魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
――神聖大帝国から使者がやってきている。
この噂を耳にした時、なにかの引っ掛かりを感じていた。どこかで聞いたことがあるような、ないような言葉に首を傾げている状態なのだが、喉に小骨が引っ掛かったままのような感覚。思い出せないむず痒さを感じながら数日。アルバトロス王立学院、特進科二年に所属する俺、ことエーリヒ・メンガーは、三学期が始まり真面目に学院へと通い自席でぼーっと教室を眺めていた。
教室内は平和そのものだが少し変わった雰囲気を感じ取っていた。乙女ゲームの悪役令嬢であるソフィーア・ハイゼンベルグ公爵令嬢とリーム王国第三王子殿下であるギド・リームとの距離が少し詰められているような。二学期までは朝と帰りにハイゼンベルグ嬢がギド殿下に対して、無言で頭を下げるくらいだった。三学期初日から朝と放課後に一言二言、二人が言葉を交わしているのだ。
婚約発表されているから驚くことではないのだが、堅物気味なハイゼンベルグ嬢が少しだけ、ほんの少しだけ優しい顔をしているのだから不思議なものである。
横恋慕なんざ全くする気はないし、むしろ俺が手を出せば第二のアリス・メッサリナとなってしまう。なので教室の片隅で二人の幸せを祈るだけだ。身分と立場を背負っている二人なのだ。ちゃんと責務を果たしている彼らに、穏やかで幸せな時間があっても良いだろうと願わずにはいられない。
セレスティア・ヴァイセンベルグ辺境伯嬢とマルクス・クルーガー伯爵令息も相変わらずの関係だし、聖王国の大聖女である、フィーネ・ミューラー嬢もアリサ・イクスプロード嬢と仲良さげに過ごしている。黒髪の聖女であるナイ・ミナーヴァ子爵も自席にちょこんと座って、なにかしらの本を読んでいた。
味噌と醤油の進捗が捗っていないことに落胆しているが、俺と大聖女さまに頼っているので強くは出られないようだ。俺や大聖女さまを味噌と醤油開発に全力を注がせることもできるのに、俺たちから得た情報で自分で四苦八苦しているのは好感が持てる。俺も味噌と醤油が欲しいので、なるべく協力したい気持ちはあれど、専門的に習っていた訳ではないから難しい。
味噌と醤油開発以外は至って平和なのだが、やはり神聖大帝国の噂が気になって仕方ない。でも俺が知れることは限られているし、北大陸の覇者である神聖大帝国からの使者と絡むことなんてないのだから、考えても仕方ないのかもしれないが。
「エーリヒ。どうした、浮かない顔をして」
「ん、ああ。少し考え事をな」
噂好きな友人が、暇だったのか俺に声を掛けた。思考の海から引き揚げられ、友人の顔を見上げる。目の前の友も一応噂は把握しており、登校していの一番に神聖大帝国の名前を口にしている。
使者がアルバトロス王国に来ていることは噂として流れているが、使者がアルバトロスにやってきた目的は噂されていない。情報統制されているのかもしれないし、うかうかと喋る訳にはいかないのだろうか。
「神聖大帝国……大層な名前だよなあ。なんでこんな名前を付けたのやら……」
友人が小さく息を吐いて、口にした。本当に、大層な名前である。東大陸のアガレス帝国の名前を聞いた時でも大仰な名前だと感心したのに。さらに上を行く国があるとは……そういえば神聖大帝国と呼んでいるが、国名は……なんだったか。
「確か、二千六百年くらい歴史があるんだったか?」
二千六百年といえば、前世の日本と同じくらいだな。神話の時代からカウントされているから、本当はもう少し国歴は短いかもしれないが、初代さまから数えて脈々と男系を維持している。貴族制度を採用している国に貴族として転生した所為か、日本の歴史の長さに改めて凄いと感心した。あれ。日本と同じ……日本と同じ……どこかで。
――ミズガルズ神聖大帝国。
とある成人済み男性用パソコンゲーム……ようするにエロゲに出てきた国の名前がコレだった。喉に引っ掛かっていた小骨が取れたような気がして、片手で口を塞ぐ。余計なことを口走る訳にはいかないし、丁度良いとそのままにしておく。
「エーリヒ?」
「ああ、すまん。何でもないんだ。ちょっと用を足してくる」
なんだ糞か、と口にした友人に苦笑いを浮かべて席を立った。そうして男子用トイレに急ぎ足で入り、個室の便座に腰を下ろして頭を抱える。
どうして俺はすっかり忘れていたのだろう。この世界が乙女ゲームの世界と信じ込み、大聖女さまの話を聞き乙女ゲームのイベントはもう起きないかと安堵していたことに。ミズガルズ神聖大帝国はエロゲなのだから、乙女ゲーに詳しい大聖女さまを責めても意味がない。
けどなあ……愚痴を吐かせて貰うなら、乙女ゲーメーカーの母体はエロゲメーカーだと知っていて欲しかった。……いや、思い出せなかった俺も悪いか。偉そうに乙女ゲーの内容を語りながら、世界観の繋がりなんて全く意識していなかった。
そう。姉妹ブランドだから、世界観を共有することだってある。というか母体ブランドのエロゲが売れ、新たに乙女ゲーブランドを立ち上げて新規の客を掴もうと出した作品が『白薔薇の庭』や続編作なのだから。
で、問題のゲームの内容である。脳の奥底に仕舞われている記憶を引っ張りだす。確か神託で勇者の称号を得た主人公が魔王を倒しに行く話だった。その間にヒロインたちと出会って、恋をして……まあヤることをヤる話。
エロについては……正直に告白しよう。エロかった。エロいと評判だったから気になって買った。シナリオはそれなりだった記憶がある。エンディングまでダレずにプレイができたのだから。
俺は乙女ゲームを配信していた配信者の別動画でこのゲームの存在を知った。エロシーンについては、見せられないよ! ということで気になってしまい買ってプレイしたのだから、まんまと配信者の術中に嵌ったのだろう。
普通、ノベルゲームの動画配信なんて著作権侵害で訴えられる。シナリオ勝負の側面があり、盛大なネタバレをしている状態なのだから。けれどメーカーはシナリオに自信があったのか、随分なボリュームをプレイ公開可能としていた。だからこそ俺は動画を見て、ゲームソフトを買いパソコンにインストールしたのだから、メーカーの思惑にまんまと引っ掛かった訳である。
「けど、ゲームじゃあ西大陸も東大陸も名前なんて出てこなかった……」
トイレには誰もいなかったし、入る気配もないので問題ないと便座の上でぼそりと呟く。確か魔王を倒した勇者は神聖大帝国の第一皇女さまと婚約したルートもあった。他にも聖女に女聖騎士に魔術使い。いわば王道の冒険物ファンタジーだろう。エロシーンが入るけど。取り敢えず、大聖女さまとシナリオやゲームの内容を告げて纏めたら、ミナーヴァ子爵を介して国に奏上してもらおう。
ゲームの時間軸とズレているかもしれないが、時間軸をすっとばして絡んでくるかもしれないし、俺が死んでから新作ゲームをだしているかもしれない。だから気を抜かない方が良い。アガレス帝国の件のように問答無用に巻き込まれることだってあるのだから。二度目はないように、回避できるように立ち回らないと。
――気合を入れて便座から立ち上がる。
言い訳をすると、エロゲにも様々なジャンルがあり、抜きゲー、泣きゲー、鬱ゲーに燃えに萌えとか、細分化されているジャンルである。それだけは知っていて欲しい。でも俺がプレイしたゲームは……抜きゲーだよなあ。エロいと評判で気になってしまったのだ。……これも言わなきゃいけないの? 俺、俺の立場は大丈夫かな……。
前世組が女性ばかりだから、俺、変態だと思われないよね?
あははははは。でも、言わなきゃな。覚悟を決めて、トイレで手を洗ってから教室に戻る。そうして神妙な面持ちで大聖女さまの前に立つ。いつもはミナーヴァ子爵の呼び出しで、サロンに赴き言葉を交わすのだが。
俺から教室で話かけるのは初めてで、誰も彼もが俺の行動に目を剝いていた。落ち着き払っているのは、ハイゼンベルク公爵令嬢とヴァイセンベルグ辺境伯令嬢にリームの第三王子殿下と意外にも赤髪のマルクス・クルーガーくらいだ。ミナーヴァ子爵もぎょっとしているが、ただそれだけ。男連中のように俺の行動に対して『おおおおお!?』と沸いているが、驚いている様子はない。
「申し訳ありません、少し話したいことがありお時間を頂けると嬉しいのですが」
いけエーリヒ、どうしたエーリヒ、押せ押せエーリヒと声が聞こえるような気がしてならないが、周りの声に言葉を返す余裕はない。ぽかんとした大聖女さまには申し訳ないが、いろいろと話を詰めておきたいことがある。俺が無意味に話しかけることはないと知っている彼女は、真顔から小さく笑い。
「はい、構いませんよ」
そう、告げてくれたのだった。
◇
――教室で大聖女さまに声を掛けた日の放課後。
予定があるはずだろうに、彼女は俺に直ぐ時間を割いてくれた。待ち合わせ時間前、学院のサロンに足を向けて廊下を歩く。ただの伯爵家子息の俺に護衛はいないが、聖王国の大聖女さまである彼女には護衛が就いている。俺が彼女に声を掛けて話をするにしろ、二人きりになることはない。
ないのだが、大聖女さまの護衛は『どこまで知っているのだろう?』。それによって情報開示度合いがちがってくるのだが。とりあえずはゲームのシナリオに関わりそうな事態が起きていると伝え、擦り合わせを終えた後にミナーヴァ子爵に伝えられると良いのだが。子爵に伝われば、アルバトロス上層部に知らされるだろうから。一応、俺も上層部に繋がるルートを持っているが、俺が報告するより、影響度は子爵の方が大きい。
サロンの予約は大聖女さまが済ませてくれた。俺が予約するよりも、彼女が予約する方が申請受理されやすい。
「失礼します」
扉を開けて一礼してから、顔を上げる。サロンには大聖女さまが席に座って俺の顔を見て……あれ、なんでミナーヴァ子爵までいるんだ……。まあ、二度手間にならないから良いのか。良いのか……?
「メンガーさま。フィーネさまに話を聞いて、同席を申し出ました。もし、個人的なお話であれば私は退室いたします」
大聖女さまもミナーヴァ子爵も話が早くて助かる。部屋に入った最初こそ、何故黒髪の聖女がと驚いたが、大聖女さまが機転を利かせて話してくれたのだから。彼女の質問に答える前に、席へ腰掛ける。だって、ミナーヴァ子爵が同席していても問題はないのだから。
「問題はありません。話の内容は最近噂のミズガルズ神聖大帝国についてですから」
俺が今日話したいことを告げると、大聖女さまとミナーヴァ子爵は顔を見合わせて真剣な面持ちとなり、聖王国側の護衛数名が退室を促された。なにやら物言いたげな護衛数名だったが、守るべき主から言われてしまえば部屋から出て行くしかない。残る護衛に頭を下げて、静かに部屋を出て行った。
「さて、聖王国側は私の事情を知る者しか残っておりません」
「私も事情を知る者しか連れておりません」
大聖女さまもミナーヴァ子爵も問題ないと言うならば、俺は彼女たちを信用するしかない。仮に事情を知らない者に話を聞かれたとしても、頭が狂ったヤツが地位のある者に狂言を申しているとしか分からないだろうし。俺の立場が危うくなるかもしれないが、伯爵家三男という微妙な立ち位置だ。ある程度の生活費さえあれば、どうにでもなる。
「時間が惜しいので簡潔に。――ミズガルズ神聖大帝国がゲームの舞台ということは知っておられますか?」
サロンに残っている人たちは、俺たちが転生者と知っているしゲームが舞台の世界であることも理解してくれている。だから遠慮なくゲームに関わることが起こるかもしれないと告げる。
「いいえ」
そりゃ、ミナーヴァ子爵は知らないだろうな。あまりゲームに興味がないみたいだし、彼女の前世を知れば、娯楽に興じる暇はなかったと想像がつく。
「え……?」
大聖女さまは、自身が知らない展開に入ってしまい少し戸惑っているようだった。とある乙女ゲームメーカーが販売したシリーズしか知らなかったのだろう。
俺だって、乙女ゲームメーカーのファーストIPしか知らないが、俺が死んでから新作や新たなIPタイトルを発表していてもおかしくない。俺たちの知らない所で世界は動いている可能性なんて、大いにある。その時は知らないなりの苦労をしなくちゃならないし、知っていれば知っているなりに問題を解決する為に動かなきゃならないから。だから、だから……恥を忍んで言わなければ。
「女性にこのような話をするのは少し引けますが……大人向けパソコンゲームメーカーが発売した作品に登場するのがミズガルズ神聖大帝国なのです」
「ああ、エロゲですか」
え、ちょ。ミナーヴァ子爵……。一応、女性が多く部屋にいるから俺は気を使って遠回しな言い方をしたのに、どうして貴女はぶっちゃけてしまうのですか。デリカシー! デリカシーを用意してください。お願いですから。
確かにこの世界の方たちには『エロゲ』という概念は理解し辛いでしょうけれど、報告書に書かれて……書かれて……あ。結局の所、どんな内容なのかと調査を受けるから、遅いか早いかというだけで結局は一緒かもしれない。
俺の自尊心やらなんやらは棚の上に置き、驚いたままの大聖女さまの顔を見ると、横に首を振っているので男性向けのゲームには興味がないようだ。
「申し訳ありません。メンガーさまが仰ったゲームを私は知りません」
知らないか。姉妹ブランドとはいえジャンル違いだし、興味もないだろう。それに俺がゲームの内容を思い出せば良いだけなのだから。
「お気になさらず。今日、話をしたいと願い出たのは、俺が持ちえるゲームの情報をアルバトロス上層部に知って欲しかった。その一点に尽きるので。もちろん大聖女さまが必要と判断されるならば、聖王国へも話を奏上してください」
抜きゲーだった所為か、勇者の性格は品行方正とは言い難い。ガタイの良いイケメンの青年なのだが、如何せん我が強い。ゲームでは気にならなかったが、現実にいれば手に余してしまうタイプの人間だ。力自慢で少々粗野で熱い人間。ようするに単純、とも言う。
「ミズガルズ神聖大帝国の件については、アルバトロス上層部の方々からお話を聞いております。現在使者の方がアルバトロスに参られ王都や地方を回っていらっしゃると聞き受けました」
ミナーヴァ子爵が落ち着いた声色で現在の状況を説明してくれた。転生者と転生をしる関係者しかいないので、割と深い所まで教えてくれるようだ。
今、アルバトロスに赴いている使者よりあとに、また第一皇子殿下と第一皇女殿下が使者としてアルバトロス王国と接触を図るとのこと。俺が皇女殿下の名を問うとミナーヴァ子爵が答えてくれた。ゲームの皇女さまの名前と同じだった。そして、亜人連合国では勇者に倒されたフリをした魔人が逃げ延び、魔人を倒した勇者が西大陸に興味を持ち始めた、と。
「魔人が……生きているんですか?」
そんなはずはない。ゲームでは……全滅しているのに。いや、ゲームと乖離しているのだから、否定をする訳にはいかないか。今やるべきはゲームと現実の擦り合わせだ。魔人が生きている時点でゲームと齟齬が出ていて、ゲームのシナリオと同じ道を辿る可能性は低くなっている。
「ええ。亜人連合国の領事館で魔人の方々とご挨拶をしましたから。勇者と名乗る方から逃げのび、数十名の魔人が亜人連合国でお世話になっているそうです」
「そうでしたか。ゲームでは魔人は魔物を操り人間を襲って楽しんでいると……そして人間より強く魔人に敵うのは勇者や特別な力を持った者だけ、となっていました……」
今思うと、都合の良い設定だなあと思ってしまう。ゲームだからシナリオありきで作っているから仕方ない部分だが、ゲームの世界に普通に生きている身からすれば、どうしてそんな設定にしてしまったのかと愚痴りたくなる。
「魔人の方々の説明では、元々は神さまだったそうなのですが、ある日、同族殺しを行い神さまの国から力を奪われ北大陸に追い出されたそうです。代を繋ぐごとに力は弱くなっていき、人間が定める魔王の特徴を持つ方が産まれ、勇者も同時に現れたとか」
なんだ、それ。全然記憶にないな。まさか作品中では明かされていない裏設定でもあったのだろうか。ミナーヴァ子爵の話では、魔人は好戦的ではなく、理性的で魔人という種を残す為に止むを得ず勇者から逃れる為に西大陸へ渡ったと。
できれば魔人の存在は伏せておきたいので、黙っていて欲しいとのこと。ただアルバトロス上層部にはこの話は伝えてあるそうだ。おそらく黙っていてなにか起れば問題になるから。もちろん、亜人連合国と魔人には許可をとっていると。根回しがしっかりされていて良かった。これでアルバトロス上層部には黙っていて欲しいと願われれば、盛大に頭を抱えなきゃならないからな。
「……そうでしたか。ゲームと乖離がでてきているので注意しなければなりませんね。そもそも西大陸の話題は全く上っていなかったので。こちらの大陸に北大陸の者が関わるようになるのは良い事なのか悪い事なのかはまだ分かりませんが」
神聖大帝国との繋がりにメリットがあると判断されれば国交が開かれるのだろう。アガレスの時だってマイナスからの出発だったが、ミナーヴァ子爵と向こうの第一皇女殿下の執り成しで、交易が始まっている訳だし。ただ、北大陸の国が西大陸に進出する旨味が薄いんだよなあ。――だって。
「北のミズガルズ神聖大帝国は、西大陸よりも技術が発展しています。汽車が走っていますし、銃火器も存在している。――現地で確かめた訳ではないので憶測ですが」
勘違いがあっては困るので、一応補足しておく。臆病と言われるかもしれないが、名前が同じだったという偶然が重なる場合もあるだろうし。
「魔術や魔法の存在は?」
「ごく一部の才能がある者だけにしか使えないはずです。だからこそ勇者や聖女が特別な存在だったのだろうな、と」
アルバトロス王国や西大陸の国々のように聖女が沢山存在していなかった。魔王が現れて時期を同じくして勇者が誕生すると伝承に残っていて、実際にゲームの主人公が現れ魔王討伐部隊を組み魔王を倒す。だからこそ特別。神聖大帝国では聖女も貴重で、随分と大事にされていた。ゲームじゃあ『ふーん』で済ませていたのに、どうして現実になるとこうも重い話になってしまうのか。
「…………」
ミナーヴァ子爵が黙り込む。一体何を考えているのだろうか。
「……メンガーさま。この話は聖王国の上層部へ伝えます。状況次第では西大陸の教会各地へ知らせることになると思います」
ずっと静かだった大聖女さまが言葉を紡いだ。どうやらずっと頭の中で状況を整理していたようだ。最悪な事態を想定しているようで、緊張した面持ちである。
「勿論です」
異論なんてない。向こうがどう出るかなんてさっぱり分からないから、対処できる手札は多い方が良い。
「アルバトロス王国上層部も、神聖大帝国がいきなり接触を図ってきたことで警戒をしております。西大陸の各国へ通達しているようですが、教会も頼れるならば有難いことかと」
ミナーヴァ子爵も同意してれたし、アルバトロス上層部も間抜けではなかったようだ。警戒態勢に入っているようだから、いきなり不意打ちをされてゲームオーバーなんて事態は避けられるかと深い息を吐くのだった。