魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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 お知らせ:前日更新分の投稿順を間違えておりましたorz 読み直ししなくても話がさほど進んでいないので大丈夫なはずですが、本当に申し訳ありませんでした!┏○))ペコ


0229:夜の帳が落ちる。

 キレている方たちを宥めつつ、捕らえられた人が何をしていたか聞いても、みんな口を揃えて『知らなくていい』と固く口を閉ざしたままなので真実は知れないまま。

 私に対して一番口が緩そうなリンに聞くも、同じ言葉が返ってくる。ぬー……と口をへの字にしていても誰も答えてくれない。重要なことであれば必ず教えてくれるから、知らなくても問題ない事案なのだろう。ならば忘れた方が精神衛生的にも良いかと、さらりと流す。心の切り替えって大事だし、会談終わりの歓談は続いているのだから。

 

 「皇帝陛下は彼女にご執心だったようですが……」

 

 私はウーノさまへ視線を向けた後、地面に転がっているヒロインちゃんへと視線を変える。ウーノさまは私が何を言いたいのか理解したようで、片眉を上げて何とも言えない表情になった。

 

 「ええ。陛下は自身の下へ来ることを望んでいます」

 

 自分の父親が無類の女好きだなんて、普通の感覚であれば嫌だろう。しかし彼女はアガレス帝国第一皇女という地位のお方。そんなこと言っていられない身だし、子供が多いのは良い側面もある。もちろん悪い側面もあるから、一概には言えないけれども。

 

 「その割には至極あっさりと引きましたね」

 

 「流石にこの場の緊張感に堪えられなかったのでしょう」

 

 ウーノさまが言葉を言い終わると、顔を竜の皆さまが居る場所へと視線を向ける。気付いた竜の皆さまが『どうしたの?』というように一斉に首を上げて、こちらを見て首を傾げる。何でもないよと首を振れば、竜の皆さまは顔を元の位置へ戻して何事もなかったように待機していた。

 

 「あー……」

 

 私が微妙な顔になっていると、くすくすとウーノさまは笑っている。この状況を耐えられる人はそう居ないのか。亜人連合国でクロが卵の時に取り囲まれた時点で、感覚がマヒしているから。凶暴な竜も知らないし、みんな良い方ばかりなのに。

 そりゃ、まだ小さい竜は悪戯好きであったり、物事の分別が付いていないこともあるが、教えると直ぐに理解してくれる。竜の皆さまが恐れられている理由がイマイチ分からないとでも言うべきか。皇帝も竜の皆さまと触れ合ってみれば良いのに。

 

 「ナイさま。皆さまは今から帰路に就かれるのでしょうか?」

 

 もう陽が暮れそうな時間になっていた。直ぐにでも帰りたい所だけれど、一人だけ勝手な行動を取る訳にはいかず。

 

 「閣下の話によれば夜に移動するのは危険なので、この場で一夜明かすと仰っていました」

 

 公爵さまはウーノさまに、この件を伝えていなかったのだろうか。場を任されたウーノさまの許可があれば、多少は落ち着いて夜を迎えられそうだけれど。

 

 「であれば、皇宮で一泊なさいませんか? すべての方を迎え入れるのは無理ですが、貴族の方やご迷惑をお掛けした方々を歓待致したいのです」

 

 表面上の和解を終えたとはいえ、蟠りが解けた訳もなく。ウーノさまの気持ちは有難いことである。

 

 「申し訳ありませんが……」

 

 今回はアルバトロスと亜人連合国は怒っているぞというパフォーマンスもあるので、彼女の言葉をおいそれと受け入れる訳にはいかない。皇宮に再度訪れるのはきちんとした手順を踏み、正式な使者や賓客として向かうべきであろう。

 個人的な繋がりを持ったから、ウーノさまに招かれてもおかしくはない。その時は飛空艇を飛ばして頂き、送り迎えは帝国にお任せコースだろう。貴重な巨大魔石を壊したから、まともに動かせる飛空艇があるのか謎だが。気持ちは本当に有難いけれどね。堅い簡易ベッドよりも、柔らかいベッドの方が安眠できるので。

 

 「やはり無理でしたか」

 

 ウーノさまは苦笑いを浮かべているので、誘ったという体裁も欲しかったのだろう。分かっていながら誘ったのかと理解して、私も苦笑いを浮かべる。

 第一皇子とかどうなっているのか知る由もないが、動ける身ならば『何故黒髪黒目の者を逃したっ!!』と凄い剣幕で迫りそうだし。第一皇子以外の黒髪黒目に対して過激な感情を抱いている人が居ないとも限らない。

 

 『我の城が気に入らんのか?』

 

 黙っていてください。貴方が喋ると帝国側の皆さまの調子を狂わせるんだよね。無理矢理この地を奪ったことに思う事があるのか、雰囲気が重くなる。髑髏の幽霊は死んでいる上に精霊化を果たして気が晴れているようだけど、真実を今し方知った人たちは微妙な空気を醸し出すのだから。

 

 『いやあ、少しでも魔素の量を増やしておきたいのじゃよ! 我は魔素で構成されておる。巨大魔石が減ったからちったあマシになるだろうが、魔素量は少ないからの』

 

 どこまでも自分の都合だった。晴れやかな自己中だなと無視を決め込んでいれば、髑髏の幽霊は私の態度に対して勝手に落ち込んでいる。

 皇宮にあった飛行艇の動力である魔石二十個と召喚に使われた魔石五個は完全破壊しているから、再生は不可能。魔石が溜め込んでいた魔素は放出されたはずだけれど、髑髏の幽霊にはまだ物足りないらしい。

 

 「げ、元気を出してください!」

 

 「そうです。これから第一皇女殿下を支えていくのでしょう?」

 

 側に居た二人が、落ち込んでいる髑髏の幽霊の肩を持っていた。

 

 『お嬢ちゃんとメンガー少年は優しいのう……我、肉体はないが心はあるから胸に染みるぞぅ……』

 

 フィーネさまとメンガーさまは思う所があったのか、髑髏の幽霊に語り掛けている。優しいなあと見守っていると、フィーネさまが一歩踏み出した。

 

 「聖王国には優秀な浄霊師さまが居ますから、この世に未練がなくなればご依頼くださいね!」

 

 フィーネさまはチラリと私を見た。へえ、そんな職業の方がいらっしゃるのか。聖王国の大聖女さまが言うのだから、除霊師さんは実力がある方なのだろう。幽霊が出たら聖王国に連絡すれば、払って頂けるのかと心のメモに刻んでおく。絶対に一生忘れない言葉だなあ。これで怯えなくて済むと、心がちょっと晴れやかになる。

 

 『いや我、まだ空へ還る気はないぞい!』

 

 フィーネさまの割と酷い言葉に怒る様子も見せず、おどけて髑髏の幽霊は言葉を紡ぐ。お金も必要ならば払えないしと言い訳をしていた。この世に未練がアリアリなのねと髑髏の幽霊を見上げた。

 

 「お金ならば私が出しますよ」

 

 うん、未練が消えたら教えて欲しい。私が生きている間ならば除霊費用を払うから。

 

 『え……?』

 

 「へ?」

 

 私の言葉が意外だったのか、髑髏の幽霊とフィーネさまの目が点になっている。メンガーさまはやれやれと言った感じで、私たちのやり取りを見ていた。

 

 「では我々一同は引き揚げます。護衛の近衛兵を残すことのみお許しください」

 

 ウーノさまは私たちに深々と頭を下げると、他の面々も深々と頭を下げる。浅く下げている人は注意すべき人物かなと、顔をなんとなく覚えておこう。

 

 「承知した」

 

 「寝床の提供感謝する」

 

 公爵さまとディアンさまがウーノさまの言葉に返事をした後、ちょっとだけ今後の事を打ち合わせ。第一皇子が取りそうな行動とかをウーノさまは私たちに教えてくれ、公爵さまが悪ノリしてた。

 

 彼女たちと捕らえられた人が戻っていく姿を見送りつつ、野営の準備に取り掛かるのだった。

 

 ◇

 

 ウーノさまは護衛と言い残して場を去って行ったけれど、監視も兼ねているだろう。妙な行動なんて起こす気はないが、帝国にも事情があるから文句は言わない。

 その証拠に公爵さまもディアンさまも、ウーノさまへ止めろとは言わずに言葉を告げていたのだから。髑髏の幽霊はウーノさまと一緒に戻って行った。事実を暴露して少しはスッキリとしたのかもね。じゃないとウーノさまに付いて行くなんて決意を下さなかっただろう。

 

 日暮れ前には作業を終わらせようと、軍の皆さんは慣れた手つきで天幕を張っている。長期休暇の時なんて、一緒に交じって天幕を張っていたというのに。手伝おうとすると子爵家当主がそんなことをしなくても良いと言われてしまった。

 

 公爵さまには座して待つのも貴族としての務めと言われ、ディアンさまには女子供がやらなくとも良いと言われ。討伐遠征では女性の騎士さまでも手伝っているのだから、良いじゃないかと少し不貞腐れつつ、騒がしい野原をジークとリンを連れて歩いていた。

 

 フィーネさまとメンガーさまは公爵さまの相手を務めている。軍を統括している方だから、見た目こそ怖いものの常識人なので妙なことにはならないし、お二人は公爵家との繋がりが出来る良いチャンスだ。邪魔しない方が良いだろうと判断して、こうしてウロウロしているのだった。

 

 「よう、お嬢ちゃん。まーた面倒ごとに巻き込まれたんだな」

 

 態と足音を立てて私の前に立ったのは、隊長さんだった。軽く手を上げていつもの調子で軽口を叩く。懐かしいなと感じつつ討伐遠征に参加する機会が減ったので、彼と会う機会も当然減る。本当に久方振りだなあとまじまじと隊長さんの顔を見ると元気な様子で。医療が発展していない世界だから急に亡くなるなんて事態がザラにあったりする。

 

 「こちらへ来ていたのですね」

 

 隊長さんも私の事を気遣ってくれているのか、にかっと笑った。

 

 「応よ。全軍招集が掛かったからなあ。お嬢ちゃんが何者かに攫われたと聞いたときは肝が冷えたぞ……!」

 

 私を失えば奥さまに顔が上げられなくなるそうだ。隊長さんの奥さまとお子さんも変わらず元気なようで安堵する。

 しかしまあ、隊長さんまで招集されているとは。他国に来るのだしいらっしゃるなら騎士団の方たちかもと考えていた。便乗して公爵さまが軍の一部を率いると考えていたのに、外れてしまった。全軍を上げてこっちへ来るなんて。

 

 「お騒がせして申し訳ありません」

 

 戦闘もなく帝国の地を踏んだそうで、怪我人や死者は居ないと。高所恐怖症が発覚した軍の方が一部に居たそうで、その方たちは仲間内から男の癖に肝が小さいと言われているとか。

 努力と根性で捻じ伏せる気概があるし、そういう人も居ると理解できるのはまだまだ先だろう。少し可哀そうだけれど、竜騎兵隊の方と訓練すれば荒療治で治る可能性もある。本気で駄目な人はなにをやっても駄目だろう。そればかりはご愁傷さまと手を合わせるしかない。

 

 「おい、頭を下げるな! ――子爵家当主になったからこの態度も改めないとな。無事で何よりです、ミナーヴァ子爵」

 

 軍式の敬礼で私に向かう隊長さん。立場が変わってしまったことに寂しさを覚えるけれど、受け入れないとね。あとは場面場面で使い分ければ、前みたいな関係は確り続けていけるだろう。私の周りには平民だからと言って蔑む人は居ないので。

 頭を下げるなと言われても、根っこの部分に沁みついている癖。拭い去ることは難しいだろう。隊長さんは、周りから何を言われるか分からないので肝を冷やしたか。申し訳ないと思いつつも、やはりいつも通りのやり取りが気楽で良い。

 

 「ありがとうございます。出来る限りで構いません、軍の方々には感謝しているとお伝えください」

 

 いつも通りのやり取りをするには限られた場所や場面でしか叶わないだろう。

 

 「はっ! ――じゃあ、またな」

 

 丁寧に接しつつも、隊長さんは周りに気付かれないように小声で伝えこの場を去って行った。変な所で気遣いが完璧だよねと笑みを浮かべて、また歩き始める。まだお礼を述べていない方の所に行かなければと、少し急いで歩いている。

 軍の方たちが居る場所を真ん中とするなら、円周部は竜の方々が居た。彼らの護衛も兼ねているようで、さまざまな大きさの竜がアルバトロスの面々や亜人連合国からやってきた竜以外の方たちを囲っているのだ。

 

 『ご無事でなによりです、聖女さま』

 

 『本当に良かった~』

 

 『若から話を聞いた時は、心配しましたよ』

 

 竜の皆さまへと近づくと地面でくつろいでいた体を起こして、私の下にのそりのそりとやって来てくれた。

 小さいサイズの竜の方はたたたと地面を駆けてこちらへ。可愛いなあ。セレスティアさまがこっちに居れば、一人で悶絶していたに違いない。

 

 「この度は本当にありがとうございます。みなさまのご厚意によりアルバトロス軍の皆さまが帝国へ訪れることが出来ました」

 

 本当に。竜の方々の協力がなくては、こうも簡単にアガレス帝都に辿り着いていない。一ヶ月を超えて船旅と陸地の移動を強制させられたことだろうし、食糧などの物資調達も難儀する。一気に解決したのは大きな竜の皆さまのお陰。背に人と物資を乗せられてここまで辿り着いたのは本当に奇跡。

 

 『気になさらないでください。貴女が居なくなってしまえばアルバトロスの方々が困るのは理解しております』

 

 『そうだよ。自分の意志でここまで来たからね』

 

 『若に強制された訳ではありませんよ』

 

 腕の中に居たクロをリンに預けて、皆さまの顔を撫でさせていただく。ついでにちょっとばかり魔力も練っておいた。疲れが早く取れるかもしれないし、明日の朝には帰路に就く。魔力は多い方が良いだろうと練っていると、気付いた竜の皆さまがわらわら寄ってくる。

 

 『ナイ、本当に君の魔力は底を見せないね』

 

 クロがリンの腕の中で呆れた様子で呟いているが、ちゃっかり吸い取っている。魔力量が売りの聖女だから、気にしても負けだし気にした所で吸い取られる。私は元気だし、あとはアルバトロスに帰るだけ。信頼できるみんなも居るし、副団長さまとロゼさんが居るから火力面の心配はなし。

 

 限界まで練って『もってけ泥棒!』状態にしておいた。竜の皆さまが感心しつつ、じっとした状態で魔力を吸い取っていた。察知した代表さまやベリルさまも近くへとやって来ているし、ダリア姉さんもアイリス姉さんも近くに居る。

 

 移動に貢献した竜の方たちへ魔力を分けていると分かったのか、何も言わずにこの光景を見ているだけ。ディアンさまもベリルさまも竜化して、みんなを乗せてこちらへやって来たと聞いている。

 

 お二人の魔力を探って、魔石の要領と同じでこっそりと線を繋いで注いでおく。彼らの横に居たダリア姉さんとアイリス姉さんが凄い形相となったので、こうなれば一緒だなと判断してお二人にも繋いだ。その瞬間直ぐに顔が綻んで、手を振ってくれた。軽く頷いて返事をして、まだまだお腹は満たせないだろうと、魔力を放出。帝国へ残すと問題なので、キレイに残さず吸い取ってくださいと願う。

 

 エルとジョセも一緒に付いてきてくれて、ソフィーアさまとセレスティアさまが騎乗していたらしい。似合いそうだなあと考えながら、エルとジョセの気配を探す。場を察して竜の皆さんと一緒に居たようだ。妙な輩に絡まれて捕獲されそうだし、竜の皆さまが守ってくれているなら安心。時々抜けている所があるから個体数減らしたのだから。

 

 『本当に呆れるくらいに豊富よねえ! ま、有難いから私も貰っちゃお! あ、そうそう。あの人が言った通りの展開になりそうよ。ヴァエールから好きに扱って問題ないと言質は貰っているわ!』

 

 お婆さまが不意に現れた。ダリア姉さんとアイリス姉さんと相談した上でお仕事に行っていたのだ。お婆さま本人は遊びの範疇だろうけれど。

 帝都でいろいろと動き回っている人たちを見つけて、髑髏の幽霊とコンタクトを取っていた。第一皇子殿下たちを逃さないように、どうしようもない箔を付けようと公爵さまウーノさまが一緒に画策していた。

 

 ――で。

 

 ウーノさまの予想通りに、陽が落ちて暗くなった頃に問題児が姿を現した。

 

 「黒髪黒目の者を出せっ!!」

 

 うわーと引いている軍の面々と、愉快なモノがやって来たと見守っている竜の皆さま。百人ばかりの軍勢を引き連れて、私たちの前へと姿を現したのは第一皇子殿下その人だった。

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