魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0233:【①】皇女殿下の事後処理。

 ドラゴンの大群が悠然と青い空を飛んでいる。御伽噺でしかない光景を、実際に目にすることになろうとは。

 

 ――私は試されているのかもしれない。

 

 アルバトロス王国フランツ・ハイゼンベルグ公爵閣下は、今回の事態を上手く利用せよと告げ帰路に就いた。私の手元には決闘の際に取り交わされた血判状がある。決闘に際しての契約はアイン側がナイさまを譲れ、アルバトロス王国と亜人連合国側は負ければアインが皇籍から抜けるというもので。

 

 確かに私は、弟が一番嫌がるのは権力の座から退くこととお伝えしたが、本当に成し遂げてしまうとは。弟、アインが馬鹿だったこともあるのだろうが、それにしたって上手く事が運びすぎている。が、この機会を逃す訳にはいかない。道筋をお膳立てされたのだから、上手く使って望まれた以上の結果を出すのが私の務めだ。

 成果を持ってアルバトロス王国と亜人連合国に赴けば、繋がりくらいは出来るかもしれないのだから。ナイさま個人と繋がることが出来た。彼女の後ろ盾だというハイゼンベルグ公爵家とアルバトロス王族とも繋がりを持っておくべきだ。彼らの許可なくナイさまを帝国へ招待すれば、良い顔はしないのは目に見えている。

 

 「さあ、これから忙しくなりますよ」

 

 私に従ってくれている方たちに声を掛けた。父の代わりに第一皇子、第二、第三皇子の処分。ナイさまが扇動した民に対しての説明に、黒髪黒目を食す文化がある国への対応。

 帝国外縁部の中央――皇族や皇宮で働く貴族の事を指す――に不満を持つ方々の動向。己の地位の確立。陛下には後宮を維持する代わりの報酬として私へ帝位を譲ることを確約して頂いた。書面で取り交わせないのは残念だが、帝国上層部の前で宣言して頂いたので証人は多数。問題ないだろう。

 

 今回の拉致事件を完全解決した後で、帝位を譲って頂く。

 

 陛下には最後の公務としてアルバトロスや亜人連合国に向かい、頭を下げることをお願いしている。新米皇帝よりも在位の長い陛下の方が適任であり、責任を取り退位したという名目も出来るのだ。檻付きの護送車に閉じ込められた、アインとツヴァイ、ドライを横目で見ながら、馬車に乗り込んで帝都へ戻る。何か叫んでいるが、構っている暇はなく。

 

 『愉快、愉快! さあ、ウーノ女史よ。我に貴殿の腕前を見せてくれ給え!』

 

 馬車に乗り込むといつの間にか髑髏が椅子に鎮座していた。ひ、と声が出そうになるのを堪える。この声の主はヴァエールさまか。初代アガレスに殺されたという、ヴァエール王国最後の王であるお方。五百年前に亡くなったというのに、アガレスに対する恨みで皇宮に居付いていたのだとか。

 時折、侍女や官氏が夜に幽霊を見たと騒いでいるのは、ヴァエールさまが原因だ。命を失う者や気が触れる者は居なかったが、精神が弱い者は夜の仕事を嫌がっていたから悩みだった。原因が分かったし、今回の出来事で恨みは薄まったらしく、私の後見として見守ってくれる。

 

 ナイさまの魔力に触れて、薄らぼんやりとした存在から精霊へと格上げされたと教えて頂いた。ナイさまは本当に規格外のお方だ。帝国の生命線である巨大魔石を二十五個も破壊されたが、それでもお釣りがくるように納めて頂いたのだから。

 

 「ナイさまほどの腕はありませんし、非才の身。上手く行ったかどうかは、将来の皇帝や民が判断しましょう」

 

 失敗する気など全くないが、ナイさまより派手なことを望まれた場合は無理と伝える他ない。

 

 まもなく中央広場に辿り着く。帝国臣民の憩いの場として、数多くの人が行きかう場所。貴族の味方も大事だが、民衆を上手く使えば大きな力となるとナイさまは教えてくださった。中央広場で初代アガレス像を破壊し、民に対して皇宮で起きた出来事を暴露したナイさまは臣民の心を上手く掴んだ。

 

 不安を煽って皇宮へ押しかけるように導いたのだ。どうしてそんな考えに至るのかは分からないが、確かに効果的な方法であることは確か。

 私もナイさまに倣うべきと、馬車から降りる。護衛の供が私を取り囲み警備に就くと、目立つ故に帝国臣民が立ち止まった。これでもアガレス帝国の第一皇女の身だ。黒髪黒目のお方より目立たないかもしれないが、私の顔は皆に知れ渡っている。

 

 「帝国臣民のみなさま! 西大陸から来られたドラゴンは去りました。そして黒髪黒目のお方も国へと戻られたのです!」

 

 民の間ではドラゴンが大挙して帝都の空を飛び交ったのは、第一皇子であるアインが黒髪黒目のお方を別の大陸から無理矢理に連れて来たからと噂が流れている。ナイさまは召喚儀式の禁止条約を西と東大陸の各国と結ぶこと、召喚儀式の解明を望まれている。第六皇子のゼクスがどこからか雇った怪しい魔術師は既に捕らえ、皇宮地下の牢へ収容済みだ。

 

 アルバトロスに使者として向かった外務大臣も処罰の対象だ。ナイさまは孤児出身で幼い頃は食べる事に苦労したので、食べ物を粗雑に扱ったことに大層心を痛めておられた。アルバトロスに無礼を働き、小麦畑を駄目にした事や情報を正しく伝えることを怠った外務大臣は拘束し、監視付きの自宅謹慎を命じてある。

 逃げようとすれば首を斬り落としても構わないと伝えてある。少し怯んだ様子をみせたが、私が全ての責任を負うと近衛兵へ告げると、確りと頷き捕縛へ向かった。今頃は自宅で謹慎中だろう。その内にきちんと処分を下す。

 

 「もうドラゴンが空を飛ぶことはないのでしょうか!?」

 

 「黒髪黒目のお方はまだお怒りなのですか?」

 

 「アイン皇子はどうなった!? アイツの所為だろう!」

 

 帝国臣民から投げられた言葉に対し、丁寧に答えていく。嘘は吐かず事実だけを述べる。嘘を吐くならば真実を一割か二割交ぜ込んで、ホラを九割か八割とナイさまが言っていたけれど。

 本当にどうしてそんなことが考えつくのか不思議である。今回は嘘を吐く必要も騙す必要もないのだ。事実だけを丁寧に伝えて、アガレス帝国の皇子殿下たちは国を傾けさせたと認識すれば成功だろう。

 

 「皆さま! 私はこれから皇帝陛下の代わりに第一皇子以下、この騒ぎに加担した者に罪を償って頂きます! 結果は追って知らせましょう!」

 

 おおとざわつき始める人々。皇宮で第一皇女として動いているだけでは、分からなかっただろう。ナイさまには色々と帝国国内を引っ掻き回されてしまったが、動き方次第で最良の道筋が作られる。

 この機会を逃すほど私や妹たちや帝国上層部のマトモな方たちは無能ではない。今までは第一皇子一派が幅を利かせていたが、これからは正確に道を見据えている者だけが帝国を導くべきだと馬車に乗り込んで皇宮へと戻るのだった。

 

 

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