魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0266:【③】催しが続く予定。

 セレスティアさまにお願いして、辺境伯領主邸の庭の片隅で咲いていた黒薔薇を株分けして頂き、子爵邸で雇っている庭師の小父さまに預けたのが数日前。辺境伯領の大木は成長が止まったようで変化がないが、周囲の木々や草花に変化があったそうだ。枝と若芽が多く生え出て、青々と育っているのだとか。

 草花も元気に咲き誇って、虫や鳥が多く寄ってきているって。肥料の量を誤って栄養過多で育ち過ぎという訳ではなく魔力という要素で育っているから、急激な環境変化と捉えるのは少し違うのだとか。変な感じがするけれど、私の魔力でオレンジさんとかとうもろこしさんが美味しく育ってくれているから、否定すると食べる資格がなくなる。

 

 辺境伯領から戻って直ぐ、お隣さんである亜人連合国領事館に足を運んで、リーム王国の戴冠式とアルバトロス第一王子殿下の王太子就任式で贈る予定の剣を拵えて貰うようにお願いしている。ジークとリンに造って貰った両刃の剣は実戦向けのシンプルな造り――といっても職人さんたちが気合を入れてくれたので、細かい部分の装飾は凝っている――とは違って、見栄え優先にして欲しいと注文した。

 実力のある方が造る物って、見惚れるものがある。日本刀しかりで、信念があるというかなんというか。亜人連合国のドワーフ職人さんたちは一本気だから、仕上がった物を見ているだけでも楽しい。

 

 「ルカ、元気でね」

 

 朝ごはんを食べ終えて子爵邸の庭に出て散歩をしていると、エルとジョセが私を見つけてルカが旅立つと教えてくれたのだった。急な出来事に慌てて邸で働いている方たちを呼び、子爵邸の庭でちょっとしたお別れ会となっている。ルカは喋れないけれど人懐っこい性格をしていて、邸の方たちと交流を深めていた。

 私付きの侍女さん――騎士爵家のお嬢さんだったはず――は目が潤んでいるし、庭師の小父さまや厩の世話人の方もルカの旅立ちに思うことがあるらしい。

 クレイグとサフィールもなんだかんだで付き合いがあったし、託児所の子供たちも見送りにきていた。アリアさまとロザリンデさまとも交流を持っていたようで、庭に出てみんなと一緒にルカの門出を祝っている。

 

 で、一番の問題はセレスティアさまだ。人目を憚らず涙を流しているんだもの。気持ちは理解できるけれど、貴族のご令嬢としての矜持はどこにいったのだろう。彼女の隣でソフィーアさまが呆れた顔を浮かべているけれど、咎める気はないみたい。セレスティアさまが泣いた所は緘口令を敷いておくか。

 無理に感情を隠すよりも、ああやって人前で泣けることは素直に好ましい。でも高位貴族のご令嬢なので、泣いたと噂が立てばセレスティアさまの立場が悪くなる。子爵邸で無用な噂を流す方は居ないと思うが念の為だ。

 

 「いつでも遊びにきてね」

 

 ルカは言葉をまだ喋ることはできないけれど、私たちが喋る言葉の意味は理解している。黒光りしている馬体を撫でた。人間を撫でるようにではなく、思いっきり手を擦り付けるという感じだけど。普通に撫でるよりも、指を立てて力を入れて掻く方気持ちいいとか。ルカは鼻を鳴らして、私の肩に顔をおく。生まれた時よりも、随分と大きくなったなあ。天馬だというのに黒化した個体な上に、六枚羽という特殊性。

 

 物好きな好事家に狩られてしまわないか心配なので、西大陸の各国と冒険者ギルドには手出し無用と連絡を入れている。亜人連合国にもお願いして、同様の書状を各国と冒険者ギルドに届けて頂いた。万が一にも手を出す馬鹿がいた時に、いちゃもんを付ける為の仕込みでもある。

 天馬さまたちのちょっと、いや、大分抜けている種族特性を心配してのこと。個体数を減らした理由がアレだから心配にもなる。

 

 東大陸のアガレスは私が個人的にウーノさまにお願いして、共和国にはアルバトロスがお願いしてくれるって。共和国ならば黒髪黒目のお願いだといえば、飲んでくれるだろうからと陛下が教えてくれた。ちょっと不本意だけれど、ルカが自由に空を飛べるならと私も共和国へ向けて一筆認めている。

 

 『今度はきっと奥さんを沢山連れて、皆さんの下へ帰ってきますよ』

 

 『ええ。ルカは強いですから。沢山の雌に囲まれることでしょう』

 

 「番の概念は……」

 

 どこへいったの、と私は嬉しそうに息子自慢をしているエルとジョセに聞いてみる。番って確か一生添い遂げるんじゃなかったけ。エルとジョセ以外の天馬さまを辺境伯領で見たけれど、彼らも一頭に一頭で番っていた。一夫多妻が可能なのか疑問になったのだ。

 

 『ルカを気に入ってくださった方たちを、ルカが平等に愛せるならば問題ありませんね』

 

 『強い雄に惹かれるのは雌の性ですから』

 

 そうなのか。強い個体に拘りがあるようだから、人間には理解し難い考えなのかな。人間だって五体満足で健康な子が産まれるようにと願うのだから、親の気持ちは種族が違っても変わらないのか。

 私もそんなことを願う時がくるかなあと、ルカの首に両腕を回す。ルカは大きいから私の腕を掴むことはできないけれど、気持ちが届けばそれでいい。

 

 「じゃあ、また」

 

 私がそういうと、ルカは鼻を長く鳴らして一歩二歩と後ろへ器用に下がる。周りの人たちも旅立ちの瞬間を察して、黙ったまま。六枚羽を大きく広げて、アルバトロス王国王都に綺麗に広がる青空へと飛んで行くルカを見上げる。ルカは上空で何度か旋回して、陽が昇る方角へと飛んでいった。

 

 「ちょっと、寂しくなるね」

 

 賑やかだった子爵邸の庭が少し広く感じる。後ろに振り向くとジークとリンの顔を一番初めに捉えた。

 

 「旅立ちなんだ。ナイが悲しんでどうする」

 

 「また戻ってくるって、エルとジョセがいってる」

 

 そうだけれど、お腹空かせていないかなとか、逆に食べ過ぎてお腹壊していないかとか心配は尽きない訳で。

 でも、まあ。エルとジョセが告げたように、天馬の雌を沢山連れて帰ってくる日を待ち望んでもいるから。ずびずび泣いている人もいるし、私が泣くと締まらないよなあと苦笑いを浮かべながら解散を告げる。

 

 空を滑空している鳶みたいな鳥が大きく鳴く声が聞こえてきた。とにもかくにもルカには幸せな日々が続きますようにと願わずにはいられなかった。

 

 

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