魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
ヒロインちゃんの魔眼解析の為に魔術師団副団長さまから、魔眼の効果抑止として呼ばれることが何度あったのか数えるかも億劫になってきた今日この頃。
またしても城へと呼び出され、幽閉塔へと足を向ける。途中、ソフィーアさまに会ってそのまま幽閉塔まで一緒に行ったり。
その時、護衛兼監視付きの殿下と会って一悶着があったりと、中々に騒がしい日々を送っている。
そんな中でソフィーアさまのお茶会の後にセレスティアさまのお茶会にも参加した。
「領内で魔物が出まして……」
「ウチもです。――最近、討伐依頼が増えて困っておりますわ」
どうやら主催者が辺境伯家出身ということもあってか、家業が軍事関連のご令嬢方が多く参加されていたようで話の内容もなんだか物騒。
私は私で魔獣討伐の時のことを聞かれたので、素直に答えておいたら無難に終わると思っていたのがいけなかった。
とある一人のご令嬢が私の護衛役で付いてきたジークとリンに目を付けたようで。
「聖女さま。――聖女さまの専属護衛を私に譲ってくれませんか?」
「彼らは教会に所属し、教会の命で私の護衛を担っております。彼らが欲しいというのであれば、教会を経由して頂ければと思います」
ジークとリンが私の護衛に就いているのは彼らの意思が大きいけれど、対外的には教会が私に付けた専属護衛。
実力がなければ聖女の護衛任務になど就くことはできないので、結構厳しい審査があったりする。
教会も魔物討伐の際や他国からの嫌がらせで聖女を死なせたり逃したりしないようにと、努力している為だ。
「なるほどそうですね。聖女さまには愚問でした。――後日、教会を訪ねてみましょう」
と高々に告げるご令嬢さま。私の言葉で高身長イケメン美男美女を侍らせられると胸を高鳴らせていたのか、怒りで青筋を立てているセレスティアさまに気付かなかったようだ。
「面白いことをおっしゃいますわねえ、そこのアナタ。――彼らは聖女さまに忠義を尽くしております。くだらぬ心でその邪魔立てをするというのならば、このセレスティアが全力でお相手致しますが、どうなさいます?」
ご令嬢に圧力をかけたのだった。そうして彼女のオーラに簡単に折れてしまったご令嬢は、お茶会の間肩身の狭い思いをしながら時間が過ぎるのを待っていた。
やっぱりお貴族さまの空気には慣れないというのが、二回のお茶会に参加した感想である。
お茶会ではお茶は飲んでいたけれど、出されたお菓子にはほとんど手を付けなかった。まあ、その分持って帰ることが出来たので、構わないけれど。
そんなに持って帰ってどうするのだと問われたので、自分たちの分を少しと孤児院に持って行って配ると言ったら、もっと持って帰っても良いと二人は言ってくれたので有難かった。良かったことは、お菓子を持って帰れたことくらいだよねえと、教室の廊下側の自席でぼーっと教室を眺める。
謹慎処分明けの殿下と側近くんたちが、登校をしていたのだった。
ヒロインちゃんがこの教室から消えた時は、みんなホッとしている様子だった。一部の男子が残念がっていたようだけれど、日が経つに連れてそれはマシになっていた。
そして謹慎明けの彼らが教室に戻ってきたのだけれど、空気が悪い。まあ第二王子殿下は無言で椅子に座っているだけだし、側近くんたちも元気がない。婚約者であるソフィーアさまとセレスティアさまも、積極的に関わろうとはしていない。
この空気何とかならないのかと心の中で叫びながら一日一日が過ぎていく中、王国の建国を祝う日が近づいており、学院でもパーティーが開かれるとのこと。
学院の一年生は初参加という理由でパーティーの準備はしないと連絡があったので、楽しむだけなので気楽なものである。
「美味しいものあるといいね」
「ナイ、食い過ぎるなよ」
「この前も食べ過ぎてしばらく動けないって言ってたよね」
いつもの三人が集まって、あと数日と迫った建国祭の話をしていたのだった。この日は王都全体でお祝いムードだからいろいろと騒がしい。
孤児だった頃は関係のない話で、ご飯の調達をどうするかが一番大変だったけれど、本当に変わったものだ。三人で他愛のないことを話しながら、学院の大きな門を潜ろうとしていた。
「次に城へ行くのは何時だ?」
ジークが問いかけてくる。ソフィーアさまが主催したお茶会の時に私が城へ一週間に一度補填に行っていて、その回数が他の人より多いことを二人は知っていた。
何故言ってくれなかったのと聞くと、聞かれなかったからと割と塩対応な答えが返ってきた。
「明日だよ。建国祭の時は忙しいから、少し早いけれど補填しておいて欲しいって王家から要請がきたって言ってた」
街中がお祭り騒ぎになるので警備等で人が駆り出される為、城の方が少々手薄になるそうなのでその前に済ませておきたいとのこと。
「わかった」
こくりと頷く二人を見ながら学院が用意してくれている乗合馬車へと乗り込んで、教会の宿舎へと戻るのだった。
◇
――建国日、当日。
朝の早くからこの日はどこもかしこも騒がしい。教会もこの日は貧民街の人たちに向けて炊き出しを行ったり、無料で治癒院を開いたりと上を下への大騒ぎ状態。
学院が終わったら手伝うと教会の面々には伝えて、学院へと登校。この日ばかりは授業もなく、お祝いのパーティーのみなので気楽に参加するだけである。
お貴族さまたちは制服ではなく、ドレスや燕尾服で参加するそうな。平民は学生服でも構わないと通達がきていたので、お貴族さまと平民の融和への道は程遠い。
会場は学院の敷地内にあるホールで開催するそうな。何気に政に携わる重鎮の人たちも参加するそうで、警備がいつもより厳重になっていた。
「制服でいいのか?」
「うん。学院生として参加するんだし制服で大丈夫」
「聖女の服も似合うのに」
何度も言うけれどあれは染色代をケチっているただの白い布で、しかも薄いときたもんだ。いやさ教会が見栄を張って、生地自体は良いものを使っているけれど。
ばんきゅぼんな美人さんなら似合うけれど、こう起伏のない体つきの私にはどうにも似合わない。ただの嫌がらせとしか思えないのですよ。
「流石にあの格好はねえ……」
正装になるから聖女の格好でも問題ないけれど、目立つし恥ずかしいので今回は制服である。
それに私が正装すれば二人は騎士の格好をしなくちゃならなくなるので、楽しめないだろうに。ということでパスだパス。
道行くお貴族さまたちは既にドレスや燕尾服へと着替えている。流行りのドレスとかさっぱり分からないけれど、ぴしりと背を伸ばして歩く姿はカッコいいし奇麗である。
学院内で婚約者が居る場合は一緒に入場するそうで、専用の出入り口が設置されているそうだ。順調な婚約関係を築けている人たちは仲睦まじそうに歩いているし、逆の人たちは出入り口で合流するそう。
明暗が分かれているなあと目を細め、入場開始時刻までホール近場のベンチに座って待っている。
学院に入学してから二ヶ月。いろんなことが起こり過ぎていて時間が過ぎるのがあっという間だった。
今はまだお通夜状態の教室も、時間が経てば明るさを取り戻していくだろう。
「ん――こんなところで何をしているんだ?」
ソフィーアさまがベンチに座っていた私たちの前に立っていたのだった。 藍色のパーティドレスを身に纏い、繊細なレースにビーズや金糸の刺繍。指輪は端正で上等な細工物が嫌味にならない程度に身に着けていた。
流石公爵家のご令嬢。どれも一流のものである。
「いえ、ソフィーアさまこそ、何故こちらに」
座ったままだと不敬になるので、がばりと立つジークとリンに少し遅れてベンチから立ち上がる私。
本来ならばパートナーと一緒に待機部屋で開始時刻を待っているはずだというのに。ソフィーアさまが連れていた侍女や護衛の人たちの空気が、かなり妙なんだけれど何かあったのか。
「恥ずかしながら、殿下にエスコートを断られてな」
「は」
あの人、一度アウト判定下っているのに、速攻でやらかしているんだけれど。
どうしようかとジークの顔を見るけれど、ジークじゃあ彼女と釣り合わない。家格が。
ジークの顔は整っているし身長も高いのでソフィーアさまと並ぶと良い感じなのだけれど、こればっかりはどうしようもない。
せめて騎士服でも着ていればまだ良かったものの制服だから代理にはならないし、高位貴族でソフィーアさまの相手が務まりそうな人ってこの学院内だと居ないのでは。
いや、学院なので夜会のように必ずパートナーと二人でというルールはないけれど……。
「かまわんさ。――もう、何を言っても届かないのだろうな、あの人には」
来賓の人とかいるんだし、二人で居ないと不味いだろうに。仮にもこの国の第二王子殿下なのだから体裁は大事だろう。
十五歳の王族に婚約者の席が空いているなんて、国や本人が無能であると喧伝しているようなものだろうに。
「大丈夫ですか」
「ああ。やることは全てやっているさ」
ようするに自分の評判は落ちることはないだろう、と。随分と落ち着いている様子なので、根回しや大人組への報告は既に済ませているのだろう。
「セレスティアさまは?」
彼女の婚約者はヒロインちゃんハニートラップ騒動に巻き込まれた一人である。ヒロインちゃんと離れて時間が経った所為なのか、元の調子に戻っているそうだ。
セレスティアさま曰く『馬鹿は治っていませんが、まあ元々ですものね』と割と酷いことを言い放っていたけれど。幼い頃からのお相手なので、情がある雰囲気だった。
「抵抗していたのを引っ叩いて連れて行ったな。強制参加ともいえるか」
物理で納得させてパートナーとして一緒に会場へと行くようだ。しかし本当に、どうなってしまうのやら。
公爵家の後ろ盾を失ったらどうなるかなんて、分かり切っていることだろうに。
「さて、そろそろ時間だぞ」
「すみません、先に行きますね」
お貴族さまより先に入場しておかないといけないので、断りを入れてこの場を後にしたのだった。