魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0341:建国祭の準備。

 ジョセの仔が生まれた。黒い天馬も珍しいけれど、赤い天馬も珍しいとのこと。逆子で生まれてきたから大丈夫かと心配したけれど、エルとジョセとお婆さまたち曰く影響はないと。

 ルカが新たに生まれた仔馬に攻撃的にならないかとか、ジョセが仔馬に付きっ切りになるので怒ったりしないか心配だったが、甲斐甲斐しくお世話を焼いている。ジョセとエルほど上手くはないが、不器用でちょっと危なっかしくて心配になるけれど微笑ましい光景だ。生き物の小さい頃って無条件に可愛い。

 

 学院で仔馬が生まれたと報告するとセレスティアさまが飛び上がって喜んでいたし、ソフィーアさまも無事に生まれたことを喜んでくれた。

 アリアさまは少し眠そうな様子だったけれど、授業を確りと受けていた。私はちょっと意識が飛んでいたけれど。ギド殿下とフィーネさまとメンガーさまも祝ってくれ、天馬さまがもっと増えると良いなあと話しながら昼休みはみんなで図書棟に赴き数時間。

 

 ようやく子爵邸に戻ってきた所。

 

 セレスティアさまとソフィーアさまは自邸へ戻らず、子爵邸に直接赴いている。いつも子爵邸の馬車で学院から戻っている、アリアさまも一緒だ。やたらとテンションの高いセレスティアさまに苦笑しつつ出迎えの方たちに挨拶をしてそのまま庭へと、天馬さまたちの様子を見る為に赴く。

 

 「可愛いね」

 

 朝と随分と状況が変わって、ジョセと仔馬が一緒に厩舎の外へと出ていた。ジョセが先を歩くと仔馬がぽてぽてと不慣れな脚運びで後ろを付いて歩いている。お乳が欲しいのか、ジョセが立ち止まると一生懸命に首を伸ばして必死に求めていた。

 

 「ああ」

 

 「うん」

 

 私が零した言葉にジークとリンが同意の言葉をくれて、隣に立つアリアさまと肩の上に乗るクロが尻尾を動かしながら口を開いた。

 

 「凄く可愛いです!」

 

 『まだ覚束ないけれど、生命力に満ち溢れているから立派な天馬になるよ』

 

 立派でもなんでもいいから、元気で過して欲しいと願う。エルとジョセもルカも仔馬も自由に飛べる空が似合うのだし。

 

 「ナイ、ナイ! 一体どういう事でございましょうか!? 生まれた仔馬の毛並みが赤色ですわよ!!」

 

 セレスティアさまが私の背中をバシバシ叩きながら、物凄く蕩けた顔で問いかけた。あれ、説明していなかったっけと視線を右上方へと向けて考える。ああ、仔天馬さまが逆子で生まれてきたけれど元気な仔が生まれた、としか伝えていなかった。

 珍しい赤色の天馬さまが生まれたことよりも、無事に生まれてきてくれた事に意識がいっていたみたい。セレスティアさまの平手打ちは痛くはないが、そろそろ止めて欲しいなあ。私の身体が揺れる所為でクロがジークの頭の上に避難したし。

 

 「セレスティア、側仕えのお前が当主の身体を叩いてどうするんだ! ああ、もう、やめろ! あとナイの事だ、元気に生まれたことの方に意識が行って、赤毛ということは綺麗さっぱりと忘れていただけだ!」

 

 ソフィーアさまがテンション激高のセレスティアさまを止めてくれた。少し正気に戻ったセレスティアさまが私に謝罪をしてくれる。いつものことだから気にしていないけれど。というかソフィーアさまの指摘が凄く正しい。まあ二年以上付き合いがあれば、人となりは分かってしまうのだろう。忘れてしまった私が悪いから、あえて何も言わなかった。

 

 『聖女さま、皆さま。またルカと同様に名を頂けませんでしょうか?』

 

 『よろしくお願いいたします。私たちは生まれた仔に素敵な名前を授けることはできないですから』

 

 エルとジョセが近寄ってきて、みんなに頭を下げた。仔馬はジョセの前に立って、じっとこちらを見ている。いつの間にかルカも仔馬の横に立っていて、尻尾をゆらゆらと忙しなく動かしていた。

 天馬さまには名前を付ける文化がないので仕方ないのだろう。一応、みんなと相談して今日の昼休みに図書棟に赴いて、去年に引き続き名前を選んできた訳だけれども。エルとジョセから直ぐに求められるとは。

 

 「えっと……一応お願いされるかなって考えてて、今日のお昼休みに名前図鑑を調べてたんだ」

 

 『おや、これはこれは。私たちにもルカにも素敵な名前を頂いておりますから、期待してしまいますね』

 

 『ええ、きっと素敵な名前を贈ってくださるのでしょう』

 

 エルとジョセに凄く期待されているけれど、私のネーミングセンスは皆無であり名前図鑑頼りである。女の子だって聞いていたから、女性名の名前を重点的に目を通して一つの名前が留まった。

 仔馬の前にしゃがみ込んで視線を合わせる。驚いて逃げやしないかと不安だったけれど、人間を怖がる様子はない。良いことだけれど、知らない人にホイホイ付いて行っちゃ駄目だよと苦笑いを浮かべると顔を寄せてくれた。

 

 「ジアって名前はどうかな。お兄ちゃんのルカと同じ『光』って意味なんだ」

 

 意味が被るから違う名前にしても良いのではと意見があったけれど、名前の響きが気に入ったので私がジアの名前を押すとすったもんだの末に決まったのだ。

 もう少し意見を出し合っても良かったのかもしれないが、私が決めたなら仕方ないみたいな雰囲気だった。図書棟に一緒に来て頂いたみんなには、申し訳ないことをしたかなと反省しつつ昼休みを終えたのだ。

 

 『可愛らしい名前ではありませんか』

 

 『はい。ルカの名前と同じ意味というのも良いですね』

 

 エルとジョセの言葉の後に、ジアが鼻を鳴らして地面を掻くと魔力がちょっと減った気がする。気のせいかなと首を傾げるけれど、やっぱり減っているような。ジークの頭の上から飛んできたクロが私の肩の上でふふふと笑い、顔をすりすりとしてきた。

 

 『気に入ったようです』

 

 『皆さま、ルカもジアも大層喜んでおります。ありがとうございます』

 

 「どういたしまして。エルとジョセとルカとジア、仲良く過ごしてね」

 

 家族、なのだから。ルカとジアは番を探し求める為に、いずれ独り立ちするけれど。空を駆ける天馬さまには子爵邸は少々狭いけれど、自由に過ごして貰えば良い。

 

 『はい』

 

 『お約束致します』

 

 エルとジョセが目を細めながら答えてくれた。家族水入らずの時間を邪魔してはならないと、子爵邸の庭からそれぞれの場所へと戻る。私は一度自室に戻ってお着換えを済ませて、執務室に直行だ。

 ミズガルズの件や大帝国のお貴族さまと勇者さまの件があるし、ちょっとどうしようかと決めかねていることもある。ぱぱっと着替えて執務室に行き、扉を開けるとみんなが既に揃っていた。

 

 「すみません、お待たせしました」

 

 私が頭を下げると、家宰さまとソフィーアさまとセレスティアさまが気にするなと軽く首を振る。壁際にはジークとリンも控えており、今日の話の主役でもあった。そうして自分の席に腰掛けると、応接机の上には黒い箱が二つ。そう例の白い剣と黒い剣である。

 ディアンさまたちから預かったものの、どう扱うか迷いかねていた。外に出すときっとうるさいし、学院で帯剣して喋ると大騒ぎになるのは目に見えている。黙ってくださいとお願いしても、静かになるような性質じゃないだろうし……白い剣は私の言葉であれば呑んでくれるかもしれないが。

 

 「戦力が強化されるのは悪いことではないですし、箱を開けて、話してみます……」

 

 私の言葉に静かに頷くみんな。机の上に鎮座している黒い箱の前に立って、留め具に手を掛けて開いた。

 

 『だっはー! 久方振りに光を浴びた気がする! つーか、俺を箱に閉じ込めておくってどうなの? せめて外に出して飾ってくれねえかなあ!』

 

 『相変わらず、うるさいのね……』

 

 前に箱を開けた時と同じテンションで黒い剣と白い剣が喋る。目的を果たす為に箱を覗き込んで、私は口を開く。

 

 「あ、えっと」

 

 『ああん! マスター! マスター、マスター、マスター、マスター、マスター!! ようやく再会できました! もう何億年も会っていないようです!!』

 

 白い剣が鎮座している箱をぱたんと閉じた。……どうしよう。私が白い剣に命令したとして、本当に剣は言うことを聞いてくれるのだろうか。

 

 『きゃははははは!! 閉じられていやがんの! 俺の事をうるさいと言っているが、てめえも変わったもんじゃねえって! つーか、マスターと決めたヤツに嫌われているんじゃあどうしようもねえなあ!』

 

 ……静かに黒い剣が鎮座する箱も閉じる。戦力を強化しようとしているのだけれど、暗雲立ち込めているような。この二振りを学院へと持ち込むのは不可能かな。うるさくて仕方ないのだから。

 

 「ジーク、リン……どうしよう」

 

 ジークとリンの方を見ると、二人は微妙な顔になっている。

 

 「開けていいか?」

 

 「服従させればいい」

 

 二人が箱の前に立って、再び留め具を外して箱を開ける。

 

 『あ、今回は直ぐ開いたぞ!』

 

 『マスター……』

 

 ジークが白い剣、リンが黒い剣の柄を握り鞘を抜く。

 

 「俺がお前の使い手になるが、いいか?」

 

 「私が貴方の使い手になるから」

 

 ジークとリンが問うと『あら、マスターの気配がする。ふーん……仕方ないけれど、使わせてあげる。私のマスターを確りと守りなさい』『使ってくれるなら、俺は誰でも良いぜ! 少々乱暴に扱われるくらいが好みだな!』と二振りの剣が同意して。が、ずっとこのお喋りを続けて貰うのは敵わないとおずおずと口を開いた。

 

 「えっと、学院や人が大勢いる所ではお喋りを控えて頂けると……」

 

 『マスターぁ! 貴女のご命令であれば。承知いたしました!』

 

 『ええ……でもなあ。外で注目されてえんだが、仕方ねえ。――逆らうとまた閉じ込められるし』

 

 黒い剣がボソリと最後になにか呟いたけれど、臍を曲げられても困るので聞き返すことはせず。どうにかこうにか、了承を取り付けるのだった。

 

 ◇

 

 五月も半分が過ぎ、少し汗ばむ季節になった。学院の生徒会室でいつものメンバーと顔を突き合わせていたら、ソフィーアさまが神妙な顔で告げた。

 

 「ナイ。建国祭で王家に贈る品を決めたのは良いが、学院の催しでファーストダンスを踊らなければならないだろう? 忙しさでかまけていたが、そろそろ始めないと不味い」

 

 困ったような、なんとも言えない顔をソフィーアさまは浮かべていた。生徒会長に任命されて、暫く経ってから建国祭のパーティーで生徒会長がファーストダンスを務めることを思い出した。もちろんソフィーアさまもセレスティアさまも忘れていた訳ではないのだが、ミズガルズの面々の対応で気が張っており、延びに延びて今の段階まで手付かずのままだった。

 

 「しかし、ソフィーアさん。ナイのパートナーを務められる殿方はいらっしゃるので? 身長差でカップルバランスがとても悪いですから……仮にわたくしたちが男装をしてリード役を務めても、まだ不格好ですわ」

 

 身長が低くてすみません。練習に時間を割けなかった理由のひとつに私のパートナーを務められる人が居ないということもあった。

 一年生の時から私の身長はあまり変わっておらず、一センチほど伸びたか伸びていないかくらいである。ジークは目に見えて身長が伸びているし、リンも確実に伸びている。ソフィーアさまとセレスティアさまはジークとリンほどはな無いにしろ、二、三センチは伸びているっぽいのだもの。羨ましい限りなのだが、私のチビ加減が目立つので手加減して欲しい。

 

 「学院内の男を見ても、ナイの身長に合う人物がいないからな。女子生徒からリード役を選出しても良いが、男性パートを踊れる人間がどれだけいるのか……」

 

 ソフィーアさまが困った顔で私を見る。男女平等とか多様性を謳っている世界であれば、女性同士でも許可が下りたかもしれないが、生憎と文化が成熟するにはまだほど遠い世界である。

 男性は男性、女性は女性という意識がまだ強く、ダンスのカップルが同性同士なんて知られれば後ろ指を指されてもおかしくはない。練習くらいなら大丈夫かもしれないが。うーん、と悩みながら口を開く。

 

 「社交はからっきしですからね。ダンスはもっと駄目ですし……聖女の舞でも踊って良いなら、できなくはないですが」

 

 雨乞いの舞とか五穀豊穣を祝う舞とかが存在している。使う機会が少ない為に、浄化儀式同様、シスターや先任の聖女さまたちから詳しく教わった訳ではないけれど。由緒正しきアルバトロス王立学院だからファーストダンス免除や代理なんて認められないのだろう。諦めて、付け焼刃ででも練習した方が良さそうかな。相手役を務める人には申し訳ないが。

 

 「ああ、そうか。その手があったな!」

 

 「確かにダンスに拘らなくとも、聖女であるナイなら問題はありませんわね。聖女の力を認められて貴族になったのですから、問題は少ないでしょう」

 

 ぽん、と手を叩いたソフィーアさまと、セレスティアさまが扇で口元を隠して笑みを浮かべた。あ、あれ。ダンスを教えて貰うことを腹に決めたのに、聖女の舞を舞うことになりそうだ……聖女の舞は複雑なステップもなく単調なものなのだけれど、良いのかな。

 陛下や王太子殿下に公爵さまとか、割と錚々たる面子が参加しているのに、私のポンコツな舞を見ても感動もなにもない。でもまあ、付け焼刃のちぐはぐな社交ダンスを見て貰うより、聖女の舞を見て貰う方が気は楽だ。仮に間違えたとしても、教会関係者くらいにしか分からないだろうし。とはいえ――。

 

 「勝手に内容を変えるのは不味くないですか?」

 

 学院とアルバトロス上層部は許可を出してくれるのか…………出しそうだよなあ。私がダンスをとちってホールに顔面強打したら恰好が付かないし、それならある程度知識がある聖女の舞を舞った方が良いと判断されそう。

 

 「お伺いは立てるべきだな」

 

 「ですわね。ほぼ決定でございましょうが」

 

 微妙な顔の私を見ながら、ソフィーアさまとセレスティアさまも苦笑する。ま、無理矢理に召喚されて、敵地のど真ん中に放り込まれるよりマシだなと気持ちを切り替える。仮に誰かが私のお相手を務めてくれるならジークだったのかなと、壁際で直立しているジークを見る。ジークの腰には白い剣を佩いているし、リンの腰には黒い剣を佩いていた。

 

 二振りの剣は、約束通りひと目のある所では口を開かない。仮に口を開くとしても念話のようなもので、直接頭の中に語りかけてくる。

 ジークとリンの得物が変わったことに驚く人もいれば、羨ましそうな視線を向けてくる人もいた。リン曰く、偶に護衛騎士の座を譲れと言ってくる人が居るそうだが、二人とも無視を決めているそうだ。面倒なことになって申し訳ないが、私の護衛騎士はジークとリンしかいないし、ジークとリンも同じ気持ちであってくれれば嬉しいけれど……。

 

 そうして数日が経ち。ファーストダンスの代わりに聖女の舞を舞う事が決まって。アルバトロス王国王都にある一番大きい教会――といっても治癒院が開かれている教会だからいつもの所――に足を運んだ。学院からの帰り、子爵邸の面々プラスアリアさまと途中で合流したロザリンデさまとで大きな正面扉を開くと、シスター・ジルとシスター・リズが出迎えてくれた。

 

 「ナイちゃん、お待ちしておりました」

 

 「ナイさん、いらっしゃい。ナイさんから聖女のお勉強をしたいと申されるのは珍しいですね。私は凄く嬉しいですよ」

 

 にっこりと微笑みを浮かべるシスターズ。目の前の二人は治癒も使えるし、割となんでもこなせる優秀な方々である。私が聖女の舞をもう一度教えて欲しいと教会に事情込みでお願いすると、二つ返事で教師は目の前の二人だとも記してあったのだ。

 せっかくなので、アリアさまとロザリンデさまも誘ってみた。使う機会は少ないけれど、依頼を受けると、結構な金額が自分の懐の中に入ってくる。魔力の多い聖女さまに依頼されることが通例だし、ご実家が領地持ちならば何かしらの効果があろうと誘ってみたのだ。

 

 「よろしくお願いいたします、シスター・ジル、シスター・リズ」

 

 私が頭を下げれば、承りましたとシスターズ。聖堂を抜けて、裏庭に出ると神父さまもいらっしゃった。手には錫杖を持っていて、儀式で使うものだから慣れておきなさいと手渡される。神父さま曰く、錫杖は魔力が増幅したり魔力の消費が少なくなったり、効果が上がるとのこと。

 魔術を使う際は錫杖や魔石を施した杖を使う人もいるのだけれど、私は魔力量に頼りきりで道具は使った事がなかった。神父さまに錫杖に魔力を通して見て欲しいと乞われて、素直に魔力を練って通してみる。

 

 「魔力の流れが綺麗になってる……かな?」

 

 縦横斜め、様々な方向へ流れていた魔力が、錫杖を通して一定の方向に定まったというか、体の中から出てくる魔力の量が綺麗に錫杖に吸い込まれて濾過されているような感覚、というか。表現すると難しいけれど、感覚的に言い表すなら綺麗な流れになっているが一番的確だろう。

 

 『ナイの魔力が多すぎて微々たるものかも。でもなんだろう、いつもより静かな感じだね』

 

 クロはクロの言葉で教えてくれた。魔力が静かというのも言い得て妙だろうか。

 

 「あらあら。いつも魔力制御が下手なナイちゃんですが、これはどういうことでしょうか」

 

 にーっこりと笑ったクレイジーシスターことシスター・ジル。その横で盲目のシスターことシスターリズが首を少し傾けて言葉を口にした。

 

 「ええ。荒々しさが消えましたね。錫杖は儀式で使うものと意識していましたから、これは意外な発見です。…………ですが」

 

 私が持っていた錫杖にひびが入り。

 

 「あ」

 

 『あ』

 

 「あ」

 

 「ああ、やはり」

 

 私、クロ、シスター・ジル、シスター・リズの短い声が漏れ。

 

 「あ」

 

 「あ」

 

 「あ」

 

 「あ」

 

 同行していたソフィーアさまとセレスティアさま、アリアさま、ロザリンデさまの順でまた声が漏れて。

 

 「……」

 

 「……ナイだから、仕方ない」

 

 護衛のジークはだんまりを決め込み、リンはちょっと自慢気に笑って言葉を零した。二人の腰から『ぶふ! おもしれ~』『流石マスター!』と聞こえたけれど、聞こえないフリをしておこう。

 

 「申し訳ございません」

 

 とりあえず謝らなければと、教会の皆さまに頭を下げる。魔力を通して欲しいと願ったのは神父さまだけれど、壊した本人は私なのだから。神父さまと私が互いに頭を下げ合う。神父さまもこうなるとは考えていなかったそうだ。一応、弁償すると申し出ると、いえいえいえいえと神父さまは恐縮しっぱなしで。

 平謝りしているとシスターズからストップが掛かり、本題に入ろうと促される。庭で拾った小さな枝を錫杖代わりにして、舞を教えて貰う。難しいものではなく、直ぐに覚えられるものでアリアさまとロザリンデさまと私は、シスターズから合格点を頂くことになり。

 

 「あれ?」

 

 私が持っていた小枝を見る。タダの枝だったのに、枝の脇から新芽が生えて葉っぱになっている所もあるのだけれど……。

 

 「枝に葉っぱが生えていますよ!」

 

 「ミ、ミナーヴァ子爵ですものね……」

 

 アリアさまが両手を胸の前で合わせ、ロザリンデさまが信じられない事を見たけれど私だからと自分に言い聞かせていたのだった。

 

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