魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0290:こんな所に。

 ドワーフさんの所に顔を出すと、以前対応してくれたドワーフさんが姿を現して鞘と柄の説明をしてくれた。剣の方が良い素材を使っているから、鞘と柄もそれに対応できるものじゃないと駄目なのだそうだ。素材は何を使ったのかと首を傾げれば、竜の鱗を使用したのだとか。ディアンさまとベリルさまが鱗を提供してくれたので、二振りの剣に黒の鞘と白の鞘を用意したのだとか。

 

 鞘と柄に魔力を込めるから、刀身の形が変わってしまっても鞘と柄も刀身に合わせて変化するらしい。本当に不思議だなあと説明を聞きながら、ドワーフさんたちに促されるまま魔力を込める。

 竜の鱗、しかもディアンさまとベリルさまのものなので、魔力の耐性値が高いとのことで遠慮なく注ぎ込んで良いと助言をくれた。それならばと、前回より多く魔力を注いでみる。

 ハイテンションのドワーフ職人さんに、私たちと一緒に集落に来ていたダリア姉さんとアイリス姉さんが『職人って馬鹿よねえ』としみじみと呟いていたのが興味深かった。お二人ならば『もっとやっても大丈夫』なんて言い出しそうだけれど、踏み入れない部分なのか、ドワーフさんたちのやり方に口を出すことはなかったのだ。

 

 嬢ちゃんありがとな、と陽気に笑うドワーフさん。ジークとリンの長剣をオーダーした時よりも仲良くなったと思いたい。

 気軽に依頼をくれとも言われ、どうしたものかと頭を抱えそうになった。ドワーフ職人さんが製作した品物は、亜人連合国を出ると一気に価値が上がる。王族の皆さまへの献上品を贈ることはしばらくないし、公爵さまや辺境伯さまの誕生日は来年。しばらくは製作を依頼することはないなと、ドワーフさんの言葉に返事をした、その時。

 

 「さ、代表の所へ行きましょう」

 

 「行こう、行こう~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが私に声を掛けた。どうやらタイミングを見計らっていたようで、ドワーフさんたちと私の会話を遮らないように配慮していたようだ。

 お二人の言葉に『はい』と声を返してエルフの街へと足を運び、最初にディアンさまたちと最初に出会った家の前に辿り着いた。――あれ? 見知った姿が視界の端に映る。翼の生えた白い馬が二頭、木の根元に生えた草を食んでいた。

 

 「エル、ジョセ?」

 

 私が呟くと、肩に乗っているクロが『あの二頭みたいだね』と教えてくれた。ルカの旅立ちを見送ると、エルとジョセも少しお出かけしますと言い残して、どこかへ飛び立っていたのだけれど。ゆっくりと移動しながら亜人連合国へと辿り着いたのかな。久方ぶりだし、セレスティアさまがアンニュイになっていることを伝えたいと、私の横を歩いているアリア姉さんとダリア姉さんへ顔を向けた。

 

 「あ、そうそう。何日か前にあの子たちが街に降り立ったの」

 

 「畑に魔力を放出していたでしょ~。ナイちゃんの気配に誘引されたみたいだよ~」

 

 お二人は私がなにかを言う前に、エルとジョセに既に気付いたいたようで、ここに来ている経緯を簡単に説明してくれ、二頭の下へと連れて行ってくれた。

 

 『聖女さま、お久しぶりです』

 

 『お久しぶりでございます、聖女さま』

 

 エルとジョセが私の下に数歩歩いて、首を下げて私の顔に顔を寄せてきた。久しぶりだなあと感慨深く、エルの頬を撫でたあと、ジョセもエルと同じように顔を寄せたので手で頬を撫でた。

 

 「エル、ジョセ。久しぶりだね。なんだか凄く懐かしい気がするよ」

 

 二頭は私の顔から離すと前脚を何度か掻く。もう一度顔を撫でたくて手を伸ばすと、エルとジョセは目を細めて手に顔を寄せた。

 

 『申し訳ありません、直ぐに聖女さまのお屋敷に戻る予定でしたが、仲間が出産場所を探していたり、食糧が豊富な場所を教えて欲しいと請われまして』

 

 『聖女さまの痕跡がある場所であれば、強い子が産まれましょうと方々を回っておりました』

 

 で、ここに辿り着いたと。少し様子を見ながら、仲間を案内するつもりだったらしいのだけれど、許可とか大丈夫なのだろうか。亜人連合国だから、害のない魔獣や幻獣ならば受け入れてくれるはずだけれど、ちゃんとした方針を知らないので、エルフのお姉さんズを見る。

 

 「問題なんてないわね」

 

 「むしろ喜ぶべきことだよ~。数が少なくて心配していたから良いことだしね~」

 

 エルフの皆さまも竜の皆さま他の亜人の方々も大歓迎なんだって。亜人連合国ならば誰かに捕まることもないだろうし、生まれた仔馬を取られることもあるまい。人が良すぎる天馬さまたちなので、ちょっとおまぬけ気味だから妙な場所だと生きて行けるか心配だし。

 

 『では、数組の天馬をこちらへ案内させて頂いてもよろしいでしょうか?』

 

 「もちろん」

 

 エルの言葉にダリア姉さんが同意。

 

 『自然が多い場所ですし、聖女さまの魔力の気配があります。仲間も喜びましょう』

 

 「多すぎると困るけれど数組くらいなら問題ないよ~」

 

 ジョセの言葉にアイリス姉さんに同意する。あれ、こっちにやってきてからエルとジョセはエルフの皆さんと会話を交わしていないのだろうか。エルとジョセは人懐っこいから、誰とでも打ち解けられるはずなのに。

 

 「私たちエルフは不干渉を貫いているから。もちろんこうして縁があれば喋るけれどね」

 

 「声を掛けられればいいんだけれどね。向こうから声を掛けられない限りは、手を出すことも会話も禁止だから~」

 

 エルフの皆さまは不干渉だけれど、竜の方たちは別なのだとか。ドワーフさんたちにもルールがあるようで、種族でまちまちな決まりなのだとか。

 エルとジョセはエルフの街へ降りたので、エルフの皆さまに一任されていたと。このまま居付くならそれでも良いし、去るならそれで構わないと判断されていたのだって。ダリア姉さんとアイリス姉さんは声を掛けるのも禁止となっている為、近づいて確かめることも出来なくて、ようやくジョセとエルだと分かったそうだ。

 

 『なるほど。声を掛けて頂けなかったのにはそういった理由があったのですね』

 

 『私たちは嫌われているのかと悩みました』

 

 エルとジョセは苦笑いを浮かべ、許可が取れたので仲間を呼びに行くと空へと飛び立って行った。子爵邸にはもう直ぐ戻るのだとか。ルカも旅立って手が空いたので次の子供を産む準備も済ませているとのこと。また子爵邸で産ませて欲しいとお願いされたのだけれど、断れるはずもなく。天馬さまの出産期間がイマイチ分からないけれど、毎年ポンポン産むものなのだろうか。

 

 「天馬は子供が旅立ってから次の子を宿すには早くて十年、長いと百年以上空くことがあるわね。もちろん個体差があるから、一概には言えないけれど」

 

 「強い個体だと早くなるって伝えられてるよ~。エルとジョセは強い個体なのかも。――代表の所に行こう~」

 

 お姉さんズから衝撃の事実が伝えられた。え、天馬って一年毎に産まないのか。馬と同じに考えない方が良さそうかな。

 幻想種に位置する生き物だし、長生きだから百年かかるというのは理解できるけど、ルカを産んだあと直ぐに次の子を宿すなんて。天馬さまたちの生態を聞きながら、家にお邪魔させて頂くとディアンさまとベリルさまが歓待してくれた。

 

 「アルバトロスから許可を取れたようでなによりだ。手間を掛けさせて済まないな」

 

 「ダリアとアイリスが無茶を言い出しましたから、大変でしたでしょう?」

 

 ディアンさまとベリルさまが私を労ってくれるが、ダリア姉さんとアイリス姉さんが微妙な顔になっていた。手間は掛かっていない。私がやったことはアルバトロス上層部にお伺いを立てただけ。

 

 「いえ。私はアルバトロス王国の皆さまに許可を取り付けただけで、これから動かねばならないのは王国上層部の方々です」

 

 簡単にお姉さんズの言葉に同意して協力すると言ってしまったが、お店を構える事よりも、そこから波及することの方が大事だった。

 エルフやドワーフさんたちが作った品が売られるとなると、王国中、いや西大陸の商人がこぞって買いにくると教えてくれた。そこまで規模が大きくなるとは考えていなくて、大事に発展しているが公共事業だし王都に人が入ってくるならば悪くはない話のはず。

 

 「礼状でも認めておくか。確か街道や王都の宿屋の整備をすると聞いた。荷運びであれば我々も協力できよう」

 

 ディアンさまは陛下やアルバトロス上層部に向けてお礼状を認めてくれるようだ。労力が一番かかるであろう力仕事には竜の方たちの協力を得られるようだから、工期が少しでも短くなると良いけれど。あと少しすれば、王都の物件の下見に行くし、お姉さんズがどんなお店を開くのか楽しみな私だった。

 

 ◇

 

 西大陸のアルバトロス王国からアガレス帝国へと戻ってから、少しばかりの時間が経った。彼の国から引き渡されたアリス・メッサリナと亜人連合国から預かった銀髪の青年は、アリスという少女はアガレス皇帝の下へ。銀髪の青年は元第一皇子のアインと共に鉱山送りだ。アガレス帝国皇宮の謁見場。帝国上層部の者たちがたくさん集まるこの場で、大事な話を執り行っていた。

 

 「ウーノ。吾が皇帝の座を譲っても後宮は維持されるのだな?」

 

 「はい、陛下。わたくしの帝位をお約束頂けるならば、確約いたしましょう」

 

 私を見据えて父が……アガレス皇帝が縋るような視線を向けて問いかけた。元々帝位に興味がない人であり、帝位に就いていた理由がハーレムを維持する為という碌な理由ではない人物である。譲位が成されれば、父は歴史の闇の中へ消えて頂く。揉め事の種は少なければ少ない方が良い。皇妃である母とも相談の上、決めたことだ。

 

 父はアルバトロスから引き渡されたアリスをすこぶる気に入っている。

 

 彼女自身は『近づくな!』『触らないで!』『気持ち悪い!』とはっきり拒絶の言葉を発しているのだが、父は臆することなく彼女に触れ、いつか落とすと心に決めているようだった。アリスは父が居ない場所では傲慢を極めている。皇帝の寵愛を受けているからと贅沢を求めてくる上に、皇子たちに会わせろと声高に叫んでいるそうだ。

 大人しく父に抱かれていれば、少なからず使い道はあったものの、あのような態度を取れば周囲の者がどう考えるかなど明白。アルバトロスもアリスが必要ないと我々に引き渡したことに納得してしまった。あのような者を、国で飼う価値などないのだから。

 

 「そうか。――では吾は帝位の座を第一皇女ウーノに譲り、一線を引く!」

 

 もう決まっていることだ。周囲の者も私が帝位に就くことに問題はないと首を縦に振っている。腹の中はどう思っているか知らないが、表で同意したのだから覆すことはできまい。

 それこそ、クーデターでも引き起こさない限り。民衆の意見も元第一皇子よりも第一皇女の方がふさわしいという考えになっているから、割とあっさりと決まった形となる。あとはナイさまと縁を持っていることだろうか。私の言葉であれば、黒髪黒目のお方が言うことを聞くと考えているのだ。

 

 ――甘い。

 

 そう言わざるを得ない。ナイさまが私の言葉を受け入れてくださった理由は、アルバトロスに益が齎せることか彼女個人で判断できる範囲でだけだ。

 彼女はアルバトロスに忠誠を誓っている。アルバトロスの貴族であり聖女なのだ。決してアガレスの協力者なのではない。ナイさまへ向ける悪感情や間違えた考え方も払拭させなければ。また、アガレスが滅びの淵に立たされてしまう。

 

 「陛下、ご英断です」

 

 宰相が陛下へ声を掛けた。彼は父が無能だったことと馬鹿な第一皇子一派の被害を一番に被った人物であろう。私が帝位に就くと表明すると一番に賛同してくれた。有難いことではあるが、これからも重用するかは彼次第。

 陛下の譲位宣言はあっさりと終わり、その日は解散となった。あとは代替わりの式や就任式を執り行う準備が始まる。まだ少し先のことにはなるが、大きな一歩を踏み出した。私にとっての歴史的瞬間だった。

 

 陛下の譲位宣言後、自身の執務室で妹たちと雑務を捌いていると、唐突に私を呼ぶ大きな声が部屋の外から聞こえてきた。

 

 「ウーノさま! ウーノ殿下っ!!」

 

 一体どうしたのだろうと、妹と顔を見合わせる。私たちと一緒にいるヴァエールさまも首を傾げ、何事かと訝しんでいた。彼は皇宮に長い時間、幽霊としてこの場所に居たそうなのだが全く気が付かなかった。

 時折、侍女や侍従が置いたはずの物の場所が変わっていると訴えることがあったが、そんなバカなと一笑に付していたのだが、彼の仕業だったらしい。黒髪黒目の少女、ナイさまがアガレス帝国にやって来たことと、巨大魔石が減った影響で幽霊から精霊に格上げされたとのこと。私以外に、妹たちにも彼の姿が見えているそうで、時折楽しそうに語り合っていることもある。彼が気に入った者には姿が見えているそうなので、見えるかどうかは彼次第ということらしい。

 

 『なんじゃ、騒がしいのぅ』

 

 外が騒がしいというのに、ヴァエールさまはどんと構えたままだ。執務室に控えている騎士は、緊急事態と判断して臨戦態勢に入っているのだが。まあ、頭の骨の部分だけ顕現しているから事情を知らない者が見れば、私が妙な趣味を持っていると勘違いしてしまいそうだ。

 

 「失礼いたします! ――空に、空に馬が飛んでいます!」

 

 緊急事態を告げるノックの音で扉が解放され、慌てた様子で近衛兵士が執務室へ入ってきた。開口一番に馬が空を飛んでいると告げ、どうすればいいのか悩んでいる様子だった。

 

 「馬が空を飛ぶなんて……嘘、でしょ?」

 

 妹がぽつりと呟く。私も信じられない。馬が空を飛ぶなんてあり得ず、近衛兵は幻覚でも見たのかと疑ってしまうが、一人二人見たのであれば幻だと判断される。おそらく大勢の者が空を飛ぶ馬を確認したのかもしれない。

 

 『空を飛ぶ馬……ペガサスかのう? 翼が生え白くはなかったか?』

 

 ヴァエールさまが告げた言葉を元に記憶を漁る。確か、幻獣を記した本で読んだ記憶があるような。白い馬に翼が生えた幻の生き物。ドラゴンと同じで、一生会うことのない生き物と認識しているのだが、ヴァエールさまが知っているということは、彼は出会ったことがあるのだろうか。

 

 「いえ、黒い馬です! 翼が六枚も生えているんです!! 悪魔かなにかの使いなのでしょうか!?」

 

 『なんじゃそりゃあ!?』

 

 どうやらヴァエールさまでも知らないらしい。六枚翼の空飛ぶ黒い馬……一体なんだというのだろう。黒色ということで悪魔の使いと考えているようだが、黒髪黒目信仰を崇める我々としては不幸を呼ぶようなものにはしたくないが。不幸の兆しではないことを願いつつ、外の状況を聞いてみる。

 

 「皇宮の空を旋回したあと、庭園へ降りてきたんです! 我々に牙を剝くことはありませんが、どういう行動を取るのかが分からず、遠くから見守るしか方法がありません!」

 

 黒馬は皇宮の庭園を闊歩しているようだ。人に危害を加える様子はないが、なにをするのか分からないので彼らも困り果てている模様。どうしようかと妹の顔を見ると、判断に困っているようでドゥーエとトレは私が決めるべきという視線を向けた。

 

 「危害を加えないようならば、放っておくのが一番でしょうけれど……」

 

 『様子を伺いに行くか? 我とであれば話が通じるかもしれん。我、一応精霊となったし』

 

 このまま居付かれても困ると、庭園の様子を見に行こうと立ち上がる。ヴァエールさまも髑髏から下の身体を具現化させて、馬まで顕現させた。

 もしかして恰好を付けようとしていますか、と問いたくなったが聞かないほうが幸せなのかもしれない。ヴァエールさまは馬上であーでもないこーでもないと考えている様子。悪魔であるならば、人前に現れるなんて面倒なことはせず、心の弱い人間に取り入るはず。ならばやはりペガサスの変種もしくは亜種なのだろうかと首を捻る。

 

 護衛の兵士を沢山連れて、中庭に出た。緑の木々や花が綺麗に咲き誇っている、自慢の庭園に一頭の美しい黒馬が優雅に歩いていた。報告通りに背中から六枚の翼が生えており、なんとも幻想的な光景だった。ドラゴンをこの目で見た時も驚いたが、こうしてペガサス――確定ではないが――まで実際に目にすることになるだなんて。

 

 「こちらに……くる!」

 

 黒馬が私たちに気付いて、草を食んでいた首を上げてこちらへゆっくりと歩いてくる。優美な姿に見惚れそうになりながら、私の横にいたヴァエールさまが髑髏の馬に乗ったまま一歩前に出た。

 

 『挨拶してくるかのう。狂暴なヤツじゃなければよいが……』

 

 挨拶、できるのだろうか。精霊になったとはいえ、動物と精霊では隔たりがあるのでは。とはいえ私たちも黒馬との接触をどうすればいいのか手をこまねいているのだから、ヴァエールさまに任せるしかない。そうしてヴァエールさまとペガサスが相対した。なにかやり取りをしているようだが、距離が離れているので会話は聞こえない。

 

 『ウーノ嬢、大丈夫じゃ! 黒髪の者と懇意にしておるそうだぞ』

 

 ヴァエールさまが私の名を呼び、こっちへこいと手招きした。彼に従い、数名の供を連れて残りはこの場に留まって貰う。

 彼の下へと行くと、黒馬は警戒心が薄いのか私の方へやってきて顔を寄せた。触れても怒らないだろうかと、おそるおそる手を伸ばす。黒馬の頬に手を伸ばして撫でると、目を細めながら受け入れてくれた。

 

 『なんとなく黒髪の者の雰囲気を感じ取って大陸を渡ったそうじゃ。巣立ちしたばかりで、方々を回っているのじゃと。庭が綺麗で興味を引かれたそうだ』

 

 黒馬はナイさまの家で生まれ、成長して巣立ったそうだ。貴族の家でペガサスが生み落とされたことが信じられないが、ドラゴンを従えるナイさまだ。

 ペガサスも従えていてもなんら不思議ではない。目の前のペガサスは特殊個体だそうで、魔力が多く備わっていることの証拠なのだとか。黒い馬体と六枚の翼がなによりの証拠。いろいろな場所を巡って番を探しているのだとか。まだ相手は見つかっていないようで、東の大陸を暫く放浪してみるとのこと。

 

 「そうでしたか。しかし西大陸とは違って東大陸ではペガサスはかなり珍しいのです。なにとぞお気を付け下さいませ」

 

 私の言葉を咀嚼するためなのか真剣に聞いているように感じた。知能が凄く高いのだろうと納得してしまう。

 

 『まだ喋れぬようじゃが、時間の問題だろうて。――行くのか?』

 

 ヴァエールさまの言葉に大きく嘶く黒いペガサス。じゃあね、といわんばかりに顔を寄せて、皇宮の庭園から飛び立って行った。取り敢えず、黒いペガサスがやってきたことをナイさまに報告しなければ、と執務室へと戻るのだった。

 

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