魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0284:呼び出し。

 学院が終わった放課後、自室で晩御飯までの時間を潰していた。お醤油さんとお味噌さんの打ち合わせを明日に控えていた、そんな日だ。

 

 マヨネーズっぽいものが料理長さんたちの手によって完成したし、お芋さんとうもろこしさんに続いて、さつまいもさんも手に入った。孤児時代と比較すると天と地ほどの差があることに嬉しくなりつつも、やはり日本的なものは恋しい訳で。メンガーさまとフィーネさまによるお醤油さんとお味噌さんのレポートが明日提出されるのがとても楽しみ。

 まあ、まだ材料が手に入るかとか設備はどうするのか、一番大変らしい麹菌の入手と保管方法も考えなきゃならないので、スタートラインにすら立っていない状況だけれど。口にすることができると希望があるだけマシだし、仮に失敗しても挑戦して入手することができなかったのだから、手をこまねいて口にできないと嘆いているより随分とマシだから。

 

 『あ』

 

 『!』

 

 『?』

 

 クロが丸くなって寝ていた籠から顔を上げ、私と一緒にベッドに寝転がっていたロゼさんがピクンと跳ねて、床で伏せていたヴァナルが顔を上げてキョロキョロと部屋を見渡す。

 どうしたのだろうかと首を傾げていると、亜人連合国と連絡を繋ぐ魔法具から呼び鈴が鳴る。クロたちは魔術具から魔力を感じ取ったのだろう。魔力に敏感だから、私よりも察知が早いから。発信者はダリア姉さんとアイリス姉さんかなあと、ベッドから立ち上がって魔法具に手をかざし魔力を通す。

 

 『あ、ナイちゃん?』

 

 「はい、ナイです。――この声は、ダリア姉さんですか?」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんの声は魔法具越しだとよく似ていることがある。喋り方で聞き分けできるけれど、短い言葉だと間違えることがあった。偶に同族からも間違われることがあって、心外だとお二人はぷんすかしていた。

 以前、私が間違えて二人とも不貞腐れたことがあったから、気を付けなければならない案件である。今はお二人のどちらか直ぐに分かったので、名前を呼んだのだ。

 

 『正解! 嬉しいわ、間違えられないのは』

 

 『あ~ナイちゃん、私も居るからね~』

 

 ダリア姉さんのすぐ横にアイリス姉さんも控えているようだ。間延びしている声が聞こえてきたのだから。クロが籠から飛び立って、私の肩にゆっくりと着地する。空いている方の手をクロに伸ばすと、目を細めてすりすりと顔を手に擦り付ける。

 

 「アイリス姉さん、こんにちは」

 

 『こんにちは~』

 

 えへへとアイリス姉さんはダリア姉さんの横で笑っているみたい。一体どうしたのかなと、連絡を取った理由を聞こうとしたその時。

 

 『ナイちゃん、これから時間はあるかしら?』

 

 「夕飯までならば、時間は取れますが……」

 

 なんだかテンション高めなダリア姉さん。料理長さんには今日の夕飯になにを出してくれるのか聞いてある。

 メインのお料理が私の好物だったので、食べ損なう訳にはいかないと時間を限定させて頂いた。ダリア姉さんとアイリス姉さんには少し申し訳ないけれど、好物が出るのだから晩御飯の時間までには子爵邸の食堂に戻らないと。

 

 『ん、大丈夫よ。直ぐに戻れるようにするから』

 

 『こっちに来てもらっても良いかな~? もちろん双子も一緒で良いからね~』

 

 こっちというのは、ミナーヴァ子爵邸のお隣さんである亜人連合国領事館のことだ。子爵邸とは小門で繋がっている為に、わざわざ向こうの家の正門を潜らなくて済む。本来、お貴族さまの家同士ではあり得ないことだけれど、陛下方アルバトロス上層部からの許可があるので問題ない。

 そういえば亜人連合国領事館に訪れるお客さんっているのかな。私はしばしばお隣さんの転移魔術陣を経由して亜人連合国に赴いている。数日前に立食会と銘打った商談会で、エルフの方々が製作した反物を売るなら、直接買い付けする商人さんがいてもおかしくはない。その辺りの相談だろうか。まあ、行けば分かるから、取り敢えず。

 

 「わかりました。今から直ぐに向かいますね」

 

 『慌てなくていいから、ゆっくりいらっしゃいな。隣なんだから、時間は掛からないでしょうし』

 

 『美味しい薬茶を淹れるからね~』

 

 エルフの方って長寿な種族の所為なのか、時間に緩い所がある。とはいえ、お待たせするのは申し訳ないと思ってしまうのが日本人。クロとロゼさんとヴァナルに声を掛け部屋を出て、家宰さまに事の成り行きを話してから、自室で休んでいるジークとリンに声を掛ける。

 

 「ジーク、リン。休んでいたのに、ごめん」

 

 ジークとリンの部屋の前で、今さっきの出来事を話して護衛をお願いする。

 

 「外に出る訳じゃないから、気にするな」

 

 「ん……」

 

 ジークは急な仕事でも笑って受けてくれ、リンも受けてくれるのだけど、なんでか私の背後に回ってお腹に手を伸ばして抱き着いてきた。

 どうしたのかと疑問になるが、割と頻繁に行われている行為だからじっとして受け入れておく。仕事を終えて休んでいたクレイグとサフィールが部屋から顔を出したので、お隣さんに行ってくると告げると苦笑いを浮かべる。

 

 「おう、気をつけてな」

 

 「いってらっしゃい。夕飯までには戻るの?」

 

 クレイグとサフィールの言葉を聞きながら、後ろから抱き着いたままのリンの腕をてしてし叩くとゆっくりと離れてくれた。

 

 「うん、遅くはならないって。――それじゃあ行ってきます」

 

 二人に手を振ると、軽く片手を上げたクレイグと、小さく手を振るサフィール。お姉さんズの用事はなんだろうなあと考えながら、子爵邸の裏へと出て亜人連合国領事館を繋ぐ小門を目指す。勝手知った亜人連合国の領事館。警備の方も出迎えの方もいないのは分かっているので、小門の蝶番の音が響くのを聞きつつお隣さんの庭を闊歩して、屋敷の玄関に辿り着く。

 

 「いらっしゃい、ナイちゃん。ごめんなさいね、急な話で」

 

 「ナイちゃん、いらっしゃい~。ごめんね、急に呼びつけて」

 

 困ったような、嬉しそうな、なんともいえない顔を浮かべているお二人に左右を挟まれる。

 

 「いえ。夕食までの時間を持て余していましたから」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんの顔を見上げると、二人は私の腰と背中に手を伸ばした。

 

 「さ、中に入りましょう」

 

 「行こう~。ナイちゃんの好みを覚えたんだ。口に合っていると良いな~」

 

 くい、と背を押されて玄関ホールを抜けて、客室に案内される。妖精さんが気ままに宙を飛んでおり、偶に私の頭の上に降りてみたり、ジークとリンの顔の前で止まって遊んでいる。

 やり過ぎるとお姉さんズに怒られるので、派手なやらかしはないけれど楽しんでいるみたいだ。客室へと辿り着くと席に促され、ちょっと待っていてねと言い残してお二人は部屋から出て行く。暫く待っているとダリア姉さんとアイリス姉さんが薬茶とお茶請けを用意してこちらに戻ってきた。

 

 「さて、今日はナイちゃんにお姉さんたちからお願いがあって呼んだのだけれど……」

 

 「エルフの反物を売るって伝えたでしょう~?」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんがお茶を淹れると、席に座ってゆっくりと口を開いた。どうやら先日に行われた商談会の続きのようだ。

 一口飲むと、私が飲みやすい温度になっているし、甘味が強くて飲みやすいお茶。もう一口頂こうと、ティーカップを口に近づけようとすると、話が始まってしまいソーサーに戻す羽目に。

 

 エルフの反物を卸すことになったが、窓口が必要で王都のどこかに店を構えたいこと。竜の皆さんで荷運び屋さんを始めたいこと。ドワーフ職人さんたちが作る品物も質を問わず溜まっているので、放出したいそうだ。

 武器類がほとんどなのだが、エルフの方々がデザインを考えて、ドワーフ職人さんが造った装飾品も流通させたいとのこと。あまり気合を入れすぎると、人間の職人たちが困るだろうから、亜人連合国で出回っている普通の質のものを選ぶのだとか。私が買い付けた品ってどのくらいの価値があるのだろうかと疑問に――。

 

 「ナイちゃんが買ったものは、最高級品ね」

 

 「魔力を込めたものは、超一級品だね~」

 

 最高級品も超一級品も一緒のような気がするが、どうやら亜人連合国でも質が高いものだというのは理解した。あれ、でも試作品として私が魔力を込めるヤツはどのくらいに……。

 

 「私は初めてお目にかかるかしら」

 

 「ね~。きっと今まで見たことない物ができるよ~」

 

 そ、そうなのか。まあドワーフさんたちが趣味で作る試作品だから世に出回ることはあるまい。出回るとしても亜人連合国の中だけだ。私は日頃のお礼と興味本位でお手伝いするだけで、お金を取る気とかないのだし。ドワーフさんたちに言われるがまま、魔力を注ぎ込むだけの簡単なお仕事である。

 

 「話が逸れたわね。――アルバトロスの王都に窓口としてお店を構えることのできる伝手と人員をお願いしたくて」

 

 「面倒なことを頼んでいるけれど、私たち亜人がお店に立つと問題もあるからね~」

 

 なるほど。ダリア姉さんとアイリス姉さんは亜人連合国所属の方だ。私は気にしないけれど、亜人が苦手な方だっているだろうから。お金儲けをする場合は障害となる可能性もあるのか。

 王都にお店を構えたいなら高級商店が並ぶ場所と平民の方たちが利用する区域に分かれている。目的によるけれど、取り敢えずはいろんな方に打診してみるのが良いかな。不動産屋さんを紹介して貰えば、私が探せば良いだけだし。お店で働く人となると、亜人の方々に偏見を持たない人が最適になって少し難しいけれど。

 

 無茶をいってリーム王家や王太子殿下の贈り物を用意して貰ったお礼もしていない。今までの伝手を頼って頭を下げる番だろう。王都に店を構えるにあたっての懸念事項をお二人に告げてから、ダリア姉さんとアイリス姉さんの要望を呑むのだった。

 

 ◇

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんのお願いを聞いて、子爵邸へと戻りご飯を済ませると、私は直ぐに筆を執った。私が頼れる人となれば、ハイゼンベルグ公爵さまとヴァイセンベルク辺境伯さまにラウ男爵。

 アルバトロス王家も頼れるけれど、陛下方には亜人連合国の方々がお店を開く許可を貰わないと。王家やアルバトロス上層部が亜人連合国の方たちが王都に店を構えたことを知らなかったなんて問題だから、そちらの打診を先に終えるべきだと王家へのお伺いを真っ先に書く。

 

 明日の朝一番にお城に届けて貰って、学院でソフィーアさまとセレスティアさまにも話をして、夕方に公爵さまと辺境伯さまに打診してみよう。二家が駄目ならロザリンデさまも頼ってみようか。

 

 良い不動産さんを用意して頂いて、ダリア姉さんとアイリス姉さんと一緒に内見できれば良いのだけれど。王都の不動産事情がイマイチ分かっていないので、借りるのか買い上げるのか。まあ、お二人の考えがあるだろうから、その辺りは踏み込んじゃ駄目な所かな。アルバトロスの住人でないと借りれない、買えないというなら私の名義でやればいいんだし。

 

 噂が広がれば、国外から買い付けにくる商人さんもいるだろうし、ついでに王都の他のお店でもなにか買うかもしれないから、悪い話じゃない……はず。

 素人考えだし、アルバトロス王家や上層部に拒否されたら、ダリア姉さんとアイリス姉さんの計画は頓挫することになる。商談会に出席することが許されていたから、王都にお店を構えることを駄目だとは言わないだろうけれど、心配は心配。

 

 「ダリア姉さんとアイリス姉さんの願いが叶うと良いけれど」

 

 『うん。王都の人たち買ってくれるかなあ?』

 

 「珍しさと品質は保証されてるし、あんなに人だかりができていたから、大丈夫だよ」

 

 売れない、ということはないだろう。ただエルフの反物が出回る……出回り過ぎると価値が下がることと、同業の人が困る場合があるから、流通制限を掛けて欲しいとお願いしている。この辺りは気にしておかなければならない事だから、気をつけるに越したことはない。路頭に迷う人が出たとなれば、心が痛むし。

 

 「ん。書けた」

 

 綺麗な文字とは言い難いけれど。手紙の封をする為に蝋を垂らして、子爵家の紋章が彫られた判子を押すと封蝋が完成した。固まるまで触らないようにと気をつけながら、丁寧に机の上へ載せてベッドの中に潜り込む。

 

 「おやすみ、クロ。ロゼさんとヴァナルもおやすみ」

 

 『おやすみ、ナイ』

 

 『マスター、おやすみ』

 

 『オヤスミ』

 

 疲れていたのか、ベッドの中に入ると睡魔が私を襲い、直ぐに意識が落ちるのだった。

 

 翌朝。ふあーと欠伸をしながらベッドから抜け出る。侍女さんたちに手伝ってもらいながら着替えをして、昨夜書いた手紙をお城に届けて貰うようにお願いした。ご飯を済ませて学院に赴く。

 

 今日はメンガーさまとフィーネさまによって、お醤油さんとお味噌さんの作り方や材料を纏めたレポートが提出される日だった。学院が終わった放課後のサロンの一室を借りて、これからどう動くかの打ち合わせだ。

 ミナーヴァ子爵家のお金が動くことになるから、ソフィーアさまとセレスティアさまが側に控えてくれるし、護衛としてジークとリンも一緒だ。肩の上に乗っているクロも、影の中にいるロゼさんとヴァナルも共に居る。

 

 フィーネさまは聖王国から派遣されている護衛騎士も一緒。メンガーさまは単身でサロンに来る予定となっている。同じクラスだしサロンまで一緒に赴ければいいのだけれど、フィーネさまの連れであるイクスプロードさまの機嫌が急降下するから。

 フィーネさまは彼女を宥めすかしてから、サロンに足を向けている。イクスプロードさまも一緒に来られると良いのだけれど、『前世』『乙女ゲーム』なんて言葉が飛び交うから。フィーネさまは聖王国上層部には、自身が生まれ変わって別世界で生きていた記憶を持っていると伝えているが、イクスプロードさまには教えていないのだとか。

 

 伝えても良いけれど、機会を逃して今日まで日が過ぎたのだとか。メンガーさまも私たち以外には誰にも話していないそうで、ご家族にも打ち明けていないそうだ。伝えたら当主にされそうだし、面倒なことは回避したいんだって。確かに貴族家の当主を務めるのは大変だろう。

 私のように新設された家なら自由がまだ利くけれど、歴史ある伯爵家だから寄り親寄り子の関係が凄く複雑で、どこかの家を贔屓すると顰蹙を買ったりする。頼られることもあるし、問題を投げつけられることもある上に寄り子の面倒も見なくちゃならない。メンガーさまが負のオーラを背負いながら語ってくれた、メンガー伯爵家の実態であった。

 

 「遅くなりました。ミナーヴァ子爵」

 

 「お待たせしました、ナイさま」

 

 先にサロンにやってきていた私に、遅れてサロンに辿り着いたメンガーさまとフィーネさまが少し急いだ様子で中へと足を踏み入れた。

 

 「いえ、私も今きたところですから。今日はよろしくお願いします」

 

 各々が席に着くと、学院が用意している侍女さんがお茶を出してくれた。お茶請け用にお菓子も用意して貰っている。

 

 「俺が纏めたものです」

 

 「私が纏めたものがこちらになります」

 

 メンガーさまとフィーネさまがノートを机の上に出した。割と分厚いものとなっているから、丁寧に纏めてくれたようだ。

 

 「目を通させて頂いても?」

 

 どうぞ、とお二人から告げられ、ペラペラと頁を捲る。やはり確りとした知識があるようで、かなり丁寧に纏められてある。

 レポートとか論文とか書いていたのだろうか。分かりやすいし、字が綺麗で羨ましい限り。メンガーさまは男性らしく、少しばかり乱雑だけれど。お醤油さんに必要なものは、大豆、麦、塩に麹菌。お味噌は素材が数種類あるようで、麦味噌、豆味噌と違いがあるみたい。味噌って商品名が表示されていて、値段が安ければ何でもいいやとスーパーで買っていたツケがここできたようだ。

 後からでもいいから大学通っておけばよかったか。学費を捻出できなかったし、奨学金も返済が必要なものになると大変だったから、早々に諦めて就職先を探したから。お陰で、ブラック企業に当たって体を壊し、優良企業に途中入社できたけど。

 

 「一番大変なのは麹菌みたいですね」

 

 「ええ。菌を見つけることと、保管することが最大の障害になるかと」

 

 「魔術具で温度管理はどうにかなりますが、メンガーさまが仰った通り麹菌の発見が難しいでしょうね」

 

 麹菌は高温多湿の場所に置いていたものに菌が育ったそうだから、ディアンさまにお願いして島に少しの間置かせてもらおうかな。

 菌が居付かなければ諦めるしかない。降ってわいた菌も麹菌か分からないしなあ。うーん、難しい。でもせっかくこうして纏めて貰ったのだ。挑戦しない手はない。最悪、妖精さんたちに頼れば麹菌を見つけてくれそうだし。

 

 「えっと。麹菌の発見の為に、例の島で様子を見てみようかと」

 

 取り敢えず、目の前でやるべきことを進めるべきだ。あと二兎追う者は一兎も得ずなんて言葉があるから、まずはお醤油さんから取り組もう。

 

 「確かに島は高温多湿でしたね」

 

 「あとは菌が着床するまでが勝負でしょうか」

 

 ふむ、と考えているメンガーさまとフィーネさま。お互いのノートに書かれていたことの相違点の洗い出しや、疑問を出し合って話を纏めていく。私は知識が乏しいので、お金を出すだけのスポンサーだ。私の道楽に巻き込んで申し訳ないけれど、出来上がったらお二人にもお裾分けしないと。

 やっぱり日本人ならばお醤油さんやお味噌さんは懐かしいだろうし。もし嫌いならば子爵邸か領で採れた物を贈ろう。お金でも良いけれど、お二人は受け取ってくれなさそうだし。

 

 「では、本日は解散しましょう。お集まり頂き、ありがとうございました」

 

 めぼしい所まで話を終えると解散を告げる。私が頭を下げると、お二人は慌てて頭を上げろという。何故と目を細めると、アガレスで助けて貰った礼もあるから気にするなって。

 気にするなといわれても、感謝の気持ちは伝えるべきだし、今回の件は長丁場になりそうだから、お二人の時間を頂いている訳である。これを言い始めると終わらないだろうなと考えて、適当に誤魔化して解散となったのだ。何かお礼を考えておかないとなあと、サロンを後にするお二人の背を見送る。

 

 「ナイ、どこで誰が聞いているか分からん。十分に気を付けろ」

 

 「ならば学院ではなく、子爵邸で行った方が良いのかもしれませんわね」

 

 後ろで控えていたソフィーアさまとセレスティアさまが、助言をくれた。お醤油さんとお味噌さんはこの世界にはないものだから、聞き耳を立てられている可能性もあるし、万が一聞かれて先に売り出された場合には私たちの苦労が無駄に終わる。

 この世界の方たちに口に合わないかもしれないし、悪い噂は立てられないように対策を打っておけとのこと。

 

 「次から子爵邸で打ち合わせができるように、メンガーさまとフィーネさまに提案してみますね」

 

 ならば学院よりも自分のテリトリーで話し合いをした方が良いかと、次の打ち合わせは子爵邸だなあと頭に刻んでおくのだった。

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