魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0265:【②】催しが続く予定。

 学院がお休みの日。ジークとリンと私、そしてクロたちと子爵邸の庭で家庭菜園の様子を伺っていると、セレスティアさまがやって来た。いつもとは違った雰囲気を醸し出しており、なにかあったなと直ぐに分かった。

 

 ――辺境伯領の大木が成長している。

 

 なんでそんなことになっているんだろう。辺境伯領の大木は一年生の長期休暇中に約一週間で巨木となって、それから目に見えた成長はしていなかったはずなのに。竜と天馬、魔素が濃い場所を好む生き物が増えているという報告を受けていたが、本当に何故今になって成長をするのだろう。

 

 「ナイ、無意識で魔力を注ぎ込みましたか?」

 

 「いえ。辺境伯領へ赴いていないので物理的に無理ですね」

 

 そう。魔力なんて注ぎ込んでいないのだから、単純に植物としての成長期なのではないか。辺境伯の大木の下に行ったのは数えるほどしかなく、ここ最近は足を全く向けていない。辺境伯の皆さまと竜の方たちが見守っているのだから、私の手は必要ないからとお誘いも断っていたから。

 

 セレスティアさまから更に詳しい話を聞き出すと、大木はここ数日で一回りほど大きくなっているそうだ。

 夜に成長したようで、朝起きた警備の方たちと竜の方たちが首を傾げて考えたが原因が分からない。とにもかくにも土地の主であるヴァイセンベルク辺境伯さまに連絡を入れ、今に至るという訳だ。

 

 「大木が大きくなったことは喜ばしいことでしょう。人間には分からないようですが、竜の方たちの話によれば大木周辺の魔素が濃くなっているそうです」

 

 「え?」

 

 さらに謎が深まった。私の肩の上に乗っているクロも原因を考えてくれているようで、首を傾げながらセレスティアさまの話を聞いている。興味が湧いたのかロゼさんとヴァナルも彼女の話に耳を傾けていた。

 

 ロゼさんとヴァナルは辺境伯の大木の件を知らず、なんのことだか分からないはずなのに。疑問符を浮かべているようなので、簡単に説明するとなるほどと頷いてくれた。

 私の魔力は面白いって喜んでいるけれど。好きでやらかしている訳じゃない……あ、島は自分の意志で魔力をつぎ込んだのだから文句は言えないか。島になにかしらの影響はあると覚悟していたから事実を受け止められたけど、まさか辺境伯領で異常が起こるとは。

 

 『ナイ。島で魔力を注いだでしょ』

 

 「うん。私の魔力を全部注ぎ込んだけど……」

 

 あれ、まさかねえ。私の肩の上で考えていたクロがなにかひらめいたらしい。セレスティアさまの方へ飛んでいき、私を見ながらちょっとだけ首を傾げている。

 やり過ぎたかなあと思っているけれど、島に多く集まっているというお魚さんや暑い場所特有の果物は興味はある。島の面積が大きくなっているようだから、お世話になっている竜の皆さまや亜人連合国の恩返しもあるのだから、むしろ更に注ぎ込むべきだろうか。

 

 『地面の中を伝って、ナイの魔力に関係するところと繋がったんじゃないかなあ?』

 

 専門家じゃないから予想は外れているかもしれないよと、クロが言葉をつけ足した。島に注ぎ込んだ魔力はとんでもない量で、各地に点在している私の魔力と関係がある所に惹かれて繋がったとかそんな感じらしい。

 

 「話が違う場所にまで広がるなんて考えていなかったから……大丈夫かな」

 

 特に辺境伯さまの胃が心配だ。ディアンさまと取引の話をしている時とか、顔が引きつっていたし。

 

 「良いことではありませんか? 誰かに迷惑をかけている訳ではありませんし、喜んでいる方々がいらっしゃいます。領も大規模遠征から大きな問題は起こっていません」

 

 セレスティアさまは鋼の心臓を持っている上に、クロやヴァナルといった魔獣の類が大好きなので除外。竜の方が大木の下に訪れて子育てをしているが故に、知名度が上がり見学希望者が増えているのだとか。

 監視塔から眺めるようにして、お金を取っているそうだ。そのお金は大木周辺の環境整備費に充てられるのだとか。他にも亜人連合国と取引をして、領軍に貸与している武具の質が上がったそうな。装備が良くなって、軍の人たちに気合が一層入り訓練や魔物討伐の際には気迫が凄いのだとか。

 

 「――ナイ、ここからが本題です。辺境伯の大木へ参りませんか?」

 

 セレスティアさまが口にした意外な言葉。いつもならば報告だけに留めているというのに、なにかあるのだろうか。

 気になるけれど、様子を見てみたいから丁度いいのかも。彼女の言葉に二つ返事をして、今から辺境伯領へと向かう手筈となった。ソフィーアさまも一緒に来るそうだから、セレスティアさまから先に話を聞いていたのだろう。お隣さんに、あとでアドバイスを下さいと連絡を入れおくことを忘れない。

 

 辺境伯領への移動は、セレスティアさまが用意した転移魔術を使える魔術師にお願いするそうだ。帰りもその方にお願いするのだが、ロゼさんが『ロゼが今度からマスターたちを転移させる!』と主張したので、次からその役目はロゼさんとなった。移動手段が馬車から転移に置き換わっている。私が移動となると沢山の護衛の方たちにお世話になる。

 彼らに負担を掛けないのは良いことだけれど、馬車移動も嫌いじゃないからちょっと寂しい。でも大袈裟な護衛が付くのは事実なので、やはり微妙……。

 

 「増えてる?」

 

 そうこうしている内に、お城で待っている魔術師さんの下へと行き大木の手前に転移する。監視小屋の方たちに挨拶をして、大木の下へと歩いていく。一年生の二学期に訪れた時よりも竜の方たちの数が増えているような。その時は数組の番だったはずなのに、子供の竜が増えていた。先に生まれた子たちは一メートルほどのサイズに成長して、後から生まれた子たちの面倒をみているし。

 背中に乗せて遊んだり、脚に絡みついてくる子竜を相手にしてた。いつもセレスティアさまが嬉しそうに辺境伯領のこの場所の報告をしてくれるけれど、卵が多く生まれたと聞いていただけで、孵ったと報告は受けていない。

 

 『増えてるね。いいことだよ』

 

 クロが私の顔にすりすりとして、子竜たちの下へと飛んでいった。何気に面倒見がいいクロだけれど、私の肩に乗れるサイズなので、子竜の子たちの間で一番小さいけれど。

 魔力量は半端ないので竜の方たちからは一目置かれているし、ご意見番さまの代替わりなのは周知の事実なので、ちゃんと敬われているのは流石というか。チビとか餓鬼とか言われないのは羨ましい限りだ。

 

 「ふふふ……。凄く、とてもよいことですわ! 大木が大きくなったと同時に卵も孵りましたから!」

 

 クロに遅れてセレスティアさまが呟いた。お可愛らしいと漏らしながら、セレスティアさまが写真の魔道具を持ち出して、何度も何度も撮影している。

 竜の方たちは慣れているようで、普通に子竜たちの面倒を見ていた。カオスな光景だけれど、卵の話は初耳だ。聞いてないよとソフィーアさまを見ると『すまん』と申し訳なさそうな顔をして、今回辺境伯領まで私を呼んだ理由を告げる説明役がくるからもう少し待って欲しいとのこと。

 

 誰が来るのだろうと待っていたら、監視小屋が騒がしくなるのだった。

 

 ◇

 

 子竜たちに囲まれながら戯れていると、監視小屋が騒がしくなって顔を向けると、辺境伯さまの姿が見えた。領主さま直々にいらっしゃったのだから、監視小屋が騒がしくなるのは仕方ない。大人組の竜の方々は辺境伯さまがいらっしゃったことで、挨拶をするらしく私の後ろに控えている。

 

 「待たせて申し訳ない、ミナーヴァ子爵」

 

 「お久しぶりです、閣下」

 

 少し失礼だけれど、腕の中に子竜を抱えたまま頭を下げた。

 

 「大木が大きくなり、卵がここ数日で一気に孵りましてな。竜の皆さまの話だと、何故か貴女の魔力が流れてきたと申されまして。――原因はあの島ですかな?」

 

 辺境伯さまは、私が島で魔力補填をしたことは知っている。目を細めながら私を見ているけれど、口元が引きつっているような気がしなくもない。

 

 「クロが立ててくれた仮説だと、そうなります。注ぎ込んだ魔力が地中を伝って、私の魔力と縁がある場所を探し当てたのではないかと」

 

 あれ、それだと島が大きくならない可能性があるのかな。繋がったということは、魔力を使うということだし。

 むむむ。島が大きくなってくれないのはちょっと困るかなあ。竜の皆さまとダークエルフの方たちが移住計画を立てているのだから。ダリア姉さんとアイリス姉さんに話を通して、長期休暇の時に様子を伺いに行ってみよう。

 

 「なるほど。時間の差は距離の差といったところでしょうな」

 

 うわ。なんの疑いもなく辺境伯さまが信じちゃったんだけれど良いのかな。これアルバトロスにも報告しなきゃなあ。辺境伯さまが国に報告を怠るなんて思えないが、見ちゃったから報告しなくちゃ。辺境伯さまとこれからの事について話し合う。竜の方たちが増え、辺境伯領では抱えきれないらしい。島に移住がベストなのかなあ。まあ竜の皆さまの意思もあるから、強引に話を進める訳にはならないけれど。

 むしろ、好きな場所で生きるのが彼らの本来の姿。大空を自由に飛び、好きな場所で好きなように生きるのが普通。ご意見番さまの意志を継いでいる竜の方たちが多い所為か、人間を慮ってくれて我慢しているものなあ。

 

 『確かに我々本来の姿ですが、魔素が濃い場所は貴重です。それだけでも有難いことですよ』

 

 心の内を読んだのか、一匹の成竜さまが大きな顔を私に近づけて教えてくれた。ぺちぺちと顔を撫でると、大きな目を細めながら私を見ている。

 

 「私の個人的なものだけれど、空を自由に飛んでるところも見たいなあ」

 

 住んでいる人たちが驚いて騒ぎになるからと、なるべく控えているらしい。最近、理由があって大陸の空を竜の大群が空を飛んだけれど、ノーカウントで。

 

 『亜人連合国以外では、竜は珍しいですから。聖女さまのお陰で増えたので、我々に敵意がないと知って頂ければその内に受け入れられましょう』

 

 その証拠に、警備に就いている人たちと仲良くなったと教えてくれた。偶にご家族を連れて見学に来ているのだとか。

 

 「ミナーヴァ子爵。話が逸れますが、こちらを」

 

 辺境伯さまがいつの間にか用意していたようで、ある場所を指差した。そこには金銀財宝と竜の鱗や牙が……なんのこっちゃと首を傾げると辺境伯さまが苦笑いを浮かべた。大規模討伐遠征による個人的なお礼なのだとか。辺境伯さまの後ろ盾を頂いているし、教会にもお金がちゃんと入っているから必要ないのだけれど。

 

 「これでも足りないくらいですが……一先ず形としてお返ししておきます」

 

 「ヴァイセンベルク辺境伯領を救って頂き感謝いたします。更に明るい未来も約束してくださりました。ナイ、受け取ってくださいませ」

 

 辺境伯さまとセレスティアさまに頭を下げられて――もちろん貴族としての立場があるので最低限――こう言われてしまうと断れない。相手は辺境伯さまで、私は子爵だし。金銀財宝以外の竜の牙や鱗は、辺境伯領で生活している竜の皆さまからだそうだ。ぺろんと時々剥がれるので回収して、質の良いモノを選んだのだとか。

 

 「ありがとうございます。ヴァイセンベルク辺境伯領が益々繁栄致しますよう願っております」

 

 聖女としての礼を執りながらそう口にした。辺境伯といえば国境警備を担う重要な場所だから、ヴァイセンベルク辺境伯領が落ちると困る。若干の下心を混ぜながら顔を上げると、クロが私の肩へと戻って辺境伯さまとセレスティアさまを見た。

 

 『ボクもお手伝いできることがあれば、教えてね』

 

 クロはご意見番さまの時に迷惑を掛けたと考えているようだ。セレスティアさまがまん丸に目を見開いて、デレッとした顔を浮かべる。誰も咎めないけれど、良いのかな。まあ私も美味しいものを食べている時は顔が崩れているから、人のことは言えない。しかしまあ、頂いたコレをどうしたものか。子爵邸の金庫に放り込むのは決定として、眠らせるのはもったいないしなあ。

 あ、リームの戴冠式とアルバトロスの王太子就任式があるから、プレゼントを用意しなくちゃだった。亜人連合国の職人さんたちに頼んで、両刃の剣か短剣あたりでも拵えてもらおう。王族の方へ渡すものだから、装飾も必要なので丁度いい。

 

 「セレスティアさま。少しお願いがあるのですが」

 

 ふと思い出したことがある。以前、辺境伯領主邸でみた黒い薔薇。その時は言えなかったけれど、今ならお願いしても構わないだろう。とはいえ領主である辺境伯さまに直接言えないチキンっぷりであるが。あ、辺境伯さまが微妙な顔になっている。申し訳ないと思いつつ、セレスティアさまの方が話しかけやすいんだもの仕方ない。

 

 「厚かましいとは思いますが、以前邸でお見かけした黒い薔薇を株分けして欲しいのですが……」

 

 育てるのは庭師の小父さまだけれど。駄目なら家庭菜園の片隅にでも植えよう。

 

 「そのようなことで宜しいのですか?」

 

 きょとんとした顔でセレスティアさまが私を見た。そういえば以前に私が気にしていたと、彼女は思い出してくれたらしい。

 

 「はい」

 

 あと、もう少し注文があるのでお願いをすると快く引き受けてくれた。話を終えて辺境伯領から子爵邸へ戻り、お隣さんに報告する為と鍛冶依頼を出す為に亜人連合国領事館に赴く。ディアンさまにダリア姉さんとアイリス姉さんに話をすると、驚きと呆れ顔を浮かべつつも受け入れてくれて。

 鍛冶依頼も定価で受けてくれた。式も近いから特急料金を上乗せすると伝えれば、それは受け取れないとのこと。口をへの字にしていると、お姉さんズから揶揄われ。ありがとうございますと頭を下げて子爵邸へと戻るのだった。

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