魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0326:呼び出しされた。

 凄く良い声を発する白い剣に望まれたのだけれど、流石に私の腕の中に抱き留めるようなことはしない。柄を握って、握り心地を確かめるくらいだ。

 剣の扱いに慣れているジークとリンのレクチャーを受けながら、白い剣の柄を握って掲げているけれど、儀仗兵の大変さを身に染みて理解している所。動かず構えているだけって凄く体に負担が掛かる。ジークとリン曰く、重たいものを持って微動だにしないのも訓練方法のひとつとしてあるのだとか。

 

 『ああ! マスターの可愛らしい手が私の柄に触れている!!』

 

 そもそも白い剣を私の『ナニカ』に従えた覚えはないのだけれど。ディアンさま曰く、私が魔力を注ぎ込んだから白い剣が『主』と呼んだのだろうって。周りの方々が引いているのを感じつつ、白い剣のテンションはマックスだ。ロゼさんが影の中で黒い靄を発生させている気がするけれど、きっと気のせい。

 

 『気持ち悪いな、コイツ……。というか、黒髪の嬢ちゃんには刀身が長すぎて扱えねーだろ。危ねえぞ』

 

 黒い剣が至極当然のことを言った。私の身長と比べると、白い剣の刀身は随分と長い。なので鞘から抜いても途中で止まってしまう。凄く情けない光景だけれど、真実なので認める他ない。

 

 『はっ! 馬鹿を言わないで頂戴、駄剣。私は刀身の長さに大きさ細さはマスターが好むものに変わることができるもの。問題なんてなにもないわ!』

 

 ふふん、と得意気に白い剣が言ったのだけれど……長剣である。鍛えていない一般人が長い間同じ体勢で持つことは不可能な訳で。

 

 「……重い」

 

 というのが正直な感想だった。

 

 『あ……』

 

 へにょと立派な刀身が曲がった気がするのは気の所為だろうか。何故か私の肩の上に乗っているクロも、剣につられてへにょと首を下に垂らした。悪い事を言ってしまったなあと反省するけれど、白い剣も白い剣でヤバ目な発言をしていたのだからお互い様である。

 

 『ぶふぅ! 重さは変えられねぇのな!!』

 

 くくく、と黒い剣が笑ってる。白い剣と黒い剣の相性は悪いのだろうか。二対の剣として栄えるし、鞘も柄もドワーフの職人さんが拵えたので貴族のお屋敷の壁に飾ってある刀剣類より立派。

 なのに発言で損をしている。二本の剣が格好良くちゃんとした発言をすれば、凄く趣きのあるものになるのに、どうして残念時空に包まれてしまうのか。剣の重みで腕がぷるぷる震え出したし、そろそろ元の場所に置いても良いだろうか。私の腕の状態を把握した方々が、置いても良いと目線で教えてくれた。

 

 『ああ! マスターが……マスターが遠くに行ってしまわれる! え、ちょっと……どうしてですか、マスター!』

 

 『え、俺も? 俺もかよ!?』

 

 元の場所に戻すなり、この言葉である。よし、確認したのだから箱の蓋もきちんと戻さなきゃ。しかしまあ……こんなことを言っては申し訳ないが、本当に今日の要件はこれだけが理由なのだろうか。私を呼び出す理由にしては少し弱いなあと首を傾げると、ディアンさまとダリア姉さんとアイリス姉さんの表情が一転する。どうやらこれからが本題らしい。

 

 「さて、ここからは少し込み入った話になるが気負わず聞いてくれ。――入っていいぞ」

 

 ディアンさまが来賓室の扉に視線を向けると、ドアノブが静かに動いて扉が開く。そこには背の高い凄く強面の男性と私より少し背の低い少女が立っていた。

 西大陸では見かけない装束を纏う目の前の二人は、亜人連合国の方たちが纏う空気とは違うもので。東大陸でみた衣装とも違うし、北か南大陸出身の方だろうか。ディアンさまが紹介したのだから、気になることはそのうちに分かるだろうと疑問は頭の片隅に追いやった。

 

 「失礼するのじゃ」

 

 「失礼いたします」

 

 背の低い少女が随分と年寄り臭い言葉を発し、強面の男性は丁寧な物言いで頭を小さく下げる。私たちも席から立ち上がって、彼らに頭を下げた。

 目の前の女の子の年齢がいくつか分からないけれど、私より背が低いのは珍しいのではないだろうか。顔立ちからして、幼さは残りつつもちゃんと女性を感じる顔つきだ。私より一、二歳年下くらいが妥当な所か。まあ、亜人連合国なので見た目で判断すると恥をかきそうだけれど。ちょっと嬉しくなりながら、ディアンさまを見る。

 

 「彼女たちは北大陸の"魔人"でな。我々亜人連合国に保護を求め、我々も国の理念に基づき彼らを保護することを決めた」

 

 魔人……て一体なんだろう。単純に魔の人なのだろうけれど、部屋に入ったお二人は普通の人である。だというのに魔人と呼称されるのか。亜人と呼称されないのか。

 

 「ディアンさま」

 

 話の腰を折って申し訳ないけれど、気になるので手を上げてみた。

 

 「うん、どうした?」

 

 私が名を呼んだ彼は小さく笑みを浮かべて質問を促してくれたので遠慮なく問うてみた。――魔人とは、と。

 

 「その疑問には私が答えるべきじゃろう」

 

 小柄な少女が真剣な顔で、私と同じように小さく手を上げて説明してくれた。

 

 大昔。北大陸の更に北の地は神々が住む大地で気ままに長き時間を生きていたらしい。

 

 小さな土地であるが、この世界におけるはじまりの大地で力のある神さまが沢山いたとか。力ある者がいるならば、力を誇示したい者が現れる訳で。

 神の頂点に立つことを目的に問答無用に他の神さまをぶちのめす者が現れて暴れ回っていたのだが、当然周りから煙たがられる。個々人で好きに暮らしていた神さまたちがこの時ばかりは結託して、悪い神さまを逆にぶちのめしたそうだ。犯した罪の罰として、弱体化処置と永遠の命を剥奪され北大陸に追放された。

 

 『お前は同族殺しの汚名を負った神ならざる者だが、我々は慈悲深い。命までは奪わぬ。神の力を失ったお前が極寒の大地でどこまで生き延びられるか……我々はこの地から見ていよう』

 

 お偉い神さまから有難い言葉を頂いて、神さまたちの楽園から追放されたとのこと。そうして追放された神さまは北大陸で子孫を残し朽ち果てた。

 彼女たちは悪い神さまの子孫という意識は薄いのだが、確かに人間よりは力があり、頭の回転も早い。何故か魔物を従わせることができる。そんなことから『魔を従える人』として『魔人』と呼称されるようになったとか。人間とは相容れず、彼ら魔人はひっそりと北大陸の片隅で小国を築きあげ静かに暮らしていたのだが転機が訪れた。

 

 「神殺しの血を色濃く引く者が現れたのじゃよ」

 

 少女が目を伏せて口にした。神を殺した神の容姿は真っ黒な髪に一房赤色のメッシュが入り、金色の瞳なのだとか。

 

 ――あ。

 

 目の前の彼女が該当するなあと、視線を合わせる。

 

 「まあ色濃く血を引いていると申しても、伝承に基づいた外見だけ。あとちょっぴり他の魔人より命が長いくらいなのじゃがな……運が良いのか悪いのか。私が生まれたことで勇者を名乗る者が現れた」

 

 たった一人で魔王討伐を掲げてな、と最後に言葉をつけ足した。

 

 「魔王と魔人は違うものではないのですか?」

 

 単純な疑問が、ふいに口から漏れていた。魔の王と魔を従える人では随分と違うような。

 

 「人間の伝承では黒髪に赤い一房の髪と金色の瞳が魔王の証拠なのじゃ。でな、私の横にいる男は随分と強面じゃろう。カツラを被って魔王を装い勇者と戦って死んだふりをしてもろうた」

 

 確かに彼の目は金色だけれど。え、そんなので騙されるのかな……。騙される勇者って本当に勇者なのかな……。随分と間抜けなような。少女の横にいる男性の額の両端からは随分と立派な角が生えて、片方の角が途中から折れている。勇者に倒された時に、記念に貰うと言って折られたのだとか。

 

 「我々魔人は数が少ない。勇者と戦う気もなかったのでな、新天地を求めて西大陸へと渡った。そして運よく彼の国に流れ着いたのじゃ。代表殿も支援してくれるというし、暫くの間世話になろうと考えておる」

 

 「ああ。我々の掟を破らぬならば、亜人連合国内に限っては好きにすればいい」

 

 制約はいろいろとあるけれど、ルールを守るなら好きに過ごせば良いと代表さまが。そういえば亜人連合国のルールってなんだろう。他国だし口を出すべきじゃない上に、亜人連合国のルールに関わることもなかったしなあ。

 

 「ああ、簡単よ」

 

 「盗まず、犯さず、殺さず、だよ~」

 

 ダリアねえさんとアイリス姉さんが『ね、単純でしょ』と私にウインクした。確かに単純で分かりやすい。でもこの三つのルールだけでは国家運営は無理だから、きっとなにかしら細かい掟はあるだろう。単純に亜人連合国が掲げる一番の理念としてこの三つが上がっただけで。

 

 「本当に感謝せねばなあ。とはいえ着の身着のままで逃げてきた身。恩を返すには時間がかかるのじゃ」

 

 北大陸の魔人国家から逃げてきたのは五十名ほど。国家というより限界集落と称した方が正解のような……。

 

 「なに。我々は長く生きる。ゆっくりでいいさ。――そろそろあの話を」

 

 「ああ済まぬ、代表殿。勇者が西大陸に目をつけておってなあ。一応、勇者じゃし普通の人間では敵わぬ。忠告も兼ねてこちらに逃げてきたのじゃが……。対応できるかのう?」

 

 なんだか一瞬にして雲行きが怪しくなってしまった。どうやらディアンさまはアルバトロス上層部にはこの話を通しているそうだ。宰相閣下と公爵さまに呼ばれたのはこの件かな。まあなんにせよ。勇者が直ぐに興味を失って、北大陸で大人しくして頂く他ないなと目の前の少女に苦笑いを浮かべるのだった。

 

 ◇

 

 ――亜人連合国の領事館へ向かった翌日。

 

 宰相閣下と公爵さまからの召喚日が決定したのだけれど、今日って早過ぎじゃないかな。確認したいことがあるので問題はないけれど、そういえば私の冬休みは何処に行ったのだろうか。でも聞きたいこともあるし、ベストなタイミングだったのだろう。北大陸で起こった魔人追放の件と勇者の件が、西大陸のアルバトロス王国上層部にどう伝わっているのか気になるし。

 

 「厄介なことにならなければ良いが……」

 

 「ですわね。アガレス帝国の件も遠い場所だからと高を括っていましたら、拉致でしたものねえ」

 

 ソフィーアさまとセレスティアさまが神妙な顔で仰った。執務室で護衛として控えているジークとリンも微妙な顔を浮かべているから、また私が面倒事に巻き込まれてしまうのではと心配しているようだった。

 

 「ナイが関わると良い方向に飛躍するか、底まで落ちてしまうかだからな」

 

 「敵であるなら底まで落ちてしまえば良いではないですか。ミナーヴァ子爵が間違えた選択を取るとは思えませんし」

 

 困ったような呆れたような顔を浮かべるソフィーアさまに、ばさりと鉄扇を広げて不敵な視線を私に向けるセレスティアさま。

 セレスティアさまが私の事をわざわざ子爵と呼んだのは、貴族として間違えた道を私が進まないという信頼の表れなのか。個人としても貴族としても認められているなら有難いことである。城での面会が終われば、アガレス帝国からようやく届いたさつまいもさんを食すことができるので、今日は凄く良い日に……なると良いなあ。

 

 「さて、そろそろ出発の時間だ。待たせてしまうのも問題だからな、行こう」

 

 ソフィーアさまの言葉に頷く。みんな登城用の衣装に身を包んでいるので、あとは馬車に乗り込むだけだ。執務室を出て屋敷の廊下をあるいてエントランスホールに出ると、侍女さんたちや屋敷で働く方たちが見送りの列を成している。

 その中にしれっとジルヴァラさんが交じっている上に、子爵邸の人たちは誰も気にしていない状況である。馴染むのが早すぎやしませんかねえと横目で見ながら通り過ぎて、外に出るとエルとジョセとルカまで見送りに来てくれていた。

 ぐしぐしと私に顔を擦り付けるルカと『私が馬車を引きましょうか?』と言っちゃうエルに『王都が大騒ぎになるから……』と理由を付けて断る私。その横でジョセが面白そうに目を細め『いってらっしゃいませ』と言葉をくれた。そうして馬車に乗り込み王城へと向かう。途中、セレスティアさまが『天馬が馬車を引く……なんて素敵なのでしょう』と馬車の窓から外を見つめていた。

 

 城門を抜けて馬車回りに馬車を止めジークのエスコートで馬車から降り、出迎えの近衛騎士さまたちの後ろに控えて城内を進む。

 

 貴賓室に案内されて席へ座る。お尻が随分と沈むなあと微妙な顔を浮かべていると、公爵さまと宰相閣下が一緒に姿を現した。椅子から立ち上がり、お二人に向けてゆっくりと頭を下げると後ろに控えているソフィーアさまとセレスティアさま、ジークとリンも頭を下げた。

 

 「久方振りだ。ナイ」

 

 「お久しぶりでございます。ミナーヴァ子爵」

 

 軽く手を上げた公爵さまと、小さく頭を下げた宰相さま。昨日のことで緊張感を持っていたのだけれど、お二人からは緊張など感じられない。あれ、一体どういうことだと首を傾げながら着座を促されたので、すとんと腰を下ろした。

 

 「またお前さんは妙な者を連れ帰ったようだな」

 

 公爵さまがにっと笑い、彼の横に座った宰相さまも困ったような顔を浮かべ。妙な者ってジルヴァラさんの事だろうか。私が連れ帰ったというよりも、彼女が付いてきたと言う方が正しいのだけれど。

 

 「ハイゼンベルグ公爵。本題に参りましょう」

 

 「ああ、すまん。では宰相殿、頼む」

 

 宰相さまが公爵さまに声を掛けて、本題へと移る。本当は陛下もくるはずだったけれど、執務が忙しいらしくこれなかったとのこと。

 宰相さまが私に向けて差し出されたのは一通の書状である。お二人の顔を見つめると『手に取って読んで見ろ』と言われ、失礼しますと断りを入れて手に取った。つらつらと書かれた文字に目を通す。どうやら、北大陸にある一番大きな国からの書状らしい。東大陸のアガレス帝国のことがあまり知られていないように、北大陸のこともあまり知られていない。

 

 ――神聖大帝国。

 

 と書状の最後に書かれた文字を見るに、アガレス帝国よりも随分と国力が高そうだなあと目を細めた。書状の内容は最近西大陸で名を馳せているアルバトロス王国に興味があるので、神聖大帝国に前途ある若者を留学させてみないかというお伺い。交流もなにもないはずなのに、いきなりのことで面を喰らう。ぽかん、と何を言っているのかイマイチ理解できないと公爵さまと宰相さまの顔を見た。

 

 「一応、前から接触はあったのだがな。ここまで大きく出たことはない。おそらくナイの話を聞いて興味を持ったのだろう」

 

 公爵さまが足を組み替えて、腕を組んで息を吐いた。前から接触があったとは驚きである。まあ、アルバトロス王国上層部だけが知っている情報だったのだろう。知る必要がないと判断を下されれば、下の者が知ることはないのだし。それに恨み節を唱えるのも筋違いだし、こうして問題が起こりそうになる前に相談してくれているのだから。

 

 「神聖大帝国と名乗っている通り他国の聖女に興味があるようで、我が国と同様のものを聖王国にも打診を出しているそうです」

 

 宰相さまが語るには、神聖と名乗っているには理由があるとのこと。国の成り立ちが神さまが北の大地を造り上げ、人間に与え王さま……彼の国で例えるなら大皇帝を任命したのだとか。

 そこから三千年というかなり長い歴史を持つ国らしい。神さまが与えた国なので三千年という長い時間平和だったのだろう。もちろん内戦とか紛争はあるかもしれないが。他国の事なので、予想の範疇をでないのでなんとも言えないけれど。

 

 「……三千年。途方もない年月ですね」

 

 私の言葉にクロがこてんと首を傾げた。そりゃクロの前であるご意見番さまは何万年と生きているから、三千年なんて短いのだろうなあ。人間にとって言い直せば、一年とか十年くらいの感覚かもしれないし。それでもまあ、私たち人間からすれば長い長い月日だ。

 

 「我々からすれば、な」

 

 「ですねえ」

 

 ふふ、とクロに向けて苦笑いをする公爵さまと宰相さま。肩の上のクロに右手を出して、手に移って貰い膝上に移動させると、ちょこんと乗って『どうしたの?』と私の顔を見上げるクロ。なんとなくね、と視線で返すと納得したのか、公爵さまと宰相さまの方へ顔を向けた。どうやら神聖大帝国に興味があるらしい。

 

 「ちなみにな……向こうさんから使者も送られてきておる」

 

 「機を狙い過ぎでしょう。亜人連合国には北大陸から逃げてきた『魔人』がおります。北でなにが起こっているのか情報が少ないのが手痛い所ではありますね」

 

 神聖大帝国の使者さんはマトモな方なのだそうだ。今の今までの使者の人が碌なイメージがない所為か、意外である。てっきり国力の差でふんぞり返って偉そうに振舞っているのかと思ってしまった。

 あとアルバトロス王都や各領地の視察にも赴いているのだとか。良い所があれば取り入れるし、逆にアルバトロスに足りない所があれば指摘してくれている、と。指摘も助言も的確で、アルバトロス上層部は驚いているのだとか。――で、本題はなんだろう。

 

 「あと少しすれば向こうさんの第一皇子と皇女がアルバトロスに参られ、西大陸に接触を図った理由を説明なさってくれるそうだぞ」

 

 今アルバトロスにきている使者は先行者なのだろう。本国に皇子さまがやってきても大丈夫と連絡を入れたに違いない。不敵に笑いながら公爵さまが、向こうの皇子さまがどんな人なのか楽しみのようだった。

 

 「使者の雰囲気から察するに、馬鹿な行動にでるとは思い難いですが……先ずは先方の出方を窺うべきかと。後手になってしまいますが、安易に敵に回してしまうような行動は取れませんからね」

 

 宰相さまの言葉にこくりと頷く。確かに下手に動けず後手に回ってしまうけれど、致し方のないことだろう。アルバトロス王国の国是は周辺国と調和路線で政の舵をとっているのだから。無暗に敵を作るのは得策ではないし、周りの国に被害を及ぼす場合もある。

 

 「神聖大帝国がアルバトロスに接触したことは、西大陸の各国と東大陸の帝国と共和国に通達済みです」

 

 無用な探りや勘繰りをされないように配慮してのことらしい。神聖大帝国と手を結んで、西大陸の覇権を狙っているなんて勘違いされても困る上に、勝手に神聖大帝国と接触を図られても困るから。

 もし北大陸の覇者である神聖大帝国との繋がりを得たいならば、アルバトロスを介して紹介もすると伝えているそうで。国同士の国交はそれぞれの国の王さまやお偉いさん方が決めるので、益を得られると判断されれば大帝国と接触を試みるのだろう。アルバトロス王国を介せば、正式ルートとなり堂々と交渉できる。

 

 南の大陸に伝手がないので、今回の件が伝わらないことでどうなるかは分からないが、外交ルートが存在しないのだから諦める他ないと教えられた。東のアガレス帝国と共和国も南大陸の外交ルートは存在しないようで、閉鎖的なのかなあ。分からない上に情報がないので知ることができないから、一旦棚の上に置くべき案件か。

 

 「ナイ。神聖大帝国から新たな使者が派遣されれば、謁見の場が設けられる。お前さんも同席しなさい」

 

 「はい。承知いたしました」

 

 公爵さまから告げられれば、私に断る権利はない訳で。どうやら向こうの第一皇子殿下と第一皇女殿下との面会がありそうだ。うーん。魔人の件に勇者の件。

 そして神聖大帝国がアルバトロスに興味を持っていること。はてさて、これらの話がどう絡まるのか。それとも全く関係なく進むのか。今はまだ、なにも分からないなと貴賓室の天井を見て、深く息を吐く。ん、あれ? 勇者さまが西大陸に目を付けているのではないのか。話に齟齬があるなあと、公爵さまと宰相さまに改めて顔を向け。報告書で提出した内容と同じだけれど、昨日の出来事を説明するのだった。

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