魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

349 / 740
0349:新情報。

 北の大貴族さまはアルバトロス城の謁見場での陛下に対しての不敬を抗議して、ミズガルズ政権が問い詰めれば貴族籍を剥奪できるだろうと結論が出た。追加で亜人連合国とフェルカー伯爵家との契約もあるので、資産を自分の懐に残せない。

 フェルカー伯爵家との契約は北へ戻ってから契約開始となるので効果は薄いが、亜人連合国と取り交わした契約は既に発動しており、結構な額を買い込んでいたから。

 北の大貴族さまに商品を渡して良いのか疑問だったけれど、取引だから正当に執り行うべきとディアンさまが言い切った。正当な価格で取引しているけれど、借金というか支払い方法がえげつなかったからなあ。本当に良く思いついたものだ。

 

 そんなこんなで北の大貴族さまはホクホク顔であるが、フェルカー伯爵家に図々しく……違う、居座って……食客としてアルバトロスに滞在している訳だけれど、いつ帰るつもりなのだろうか。参ったねえということでお城の会議場でアルバトロス上層部と皇女殿下が集まって、あーでもないこーでもないと意見を繰り出していた。

 

 「皆さま、此度の件はご迷惑をお掛けしてばかりで真に申し訳ありません」

 

 会議が始まると開口一番に皇女殿下が謝罪の言葉を告げた。立場的には自国の貴族が他国に迷惑を掛けているので、肩身が狭いのだろう。本来であれば自国で帝室が解決すべき案件で、アルバトロスを頼るのは忸怩たる思いだったのでは。

 ふと、今回のことで疑問が過ぎる。大陸を隔てるとお互い不干渉を貫いているのに、北大陸のほぼすべてを統べるミズガルズがどうしてアルバトロスの存在を知ったのか疑問である。後で皇女さまに聞いてみようと心のメモを取り、本日の議長である方が口を開いた。

 

 「気にするなとは言えんが、誠意は見せて貰っているからなあ。馬鹿が国にいると苦労するのは理解しておる」

 

 会議室にいる人たちの中で位が一番高い公爵さまが皇女さまの言葉に返す。陛下は今回の会議に出るまでもないだろうと、結論だけを報告される予定である。代わりに楽しいこと大好きな公爵さまが参加している上に議長だし、ストッパーである陛下が居ないので、北の大貴族さまは全身の毛を毟り取られる可能性が飛躍的に上がっていて、南無と心の中で合掌する。

 

 公爵さまの『誠意』というものは、今回一連のことに関してアルバトロスが費やした労力やらお金やらを帝室が補填するというものである。

 フェルカー家に滞在している大貴族さまの費用も加算されているので、長くなれば長くなるほど帝室の負担が増す。権威が落ちているし、魔人の村も復興しなきゃならないので早々に解決すべきと判断されて会議が開かれた。

 

 が、この場にいる方たちは『アルバトロスに不敬を働いた北の大貴族を許すまじの会』の所属。もう一度、南無と心の中で手を合わせる。

 

 仕事が暇な人は集まってね、くらいのものだったのに割と豪華面子。公爵さまに宰相補佐さま、外務卿さまに辺境伯さまとラウ男爵の本家である伯爵家に……言い始めるとキリがないので残りは割愛。

 私は公爵さまに『参加しなさい』と命じられたので『はい』と言葉を返すのみ。ついでにメンガーさまも会議室の隅っこで小さくなっているので、公爵さま辺りに召喚命令を出されたのだろうなあ。ゲーム知識があるので、北の大貴族さまについて知っているかもしれないし、彼も彼で大変だと視線を向けると、メンガーさまと目が合い小さく頭を下げたので私も返しておく。

 

 「ありがとうございます、閣下。本来であればわたくしたちが北の者を諫めるべきですが、己の力に酔いしれて言葉を持ち合わせていませんから……」

 

 皇女殿下の肩がしょぼんとしぼんでいく。まあ、恥ずかしい上に、自国の権威を見せられないのだから小さくなるしかない。言葉が悪いかもしれないが、神聖大帝国と大層な国名なのに子飼いの手下を御せていないのだから。

 

 「まあ、亜人連合国との商談で見事に墓穴を掘ったからな。北に戻って時間が経てば経つほど、あ奴の財力は地に落ちる。金のない貴族なんぞ価値はないからなあ」

 

 公爵さまが良い顔になった。亜人連合国との契約の他に、アルバトロスも北の大貴族さまと勇者さまの失礼な態度を抗議するので逃げられないのかな。あとはミズガルズの帝室が大貴族さまと勇者さまにどこまで出られるかが問題だ。アルバトロスが介入しても良いけれど、他国に頼らなければ帝室は自身の国の貴族を管理できないと見られても仕方ないのだから。

 

 それに……北の大貴族さまの財産没収できなければ困るのはミズガルズではなかろうか。ぶっちゃけ、今回北の大貴族さまが買い付けた亜人連合国の品々を、皇女殿下が回収して契約白紙をお願いする方が良い気がする。公爵さまの言葉にドン引きしている皇女殿下。まああの契約内容を知れば、仕方ないのではなかろうか。目の前の珍しい品に目が眩んで、支払い方法に気を払えていない大貴族さまも大貴族さまであるが。

 

 「しかし、いつまでも彼らをアルバトロス王国に滞在させておく訳にはいきません。もちろん、わたくしたちも含まれますが……。どうにかして、彼らを北へ戻す算段をつけねばなりません」

 

 皇女殿下が歯噛みする。アルバトロス城に匿ってもらっている状態だから、勝手はできないから致し方ないのだろう。この場にいるミズガルズのメンバーも微妙な顔になっているし、立場が微妙だよねえ。自国であれば彼女たちの立場と身分が保証されており、配下に命令して動くことができるけれど。

 

 「力づくで解決しても構わないかね? そしてあとの事は貴殿ら帝室に任せる」

 

 「はい。その為の準備を帝室は抜かりなく進めております。彼らが西大陸に旅立ったことにより、帝室が動けるようになりました。国内工作を図っております故に」

 

 公爵さまと皇女殿下が互いに頷き合う。帝室的には大貴族さまは目の上のたんこぶだった訳か。でもあんな人が帝室を脅かしている存在だったなんて信じられない。先代が有能で、代替わりを経て力を持っていると勘違いでもしたのだろうか。

 

 「ナイ、いや、ミナーヴァ子爵」

 

 公爵さまが公式な場だからと私の名前を言い直した。あとは私と公の切り替え示唆かな。公爵さまが簡単な言い間違えを犯す訳はないだろうし。

 

 「はい」

 

 なにを言われるだろうと身構えつつ、返事をしなければと口を開いて公爵さまと視線を合わす。公爵さまは目を細めて、面白おかしそうに笑っている。

 

 「北の大貴族をミズガルズへ戻せるか?」

 

 「わたくしが、ですか?」

 

 それはアルバトロスかミズガルズの仕事では……と感じつつ、命令とあらば動かなければならないのがお貴族さまというもので。

 

 「ああ、そうだ」

 

 「わたくしが行った場合、穏便な手法で解決できる自信がありません。他の方を頼るか、陸路と海路を利用して戻って頂いた方がよろしいのでは?」

 

 超長距離転移はできないし、頼りのロゼさんは北の大陸へ行ったことがないので、私が魔力をロゼさんに渡しながら移動するのは無理だしなあ。あとは亜人連合国の飛竜便をお願いするくらいだけれど。慣れていない人が長時間の空の旅を耐えられるのか疑問。乗り心地やいろいろなものを加味しなくていいなら、北の大貴族さまを私が送り返す役を担っても構わないけれど。

 

 「どう考える、皇女殿下?」

 

 公爵さまの視線が私から皇女殿下へと変わる。愉快そうに笑っている公爵さまは、大貴族さまの謁見場での態度がよほど気に食わなかったようだ。

 

 「問題はなにもありません。ただ、彼の者の命だけは保証して頂きたく」

 

 皇女殿下、その言い方だと精神に異常をきたしても問題ないと言っているようなものなのだけれど……。深くは考えまいと首を軽く振る。なんだか妙な方向に話が飛んでしまったなあ。でも、北に行けば美味しい食材が沢山あるかもしれないし、悪い案じゃないのかな。

 

 一応、皇女殿下にお願いして北の特産物を教えて貰って、買い付けるようにはしているけれど距離が離れすぎていて、日持ちする食材しか取引できなかった。南の海の蟹さんも美味しかったけれど、北の海の蟹さんも遜色ないくらいに美味しいだろう。海産物おいしそうだよね、寒い所って。他にも北の大地なら温かい料理が沢山ありそうだし、興味はある。

 

 「だそうだぞ、子爵?」

 

 「承知いたしました。手段を問わなくて良いのであれば、いくらか移動方法はありますので。あとは北の大貴族さまを説得できるかどうかでしょう」

 

 会議場にいる方々が確りと頷いてくれた。小人数で武力持ちとなると、かなり限られてくるから公爵さまの人選は仕方ない。

 おそらく大型の竜の方の背中に乗って移動になりそうかな。クロが大きくなるという方法もあるが、あまり気乗りしないようだし。飛竜便をお願いして正規の値段を払って、送り届けるのが一番かな。ロゼさんの移動拠点を増やしたいから、帰りに寄り道できるようにお願いもしておこう。

 

 「勇者さまはどういたしますか?」 

 

 あと、魔人の方たちも連れて勇者さまが魔王を倒していないと喧伝するの手もあるかな。村の復興を早くしないと、時間が経てば経つほど寂れ具合が酷くなる。使わない家は劣化が早くなると聞くし、やることが沢山ありそうだ。まあ、私の出番は大貴族さまを連れ返って、事の成り行きを見守りアルバトロスに報告するだけだろう。

 

 「放置で良いだろう。冒険者ギルドで確りと腕を磨いているようだしなあ。皇女方も一緒に戻る手もあるが……そちらはミズガルズの判断であろうな」

 

 「戻るのであれば、皇帝陛下の許可が必要となりますので……」

 

 ですよねえ。皇女殿下が勝手をできる訳はないので、その辺りは応相談だろう。とりあえず、大貴族さまを上手くフェルカー伯爵家から連れ出して、北へ渡る算段をつけなければ。あれ、学院……また通えなくなると少々不安が残ってしまうが、お仕事なので我慢だろう。遅れた分は学院がどうにかしてくれるかなあと、これからのことを頭の中で組み立て始めるのだった。

 

 ◇

 

 ――不味いか……下手を打った気がする。

 

 ハイゼンベルグ公爵の呼び出しにより北の大貴族をどう扱うか話し合い中の会議場の隅っこで、ゲームについて取りこぼしがないかを必死に思い出していた俺、ことエーリヒ・メンガーはとんでもないことを思い出した。

 

 目の前で繰り広げられている会議内容は順調に進んで――大貴族が墓穴を掘ったので割とあっさり解決しそう――いる。ゲームでは北の大貴族は添え物程度……ようするに名前が出てくるくらいのモブ扱いだったのに現実では悪い意味で勇名を馳せている。

 

 公爵閣下から聞き及んだ話では、皇女殿下方にフラれたというのに諦めずに『修行の旅に出る!』と宣言してアルバトロスから出て行ったらしいのだが、彼女たちの好感度が上がるどころか下がっていることに何故気付かないのだろう。

 やはり、ゲームの主人公は俺たちのように転生者なのだろうか。でなければ、突飛な行動に理由が付かない。魔王と勇者伝承も、勇者が魔王を倒したからこそ勇者の称号を得たのだし。勇者の行動にドン引きしてしまった俺がいるのだが、無力な俺はゲームの情報提供くらいしか協力できない訳で。

 

 転生者であることをカミングアウトできたから、少しだけ心の重りが取れた気がする。

 

 この世界の住人になれたと言えば良いのだろうか。言ってしまえば頭がおかしいヤツだと判断されるだろうから、誰にも言えないと腹を括っていたのに、現実は割と普通に受け入れられた。アルバトロス上層部は俺を情報提供者とみつつ、妙な連中に絡まれないように壁となってくれている節がある。多分、その筆頭がハイゼンベルグ公爵だ。

 前世はこの世界より技術が発展していたと知っても、技術提供や知識提供をしろと無茶を言われない。文化や技術の成熟はこの世界に生きる人たちが行うべきことだ。そりゃ、命の危機があるとか状況が変われば、全力で前世の知識を思い出さなければならない時がくるかもしれないけれど、その時までは不用意に干渉すべきじゃない。

 

 ミナーヴァ子爵が北に大陸へ渡ることになったのは、順当な判断だろう。アルバトロス内の個人で移動手段を持ち得る人が、彼女くらいしかいないのだから。選ばれた理由のもう一つが、個人の持ち得る戦力が高いから。おそらく軍や騎士団でも彼女に勝てるのかどうか怪しそう……なんだよなあ。

 ミナーヴァ子爵自身が攻撃魔術を使っている所を見たことはないが、彼女専属の双子の護衛騎士は強い上に子爵が支援魔術を使えば、騎士の能力が数段上がるだろう。

 公爵令嬢と辺境伯令嬢も一緒に旅立つならば彼女たちも十分に強いし、なによりも竜とスライムとフェンリルが子爵の側にずっと侍っている。亜人連合国の方々も子爵に協力的で、彼女が願い出れば手を貸すだろうし。

 

 いつの間にかミナーヴァ子爵の戦力が凄いことになっている。

 

 双子が佩いている剣が変わっていることに気付いて、俺が視線を向けると剣が喋った。いや、そりゃ創作の世界で喋る剣や喋る銃があったりするのだが、リアルで見るだなんて全く考えていなかった。ちょっと引いている俺に剣が『なんでそんなにビビッてんだ?』『喋る剣は珍しいもの。仕方ないのでしょう』とお互いに会話していた。不躾だが、ミナーヴァ子爵にどこで手に入れたのか聞いたのだが……。

 

 『ドワーフの職人さんと意気投合して魔力を込めたのですが、いつの間にか意思を持ったみたいです』

 

 後ろ手で困った顔で頭を掻いている彼女に二の句が継げない俺。亜人連合国との繋がりは知っているので職人に剣を鍛えてもらうのは分かる。分かるのだけれど、魔力を込めたら意思を持ったってこれ如何に。深く考えない方が良いのかと頭を振って、ミナーヴァ子爵の滅茶苦茶振りに驚きを隠せない反面、ミナーヴァ子爵だしなにを引き起こしてもおかしくないと納得してしまいそうだった。

 

 会議場の隅っこの椅子の上で大きく息を吐く。凄い勢いでゲーム関連の話が舞い込んでくることに眩暈を覚えるが、なるようにしかならない。とりあえず俺の齎した情報でアルバトロスが困ることはなく先手を打つ形を取れたので、良かったのだろう。あとは大貴族と勇者がどうなるかが問題か。

 

 「エーリヒ」

 

 「は、はい!」

 

 ハイゼンベルグ公爵に名を呼ばれた俺は椅子から凄い勢いで立ち上がり直立不動になる。そんな俺を見た閣下は喉を鳴らして笑いながら、口を開いた。

 

 「そう緊張するな。気楽にとまではいかんが力を抜け」

 

 力を抜けと言われても、緊張してしまうのだ。目の前に立つ方は俺の何倍もの時間を生きていて、貴族という面倒な世界で生き抜いてきた人である。纏う雰囲気が他の方よりも勢いがあるというか、圧が強いというか。陛下も陛下で凄いのだが、目の前の彼は別種の凄さがあった。

 

 「申し訳ありません、閣下」

 

 「謝らんでも良いだろう……と、話が進まなくなるな。エーリヒ、今の状況をどう見る?」

 

 男同士の気安さなのか、閣下は俺のことを家名ではなくエーリヒと名前で呼ぶようになっていた。

 

 「シナリオから逸脱しているのでなんとも言えませんが、勇者も大貴族も詰んでいる状態ではないかと。あとは最後の悪足掻きをしないか心配です。人間、追い込まれるとどんな行動に出るか分かりませんから」

 

 追い込まれて勇者が覚醒したとかあり得るし、大貴族もなにか隠し玉を持っていたなんて事態もあり得るだろう。あ、大事なことを閣下に伝えなければ。ミナーヴァ子爵の北大陸行きが確定したようだし、余計に伝えておかなければならない。もし、俺がここで言いそびれて、子爵があとから事実を知れば俺の命がお亡くなりになる可能性があるのだから。思い出すのが間に合って良かったと息を吐き、公爵閣下の瞳を確りと見る。

 

 「確かにな。――どうした?」

 

 「閣下、お伝えしたいことが……」

 

 神妙な顔になった俺に閣下は言葉を促す。

 

 「まだ決まった訳ではありませんし、俺の予想や考えでしかないということをご承知おきください」

 

 先ずは、勇者が転生者の可能性を伝えておく。謁見場にも赴いていたが、皇女殿下と勇者が鉢合わせした場面に遭遇していなかったので、聞き及んだことからの推測でしかないことも。

 人目を憚らず『勇者の顔だ! 身体だ!』と叫んだらしいので、ほぼ確定だろうなあ。確かに直接見た勇者の顔は、ゲームの勇者の絵の顔そのものだった。けれど……イケメンとは言い難い。

 なんならアルバトロスの平民の男性よりも下かもしれず、俺の周りにいる友人や知り合いの方が顔は良かった。目の前の公爵閣下も若かりし頃は、ワイルド美形だったのでは。老いても尚、渋くてカッコいいからなあ。男の俺が言うことではないのかもしれないが。

 

 「なるほどな。他はあるか?」

 

 あれ、勇者の情報を割とあっさり流された。ということは公爵閣下は勇者を重要視していないのか。危険人物であれば、事細かいことまで聞き出されるはずだ。なら、次の話題に移しても問題なかろうと俺はまた口を開く。

 

 「北大陸の東の端にとある島国があります」

 

 「島……話に関わってくるのか?」

 

 公爵閣下がゲームの話に関わってくるかと問うが、少しばかり事情が違う。

 

 「いえ。話に関わるというよりもミナーヴァ子爵に関わると言い換えても良いのでしょう」

 

 ゲームではメインシナリオには関わらず、オマケ程度の話だったから俺もすっかり忘れていたのだが。閣下に一番理解されやすい言葉はなんだろうかと、少し考えながら言葉を口にした。

 

 「日本と酷似した国がでてきます。存在しているならば、味噌と醤油に米……食に飢えている彼女が知れば、行きたいと必ず主張なさるでしょう」

 

 フソウとゲーム内では呼ばれ、言及されていたのだ。おそらく日本刀でも出したかったのだろうが、制作進行中に問題がでたか予算が足りなくてオミットされたのだろう。フソウとカタカナで表記されているが、扶桑と置き換えできるし、日本の別称だから。

 俺と大聖女さまの味噌と醤油研究は行き詰っているから、ミナーヴァ子爵は大豆の生産から始めてしまっている。俺だって味噌と醤油を手にしたい気持ちはあるのだが、ミナーヴァ子爵ほど気持ちは強くない。勝手に俺がミナーヴァ子爵に伝えても良いのだが、彼女の後ろ盾である公爵閣下に知らせてから判断して貰う方が良いだろうと先ほど思い出したことを伝えているのだが。さて、閣下はどう判断をくだすのか。

 

 「ミズガルズとの関係次第だろうな。その国が閉鎖的ならば無理矢理乗り込むのは不味いな。知らせておいて、ナイがどうしたいか、どう行動するか先に報告書であげさせるか」

 

 公爵閣下が蓄えた髭を右手で撫でながら、考えを口にした。向こうでいきなり知れば勝手な行動を取るかもしれないから、先手を打つようだ。それなら大丈夫だろうと安堵の息を吐いて、自分の懸念はこれくらいだと閣下に告げる。ミナーヴァ子爵は考えて行動する人物だから無茶はしないはずだが、時折暴走する節がある。とりあえず、俺の役目はこれで終わりかなあと閣下と別れるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。