魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0032:相談。

 クルーガー伯爵さまのジークとリンを自分の籍へ入れたいという意思は本気のようだ。

 二週間の間に二度ほど食事に誘われ、断り切れず二人は指定の店や伯爵邸に赴いた。

 親子の会話を交わしているのかと思えば、そうでもないらしい。形式上の会話のみだ、とジークは苦笑いをしていたのだから。

 

 「――何が目的なのでしょうか?」

 

 二人が伯爵さまの提案に乗り気ではないのは、伯爵さま自身も理解しているはずであろう。

 父親の顔も知らぬまま、幼い頃に母親と死別して貧民街へと逃れてきた二人だ。今更現れた父親に対していい感情など抱く訳がない。

 

 「さあな。落胤問題など自身の管理の甘さを露呈しているにすぎんよ。――己の無能を晒しているようなものだ」

 

 「やるなら上手く隠せ……ということですか?」

 

 「ああ。貴族に愛人がいるのは、男でも女でも当たり前のことだからな」

 

 女性は孕むリスクがあり、それを避ける為に慎重に行動しなければならないので、露呈することは少ないのだろう。

 男の人は、女性側に子育てを丸投げにしてしまえば逃げることができる。お貴族さまなら、金銭支援だけで済ませる場合もあると聞く。王国では女性の社会的地位が低く、生きる術としてお貴族さまの男性とねんごろな間柄になり、お金を貰っている人もいるから全否定するわけにもいかない。

 

 「……それは、そうですが」

 

 愛人を持つのは、お貴族さま全員という訳ではない。目の前の公爵さまは公爵夫人一筋な人で、今でも熱は冷めていない。

 公爵邸の人払いのされた東屋で、紅茶を啜る。もちろん私たちから少し離れた所で、公爵家の護衛騎士や侍従や侍女が控えているし、ジークとリンも居る。ただ公爵さまの命令で下がったのだった。どこで漏れるか分からないので、伯爵さまの名誉を守る為なのだろう。

 

 学院で手紙のやり取りをしていたことは、特進科クラスの人たちは知っているし、私がその手紙を持って外に出ていき騎士科へと赴いたこともバレているだろう。

 情報収集を怠らない人ならば、ある程度の推測は出来るのではないだろうか。あとクルーガー伯爵さまの顔を知っているのならば、なおさらだ。

 

 そういえば何故噂にならなかったのだろうと疑問が浮かぶ。

 

 お貴族さまの子であれば、伯爵位を持つクルーガー家の当主の顔くらい知っているだろう。そこに騎士科に入学してきた伯爵さまそっくりな男女二人。入学から約三か月、噂になっていないから、知らぬ存ぜぬを決め込んでいたというのが有力か。

 

 「まあクルーガー伯爵が二人を見つけたのは偶然だろう。知っていたならば、もっと以前に声を掛けていただろうしな」

 

 持っていたティーカップをソーサーの上に戻して、公爵さまの顔を見る。いつも通りのロマンスグレーの髪をきっちりと後ろに撫で付けた、いかつい顔の彼。そういえば瞳の色はソフィーアさまと同じだなと、今更ながらに思う。

 

 「で、お前さんはどう考える?」

 

 「どう、とは?」

 

 流石に問いが抽象的過ぎて答えようもないなと、疑問を疑問で返す羽目になった。

 

 「クルーガー伯爵の真意、思惑。――なんでもいい、思うことを言ってみろ」

 

 「……正直、分かりません。ただ、伯爵さまの次代は既に決まっていますし、もし変える意思があったとしても伯爵夫人が許さないはずなので、二人を伯爵家の籍に入れるメリットはあるのでしょうか」

 

 憐みや憐憫で動くことはお貴族さまにはない。あるのかも知れないが、その時は益がある場合だ。正直、二人を伯爵家の籍へ取り込んでも益があるのかと問われれば、正直ないと思う。

 

 「伯爵夫人は子爵家出身だ。クルーガー卿と婚姻したのは優秀であったと聞くが、子爵家が伯爵家に抗議してもそう効果はないであろうな」

 

 結構意外だった。伯爵さまの奥さまなのだから、赤髪くんからジークへと嫡子が変わる可能性も考えているだろう。嫡子を変えるとなれば、自身の産んだ子が当主の座に就けないとなれば大問題である。

 

 「そもそも息子のマルクス……だったか、一度やらかしているからな。再教育となったとはいえ当主としての資質は問われ続ける。落ちたものを再び元に戻すには、相当に苦労するだろうよ」

 

 「しかし、セレスティアさまがいらっしゃいます。辺境伯家から突かれれば流石に……」

 

 辺境伯家にも顔向けできない気がするけれど。マルクスさまが当主になるからこそ、家同士の契約として結んだのだろうし。

 

 「確かに、辺境伯家が声を上げればクルーガー家は黙るしかなくなるな」

 

 テーブルに片肘を付きその手を顎に乗せて、くっと笑う公爵さま。あれ、これは試されていたのかなと、目を細めて彼を見ると更に笑みを深めるのだった。

 

 「まあ、二人の意思を優先させることが大事だがな」

 

 公爵さまの言う通りだろう。メンツや評判が大事なお貴族さまだ。自分の評価を――家の評価を落とすようなことはすまい。

 息子のマルクスさまはやらかしてしまったけれど、まだ若いからやり直しは可能だろう。既にセレスティアさまから、扱かれているし。

 

 「そうなるといいのですが……」

 

 「難しく考える必要はなかろうよ。――無理を押し通して失敗すれば、痛い目をみるのは伯爵一人だからな」

 

 学院でも注目されているようで、二人に視線が向かっているから今や時の人である。

 ジークとリンは迷惑そうな顔をしていたが、マルクスさまは渋面だ。

 

 伯爵さまが力技でジークとリンを家へ迎え入れれば、二人から嫌われるのは確実だし、家の人たちも良い顔をしないだろう。

 本当、なんで今更こんな問題を持ち込んできたのか、と頭を悩ませるのだった。

 




 投げるのをわすれていましたorz あと短いですが、一ヶ月連続更新の疲れとあまりこの話を鮮明に思い描けていないのが原因。まだもうすこし毎日更新を頑張りたい所。
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