魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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 投稿順を間違えておりましたorz 読み直ししなくても話が進んでいないので大丈夫なはずですが、本当に申し訳ありませんでした!┏○))ペコ


0228:竜騎兵隊の功績。

 上空で警備を務めていた竜騎兵隊は、ちゃんと務めを果たしていた。地上で怪しい動きをしている人を片っ端から捕らえ、帝国の警備に付いていた近衛兵へと連絡を渡していた。

 

 私たちが狙われたのは会談後となるお喋りタイム中なので、弛緩している時が効果があると踏んでいたのだろうが、上空で丸見えだったのだから運が悪い。

 悪運が強ければ逃げられたのだろうが、今回は空に彼らが居たのだから。空から狙い撃ちされる上に、遮る物がない野原なので逃走経路も丸わかり。捕まった人には『ドンマイ!』と笑顔で言って差し上げるべきかも。

 

 『聖女さま、褒めて褒めて~』

 

 地上に降りてきたワイバーンがわらわらと私に集まり、顔を下げて褒めてと言う。彼らの上に乗っていた騎士の方は既にワイバーンたちから降り、事後処理に当たっている。

 ワイバーンの頭を撫でながら捕まった人たちを観察していると、帝国の平民服を纏っているものの顔付きが微妙に違う人も居た。他国の人かなあと目を細めると、ワイバーンがぐいぐいと顔を押し付け構えと主張して私を見ている。

 

 「お勤めご苦労さま。アルバトロスに戻ったら何か差し入れするね」

 

 『本当? やったあ!』

 

 私の庭で育った野菜類は魔素が多く含まれているので、ワイバーンの子たちに凄く喜ばれる。竜の皆さまと一緒で、魔力量の多さが強さの証なんだって。

 魔素を積極的に取り込んで強くなるんだと、頻繁に彼らは私に伝えている。親の魔力量が多いと、子供も多い子が生まれやすいので次に生まれてくる子は強いかもと嬉しそうにしている。無邪気に喜んでいる姿が可愛くて、割と頻繁に野菜を持ち込む理由になっている。悪いことじゃないし、クロも認めてくれているから問題ないはず。

 

 「ナイさまは独り言を?」

 

 「どうしたのでしょうね……」

 

 フィーネさまとメンガーさまが一人で喋る私を不思議そうに見ていた。彼女と彼にもワイバーンの声は聞こえないのか。何故私にだけ聞こえるのだろうと首を傾げていると、随分と小さくなったクロがパタパタと飛んできた。肩には乗れないけれど、腕の中には納まるサイズ。不思議なもので、見た目より重くない。

 

 『ナイは古代人の先祖返りだからねえ。感覚的に理解しているんじゃないかな』

 

 クロを撫でていると、クロは私の腕に顔を置いてくつろいでいる。アルバトロスから帝都まで急いで飛んできたから疲れたのだろうと、ゆっくりと頭から体を撫でながら『ありがとう』と思いを込めた。

 

 『古代人! 古代人なのかね?』

 

 ただの先祖返りだから、昔に居た人たちとは違うんじゃないのかなあ。クロの言葉に驚いているフィーネさまとメンガーさまより、髑髏の幽霊が盛り上がっていた。どうしてそんなに驚いているのかは分からないが、古い者に価値を見出しやすい世界なのだろう。

 

 私を構成しているご先祖さまたちの血を引き継いでいるのだから、古代人の血も脈々と受け継いでいる訳で。メンガーさまやフィーネさま、髑髏の幽霊だって古代人の血を引いているから驚くことはないのに。覚醒して見た目が黒髪黒目になれば面白いけれど、漫画のような展開は望めないか。

 

 「先祖返りですよ、古代人の」

 

 誤解を生みそうなのでちゃんと主張しておいた。黒髪黒目信仰がある東大陸や帝国で、そんな噂が広がればまた面倒な事態となりそうだから。帝都で暴れておいて良かったなあ。アレは気が強く抑えることのできない身勝手な者だと勘違いしてくれただろうし。黒髪黒目信仰に疑いを持ってくれる人が多くなれば万々歳。

 

 「ナイさま、少しばかりお話が……」

 

 ウーノさまに声を掛けられ、彼女の方へと顔を向ける。捕まえた人たちの事後処理を行っていたのにどうしたのだろうか。

 

 「はい?」

 

 何だろうと首を傾げつつ彼女の後ろを付いて行くと、そこには捕まった人たちの姿が。

 

 「本当にっ! 本当に黒髪黒目のお方だ!」

 

 「我らを導く方よ! 我が国にも来て頂きたい!」

 

 彼らは私を認識した途端に顔を勢いよく上げて、声を大きく張り上げる。後ろ手に縛られている彼らは帝国の近衛兵によって動きを封じられた。

 

 「彼らは黒髪黒目信仰を最も信じている国の出身者です……」

 

 帝国が黒髪黒目召喚を執り行うと聞きつけ帝都に潜んで諜報活動をしていたが、私が現れたことを知り皇宮を抜け出しアガレス像を壊した噂を聞きつけて、会談現場である帝都外の野原までのこのこやって来た。捕まったら意味がないのではと訝しむけれど、ウーノさまの疲れた様子を見るに過激派なようだ。私を拝んでいた共和国の方なのかと思えば違うらしい。

 

 「言い辛いのですが、彼の国は黒髪黒目のお方を食し力を得られると信じて止まない方々。本当に危ないので、警告を兼ねて皆さまにお報せしておこうと……」

 

 ……ウーノさまがほとほと困った顔を浮かべていたのはソレが理由か。カニバリズムって本気なのかって考えてしまうけれど、文化として根付いているからおかしいと思い至らないようだ。信仰が回り回って、ぶっ飛んだ方向へ進んでしまった見本なのだろう。高い山の中の盆地にある小国で食糧事情もよろしくない所為か、余計に信じられていると。

 

 「……」

 

 「…………」

 

 『我が生きている時はそんな話は聞かなんだが、今はそうなってしまったのか……罪深い…………』

 

 フィーネさまとメンガーさまはドン引き中、流石に髑髏の幽霊も引いているし、アルバトロス、亜人連合国、帝国の皆さまも『えー……』という感じで。連れて帰れるならば連れて帰れば良いと思うが、食べられてしまうのは頂けない。

 五百年前は必死に黒髪黒目の者を探し求める小国だったらしいけれど、それって食べる為に必死だっただけなのでは。微妙な気持ちになりつつ、捕まえた妙な人たちの対応をしなければならないウーノさまを見る。

 

 「帝国に潜んでいる彼らに連なる者は我々が排除いたします。ですが黒髪黒目のお方を我々が認知して随分と時間が経っていますから、西大陸へ渡っていても何の不思議はないでしょう」

 

 黙って彼らを処分するよりも、私たちに知らせて事前に対策を練られるようにという配慮だった。遅かれ早かれ私の存在は東大陸へ伝わっていただろうし、東大陸の情報に疎いアルバトロスや亜人連合国にとっては有難い情報となる。

 

 「確かに少数で行動となると、発見し辛いな。偽装すれば更に分からぬか。情報提供感謝する」

 

 彼ら自身に大した脅威はないけれど、狂信者故に突飛な行動は予測し辛い。今回の件で私の警備は厳しくなりそうだから、無理だと叫びたくなるけど。手を出せば国を亡ぼすよという脅しくらいは掛けておいても良さそう。山の中だから娯楽が少ないことも起因していそうだよね。

 

 「我らも人を喰う者が居るが……同族喰いは禁忌。――愚かな」

 

 公爵さまがウーノさまに礼を述べ、ディアンさまはギロリと捕まった人たちを睨んでいる。ディアンさまの横に立っている白竜さま、もといベリルさまも一緒に圧を掛けているから、捕まった人たちは凄く怖いだろうなあ。

 私にはお二人の威圧が向いていないので、ケロリとしていられるが。慣れていない人には怖いらしく、震えあがっている。卒倒する人が出てきそうだから、止めるかどうか迷っていると影が差したのだった。

 

 ◇

 

 凄い怖い雰囲気を保ったままのディアンさまとベリルさま。強い個体の竜というだけあって、険しい視線だけでも威力は抜群だったようだ。

 ひいと声を漏らして恐れている捕まった過激派の人たちがそろそろ卒倒しそう。魔力内包量が低い所為か魔力を纏ったモノに耐性がないようで、ウーノさまを始めとした帝国の方々も限界を迎えようとしている。

 

 「はいはい。そこまで!」

 

 「みんな驚いているよ~。馬鹿だけに向けるなら問題ないけれど、他の人まで影響してる~」

 

 ふ、と影が差し込むとダリア姉さんとアイリス姉さんがお二人の怖い雰囲気を物ともせず、突っ込んでいた。

 慣れているのか、竜のお二人の眼光をガン無視できる胆力は凄い。やはり逆らっちゃ駄目な人だよね、ダリア姉さんとアイリス姉さんは。

 

 「……すまん」

 

 「失礼を。どうにもいきませんね」

 

 お姉さんズとは違って真面目なお二人は反省の色をアリアリと見せていた。

 腕の中に居るクロもまだまだ未熟だねえと他人事のように言い放っていた。クロは同族故の気安さなのか、ディアンさまとベリルさまに割と手厳しい。

 以前私にディアンさまは名乗る機会を失っただけと暴露していた。亜人連合国の今後を担う方たちだし、教育も兼ねているのかもしれないけれど。

 

 『東大陸の黒髪黒目信仰も大変だね。神格化されちゃって、雁字搦めになっているというか……』

 

 確かに。黒髪黒目信仰に囚われて、前に進めなくなるならば本末転倒である。現に、過激派の人たちの国はあまり発展していないようで、帝国よりも数段劣っているとのこと。

 東大陸に聖王国の教会でも派遣出来ないかなあ。経典の内容は、面白おかしく分かりやすい話となっているので、教会が建立されれば信者を獲得できそう。

 地球での一大宗教も古き時代は、地道な広報活動が功を奏して根付いた訳だし。

 植民地化して現地の人たちを洗脳――言い方は悪いけど――する手法もある。

 

 『何を考えているの、ナイ?』

 

 「ん。聖王国の教会に宣教師さんが居るなら、東大陸に派遣できないかなって。黒髪黒目信仰が大手を振っているみたいだし、矮小化させるなら丁度良いのかなあ」

 

 私の声に、一同がフィーネさまに視線を向けた。本人はびくんと肩を揺らして、目を点にして驚いている。

 申し訳ないと思いつつも、非公式ではあるが証人が多くいるこの場で言質は取っておきたいかも。流れでウーノさまの許可も取れると良いのだけれど。

 

 「へ? ――た、確かに宣教師の方はいらっしゃいます。その方は信仰深い方でいらっしゃいますので、お話があれば喜んで東大陸へ派遣されましょう」

 

 目を点にしたフィーネさまは、一瞬で正気を取り戻し、私の言葉に答えてくれた。腐敗していた聖王国に教義に熱心な人が居たのねと思うと同時、何故かカルヴァインさまの顔が浮かぶ。

 彼も随分と熱心だけれど、それを上回るのだろうか。

 

 「大丈夫かな……」

 

 「?」

 

 ぼそりと呟いたフィーネさまの声が私の耳に届く。彼女の一番近くにいたメンガーさまが首を傾げるけど、今は目の前の人たちへの対処が先だ。

 私は死んだら大地に還るのが本来の姿と考えているから、生肉でも死肉でも食べるのは止めて頂きたい。

 カニバリズムなんて創作の中だけなんて考えていたけれど、思えばニュースで死体を食べたなんてセンセーショナルなことがあったなあ。

 随分と懐かしいと目を細めていると、捕らえた一人を近衛兵がボコスカ殴っている。一体何だろうと不思議に感じて、つい口を開いてしまった。

 

 「どうしました?」

 

 考え事をしている内に、いつの間にか状況が動いていたようだ。

 

 「女性が知るべきことではありません! お気になさらず!」

 

 「黒髪黒目のお方を襲うことも重罪ですが、それと同じようなことをした事を咎めているだけですので!!」

 

 ディアンさまとベリルさまの気迫に圧されていたのに、回復して何かを仕出かそうとしたらしい。割と重い音が響いているのだけれど。東大陸の方たちの魔力量は低いイコール、身体強化をされていないということだ。仮にされていたとしても西大陸の方々よりも微々たるもの。だというのに、重い重い一撃が振り下ろされている。

 

 「ナイ、下がれ。近寄るべきではない」

 

 「そうですわ。あのような仕打ちは当然でございましょう。彼らに任せ、放っておくべきですわ」

 

 ソフィーアさまとセレスティアさまが私の肩を持って後ろへ下がらせる。ジークとリンもこちらへ寄って、捕らえた人たちを視界に入れないようにと立ちふさがる。

 

 「……ふざけた真似をしおってからに」

 

 「あり得ん」

 

 「最低ね」

 

 「頭、大丈夫なのかな~?」

 

 公爵さま、ディアンさまにダリア姉さん、アイリス姉さんが口々に相手を罵っている。黒いオーラを放ちつつ彼らにここまで言わせるなんて、一体何をしたというのだろうか。

 

 『ナイは知らない方が良いよ』

 

 『そうね! あり得ないもの!』

 

 クロとお婆さままで言う始末。気になって仕方ないから、問いただしても良いだろうか。今は聞ける雰囲気じゃないから、後回しにするしかないけれど。近衛兵の方は息を切らしつつも、まだ続けているんだけれど。見えないけれど、息遣いや気配で分かってしまうので、何があったか分からないが故に恐怖を感じている。

 

 「この不始末は必ず帝国が責任をもって対処いたします。――その辺りで止めなさい。憂さを晴らしたいのであれば、情報を全て吐き出させた後になさい」

 

 ウーノさまは私たち一行に頭を下げた後に近衛兵へ向き直って、無慈悲な暴力を止めていた。と思えば、割と酷い言葉が追加されていた。容赦ないなと思うけれど、帝国のトップに立つならばこういう面も持ち合わせていないとやっていけないのだろう。

 

 「はっ!」

 

 「は!」

 

 カニバリズムは頂けないけれど、その内に顔が腫れあがって大変なことになるから治癒でも施した方が良いような。もちろん対価は本人に払っていただくけれど。周りの人たちは立腹していても、理由を私に教えてくれないので、一人だけ置き去り状態だ。顔に青あざが目立ち始めた人を視界の隅で捉える。

 

 ――彼は何をしたのだろう。

 

 疑問が残る一幕だったが、怒っている方たちを宥めるのに苦労したのは言うまでもない。

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