魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0351:ミズガルズ謁見前。

 魔力、ありがとうございます! と私に告げた二頭の大型竜さまたちの喜びが半端なかったので首を傾げていれば、クロが『その内に番を見つけて卵を生むか、自前で卵を生むかもね』と目を細めながら教えてくれた。

 亜人連合国の竜の方たちはどこまで数を増やすつもりなのだろう。食物連鎖の頂点に座す方たちだから増えすぎると、ご飯がなくなるのではと悩んでみたが彼らの主食は魔力である。大地にある魔力量が枯れてしまうことは早々ないはずだし、なにかの文献で魔力や魔素は循環していると聞いたことがあるので、『水』と同じ概念なのではと推測している。

 

 数が増えすぎれば、ディアンさまたちが考えることだから今はまだ喜んでおくべきか。もちろん協力を請われれば私もアルバトロス上層部も考えるし。住める場所が少なくなったならば東大陸も移住先に選べるのかな。ウーノさまに相談して、巨大魔石をどうにかしなきゃならないだろうけれど。

 

 西大陸の最北端の国から飛び立ってしばらく。東大陸から西大陸へと戻った時の海は暑い国特有のコバルトブルー色だったけれど、西大陸の最北端から北大陸までの海の色は濃い藍色と表現すれば良いだろうか。

 肌に当たる空気も随分と冷たくなってきているし、北上しているのだなあと感慨深い。聖女の仕事以外でアルバトロス王国から出ることはないと考えていたから、本当にこの二年と少しで私の置かれている状況が変わり過ぎである。慣れてしまえばなんということもなく、周りの方々のお陰でお貴族さまとしてやっている訳だが。でもやはり、大陸を跨ぐのは凄すぎでは。

 

 今回、王太子殿下は外交に出向いて箔付けの為に同行している。苦笑いしながら、向こうも第一皇子殿下をアルバトロスに派遣したから、帳尻合わせらしい。あまり格が低い人だと失礼に当たるからと。手土産にアルバトロスの小麦や特産品に公開可能な魔術指南書等を贈るらしい。

 私もドワーフさんが製作した普通の短剣とエルフの方々が編んだ普通の反物を買い付けて、ミズガルズへと贈る手筈になっている。失礼に当たらないかとアルバトロス上層部に問い合わせた所、ミズガルズ側の尻拭いをしている形だから豪華なものや珍しいものを贈るのは見送れと教えられた。

 

 外務卿さまは『影が薄いと言われ続けていた私が……感謝致します! ミナーヴァ子爵!!』と、何故か私に感謝をしながら悦に浸っていた。これまたなんでと首を傾げていると、外務卿さまの直属の部下の方が『今まで外務部は左遷場所、なんて言われていましたから。子爵のお陰で花形部署へと様変わりしたので、代々外務卿を務めるシャッテン卿は嬉しいのですよ』と苦笑いで教えてくれた。

 

 障壁展開で国防を担っている所為か、引き籠りのアルバトロスと呼ばれていて諸外国との付き合いもほどほどだったけれど、辺境伯領への大規模討伐遠征からは各国とのやり取りが増えて大忙しなのだとか。

 暇な部署でほどほどにお給料を頂きたいと考える人には地獄になったかもしれないが、代々外務卿を務めていたシャッテン卿にとっては嬉しい悲鳴。直属の部下の方も忙しい方がやりがいがあると、良い顔で私に告げていた。

 

 セレスティアさまはセレスティアさまで、竜がまた増えると聞き高位貴族のご令嬢らしくない顔を披露している上に、皇女殿下方は母国に戻れると喜びつつも気を引き締めているし、魔人の方々は村に帰ることができると盛り上がっていた。

 ベリルさまの背中の上がカオスだなと目の前を見ると、北大陸が見えてきた。少し平地を挟んで直ぐに高い山々が鎮座しており、独特の光景を描いていた。これが北大陸かとおのぼりさん丸出しで見ていると、よく知った気配を感じて後ろを振り返る。

 

 「寒くないか?」

 

 「大丈夫?」

 

 ジークとリンが同じ方向に首を傾げて問うてきた。障壁を張るついでに外気に晒されないようにと、効果を追加しているから実際の気温よりも暖かいはず。皇女殿下方が北大陸に辿り着いたというのに、あまり寒くないと首を傾げているから、効果は十分にあるようだった。ベリルさまから降りれば、厚着をしなきゃ風邪を引くかもしれないと考えつつ、ジークとリンの顔を見上げる。

 

 「うん、今は大丈夫。障壁を解けば一気に寒くなるかもしれないから、ジークとリンも気を付けてね。クロは寒いのは平気?」

 

 私の言葉に頷く二人。クロに顔を向けると、こてんと顔を傾げながら言葉を紡いだ。

 

 『ボクは平気。どんなに寒くても暑くても大丈夫な身体だからね』

 

 クロはえへへと自慢そうに語り、私はクロに『羨ましいかも』と言いながら笑みを返す。本当、竜は生き物として不思議だよね。エルとジョセに寒さは平気かと聞いてみると、耐えれるけれど苦手と教えてくれた。幻想種の中でも格付けみたいなものがあるらしいから、その辺りが影響しているのだろうか。

 

 『もう直ぐ目的の場所になります。下降に入りますから、皆さまお気を付けを』

 

 ベリルさまが目的地が近いと告げると、身体がかくんと揺れた。下降態勢に入ると、同じ場所をゆっくりと回りながら高度を落としていく。

 

 『恰好を付けて、地面を穿りながら勢いよく降りるのも良いのですが、自然を破壊してしまいますからね』

 

 確かに凄く格好良いシーンになるだろうけれど、周りの被害を考えるとやらないほうが賢明だ。どこか荒地でも見つけたら見てみたいですね、とベリルさまに返事をすると『是非』と答えてくれる。

 ベリルさまはディアンさまと同じくらい体の大きさがあるので、かなり広大な荒地でやらなきゃ駄目なのでは。それこそ砂漠とか見つけて、被害が最小限に留まるところでやらないとベリルさまが言う通り、自然破壊になってしまうし、ベリルさまの自重で小さな地震が起こる可能性もありそうだ。

 

 『皆さま、着きましたよ』

 

 「ベリルさま。ずっと揺れないように気を使って飛んでくださり、ありがとうございました。降りたら、他の竜の方にもご挨拶しますね」

 

 西大陸から北大陸へ向かう間、ベリルさまは随分と丁寧に飛んでいた。彼が飛んでいる姿を何度か見たことがあるけれど、誰も乗せていない時は上下に身体が揺れていたのに、今回はほとんど揺れていない。空を飛ぶ竜の背中に慣れなくて酔う人だっていただろうし、有難い限りだった。いえいえと言葉を返してくれる彼に少々の魔力を渡して背中を降りた後、他の二頭の竜の方にもお礼を伝えつつ魔力を渡す。

 障壁を解いて地上に降りると気温が随分と下がっていて、アルバトロスの冬の時期より少し寒い気がした。準備していた厚手の外套を纏って、しばらくすると北のミズガルズ帝室の旗を掲げた方たちがこちらへとやってくる。

 

 「アルバトロス王国ご一行の皆さま、並びに亜人連合国の皆さま、そして魔人の方々。ようこそミズガルズへ」

 

 私たちを出迎えてくれたのは、ミズガルズの第一皇子殿下だった。

 

 知らない人が出迎えに来るよりも、一度、彼をアルバトロスの謁見場で顔を見ているからこその人選だろう。顔を知っている人で身分が確定している方だから、こちら側もある程度安心できる。皇子殿下は私たちアルバトロス一行と、竜の姿のままのベリルさまに驚きながらも腰低く接してくれた。ベリルさまは人化して一緒にミズガルズの大帝都まで入り、北の大貴族さまがどうなるかを見届ける。

 魔人の皆さまも一緒に大帝都に行き、ちょっといろいろと勇者さまの話を暴露して頂く予定。すぐ終われば、護衛付きだけれど観光しても良いよと許可を両国から頂いているので、大帝都を散策予定である。早く仕事を片付けて、あわよくば皇女殿下方に北大陸の東端にある島の話を聞いてみたい。やることが一杯あるけれど、楽しみがあるのは良いことだ。

 

 挨拶を終えるや否や、皇子殿下は魔人の方々の下へと歩いて行く。その姿を認めた魔人の少女がじっと殿下の顔を見ていた。

 

 「我が国の者が魔人の村を一方的に襲い申し訳なかった。微力ながら貴殿らの村の復興を我らも手助けしたい」

 

 アルバトロス上層部が魔人の皆さまから村が襲われたことを聴取しているし、勇者さまからも、謁見場まで向かう間に護衛役に就いた近衛騎士さまが魔人の村を襲った時のことを聞き出していた。

 状況に齟齬はなく、どちらの言い分も本当と認められ報告書としてミズガルズへと纏めて送られた訳である。あとは謁見場での言動も。届くや否や、即行で『ウチの国の者が、すみませんでしたぁ!』と謝罪の返信が送られてきたとかなんとか。

 

 「国、全ての者を余すことなく管理しろなどは言わんのじゃ。じゃが、勇者と魔王伝承の誤りを正していくのも良いのかもしれぬな。皇子殿下、ミズガルズよりの援助、感謝する」

 

 魔人の少女の言葉に、安堵の顔を浮かべた殿下は堅い握手を交わしていた。人と魔人の方々の交流は途絶えていたようだし、これから交流が始まってミズガルズの『勇者と魔人』の伝承が良い方向へ流れていけば良いな。

 二人の握手を見つめていると、クロがぐしぐしと顔を擦り付けてきた。上手くいくと良いねとクロに話すと、本当にねと返してくれる。そして、殿下がまた足を動かして、檻の前へと辿り着いた。

 

 「さて、先代の時は随分と好き勝手に動いていたけれど、陛下と私は貴方を許すつもりは毛頭ないからね。アルバトロスへと向かってくれたのは、私たちにとって幸運だった」

 

 「ぐっ! 今の今まで帝室は我々に手をこまねいていたのに……どうしてこうなったのだ!!」

 

 皇子殿下の言葉を腹立たしそうに聞いた大貴族さまは頭を垂れて、言葉を吐いた。そりゃ、誰かを自分の利益の為に用いたからじゃあないかなあ。人間だから欲を満たしたい思いは理解できる。

 私だってお腹が空けばご飯が欲しいと望むし、お金が欲しければお金が欲しいと望むけれど。安易に手に入れようとするから、失敗したのではと大貴族さまを見ながら、一路ミズガルズ神聖大帝国の大帝都を目指すのだった。

 

 ◇

 

 北大陸に辿り着いてすぐ、お迎えの馬車に乗って移動中である。馬車の窓から見える景色はアルバトロスと変わりない発展ぶりだが、雪が少し積もっており新鮮な光景である。

 アルバトロスより風が冷たく、道端に生えている木も広葉樹より針葉樹が多く見え、異国に来たのだなあとしみじみと感じることができた。野生動物とか普通にいそうな雰囲気で、寒い国特有である狐や狼が多く生息していそう。

 

 「ヴァナルのお嫁さん、見つからないかなあ」

 

 ぼんやりと馬車の窓から景色を見ていると、自分の口から勝手に声が漏れていた。ジークとリンは外で警護に就いていて、馬車の中にはソフィーアさまとセレスティアさまが同乗している。私が独り言を漏らしても気にしない方々だから、問題はない。

 

 「どうした、いきなり」

 

 ソフィーアさまが余りに脈絡もない言葉だったらしく、首を小さく傾げて私に問うた。

 

 「ヴァナルのお嫁さん……ヴァナルのお嫁さん……なんですってーー!!」

 

 彼女の隣に座っているセレスティアさまは、私の言葉を咀嚼して意味を理解しどこか遠くまで考えが飛んで行っている。セレスティアさまは放っておけば良いだろうと、ソフィーアさまに顔を向けた。

 

 「ああ、いえ。寒い場所だと狐や狼が多くいそうなので、ヴァナルのお嫁さんが見つかれば嬉しいなあと。でも、ヴァナルの意思が一番大事ですから私だけが張り切っても仕方ないですよね」

 

 うん。ヴァナルが添い遂げたい相手を自分で見つけるのが一番なのだろう。フェンリルに発情期とかあるのか分からないし、生態は謎に包まれたままの生き物である。

 ヴァナル曰く、エルとジョセみたいに一生の番を見つけることもあれば、自前で溜め込んだ魔力で分身を生み出すこともあれば、魔素の多い場所でフェンリルとして具現化することもあるらしい。この話を副団長さまにすると、嬉々としてメモを取っていたのだけれど、副団長さまの探求心ってどこまであるのだろうか。本当に自分の欲望に忠実で、パワフルな人である。

 

 「だな。人間でも貴族でもないんだ、彼らには彼らのやり方があるだろう。自然に任せておくのが一番なのだろうな」

 

 「しかしナイ。ヴァナルがお嫁さんを見つけてくれば、仔狼が生まれますよね?」

 

 穏やかな顔で言葉を紡ぐソフィーアさまと、正気に戻ったセレスティアさま。

 

 「ええ、番ですから、その可能性は高いかと」

 

 狼にほど近いと言われているから、多く産む可能性もある。ヴァナルは仔煩悩そうだし、奥さんと一緒に仔狼のお世話を忙しなくしていそうだ。微笑ましい光景だなあと想像していると、セレスティアさまも同じ想像をしているみたいで。

 

 「大きなフェンリルが二頭並び、その前には沢山の仔狼の姿……ふはっ!」

 

 セレスティアさまが最後に何故か息を抜いた言葉にならぬ声を発すると、どこからともなくハンカチを取り出して口元……より上、ようするに鼻を抑えてなにかを堪える。ソフィーアさまは首を軽く振って、私に隣は気にするなという視線をくれた。いつものことなので、しばらく放置しておけばセレスティアさまは妄想世界から現実に戻ってくるだろう。

 

 『ヨンダ?』

 

 ヴァナルが話題にされていると気が付いたのか、私の影の中からぬっと顔だけを出した。ヴァナルの頭の上には何故かロゼさんが乗っていた。知らない人からすればホラーな光景だけれど私たちは慣れているし、ヴァナルは気を使っているのか影から姿を現す時は、ちょっとだけ魔力を放出して外に出ることを教えてくれる。

 

 「ヴァナルにお嫁さんができると良いねってみんなと話していたんだけれど、北大陸にフェンリルっているのかな?」

 

 『サガセバ、イル?』

 

 ヴァナルが首を傾げてこちらを見上げているので、分からないことのようだ。まあ、急ぐものではないし、ヴァナルのやる気次第だろう。ルカも番が欲しいみたいだし、良いお嫁さんが見つかると良いのだけれど。

 ヴァナルが私を呼び、子供を産むなら子爵邸が安心と言い始めたのは……フラグが立ったと言うべきなのだろうか。そうなれば王都の子爵邸が手狭になると苦笑いを浮かべると、セレスティアさまが是非ヴァナルのお嫁さんは子爵邸にと力強く言い。クロは『見つかると良いねえ。賑やかなのは良いことだから』と目を細めながら、ヴァナルに伝えていた。

 

 そうこうしていると、どうやらミズガルズの大帝都へと辿りついたようだ。辿り着いた場所から馬車で二時間ほど、そんなに海から離れていない立地なのだなあと、また馬車の窓から外を見る。

 

 「……高い」

 

 大帝都を囲む外壁が凄く高く築き上げられていた。窓から視線を上げて上を見る。こんなに高く築く意味はあるのだろうか。

 

 「アルバトロス王都の外壁より高いな」

 

 「無駄に高くする意味……防衛というよりは寒さ対策でありましょうか?」

 

 ソフィーアさまとセレスティアさまも興味があるのか、私と一緒に馬車の窓から外を見る。確かに冷たい風を凌ぐのであれば、外壁が高い方が入り辛いだろうけれど。倒壊の危険を考えてしまうあたり、地震が多発する島国特有の意識なのかもしれない。生まれ変わってから地震を体験したのは、南の島で揺れた一度だけである。北大陸もアルバトロス同様に、揺れない地域かもしれないなと無理矢理に納得させた。

 高く築き上げられた理由は他にあるのかもしれないが、今はこれから大帝都の帝宮入りして、皇帝陛下との謁見が控えている。外門から内門へと入り、帝宮へと辿り着いたようだ。馬車がゆっくりと止まり、ジークのエスコートで馬車から降りた。

 

 「ようこそ、ミズガルズへ」

 

 びしっと決めた兵士の皆さまに迎え入れられる。毛皮の帽子を被っているので、寒い国なのだなあとしみじみと感じる。そういえば第一皇子殿下も兵士の皆さまも『神聖大帝国』と名乗りをしない。本来であれば権威を示す為に『ミズガルズ神聖大帝国』と名乗るだろうに。そこから導き出されるのは、アルバトロスと亜人連合国と魔人の皆さまを同等に扱っているということか。

 同道していた第一皇子殿下の案内により、帝宮の中へと足を踏み入れる。アガレスの皇宮も凄かったけれど、ミズガルズの帝宮も凄く広いし豪華極まりない。アルバトロスの王城も広くて調度品もお高そうなのだが、ミズガルズの方が数段上。流石、三千年近く続いている国だなあと感心しつつ、赤い絨毯を敷いた廊下をみんなで進む。――ん?

 

 『凄いわね。目がチカチカしそうだもの! あ、喋らなくて良いわよ。こちらの人間に見つかると不味いでしょうし』

 

 お婆さま、いつの間に。まあ彼女のことなので面白いことが転がっていると判断して、こっそりついて来たのだろうけれど。

 

 『ちょっと違うかしら。ダリアとアイリスにちょっぴり太った人がどうなるか気になるから、様子を見てきて欲しいってお願いされたの!』

 

 いや、お婆さま。お姉さんズにお願いされたとしても、興味がないと動かないでしょうに。私の心の声を読んでいたのか、バレちゃったっと告げてお婆さまの気配が消える。私の後ろでベリルさまが苦笑いしている雰囲気を感じ取ったので、お婆さまが最初からいたことを彼は知っていたらしい。

 

 「こちらで暫し、お待ち頂きたい」

 

 案内を終えた第一皇子殿下が、準備が整い次第お呼びいたしますと告げて部屋を出て行った。檻の中に捕えていた大貴族さまはどこへ行ったのだろうか。

 逃がすと大変なことになるので、逃がしたりはしないだろう。ただここは北の本拠地なので、大貴族さまのお仲間がいてもおかしくはない状況である。気を抜かない方が良いとアルバトロス、亜人連合、魔人の皆さまで話していると、案内の係の人が現れて謁見場へと通される。

 

 大きな広間の前にある壇上で玉座に腰掛けるミズガルズ帝。どっしりと構えて私たち一行が彼の前に辿り着くまで、視線を外さなかった。無能だった先代を引き摺り下ろした人なので、肝は据わっているのだろう。

 私も彼に確りと視線を向け、右横に外務卿さま、左横にベリルさま、さらに左に魔人の少女。後ろにはソフィーアさまとセレスティアさま、護衛のジークとリンも一緒だ。四人は従者と護衛として入室しているので、ちょっと扱いが違うけれど。

 

 「遠路はるばるアルバトロス王国と亜人連合国からよく参られた。ミズガルズは貴殿らを歓迎する」

 

 謁見場に集まっていたミズガルズのお貴族さまや帝室の要人方が、陛下の言葉でざわめきたった。多分、大貴族さま勢力への牽制かな。私たちに手を出して余計なことをすれば、許さないと示しているのだろう。手を出されればこちらも遠慮はしないと伝えてあるし、帝室側も了承済みである。茶番のようだけれど、事前の打ち合わせって大事だし、他国の貴族に手を出す不味さをしみじみと理解してしまう。

 

 「そして魔人の者たちよ。よく堪えてくれた」

 

 陛下は魔人の方たちが本気を出せば、報復も可能だっただろうと仰ったのだ。魔人の方々のご先祖さまは落ちた神さまだと聞くし、人間を超えた力を持っていてもおかしくはない。少女の言では人間より少し力が強く寿命が少々長目とは聞いている。そして、覚醒すればかなり強くなれると聞いたけれど実際の所どれほどのものか分からない。幾度かのやり取りを経て、玉座に座る陛下がふうと長い息を吐いて前を見た。

 

 「さて、次は裁きの時間だな……この場には他国の見届け人がいることを忘れぬように」

 

 また、ざわめきたつ謁見場。この中に一体、大貴族さまのお仲間が何人いるのだろうと、首を傾げて陛下の言葉を待つ私たちだった。

 

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