魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0336:ドラゴンの扇。

 セレスティアさまが自慢にしているドリル髪が、しな垂れているように見えて仕方ない。

 

 騎士科の訓練場に佇んだまま、地面に落ちた鉄扇の半分をずっと見つめている。どうしたものかとソフィーアさまと私は視線を合わせ、とりあえず邪魔になるからセレスティアさまを回収しようとなった。入口に回り、みんなで訓練場に足を踏み入れる。そうしてセレスティアさまの下へと行くと、セレスティアさまが私に視線を向けバツが悪そうな顔になる。

 

 「……ナイ。申し訳ございません、貴女から頂いた大事な品を壊してしまいました……」

 

 竜の鱗で鍛えた扇が壊れるなんて誰が思うだろうか。相手の聖騎士さまは良い長剣を持ち、技術が進歩している神聖大帝国だから西大陸より鍛錬技術が優れている可能性だってあるのだから。鉄扇を使って、鍛錬をしている所を見たことがあるので、摩耗していた可能性もある。セレスティアさまの下で彼女と確りと視線を合わせて口を開いた。

 

 「形あるものはいつかは壊れます。セレスティアさま、どうかお気になさらず」

 

 気にするなというのは無理な話なのだろうか。いつも持ち歩いている扇だから。私の肩の上に乗っていたクロが、セレスティアさまの肩に乗って顔をツンツンしているけれど反応が薄い。

 うわ、これは重症だなあと地面に落ちている鉄扇の半分を拾い、黙ったままのセレスティアさまの腕を掴んで『教室に戻りましょう』と告げて訓練場を出る。ジークとリンには騎士科の人たちを散らすようにお願いして、私たちは特進科の教室に戻った。

 

 第一皇女殿下が申し訳なさそうな顔をして小さく頭を下げてくれたのだが、セレスティアさまのテンションが元に戻るのはいつになるのやら。

 

 「武術には自信があった上に、負けた経験が少ないからな……」

 

 ソフィーアさまが誰にも聞こえないように、小声で私に教えてくれた。セレスティアさまは幼少期から、才能を発揮して誰よりも強く負けた経験も数少ないと。負けたとしても年上だったり、実力者として大成していた人で負けて当たり前と言われていた人だったらしく、今回、同年代の同性に負けた事が随分堪えているのだとか。

 

 「……そうでしたか」

 

 負ける機会が少なかったのか。武道を嗜む人にとって、模擬戦と言えど勝敗は大事なものだって。本気で駄目なヤツでは。以前にドワーフさんに作って貰ったものは一点物だから、予備とかないしなあ。しまった、壊れることを見越して数本拵えて貰っても良かったか。まさか、竜の鱗で鍛えた扇が壊れるなんて考えていなかったし、本当に予想外。

 

 『セレスティア、元気出して? 代表にお願いして、ドワーフのみんなに作って貰えば良いよ』

 

 セレスティアさまの肩に乗ったままのクロが、彼女へと声を掛けた。流石クロ。クロの言葉であれば、セレスティアさまも気分を持ち直してくれるだろうと、ソフィーアさまと私は様子を見守る。

 

 「ありがとうございます、クロさま。しかし、わたくしの雇い主であるナイから頂いた大切な品を壊したことは、側仕えとして失格ですわ……」

 

 あ、なんだか不味い方向に行っているのでは。いつもの元気がないセレスティアさまのドリル髪がどんどん緩くなって伸びているような。

 別に負けたり、鉄扇を壊したくらいで失格になんて言うつもりはないのだけれど、彼女の中ではそういう図式が出来上がっているようだった。このままでは駄目だと、クロに加勢すべくセレスティアさまの近くに歩み寄る。ソフィーアさまも気になるのか、私の横に付いて微妙な顔で歩いていた。

 

「さっきも言いましたが、気にしないでください。それよりセレスティアさまに怪我がなくて良かったです」

 

 お貴族さまのご令嬢なのだから、傷なんて以ての外だろう。彼女であれば名誉の負傷でございますわ、とか言っちゃいそうだけれど。婚姻相手はマルクスさまだから、適当に言いくるめて物理で納得させそう。

 

 「セレスティア、落ち込むのはいい加減にしておけ。挽回の機会はいくらでもあるだろうに。お前が気落ちしていると周りが気にするだろう?」

 

 ソフィーアさまが片手を腰に当てて、教室内を視線で指した。事情を知っているのか、知っていないのかは分からないけれど、特進科のクラスメイトの皆さまはセレスティアさまに元気がないことを察知している。

 クロが私の肩の上ではなく、セレスティアさまの肩の上にいる事にも驚いていたから、異常事態であるのは確実で。婚約者のマルクスさまは目を丸くしているし、アリアさまは心配そうな顔でセレスティアさまを見ていた。メンガーさまも首を傾げているし、フィーネさまも何事だろうとこちらを見てた。

 

 しょぼくれているセレスティアさまなんて、見ているだけで落ち着かない。彼女はいつものようにどんと構えて、何事にも動じず高笑いしている方が似合っているのだから。

 

 「そう、ですわね。しかし、これだけは言っておきませんと。――ナイ、この度は貴女から頂いた大切な品を壊してしまい、重ねて申し訳ありませんでした」

 

 ふう、と深い息を吐くとセレスティアさまの瞳に光が灯り、私に向き直る。

 

 「構いません。また作って貰えば良いだけの話ですし、先ほど言った通りセレスティアさまに怪我がなくて良かったです」

 

 同じ言葉になってしまったけれど、気にしないで欲しいし怪我がなく無事に模擬戦を終えられて本当に良かった。練習でも命を落とす人はいるし、大怪我を負う事だってあるのだから。

 あまり教室で話をすると周りに聞こえてしまう上に、ミズガルズの聖騎士さまの立場も悪くなるだろうから適当な所で切り上げられて良かった。北大陸で竜の鱗で鍛えた品がどれほどの価値があるかは分からないけれど、値は張るものだろうし。

 

 「少し場を離れますわ」

 

 セレスティアさまが呟いて、ミズガルズの聖騎士さまの下へと歩いて行く。クロが彼女の肩から私の肩へと飛び移り『元気が出たみたいだね』と呟いた。クロの言葉に頷きながらセレスティアさまを見ていると、彼女は聖騎士さまに再戦の約束を取り付けている。

 

 「懲りないな」

 

 ソフィーアさまが仕方のないヤツだと言葉をつけ足し。

 

 「ですね」

 

 彼女の言葉に私が同意する。

 

 『元気で良いじゃない』

 

 クロが私の顔にすりすりと顔を擦り付けながら目を細めていた。落ち込んでいたセレスティアさまは何処へやら。彼女と聖騎士さまが再度模擬戦の約束を取り付けて、火花を静かに飛ばしている。今回、留学なさっている方々とは仲良くなれるのかと首を傾げていると、静かに皇女殿下が私の下に歩いてきていた。

 

 「ミナーヴァ子爵。我が騎士、メリディアナがご迷惑をお掛けしたようで……彼女のお気に入りの品を壊してしまい、なんと申してよいやら」

 

 眉を八の字にして、困り顔を浮かべた殿下に対して、私は静かに口を開く。顔が物凄く上がっているのが気になるけれど。

 

 「殿下、お気になさらず。得物に扇を選んだのはヴァイセンベルク嬢なのですから」

 

 だから謝る必要はないし、聖騎士さまの剣を抜けという言葉に従わなかったセレスティアさまにも非があるような。試合を途中放棄したようなものだし、聖騎士さまにとっては不完全燃焼だったのでは。セレスティアさまが戦意喪失していたので、あれ以上続けるのは無理だろうけれど。

 

 「そう言って頂けると助かります。しかし聖騎士であるメリディアナの剣技を何度も扇で受け流し、あまつさえ懐に踏み込む方が居るだなんて……信じられない光景でした」

 

 聖騎士さまは北大陸ではかなり強い部類のお方になるそうだ。だから辺境伯令嬢でしかないセレスティアさまが肉薄した模擬戦を繰り広げていたことに驚いたとのこと。

 そして聖騎士さまの剣は業物なので、まさか扇で模擬戦を行うなど夢にも思っていなかったそうだ。まあ、セレスティアさまは武闘派令嬢だし、リンも中々勝てない相手である。実力が備わっているのは十分に知っていたし、聖騎士さまにも勝てるだろうと考えていたから本当に意外だったし、鉄扇が折れるのも予想外だった。

 

 「ミズガルズ国内で採れる貴重な金属を使い鍛えた剣でございます。アルバトロスにも我が国と同様かそれ以上の硬さのある金属が産出されるのですね」

 

 アルバトロスは内陸部の小国なのに軍事に優れている理由が分かりました、と皇女殿下。アルバトロス王国は周りの国から障壁だよりの国と思われているはずなのだけれど、訂正した方が良いのだろうか。

 どうしましょうとソフィーアさまに視線を少しだけ向けると、黙っておけと視線が訴えていた。平野部の多いアルバトロスで金属産出は期待できないし、嘘を吐いてまで誤魔化す事ではないなと考えて。

 

 「金属ではありませんね、竜の鱗を鍛えた扇ですから」

 

 ミズガルズ特産の金属と竜の鱗……どちらに価値があるのかは分からないが、帝室や聖騎士を名乗る人であれば竜の素材を使った品はいくつか所持しているだろう。それこそフルプレートの鎧だってありそうだし、剣とかもあるんじゃないかな。ジークとリンも竜の鱗で鍛えた長剣を佩いているので、目利きができる方なら素材なんて直ぐに看破できる。

 

 「……え?」

 

 皇女殿下の目が点になる。

 

 「どうしました、殿下」

 

 「竜って、あの竜ですよね? 別名、ドラゴンと言われる……」

 

 竜使いの聖女と聞いていますが、竜って、竜……竜……とぶつぶつ言ってる皇女さま。クロが私の肩に乗っているし、今更驚くことでもないのだけれど。

 

 「はい。ドラゴンの竜ですね」

 

 そういえば東大陸は竜のことをドラゴンと呼んでいたし、北大陸もドラゴンと呼称した方が通りが良いのかな。北大陸は竜や幻想種がいると聞いているのに、そんなに驚かなくても良いのでは。まだ混乱している皇女殿下に、アルバトロスに出店している亜人連合国の方々にお願いすれば条件次第で手に入れることができますよ、と伝えておくのだった。

 

 ◇

 

 鉄扇が折れて凹んでいたセレスティアさまも元気が戻り、亜人連合国のお店に赴いて彼女専用の扇の注文も終えている。

 ミズガルズからは第一皇女殿下さまが認めた、謝罪の手紙がヴァイセンベルグ辺境伯さまに届いたようで、時間は掛かってしまうが補填はするとのこと。辺境伯さまも、ミズガルズを責める訳でもなく『娘が自身で選び戦いで負けたのだから、致し方ないこと』と返したらしい。ただミナ―ヴァ子爵が怖いからちゃんと対応しておいてねと書かれてあったとかなかったとか……。意訳だけれど。

 怒っていないし、何もする気はないのにこの書かれようは一体。気にしたら負けだなとスルーを決め込んでいる。

 

 お店に赴くと小型の竜の方がセレスティアさまの周りをクルクルと周って、恍惚の笑みを浮かべて蕩けていた。幸せそうならなにより、と彼女と小竜さまを見つめていると事情を聞き出した小竜さまが、他の竜の皆さまに鉄扇が折れた事を伝えたようで。

 後日、大量の竜の鱗が王都の辺境伯家のタウンハウスに届いたとのこと。折角だからとセレスティアさまは再度発注を掛けたらしい。最初にお店に赴いて扇を注文したものは、クロの鱗も混ぜて貰う予定だ。

 

 まだ小さい所為かクロは鱗というより脱皮を時々していて、私の部屋に残骸が残っていることがある。クロ曰く、急にむず痒くなって体をぐにぐに動かしていたら、勝手に取れていると。

 夜中にこっそり脱皮しているのか、場面に遭遇したことがないのだけれど、本人……本竜が言うのだから間違いはないのだろう。処分するのは勿体ないので、今までクロが脱皮した残骸は取っておいた。魔術の素材になるかどうか副団長さまとダリア姉さんとアイリス姉さんに聞いた所、魔力が多く含まれているから大抵の物に使えるとのこと。

 

 脱皮しているのに大きくならないのは不思議だけれど、クロが言うには魔力が余っている証拠らしい。

 

 体が大きくなると脱皮ではなく、鱗が生え変わるようになるのだとか。まだ大きくなるつもりはないから、まだまだ脱いだ皮は増えるとのことなので、クロの許可を貰って欲しい人には渡していたのだ。

 セレスティアさまが使うなら問題ないと判断されて、新調する扇には竜の鱗を素材に使い、鍛える過程でクロの皮も混ぜて頂く。ダリア姉さんとアイリス姉さんの話だと、扇の強度が上がるはずだと言っていた。今回、模擬戦中に折れてしまったから丁度良いですねとセレスティアさまと話していたのが二日前。

 

 学院はいつも通り、生徒が学院へとやってきて授業を受けて帰るを繰り返している。三年生の一学期が始まり三週間が過ぎていて、生徒会長の任に就いているけれど、仕事らしい仕事はないので実質お飾りだ。授業も順調に進んでいるし、授業や仕事の合間を縫って図書棟に足を運ぶことも出来ているので有難い。子爵邸の図書室の本は読み切っているし、蔵書数が段違いだし変わり種の本もあるから。

 

 今日の魔術の授業は、特別講師である副団長さまが担っている。副団長さまの授業は座学よりも、実地で魔術の勉強をしている確率が高い。

 魔術科の訓練場に赴いて、中級魔術の展開速度向上講座が行われていた。魔術が使えない人には暇な授業となってしまうのだが、時間の無駄にならないように魔力感知の仕方や体内魔力循環の方法を、副団長さまが同時進行で教えているあたり本当に器用な方である。

 

 「……よく頭がこんがらがらないなあ」

 

 ね、クロと、クロの方へ顔を倒すと、ぐしぐしと顔を擦り付けてくれる。副団長さまは魔術を使えない、騎士タイプの方々に魔力量向上のコツを語っている所だ。マルクスさまとギド殿下にミズガルズの聖騎士さまが真剣に聞いているし、魔力量の乏しい方も真剣に耳を傾けていた。

 

 「先生は平行同時作業を得意としているからな」

 

 ソフィーアさまが私の隣で、副団長さまが行っている講義姿を見ながら教えてくれた。マルチタスクが得意なようで、平行作業でいくつもの事をできるようだ。訓練である程度は出来るようになると聞くけれど、器用ではないので羨ましい限りである。

 

 「魔術を何種か同時に発動されることもありますから。お師匠さまの得意分野とも言えますわね」

 

 セレスティアさまが普通の鉄扇をどこからともなく取り出して、広げて口元を隠しながら教えてくれた。どうにも軽いですわね、と小声で言っていたのは聞こえなかったことにしておこう。

 同じ魔術を同時に展開することはできるが、違う魔術を同時に展開するのは高度な技術が必要とされていた。私は同時に複数の魔術を展開することはできず、精々、発動させた魔術を維持しながら次の魔術を使うのが精一杯。無茶をすれば発動させることができるけれど、片方は無詠唱で無駄に魔力を消費して魔力を欠乏させる気がする。

 

 「ヴァレンシュタイン副団長はアルバトロス王国内で右に出る者はいないと聞きますから! せっかく特進科に転科できたので、沢山教えを乞わないと勿体ないですよね!」

 

 アリアさまが声を上げた。アリアさまは聖女として子爵邸で過ごしていることもあり、ソフィーアさまとセレスティアさまと私はクラスでは一緒に過ごしている。アリアさまの名前が売れているので、妙な輩が彼女に付かないようにする為でもあった。フライハイト男爵領の魔石鉱山の下調べも終わり。今度は本格的に掘り起こし作業を行うようだ。

 聖樹っぽい木には天馬さまが時折訪れているそうで、王国から警備兵を派遣して貰ったとか。居付いてくれれば、そのうち仔馬が生まれるのではとエルとジョセが教えてくれている。学院を卒業すれば、嫁入り先探しになるのだろう。アリアさまは可愛いし、人懐っこい性格だから誰とでも合いそうだ。伴侶になった人が羨ましいと思ってしまうくらいには。

 

 「ナイ、アリア。先生からの課題を済ませよう」

 

 「特段、難しいものではありませんからね。早く終わらせましょう」

 

 ソフィーアさまとセレスティアさまに促される。副団長さまが騎士組を教えている間、魔術師組に出されている課題だ。

 

 「えっと……確か、魔術の威力を高めてみよう、でしたよね?」

 

 アリアさまが副団長さまから配布された紙に視線を落として、記されている文字を声に出して読んでくれる。

 

 「――次の文字を唱えてみましょう……〝――"〝――"」

 

 アリアさまが何かを声に出しているけれど、言葉というには程遠くなにを言っているのか聞き取れなかった。あれ、と違和感を覚えるとアリアさまの足元に魔術陣が浮かぶ。

 

 「え、えっ!?」

 

 アリアさまから流れ出る魔力が私の髪を揺らした。術が発動したというよりも、体の中にある魔力が漏れているだけのような。

 魔力が漏れ出てアリアさまの周りが光っており、日中だというのにライトアップされているようで綺麗なのだが、魔術が発動する気配がない。中級魔術と聞いているので、何かしらの形になるはずなのだが……。

 

 『ああ、古代魔術かなあ。危なくはないけれど、せめて一声あっても良かったかも。あ、これ……アリアの魔力が枯渇するんじゃない?』

 

 私が覚えた違和感は古代語だったからか。流暢に使いこなせる訳ではないので、理解するのに少し時間が掛かってしまった。私に配られている紙に視線を落とすと『聖女さまは、魔力操作をきちんと覚えましょうね』と綺麗な文字が綴られている。……あの人、なにを考えているんだろう。

 

 「もしかして、魔術の威力を高めてみようって……魔力を使い切って魔力量を上げようってこと?」

 

 アリアさまから漏れている魔力が治まって、魔力消費によって目を回しているような彼女に手を差し伸べる。倒れるほど魔力を失ってはいないようで、支えがあれば平気なようだ。

 

 『多分、そういうことだと思うよ。アリアの魔力量はまだ限界に達していないから、次に使う時は魔術の威力が上がっているはずだから』

 

 もしかして、一枚一枚違う内容なのかな。ソフィーアさまとセレスティアさまに私が貰った紙を見せると、違う内容だったようで頭を抱えていた。どうやら副団長さまが個人に合う課題を出したみたいだ。

 

 「先生……なにも学院でやらなくとも」

 

 「お師匠さまですものねえ……」

 

 ソフィーアさまとセレスティアさまが副団長さまの方を見ながら、呆れ顔を浮かべていた。当の本人はまだ講義中で、騎士組が真剣に話に耳を傾けたままだ。

 

 「ふ、ふらふらします。お城の魔術補填で慣れたはずですが……こうして魔力が枯渇すると駄目ですね……あはは」

 

 少し魔力を練ってアリアさまを意識する。私の魔力は他者との親和性が高く、移譲し易いらしい。以前にもアリアさまに渡したことがあるので、多少は楽になるはずだけれど。

 

 「有難うございます、ナイさま」

 

 「いえ。大丈夫ですか?」

 

 「はい、随分と楽になりましたから!」

 

 にっこり笑ったアリアさまが握っていた手を離した。

 

 「な! 魔力の受け渡しなんて、できるはずが…………」

 

 少し離れた場所で私たちを見ていたミズガルズの魔術師さまが目をひん剥いて声を上げると、講義を終えた副団長さまがぬっと姿を現す。

 

 「黒髪の聖女さまの特徴ですねえ。彼女の魔力は誰に対しても親和性が高いのですよ」

 

 副団長さま……にっこりと笑いながら妙なことを北のミズガルズの方々に吹き込まないでください、とジト目を向ける。ふふふ、と笑った副団長さまが授業を再開したのだった。




 次の更新の時にタイトルを『小説家になろう』版に変えたいと思います。
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