魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0296:ある日森の中。

 ――木々が鬱蒼と茂る森の中。

 

 アルバトロスの森の中と南の島の森の中の雰囲気は少々趣きが変わっている。島の方が緑が濃く、木に巻き付いている蔦に皮に生えた苔。空気の流れが鈍いというか、滞留しているというか。こんなに変わるものなのかと、不思議な感覚だった。あと陽の光があまり入っておらず、真昼間だというのに随分と薄暗い。

 

 前回、島の森に足を踏み入れた時はアガレス帝国から戻り、みんなも居ることもあった為か全く気付かない。今はリンと私にクロと小型竜の方二頭で森の中をウロウロしている所為か、周囲の状況に気を張っている。

 

 「なんだろう。魔物の気配はないのに、気配を感じるというか……」

 

 「野生の動物が多いから。その所為じゃないかな」

 

 リンが私の横でそう教えてくれた。妙な感じは動物の所為なのか。余所者がきたとでも警戒されているのだろうか。生い茂っている草は小型竜の方二頭が前を歩いてくれているので、私たちが歩く道は随分と均されていた。

 小型といっても人間より重そうだし、脚や体が大きくて道を造るのが上手い。進む方向に悩んだ時は後ろを振り返って『ナイ、どっちに進む?』と首を傾げながら問いかけてくれる。

 可愛いなあと眺めつつ、進む方向を指示していた。歩くこと三十分、美味しそうな食べ物はなく、ひたすら歩いているのみ。魔物が出ると困るから、魔物は出るなと願いつつもう少し森の奥に踏み込もうか。浜からほど近い森の中で、なにか見つけることは難しそうだから少し奥に進もうと言おうとしたその時だった。

 

 「……うわ」

 

 なにかいろいろと常識を超えている光景に思わず声が漏れた。先頭を歩いてくれていた竜の方が立ち止まり、目の前の光景を見せてくれたのだ。

 

 「食べてるね」

 

 『……食べているけど』

 

 リンとクロも疑問を口にしていた。捕食中なので、こちらには気付かないし、仮に気付いたとしてもこちらを襲うことはない。

 

 『食べられる?』

 

 『食べられるの?』

 

 竜の方まで疑問を呈してしまった。どうやら目の前の光景が気になるようで、こてん、こてんと首を傾げている。

 

 凄いなあ、と驚いてじっと見ていた光景、沼地から体を半分程度出した大蛇が、猪を口に咥えて飲み込もうとしているのだ。普通、捕食する蛇ってとぐろを巻くものだと思っていたけれど、得物が逃げることも無い所為か口に咥えたまま微動だにしない。

 随分と大きい猪が口から半分出ており、後ろ脚が見えていた。どちらも通常サイズを通り越している所為で、凄く壮観な光景というか。ただ咥えた得物が喉の奥へと進む様子はなく、大蛇はジッとしたままだ。蛇の食事は時間が掛かる時もあるのだろうと踵を返そうとする。

 

 ――タスケテ。

 

 頭の中に直接声が響いたような気がする。

 

 「声が聞こえた気がするけれど……」

 

 どうしたものか。声の主が誰かも分からないし、助けてといわれても抽象的過ぎてなにをすればいいのやら。リンの顔を見上げると聞こえなかったと首を振った。

 

 『ボクも聞こえた! あの蛇だよ。ちょっと話を聞いてくるからみんなはここにいて!』

 

 クロが声を上げて私の肩から飛び立ち、ぴゅーと大蛇の顔の近くへ寄って首を傾げたり、翼をバタバタと大袈裟に仰いだりと忙しい。暫く待っているとクロが戻ってきた。

 

 『顎をこれ以上開けることができなくて、ご飯の猪を飲み込めずに何時間もこのままみたいだよ……助けられるかな?』

 

 またしても、お困りごとの生き物を助ける羽目になるらしい。まあ、良いけれど。こう何度も機会が訪れると、それはもう運命とでも表現するしかないのだろうか。

 

 「力仕事になりそうだね。このメンバーで足りるかな……」

 

 猪の脚に縄を括りつけて引っ張り出せば、大蛇の口から離すことができるかな。便利道具を布鞄の中に入れておいて良かった。討伐遠征の際に崖から落ちた方を助けることや、渡河の際に持ち物が流れないように体に道具を縛り付ける時に重宝するから。今回はなんとなく用意しただけだが、持ってきた意味ができた。

 

 とはいえこの場にはリンと私にクロ、そして小型竜の方が二頭いるだけ。対して大蛇は胴回りは優に一メートルを超えていそうな、大蛇と表現して差し支えない大きさ。もちろん口に含んでいる猪も、山の主どころかそれ以上の大きさだった。この世界の生き物の基準が狂っているような気もするが……深く考えまい。

 

 『大きい竜を呼んでくる?』

 

 クロが首を傾げながら私に問いかける。

 

 「クロ……クロが大きくなれば済む話なんじゃ」

 

 『……あ。そうだったね……』

 

 また忘れていると、間違いを指摘しておく、クロが大きくなって脚の爪で猪を引っ掛ければ直ぐに助ける事ができるけれど。簡単に大きくなれる訳じゃあなさそうだし、まずは今いるメンバーで頑張ってみるべきだろう。

 

 「私たちの安全は確保されそう?」

 

 助けた後に襲われるなんて、不幸な結果にはしたくないとクロに聞いてみる。

 

 『うん。人間は不味いから食べないって』

 

 「そっか。リン、猪の脚に縄を縛り付けるから、まずは私とリンで引っ張ってみよう?」

 

 クロさんや。深くは聞くまいと流したが、その言い方だと以前に人間を食べたことがあると言っているようなものだ。

 胴回りが一メートルを超えていそうな大蛇である。恐らく全長もかなり長いに違いなく、人間ならば一飲みで食べそうだし。沼で隠れている部分は予測するしかないけれど、かなり大きな猪を食べようと試みる欲張りさんである。まあ、人間を餌とみなして食べても致し方ないことなのだろうか。

 

 「ナイ、そんなことをしなくても強化魔術を私と竜の子たちに施せば簡単に引き摺りだせる」

 

 リンが真っ当な正論を言い放つ。

 

 「……あ。ごめん……忘れてた」

 

 ここしばらく強化魔術を使っていなかったので、頭の中の選択肢にすっかりと入っていなかった。クロが私の肩の上に乗って『ボクのことは言えないねえ』とぼやいていた。小型の竜の方二頭がその話を聞き、一頭はリンの後ろから腕と胴の間に首を突っ込んで顔を出す。

 

 『リンと頑張る!』

 

 リンの腕と胴の間から顔を出した小竜が目を細めながら元気に宣言すると、彼女は竜の顔を撫でた。もう一頭は私の後ろにいつの間にか回り込んで、少し体を地面に近づけたあとに腕と胴の間から顔を出す。

 

 『ナイの魔力!』

 

 身体強化を施すだけだから、魔力を分け与える訳ではないのだけれども。期待されるような強化魔術を施せる訳でもないし。おっちょこちょいな大蛇を助けようと、先ずは大蛇の顔に近づいて口からはみ出ている猪の後ろ脚に縄を括りつける。

 荷物になるから長いものを持参してこなかったけれど、猪の脚を掴んで引っ張るよりも力を入れやすいだろう。縄を握って引っ張るもよし、腕に巻き付けて引っ張るもよし。小竜さんたちはそれぞれ猪の後ろ脚に爪を引っ掛けて引っ張るようだ。

 

 「クロ、引っ張るから適当な所で蛇さんになるべく口に力を入れないように伝えて貰っても良いかな?」

 

 『わかった。ボクはナイたちの様子を見ながら蛇に声を掛けるね』

 

 クロが蛇の顔、視界に入る場所へ飛び立つ直前。

 

 「うん、お願い。――リン、みんな。強化魔術を施すよ! ――"荒々しく猛ろ"”汝は軍神也"」

 

 クロが飛び立つのを見守りながら、リンと竜の方に声を掛ける。この強化魔術の詠唱を考えた魔術師は絶対に厨二病を患っているなあとぼやきながら魔力を練って、強化魔術を施した。

 

 「引っ張る!」

 

 『うん!』

 

 『はーい!』

 

 リンがタイミングを合わせる為に声を上げると、小竜さん二頭は軽い声で返事をした。なんとなく彼女彼らの筋肉がぐっと膨張したような気がした。ごぽり、と低い音が鳴って大蛇の口から巨大な猪が姿を現した。死んでいるから、ピクリとも動かないけれど。

 ずっと大口を開けたままの大蛇が口を閉じて、フスー、と鼻から息を出した。苦しみから解放されると、ぱちくりと何度か目を閉じたり開いたりして私たちをじっくりと見ている。助けられたならば用はもうないかと、猪の脚に括りつけた縄を解き、リンとクロに小竜さんたちに声を掛ける為に踵を返した。

 

 『危うく死ぬところだった。――人間に助けられたのは信じられぬが……竜を引き連れているのだ。さぞかし魔力が豊富な御仁と見受ける』

 

 あ、大蛇さんは喋れるのか。低くも高くもない音域の不思議な声で私を確りと見据えている。ということは知能は随分と高いはずなのだけれど、どうして飲み込めないサイズの猪を食べようとしたのか疑問だ。疑問の解消よりも、大蛇さんに挨拶する方が先かと視線を合わせた。

 

 「決して引き連れている訳ではありません。彼らの意志により行動を共にしているだけでございます」

 

 『左様か。しかし古き時代から生きる者たちは魔力を好む者が多い。懐かれる理由はそこにあろう。謙遜も酷ければ嫌味にしか聞こえぬぞ』

 

 魔力は生きる上での副産物にしか過ぎないのだけれどね。竜や大蛇さんにヴァナルのような魔獣のみんなが魔力を好むのは知っているし、現に懐かれ易いのも自覚しているけど。感心なのか釘を刺されたのかよく分からないまま、巨大猪を喉に詰まらせていた理由を聞こうと、大蛇さんと相対するのだった。

 

 ◇

 

 喉に大猪を詰まらせた大蛇さん。

 

 胴回りが一メートル以上ありそうな大蛇さんだけれど、何故巨大な猪を飲み込めなかったのか謎である。胴回りより大きい得物でも丸のみできるはずなのだけれどなあと疑問だ。沼から体を半分だして猪を飲み込めないままじっとしていた大蛇さん。なんつー間抜けと指を指して笑いたくなるが、そこにはままならない理由があったようだ。

 

 巨大な猪はこの島の主。しかし年齢の所為なのか年々弱ってきていたのだという。突然島に魔力が満ちると、猪の残り短い命に終わりが訪れる拍車を掛けてしまった。

 

 「何故……」

 

 島に魔力が満ちたのは私が魔力を放出したからだ。島が大きくなって魔力が満ちたことで喜んでいたが、裏ではこんなこともあったなんて……。大蛇さんから視線を外して地面を見るとクロが顔を頬に強めに擦り付けた。リンも私の隣にいつの間にか立って、腕に手を回す。

 

 『彼は死期を悟っていたのだよ。島に魔力が満ちたことで生きたいと願う者は力を得て、死にたいと願っていたものは穏やかな死を迎えた。それだけだ』

 

 大蛇さんの話には続きがあった。島の野生動物を統べる者が居なくなるのは不味い。奇跡的なバランスで調和を保っており、大きな猪の不在は無用な争いを避けられない。

 であれば、次代を担える者に託すしかないと大猪は考えたようだ。大猪が力尽きれば、大蛇に自分を食べろと沼に告げにやってきた。長く生きた生き物には魔力が宿る。大猪が溜め込んだ魔力を大蛇が食べれば、大蛇はさらに強くなり島を統べる主となろうと。

 

 『彼の要望を受け入れたのだよ、私は。しかしなあ……大きすぎて顎が開かぬようになってしまった。流石島を統べる主! 一筋縄ではいかなんだ!』

 

 くく、と笑う大蛇さん。いや、それ食べないのも失礼なのではと思ってしまったのは、私の考え方がヤバいのか。それとも感動話を笑い話に変えようとしている大蛇さんがヤバいのか。判断はつかないが、とりあえず先のことである。

 

 「では、こちらの猪さまはどうなさるのですか?」

 

 迂闊に呼び捨てすらできなくなって『さま』付けする羽目になる。大蛇の口に含まれていた部分は涎でべっちょりしているのだけれども。

 このまま放置すると暑さで直ぐ腐ってしまうだろうし、一体大蛇はどうするつもりなのだろうか。島にいる方たちで食べるにしても、この大きさだと消費に何日掛かるかわからないし、できることなら次代を託された大蛇さんに食して欲しいけれど。年老いた猪肉は堅いと聞いたことがあるし、大きすぎると大味すぎて食べられたものじゃないとか耳にしたことがある。

 

 『私が食すべきなのだが……何分猪殿が大きすぎてね。島に魔力が満ちて体が大きくなったのは良いが、咥えられる大きさを見誤ったのは最大の不覚。自然に生きる者として情けない限りだ……』

 

 首を上げていた大蛇さんが、地面に首を下ろして地面に顔をぺしょんと付けた。どうやら生き物としての矜持を傷つけたようだ。大蛇さん自身が失敗したようだけれど。

 

 『じゃあ、どうするの?』

 

 クロが私の肩の上で首を傾げながら大蛇さんに問いかける。

 

 『竜の御仁に食って貰うのもアリかと考えたが、それだと猪殿の希望を無下にすることになるしな。どうしたものか』

 

 クロが大きくなれば簡単に食べられるだろうけれど、クロって果物を好んで食べているからお肉って食べられるのかな。大蛇さんの言葉に少し考えた様子を見せつつ、クロがまた口を開いた。

 

 『なら、ナイに魔力を分けて貰う? 大きくなれるかもしれないよ』

 

 『ナイ、とはそこな少女かね? 幼いながらも魔力は強大なようだが……』

 

 幼いって。私はもう既に十六歳ですってば。チビでチンチクリンでストーンな真っ平だけれども、正真正銘の十六歳だっての。あと二年経てばアルバトロス基準で婚姻可能年齢になるから。

 血筋なのか、魔力による成長阻害なのかどちらかハッキリしないけれど、好きでこんな姿になった訳じゃない。これも自然に生きる者として、自然に生きた結果なの!

 

 『おお! 確かに幼子の魔力は凄い物だな。こうもはっきりと魔力を人間から感じることができるとは! 詠唱もしておらぬのにこの量は素晴らしいとしか言いようがない!』

 

 「わたくしは十六になりますので、幼子にはならぬかと……」

 

 歯を食いしばって、テンションが高くなっている大蛇に向けて言葉を口にした。クロ、クロ! 間抜けな大蛇の盛大な勘違いを訂正して! 幼子じゃないから。せめて少女くらいに表現して! 中身はアレかもしれないが、肉体年齢は十六歳だから!! 純然たる事実で嘘なんて一ミリもないから!!

 

 『ははは! 私の為に魔力を注いでくれるのだな、幼子よ!! 魔力が有り余るならば万年の時を生きてみせようぞ! 強き亀よりも長く生きる自信がある!!』

 

 話を聞いてねえ……。子爵邸の図書室に置いてある、あの魔導書を持参して死者蘇生の魔術を猪に施してみようかな。蘇って島の主を続けてくれるかもしれないし。それとも大蛇に向けて因果さえ消えてしまうという魔術を行使しようか。

 ははは。うん、それも良いのかもしれないなあ。この島であれば禁術を使用してしまってもバレやすまい。バレたとしても証拠がなければ立証されないから、使い終えたあとだと分かり辛いはず。ダリア姉さんとアイリス姉さん辺りには勘付かれるかもしれないが、突っ込まれなさそうだし。

 

 『…………』

 

 無言のままクロが私の肩から飛び立って、大蛇の目の後ろに近づいてなにやら囁いている。幼子と連呼された悔しさからか、魔力が自然に湧き出てきている。

 

 『う、すまぬ。少々、気分が高揚し過ぎたようだ。私の無礼な発言を許してくれぬか。野生に生きる蛇が人間の都合を理解できず馬鹿を申しただけだと承知して頂きたい』

 

 大蛇は謝罪を終えると私から顔を逸らして、明後日の方向を見つめていた。蛇の癖に発汗しているのは気のせいだろうか。気のせいか。蛇に汗を掻く機能なんて備わってなかったはずだし。

 

 「ナイ。顔、怖いよ。そんなナイも可愛いけど」

 

 リンがてれっとした顔で指摘をくれた。ついでにフォローになっていないフォローの言葉も添えて。

 

 『怒りは収まったかな? その……なんだ、魔力が満ちていたもので、また大きくなれると願ってしまってだな……長く生きる者は魔力に敏感だと申しただろう。仕方ないのだよ、性というものだ…………私の言葉に応えて?』

 

 『えっと……このまま放っておくわけにはいかないし、彼の願い通りに君に食べて貰うのが一番だと思うけれど……』

 

 クロは放置されている大猪に視線を向けてから、大蛇へと視線を変えた。

 

 『竜の御仁よ。少々待って頂きたい。魔力が足りぬと申したが、彼女の魔力は密度が高い所為かちょっと脱皮をしたくなった。直ぐ戻る故、お待ちいただきたい』

 

 確かに脱皮の前兆といわれる、目に膜が張り胴体の色も先程よりくすんでいる。いつの間にと呆れつつ大蛇を見ていると、沼から体全体を出した大蛇の全長はかなり長いものだった。

 先日助けた空飛び鯨よりも長さだけなら長いかもしれない。ズルズルと器用に体をうねらせて森の奥へと消えていく。進んだ方向に居たであろう鳥たちが凄い勢いで空高く飛んでいった。あんなサイズの大蛇が小鳥を食べるなんて思えないけれど、鳥たちは危険と察知したのだろう。

 

 「戻るかな?」

 

 脱皮って結構な時間が掛かるはずなのだけれど、どうなのだろうか。魔力で大きくなったというなら、魔力で早く脱皮できるのかもしれない。

 

 「どうだろう?」

 

 『待ってみようよ。直ぐ戻るっていったから嘘は吐かないはずだよ』

 

 リンが首を傾げて、クロが様子を見てみようと言った。息絶えた大猪を放置する訳にもいかないし、待つしかないのだろう。木陰に腰を下ろして待つこと一時間。直ぐに戻ると言った割には遅いなあとリンと顔を見合わせたその時だった。

 

 『待たせた。私は戻ってきたぞ。――今の姿であれば彼を喰えるであろう』

 

 先ほどよりも一回り大きくなった気がする大蛇が、森の中から姿を現して戻ってきた。鱗に艶が出ているし、目に膜は張っていない。転がっている大猪に大蛇が近寄って鼻先で猪の身体を持ちあげて、体全体を使って口に入るようにと器用に動いている。今度はとぐろを巻いて頭から綺麗に食いついた。

 顎を限界まで広げて喉奥へと大猪を突っ込んで体を動かしながら大猪を飲み込み、ついに口から消えた。

 

 『ふう。これで彼の意志は守られ、私は彼の意志を継ぐことになる。島の主としてこれから長く長く生きねばな』

 

 ふふん、と恰好を付けて大蛇は沼の中へと体を沈めて顔だけを出し、私たちに視線を向けるのだった。

 

 

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