝の座に就くには、男尊女卑だという帝国では難しいというのに彼女はその座を目指している。

 もしかして皇帝の後ろ盾をすでに手に入れているのだろうか。で、あれば先は明るいのかも。あんなのと言ってはアレだが、皇子たちよりも優秀なようだから、まだ信頼は出来る。

 全幅の信頼は出来ないけれど、第一皇子と交渉するよりもずっと楽だ。第一皇子の失礼な態度を諫めようとしていたし、謝罪をしてくれたのは彼女たちのみ。謝罪の場が皇帝の名代であれば一番良かったけれど、望めそうもないから諦めるしかない。

 

 「承りました、陛下。――アルバトロス王国、亜人連合国の皆さま、若輩な身ですが陛下に代わり場を預からせて頂きます」

 

 皇帝に頭を下げた後、ウーノさまはこちらへも頭を下げた。ようやく本題に入れると息を吐くと、公爵さまがふっと笑い。

 

 「色よい返事を期待する」

 

 「道理に反しなければ問題ない」

 

 公爵さまは帝国から分捕る気満々だ。ディアンさまは決まり事に反しない限りは強く出る気はないのだろうが、問答無用で拉致されたことは怒っているはず。だからこそアルバトロスと亜人連合国の共闘戦線が出来上がったのだから。まずはウーノさまの出方を拝見だろう。

 彼女ならば大丈夫なはずだけれど、政治の場面に確りと関わったことは少ないだろうから。私も人の事は言えないが表舞台へと立つこともあった。もの凄く不本意だけれど、必要な事態となってしまったのだから仕方ない。

 

 「再度になってしまいますが、此度は我が国の第一皇子であるアインがアルバトロス、亜人連合国、そして聖王国の皆さまへ多大なご迷惑をお掛けしたこと真に申し訳ありませんでした」

 

 あ、第一皇子は切られるかな。中央広場で彼の地位が落ちるように、帝都に住む人たちへ今回の事を吹聴しておいた甲斐があった。聖王国の大聖女さままで巻き込んでいるから、帝国は大変だろう。謝る国が多くなるんだし、補償もしなければならない。

 巨大な国だから資金は多いかもしれないが、本来充てるはずだった場所へお金を回せなくなるだろうから。発展という意味では今回の件は、痛手でしかない。

 

 「謝って済む問題ではありませんが、なにとぞお許しくださいませ」

 

 ウーノさまは謝罪の言葉の後に第一皇子殿下を処罰することと、この件を手引きした第六皇子も処罰の対象だと告げて補償の話に入るけれど、公爵さまが彼女の言葉を右手で遮った。

 

 「話の途中で済まないが、まずは東大陸における黒髪黒目信仰をどうにかせねば、同じことが起こりかねん。根付いた信仰を我々がどうこう出来る立場ではないが、何かしら手を打たねばなるまいて」

 

 「そうだな。しかし、どうしたものか……。東大陸で我々の顔が利くとは思えない」

 

 あれ、もしかしてウーノさまに花を持たせようとしているのだろうか。東と西の各国で召喚儀式魔術を禁止する条約を結べば、多少の抑止にはなるはずと提案しておいた。

 もちろん、公爵さまとディアンさま、ウーノさま双方に説明済み。帝国は東の覇権を握っているのだから、どうにかなるはずだろう。黒髪黒目を信仰しているならば、黒髪黒目の者が提案者だと告げれば納得しやすいだろうし。

 

 「では、東と西の大陸双方で条約を結びませんか? 召喚儀式を禁止すれば多少の効果はあるはずかと」

 

 条文に黒髪黒目の意志を尊重しろと付け加えてくれると尚有難い。交渉開始したばかりだから、これから何度も協議しなければならないだろうけれど、第一皇子みたいな目先の利益だけを求める輩は排除できる……はず。あとは副団長さまとロゼさんに術式を解析して頂いて、抵抗出来る魔術具を作ってもらうとか。

 

 「では西大陸は我らと亜人連合国が賛同者を求めよう」

 

 「東大陸はアガレスが集めましょう」

 

 本当に順調だなあと、目を細める。出来る人たちで纏めれば、こうもすんなりと進むものなのか。グダグダな展開しかみたことがないし、こういうのって長引くイメージが頭の中に根付いているから意外というか。

 

 「では補償の話に移るかね。――」

 

 召喚禁止条約の話も大枠がまとまると、公爵さまが補償の話に変える。矢継ぎ早にお金のことを告げる公爵さまに帝国側の顔色が悪くなっていくけれど、謝ってしまった手前反論も出来ずに頷くことしか出来ない。

 

 お互いに書記官を帯同させているから、公式記録として残る。

 

 金額に納得できず帝国の方が反論しようものならば、ウーノさまの謝罪が無意味なものになってしまうし場が荒れるだけ。ついでとばかりに遠征費とかも請求しているし、公爵さまやるなと感心する。

 お金にあまり執着していない亜人連合国の分まで求めているので、容赦がない。聖王国やメンガー伯爵家による補償の話は、後日別口で場を設けて欲しいとも願い出ていた。

 

 煤けている帝国上層部とウーノさまたちの顔を見つつ、第一皇子の行動を知っておきながら事前に止められなかったツケが、今になって回ってきただけ。両手を上げてジャンプしてもお金は出てこない、という状況までにはなっていないのだから、素直に諦めてくださいと心の中で両手を合わせるのだった。

 




 お知らせ:第三回集英社web小説大賞・金賞を頂きました! 書籍化です!!┏○))ペコ
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