魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0322:とある王都民の話。

 竜が荷を引いて王都の街を闊歩している。

 

 信じられるか? 一生に一度見るか見ないか、出くわすか出くわさないか、で知られている竜が、小さいながらも王都の街を歩いている。

 最初見た時は驚いたし、小さくとも竜である。喰われるのではと心配していたが、無用なものだった。亜人連合国が開いた運び屋の前には小さな竜が愛想を振りまいており、王都の子供たちの遊び場になっている。

 竜を興味深そうに見ている子供たちを邪険にするわけでもなく、近寄った子供に竜は鼻を摺り寄せて思いっきり息を吐いたり、気が向けば子供を背中の上に乗せていた。

 怖いもの知らずの子供は凄いなと、少し前に感心していたのだが。

 

 「仕事、取られねえかな……」

 

 「どうだろうな。だが、俺たち平民相手の商売というより、新し物好きな貴族さま相手の商売みたいだし結構な金額を要求されるって聞いたぞ」

 

 俺はとある商人の家で働いている御者だ。商品の荷運びを担っているのだが、仕事が取られると不味い。直ぐに雇い主から解雇されてしまう。学もない俺が今の仕事を辞めて、別の仕事に就くには伝手や運が凄く必要になってくる。だから竜が王都の街を闊歩していることは、由々しき事態なのだが……。

 

 休憩中、煙草を吹かしている同僚と世間話をしている。いつも取るに足らないことを話しているのだが、今日は王都の街を歩く竜のこと。同僚の話が事実なら心配は必要ないが……本当、仕事を取られなきゃ良いが。

 

 「前に竜が王都の空を飛んだ時は、魔王でも誕生したのかと噂していたが、亜人連合国の竜だとはなあ」

 

 亜人連合国。名前くらいは聞いたことがあるが、遠い国だし関係ないと考えていた。だが昨年、黒髪の聖女さまが彼の国の立派な竜を浄化して、それを向こうの国は甚く感謝しているんだとか。あの時は『国が亡びる!』と本気で王都の大勢の人間が慌てふためいていたから、陛下を始めとするアルバトロス王国上層部の動きは早かったなあ。

 直ぐに城から街に使者がやってきて、ヴァイセンベルグ辺境伯領で起こっていた事と竜の卵を返しに、亜人連合国へ使節団が向かったことに、立派な竜を浄化して礼の為に亜人連合国の竜が大陸の空を飛んだことを平民の俺たちに下知したのだ。問題が起こっても平民には関係ないと黙っているのが基本の城の人間が慌てて、騒ぎを収めにきた。

 

 「ああ。もうアルバトロスは終わりだとみんな嘆いていたからな。しかし竜が空を埋め尽くしたのは、黒髪の聖女さまが理由だったなんてなあ。前に治癒院で怪我を治して貰ったんだが、まだ子供なのに確りしているし寄付ができないなら、少額で何度か分けて払っても良いって言ってくれたんだ」

 

 幼いのに優しい方だよなあ、と同僚が呟いて言葉を続ける。

 

 「がめつい聖女さまに当たってみろ。問答無用で毟り取られるぞ」

 

 俺は彼の言葉にこくりと頷く。聖女も仕事なのだから仕方ないとはいえ、寄付代を払えない者だっているのだ。病気になって働けなくなると、直ぐに金は尽きる。日々を送ることに精一杯な者は顕著だろう。

 

 「そういえばリヒター侯爵家とフライハイト男爵家の聖女さまの評判を聞くようになったな」

 

 今名前の挙がった聖女さまは、貴族なのに治癒院が開かれると良く顔を見せていると噂で聞いた。最近、治癒院に赴いていないので真相は定かではないが、そういう噂が出回っている。

 噂は俺たち平民の娯楽だ。王都の街で起こったことは、割と直ぐに広まって話が大袈裟になったり、全く違う話になっていたりもする。噂に関わる者は気が気ではないだろうが、人々の口から口へ伝わり広まる訳である。

 

 「ああ。しかも美人と可愛いって噂が出回っている。あれ、リヒター家の聖女さまって評判悪くなかったか?」

 

 煙草の灰を地面に落とす。以前、軍人の知り合いから侯爵家の聖女さまの愚痴を聞いた気がするんだが。

 

 「前はな。高飛車で高慢ちきだったらしいが、去年の大規模討伐遠征のあとから随分と変わったらしい」

 

 なにがあったのかは知られていないのか。それともリヒター侯爵家が怖いから皆口を噤んでいるのか。まあ、なんにせよ評判の良い聖女さまが増えるのは悪い事じゃない。平民もきちんと治療してくれ、がめつくなけりゃ良いんだ。そうあってくれれば、俺たち平民は病気や怪我に悩まなくて済むのだから。

 

 「ふーん」

 

 「なんだ、興味ねえのか?」

 

 興味がないと言うよりも……。

 

 「興味なら黒髪の聖女さまの方が気になるな」

 

 これが正解か。俺も黒髪の聖女さまは何度か目にしたことがある。同僚が言う通り、他の聖女さま方より幼いのだが随分と確りしているし、一度で寄付を払いきれなければ少額で何度か納めれば良いし物納だって可能と聞く。

 

 彼女の肩には幼い竜がちょこんといる上に噂ではフェンリルとスライムを従え、屋敷の庭には天馬が住みついているのだとか。最も新しい噂では六枚翼の黒天馬まで庭で駆け回っていると聞く。

 彼女が一声かければ亜人連合国の竜たちが従うし、プライドが高いと聞くエルフも従うのだとか。魔力量の多さで亜人連合国の精霊が屋敷に居付いているとも聞く。なんにしたって噂の種には困らない人である。見た目は子供なのに。

 

 「あー……確かに。アルバトロス王やリーム王にドワーフ製作の長剣を贈ったと聞くな。貧民街出身で親もいないのに、女の身でよく貴族まで成り上がったもんだ」

 

 黒髪の聖女さまが成り上がれたのは、ひとえに豊富な魔力が備わっていたから。アルバトロスは障壁で国を護っているのだから、違う国に生まれていたら彼女は貧民街で野垂れ死にしていたかもな。

 最近、父親を名乗る人物が現れて王都の街をまた騒ぎに巻き込んだが。本当に話の種は事欠かないが、子供を捨てた親が名乗り出ても今更だろうし、黒髪の聖女さま本人も真意はどうであれ『親がいたとしても、赤の他人です』と公言している。おそらく、第二、第三の馬鹿を生み出さない為の処置だろうが、まだ年若い彼女にそんなことを言わせた父親に、全く同情ができない。むしろ名乗り出ず、静かに見守るだけで留めておけば良かったのに。

 

 「そうだな。東のアガレス帝国でも名前が知れ渡っているようだし、本当に凄い人だよ」

 

 アガレス帝国での行動もかなり噂が流れている。なにせ竜の大群がまた王都に押し寄せ、軍と騎士団が竜の背に乗って東の空へと消えて行った。一週間後に彼らは戻って来たのだが、まさか隣の大陸のアガレス帝国に向かっていたとは、王都に住む俺たちが予想なんてできるはずもなく。

 

 とはいえ、西大陸のどこかの国がアルバトロスと亜人連合国に喧嘩を売ったのかもしれないと、噂が流れていた。真相は東のアガレス帝国だった訳だが。平民にはアガレス帝国の『ア』の字も知られていなかったのだが、今回の件で東に大陸があり、帝国に並んで共和国という大国があると知った。

 世界は広いのだなあと感心するが、あの奇妙な空を飛ぶ塊が信じられない。だって鉄の塊が空を飛んでいるんだぞ。魔術でどうにかしていると聞いたのだが、鳥や竜じゃないのに空を飛んでいるのか不思議でならない。

 

 「なんだお前、気でもあるのか?」

 

 「は? なんでそうなるんだ!」

 

 同僚の唐突な言葉に驚いて、目をひん剥いてしまった。本当に何故そうなるんだ。彼女が平民出の聖女のままなら、まだ芽はあったのかもしれないが、今では爵位を得ている上に領地も陛下から賜っているのに。現状で彼女に手を出す馬鹿がいるなら見てみたいが。

 

 「だってそうだろう。恋する男そのものじゃないか」

 

 「馬鹿を言え! 平民の俺が彼女の隣に居られる訳がないだろう。そもそも王侯貴族選び放題じゃないか。俺なんか見向きもされねえよ!」

 

 確かに歳は近い。婿探しとなりゃ手を上げる奴が腐るほどいるだろう。ヴァンディリアの王子は失敗しているし、リームの第三王子はハイゼンベルグ公爵家のご令嬢と婚約を交わしたと聞いた。

 だが、アルバトロス王国の周辺国はこの二国だけじゃないし、亜人連合国だって候補者がいれば名乗り出るんじゃないだろうか。アガレス帝国や共和国は黒髪黒目を信仰していると聞くから、黒髪の聖女さまの伴侶になれると知れば有名どころを送り込んできそうだ。

 

 「そりゃそうだ!! てか、黒髪の聖女さまを手に入れる男はどんな奴だろうな」

 

 確かに気になるな。けどなあ……。

 

 「変な男を宛がわれたら、怒る奴が沢山いるぞ。彼女から恩を受けた王都の民は多いし、地方でも割と名が売れてる」

 

 確か、黒髪の聖女さまは十六歳だったか。有能故に貴族位を得ているのだから婚約者がいないのは珍しいが、そのうち陛下や後ろ盾のハイゼンベルグ公爵家やヴァイセンベルグ辺境伯家から男が宛がわれるはず。彼女に似つかわしくない者であれば、竜の方々が怒りそうだよなあと晴れ渡った空を見上げた。

 

 ◇

 

――亜人連合国・ドワーフの村。

 

 今日も今日とて、腕を振るい作品を鍛え上げる。もちろん手を抜いたりはしないし、納得のいかぬ物ができたとすれば世に出すことはしない。なにをどうして失敗してしまったのかを考え、次に繋げる。それが俺たちドワーフの職人という生き方だ。俺は刀剣類を鍛えるが、手先が器用なヤツは装飾品なんかも造る。

 若手である代表たちが奮起して、アルバトロス王国や西大陸の各国と取引を始めたので、俺たちも鍛えがいがあるというものだ。

 ま、もちろん市場の相場というものが存在しているので、一気に大量に品物を流す愚は犯さないし、代表たちからも人間の職人たちから仕事を奪えば以前のように亜人が差別されるようになると伝えられている。難しいことはわからないが、販売や流通は代表たちに任せておけばいい。

 

 「長老、歳なんだから無理はせんでくださいよ」

 

 炉に鉄をくべ、熱い視線を送る長老に声を掛けた。伝説の鍛冶師と言われ、何十年も前に引退したのに最近職人魂に火がついて復帰した。俺たちにとっても刺激になるし良い事なのだが、やはり年齢が年齢である。無理はしないようにと願っているが、職人の立場で彼を見ると、年齢を理由に注意するのは気が引けるが。

 

 「わかっておるわい。しかしのう……。アレを見ると、もっと良い業物が鍛え上げられるんじゃないかと血が騒ぐんじゃ」

 

 長老は壁に掛けてある二本の剣に視線を向けた。年季の入ったボロ屋に似つかわしくない、業物……どころか伝説になりそうな長剣。黒髪黒目のお嬢ちゃんの魔力を注ぎ込み出来上がった代物なのだが、最近、ちょっとした変化を見せ始めていた。

 鍛えた頃は刀身が光っていたが、最近は光の輝きが収まってきている。妖精の長であるお婆曰く『魔力が剣に馴染んだようねっ!』と面白そうに顔を緩めて教えてくれた。

 魔力が多く備わっているから時間が経てば経つほど、切れ味や性能が良くなるらしい。俺たちは一体どんな業物を造り上げたのだろう。

 しかし、それはあのお嬢ちゃんが居なけりゃ成し遂げられなかったことだから、お嬢ちゃんの…………いや、悪乗りしたのは俺たちドワーフか。長老まで出張ってしまったし、お嬢ちゃんだけの責任にするには申し訳ない。そもそも恩のあるご意見番さまの浄化儀式を執り行ってくれ、無事に葬送できた。恨み言を吐くべきじゃないな。

 

 「もっと良い剣ですかい。まあ確かに素材と魔力と俺たちの腕があれば造れるでしょうが……代表に止められましたよね?」

 

 流石に不味いと、代表から壁に飾ってある剣の質を上回るものは製作禁止令が下っていた。職人としては残念だが、致し方ない。

 

 「そうなんじゃよ。あの竜の坊ちゃん、真面目で融通が利かんからなあ。面白くない……お嬢ちゃん、またこっちにやってきてくれんかのう……」

 

 だからこそ、亜人連合国の代表を担っているのでは。俺たちドワーフは政治に無関心だし、精霊の長も自由気まま過ぎて亜人連合国に居ない。

 エルフの代表であるダリアとアイリスも割と自由だし、人間にさほど興味はない。他の種族の長もあまり政に関心がないよなあ。あれ、亜人連合が国として体面を保っているのは、竜の代表である『代表』がいるからこそなのか……? 彼の苦労が計り知れないが、適任者がいないならば担って頂くしかない。

 

 「そう頻繁にはこられないかと」

 

 「せめて鍛えて面白そうな素材でも持ち込んでくれれば良いのじゃが。なにか面白いものを鍛えたいのう~」

 

 でかでかと長い溜息を吐く長老を見る俺。それもう他人の力に頼り過ぎではないでしょうか。駄目だこのドワーフ。伝説の職人と言われているが、世間から離れて暮らしている時間が長い所為か、いろいろと物事の常識が欠けている気がする。俺も他のドワーフのことは言えないが、目の前の尊敬すべき長老よりは世間を知っている筈。

 

 『あ、あ、あ、あーあーあー。……おお、ようやく喋れた。しかしまあ、ここはどこなんだ? おい、そこの爺さんとおっさん! ここはどこだ!?』

 

 『…………』

 

 突然、聞き慣れない声がボロ屋に響く。なんとも不思議な声だった。喧嘩っ早そうな男の声で長老と俺に声を掛けている。掛けているのだが、答えて良いものだろうか。

 力がある剣であればドワーフの命を刈り取るのは簡単である。武力に特化している者であれば別だが、俺たちは職人だから戦闘力なんてものを期待されても困る。どうしたものかと長老と視線を合わせ、取り敢えず様子を伺おうとお互い無言で頷く。

 

 『なあなあ、答えてくんねえかなあ? 薄らぼんやりと覚えているんだが、なーんか感じが違うんだよな。空を飛んでいた記憶もありゃ、どこかでずっと人間に拝まれていた記憶もあるんだよなー』

 

 どうやら以前の記憶があるらしく、推測するに邪竜の思念を閉じ込めた魔石を鍛えた剣の声だろう。リーム王国で聖樹として崇められていたこともあるからな。

 

 『おーい、おーーい! 聞こえていますかあ~? なんだ、耳が遠いのか。ま、しゃーねえな、よぼよぼの爺さんとおっさんだしなあ……歳の所為で老化するのは生きる者の宿命だからなあ』

 

 好き放題言っているな。単純に意識が目覚めて周囲の状況を飲み込めていないらしい。敵意も感じられないので、長老と視線を合わせて頷いた。お嬢ちゃんの魔力で鍛えられた剣であるが、一応俺たちも製作者である。酷い事にはならないはず、と半歩踏み出して剣の前に立つ。

 

 「ここは亜人連合国、ドワーフの村だ。ついでに鍛冶場だな。俺たちが魔石を鍛えて、長剣である貴方を鍛え上げた」

 

 業物になったのはお嬢ちゃんのお陰だが、それだけじゃあ目の前の剣にはならないからな。やはり剣を鍛えた俺たちの腕あってこそだ。

 

 『なんだ、耳が遠い訳じゃないんだな。さっさと答えてくれりゃあ良いのに、俺サマに遠慮しやがって。――って、剣? 剣っつたのか? 人間や亜人が使う、あのみみっちい剣?』

 

 え、は、うん、なん……だと……と剣が静かに呟く。そうして訪れた一瞬の静寂の後。

 

 『――竜の姿じゃねえぇえええええっ!!!!』

 

 耳をつんざく、大音声が響いた。剣が叫んだ衝撃でよくボロ屋が壊れなかったな。良い声で凄い音量の男の声が響いたのだが、後からみんなに説明しなきゃなあ。大変なことになったが、剣が喋るなんてもう伝説クラスである。現に俺の横に立つ長老は感動でプルプル震えているし。

 

 『五月蠅いわよ! 馬鹿剣! もう少し、品良く喋ることができないのかしら?』

 

 「え?」

 

 『なあ!?』

 

 「おっほ! ええ声じゃのう。どうせ聞くなら濁声の男の声より、若い女の声の方が良いわい」

 

 驚くことに、もう一本の剣からも声が聞こえる。声の主は随分と透き通った女の声だ。大音声で叫んだ男の声と違って、キツイ言い方ではあるが知性と品を感じる。というか長老、いろいろと駄々洩れです。なにとは言いませんが。ずっと憧れていた俺の尊敬がどこかに吹き飛んでいった瞬間だったかもしれない――って話が逸れている。

 

 『なんだお前! 急にしゃしゃり出てきて俺サマに注意なんざ、良い度胸だな』

 

 邪竜の剣が白い剣に抗議すると、魔力が漏れているのか白剣が淡く光った。

 

 『……本当によく喋るのね。少し黙って頂けないかしら。さっきから私の横で五月蠅いのよ、駄剣。剣だというならば黙って飾られていれば良いのよ。まあ、観賞用じゃあつまらないし、時折実戦にも連れ出して欲しいけれど』

 

 腰が抜けそうな程良い声だし色気があるんだが、言っていることが少々物騒で駄剣と称した剣と大差ない気がするのだが。なんだろう、この状況は。

 

 『うっせえ、うっせえ、うっせえてーのっ! 白い刀身で清楚さを出したいんだろうが、そんなキッツイ物言いじゃあ主人(マスター)なんて見つけられねえぞ!』

 

 む。マスターときたか。どうやら彼らは相応しい持ち手を望んでいるようだ。流石喋る剣である。使い手を選ぶのかと感心していると、白い剣が更に光ってなにかを主張し始める。

 

 『なにを言っているのかしら、駄剣。貴方こそ、黒い刀身で力を誇示したかったようだけれど、そのお喋りの所為で全然強そうに感じないわ。それに、私の主人(マスター)ならもうすでに見つけているもの。嗚呼、貴方のような人格破綻者に合う使い手なんて、この世にいるのかしら?』

 

 どちらも十分に言葉を理解し流暢に喋っているのだが、なんだか物騒な言葉を端々に感じるし、白い剣が言ったマスターとやらは一体誰なのか。黒髪のお嬢ちゃんの姿が一瞬頭に浮かんだが、彼女は聖女だから戦闘は魔術をしようするし基本的に後方支援だろう。剣を持って振り回すことはない気がするが……。

 

 『……うっわ。マジうぜえ! 良いぜぇ、喧嘩なら買うぞ!!』

 

 『嫌よ。言い争っている暇があるなら私のマスターを探すために、この場から動く方法を考える方が建設的だもの』

 

 黒い剣と白い剣がまだ言い争っている。これ、どうしようと長老に視線を向ければ、どうにもならんと長老の目が訴えていた。仕方ないな、と息を吐く。

 

 「あのう……そろそろ言い争いはそこまでに……――」

 

 『――うっせえ!』

 

 『――少し黙って頂けるかしら?』

 

 止めに入った俺の言葉は文字通り、一刀両断されて。

 

 「ア、ハイ……」

 

 どうしようかと悩んでいると、丁度、代表とお婆が気配を感じて鍛冶場に姿を現すと、見ず知らずの者が一緒にやってきた。はて、一体誰だと首を傾げながら、事態説明を始めた俺たちだった。

 

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