魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0357:フソウの都。

 越後屋さんのお店にトンボ返りしたのだけれど、ヴァナルが私の影の中から出ているので、越後屋さんの皆さまは目をひん剥いている。私の腕の中にクロがいるんだし、そう驚くことではない気がするのだが、三つ頭の大きなお犬さまを崇拝しているようなので致し方ないことなのだろうか。

 

 「あ、あの……子爵さま。そちらのお方は……ほ、他にも聞きたいことはありますが」

 

 越後屋さんが恐る恐るで問うたので、私はヴァナルへ視線を向けて頭を撫でる。ヴァナルの頭の上にいたロゼさんが体を揺らしてスライムボディーも撫でろと主張したので、うりうりと撫でておく。腕の中のクロは状況を面白おかしそうに見守っているだけだ。他にも聞きたいことがあると越後屋さんが告げたので、ロゼさんとクロのことも気になるのだろう。

 

 「いつも一緒にいるフェンリルのヴァナルです」

 

 私が越後屋さんにヴァナルを紹介すると、ぺこんと頭を下げたヴァナル。いつの間にそんなことを覚えたのかと首を傾げるけれど、影の中で私の様子を伺っているようだから挨拶した後は頭を下げるものと覚えたのだろうか。ヴァナルは賢いなあと、今度は顔を撫でると目を細めながら尻尾を縦に揺らしている。

 

 「フェンリル……怪狼ですか? 人に懐くなど、聞いたことがありません……しかし貴女さまであるのならば納得してしまいます。フソウ島の神獣と一瞬にして言葉を交わし、受け入れられておりました」

 

 フソウ島ではフェンリルを怪狼と呼んでいるのか。大きなお犬さまと穏便に会話できたのは、私が気に入られたというより番と認めたヴァナルがいたからだ。勘違いは止めて欲しいけれど、話が進まないのでぐっと堪える。

 

 「やはり彼女たちはフソウ島で尊き方なのですね?」

 

 「はい、それはもう。フソウ島誕生から生きていると伝わり、帝家と将軍家の象徴でありますから」

 

 少し前に越後屋さんから聞いた、フソウ島の成り立ちの話にあった三つ頭の獣なのだそうだ。二千年くらいの時間を生き今なお将軍家と帝家を導く存在らしい。越後屋さんも話に聞いたことはあるけれど、実際に目にするのは初めてで、生きている間に会えたならば幸運が訪れると言われ、これからも商売が上手くいきそうだと嬉しそうに語る。

 え、そんな方をヴァナルのお嫁さんに迎え入れるの……? 普通にヴァナルがフソウ島に残る案件ではないだろうか。でも、先ほどの話だと雪と夜と華はヴァナルに付いてくる気満々だし、ヴァナルは私の側を離れる気はなさそうなのだ。

 

 「…………帝家と将軍家というのは?」

 

 「ああ、それはですな――」

 

 帝家はフソウ島を切り開いた初代さまの血を引く方々で、フソウ島で最も高貴な方。将軍家は、帝家の代わりに摂政を司る家柄の方たちのことらしい。フソウ島に住まう人たちに支持され、恐れ多い方々らしい。それでもって黒いお犬さまは彼らに敬われているし、帝家や将軍家の方々より姿を現す機会が少ない。

 

 うーん。徳川家とかあるのかなあと首を傾げていれば、越後屋さんがクロとロゼさんにも視線を向ける。

 

 「その……ずっと気になっていましたが、子爵さまの腕の中にいらっしゃるのは……もしや……竜のお方なのでは」

 

 フソウ島でも竜は珍しいのか、クロに対して畏まった態度だった。

 

 「はい。えっと、どうしようか……」

 

 越後屋さんの疑問に答えて、クロに視線を向けて挨拶をどうしようかと聞いてみる。名前を出しても良かったけれど、名前を隠す節があるからクロに判断して貰った方が良いだろう。

 

 『なんだか照れるね。ボクはこの子が気に入って一緒にいるんだ。今回はこの子の望みを叶えてくれてありがとう。エチゴヤって呼んで良い?』

 

 「な、なんと。お声まで聞くことができるとは! ご随意にお呼びください。子爵さまとは商人として取引を結んだまででございます。これからもどうぞご贔屓に」

 

 越後屋さんは頭を下げた。そんな彼に畏まる必要はないよとクロが苦笑いしながら告げるけれど、彼ら的には無理なことのようで大きく首を横に振る。クロは諦めたのかそれ以上はなにも言わず、私の腕の中でちょこんと収まっているだけだ。とりあえず、神獣さまが戻ってくるまで待たせて頂くことになり、ぼへーっと静かな時間が過ぎていく。

 

 「お、お戻りになられましたぞ! 将軍家の使いの方もいらっしゃいます!!」

 

 しばらく待っていると越後屋さんが血相を変えて、待たせて貰っている部屋の中へと入ってきた。それじゃあ外に出ようとみんなでお店の外に出る。

 やはり、お店の外は寒いなと白い息を吐きながら、戻ってきた神獣さまと少し顔が青くなっている紋付き袴姿に二本の大小刀を腰に佩く男性数名。月代姿なので、きちんとしたお武家さんなのかも。ソフィーアさまとセレスティアさまより小柄だけれど、彼らから発する覇気は並ならぬものなので、かなりの使い手なのだろう。

 

 『お待たせいたしました』

 

 『少々、面倒なことになってしまいますが』

 

 『どうか使いの者の話を聞いてやってくださいまし』

 

 神獣さまの雪と夜と華の順に言葉を発すると、一緒にやってきていた紋付き袴姿の男性が一歩前にでた。

 

 「大樹公より命を受け、貴殿の前に立たせて頂く! 某、九条新右衛門と申す。どうかフソウ島の都『ドエ』にて大樹公との面会を願いたい」

 

 大樹公って将軍さまの別称だっけ。流石に帝さまは出てこないようだ。元日本人なので、ゲームが舞台の世界でもやはり一線を引くお方なので、緊張してしまいそうだから。一応、これからの予定はみんなで相談して、出島滞在を一日延ばすと決めていた。あまり長引くようであれば、ミズガルズへと商人さんが先に戻って私たちが戻るのが遅れると知らせる予定だ。

 

 「アルバトロス王国にて聖女を務めております、ナイ・ミナーヴァと申します。九条さま、お話、有難くお受け致したく」

  

 一礼して、九条さまと名乗り出た男性に頭を下げる。九条って結構良い家柄の方ではないだろうか。まあ、ゲームが舞台の世界だから現実世界の家格を持ち出す訳にもいかないが。

 身形はきちんとしているし、腰に佩いている大小二本も立派な物だし、鍔に透かしが入っていないから実戦を想定している。履いている下駄も、刀を差す左側の方が減りが早いようだし。小柄な上に服装で肉付きは分かり辛いけれど、武士であるならば稽古も怠ってはいないだろう。

 

 「かたじけない! 快諾、感謝致す!」

 

 かたじけない、なんて台詞を生で初めて聞いたなあ。時代劇の中で聞くくらいだったけれど、こうして現実で聞くことになるとは。

 しかしドエ――江戸だよなあ……――に向かうとして移動手段はどうするのだろうかと、九条さまの顔を見る。おお、なんだか首が痛くないのが新鮮な気持ちだ。アルバトロスや大陸の男性たちは背が高い人が多く、私の場合彼らと話す時はいつも見上げる形になるので少し嬉しい。

 

 「……我々は恐れ多くも神獣さまの背中に乗り、ここまでやってきました……女子(おなご)の方には辛いでしょうな」

 

 九条さんははっきりと言葉にしなかったけれど、おそらく滅茶苦茶揺れたのではないだろうか。一番初めに顔を見た時、ゲンナリしていたし。

 

 『なんぞ』

 

 『男の癖に』

 

 『情けない』

 

 割と容赦のない神獣さまに九条さまが『申し訳ございません……』と背を小さくしていた。他の護衛の方々も九条さまと同様にすすすと小さくなっている。

 

 『冗談はさておき』

 

 『確かに我らの背に乗るのは酷か……』

 

 『どうするのだ?』

 

 『ボクが大きくなるよ。そうすればこの子たちは乗せられるし』

 

 クロがえっへんと胸を張って言った。確か、アルバトロスからミズガルズに向かう際に大きくなれるくらい魔力が溜まったと教えて貰ったから、無理をしなければ問題はなさそうだけれど。でも、クロが大きくなってフソウ島本土に赴けば騒ぎになるのでは。

 

 「竜が空を飛ぶと、フソウ島の皆さまが驚きませんか?」

 

 行くのは良いけれど、方法が突飛だから。アルバトロスからミズガルズへ向かう際はルート上の国に事前に知らせていたから混乱は少ない。出島からフソウ島本土へ向かうことが決まったのは今し方で、告知する時間はないから不味いよね。

 

 『騒ぎになるだろうが』

 

 『後で理由を告知すれば』

 

 『問題ないだろう』

 

 嗚呼、そうなるのね。騒ぎになってしまうのは諦めて、招かれるしかないのだろう。

 

 『オオキクナル?』

 

 ヴァナルが首を傾げながら私に問うけれど、女性陣がヴァナルの背に乗るのはちょっと辛いだろう。セレスティアさまとリンであれば身体能力が高いので問題はないが、ソフィーアさまと私だとちょっと辛い。

 であれば空を飛ぶクロの背に乗った方が安全なのだ。ヴァナルの場合、飛ぶではなく跳ぶなのだし。神獣さまがヴァナルの言葉に反応して『大きくなれるのですか?』『なんと素晴らしい』『体の大きさが自由自在とは』と驚いていた。言葉から推測するに、神獣さまは体の大きさは変えられないようだ。おおよそ三メートルくらいの身体なのだけれど、ヴァナルは大きくなると五メートルくらいになっている……それ以上大きくなれる可能性もあるけれど。

 

 「ヴァナル、ありがとう。揺れるから私たちはクロの背中に乗せてもらうよ」

 

 『残念、コンドノッテ?』

 

 狼サイズのヴァナルは私の顔を見上げながら目を細め、私は子爵邸に戻ったらお願いしますと告げる。そうして神獣さまと九条さまたちと出島の外に出て、クロが大きくなる。あれ、アガレスで見た時よりクロが一回り大きくなっていないかなと感じつつ、クロの背に乗り――九条さまたちは神獣さまの背中の上――フソウ島本土に向かうのだった。

 

 ◇

 

 クロの背に二時間ほど乗って、出島からフソウ島の都ドエに辿り着いた。島といっても規模はかなり大きく、都であるドエも凄く広い。区画整理されて碁盤の目のように道が整備され、枠の中には家々が立ち並ぶ。

 時代劇でよく見る、武家屋敷や庶民向けの長屋、商業地区には西洋式の建物もあり、不思議な感覚に見舞われる。豆粒ほどのドエの方々に視線を向けるけれど、小さすぎて見えなかった。そして眼前には漆喰を塗られた真っ白なドエ城が聳え立ち、雪に包まれたお城はこれは幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

 「これが城なのか。アルバトロスや西の国々の城と赴きが全く違うな」

 

 「上から見ると分かりますが考えられた造りのようですよ、ソフィーアさん」

 

 きちんと見れば、防衛に優れた造りだと理解はできる。門から本丸まで高低差を付けているのは、敵兵氏の体力を奪うことが目的だし、所々から覗く小さな穴は火縄銃や弓矢を射る為に備え付けられている。本丸の地下には隠し通路とかあるだろうし、忍者とかいるのかなあ。流石にドエの都にクロが降り立つ場所はなく、少し離れた場所に降りる手筈になっていた。

 

 『面白いね。アルバトロスと全然違うんだ』

 

 「ね」

 

 クロが念話で言葉を伝え、私は短く返事をする。ヴァナルは大きくなって神獣さまと一緒に地上を走っていた。神獣さまの背に乗る九条さまたちががっくんがっくん体を揺らしているけれど、見なかったことにしておこう。お侍さんのようだし、体を鍛えているだろうから多少の耐性はあるはずだから。ドエの都の郊外、空地というか荒地に降り立つと神獣さまとヴァナルも辿り着いていた。 

 

 九条さまの部下か同僚の一人が走って草むらに足を踏み入れ、盛大に吐いた。馬に乗り慣れていそうだけれど流石に神獣さまの背は慣れなかったようで、草むらへ視線を向けた神獣さまが『そんなに乗り心地が悪かったのか』『人間を乗せたのは初めてですから』『情けないですね』と口々に言い放つ。

 九条さまが慌てて私たちの下へと走ってきて『失礼なものをお見せして申し訳ない』と平謝りするので、お気になさらずと伝える。彼の話によると、ドエの都から迎えの方たちがやってくるので、この場で少し待っていて欲しいとのこと。

 ヴァナルが私たちの下へきて八の字にくるくると周り体を擦り付けたあと、神獣さまの横に戻ってぺたんとお尻を下ろした。あれ、なんだか寂しさを覚えるのは何故なのだろうか。ロゼさんは私の影の中に戻っているし、今までであれば私の横にお座りしてじっとしてヴァナルの頭の上にはロゼさんを乗せていたのに。

 これも仕方ないのかと、寒さで体を震わせた。雪が降っているからアルバトロスの気温に慣れていると、堪えるものがある。我慢できないほど寒くはないが、なんだか既にアルバトロスが懐かしいと思いを馳せていれば背後に気配を感じて振り返る。

 

 「ナイ、寒くないか?」

 

 「大丈夫?」

 

 ジークとリンが私の側で問いかけた。北へ来てからよく聞かれることで、そんなに心配なのだろうか。確かにみんなより背が低いから脂肪が少なく、寒さで真っ先に死んでしまうのは私かもしれないが。

 あ、あれ……ジークは確りとした筋肉を纏っているし、リンとソフィーアさまとセレスティアさまは細いけれど、付いている所には付いている。胸があれば寒さに耐えられるのかと疑問が浮かび、自分の胸を見る。大きくなあれ、と唱えれば胸が大きくなるだろうか。あまり大きいとバランスが悪いから、適度に大きく育って欲しいものである。……考えていると虚しくなるだけだから止めよう。現に黙っている私を見て、ジークとリンが同じ方向に同じ角度で首を傾げているし。

 

 「大丈夫だよ。ジークもリンも心配しすぎ。でも、ありがとう」

 

 王都で風が吹くとジークはしれっと風上に立ってくれるし、リンは私の横に付いて手を握って寒さを緩和させようとしてくれるから。有難いよねえと、ジークとリンの顔を見ると二人は目を細める。

 あ、そうだ。九条さまにドエに入る時のルールやしきたりを教えて貰おう。事前に知ってドエのルールを守った方が良いだろうし、喧嘩や問題に発展し辛くなる。知っていてやったとなれば大問題だけれど、知らずにやっても問題視されるから。

 

 「さて、そろそろ迎えが城からくるはずですが……ああ、きましたね」

 

 九条さまが視線を細めてドエの都の方を見る。私も彼に倣うけれど、迎えの人なんて見えないのだが……。視力、滅茶苦茶良いんだなと納得しながら、幾ばくかの時間が過ぎると豆粒ほどの人の姿を確認できた。ジークとリンは九条さまと同じタイミングで認めていたようで、視力の差をあからさまに感じてしまう。

 

 ようやくマトモに迎えの方々を捉えたのだけれど、お迎えの方は騎馬だけれど空の籠が見えるのは気の所為だろうか。籠ということは人力、なのである。

 え、もしかして私が乗るのと微妙な顔になってしまった。いつもであればお馬さんが引く馬車に乗り込むし、アガレスでもミズガルズでも馬車に乗っていたのに、ここにきて移動手段が人によるものだとは。明治時代くらいと聞いていたので車があるかもしれないと考えていたのに、全く違っていた。そういえば日本の江戸時代に馬車が流行らなかったのだろうか。

 考えても仕方ないなと首を振り使者の方と挨拶を交わした。そうして私だけ籠に乗り込み、他の子爵邸メンバーは徒歩となる。主だったミズガルズとアルバトロスのお偉いさん方も、私同様籠に乗り込む。

 

 神獣さまも一緒に付いてくるみいたいなのだが、大丈夫だろうか。ドエの都でも神獣さまの姿を拝見できるのは稀なこと、とかないよねと不安になりながら籠に揺られる。人が担いでいるのにあまり揺れないなと感心しつつも、ドエの都ってどんな所だろうと簾の窓から覗き込む。

 クロの背の上で見た通り、時代劇の街並みと言えば良いだろうか。奥に進むほど高級感が増し立派な屋敷が増えてくる。街行く人たちは着物姿と洋装姿の人たちが入り交じり、ちょっとした混沌を醸し出していた。刀を下げている人もいるし、髷姿の人に散切り頭の方もいる。

 

 「神獣さまだ! おお、ありがたや、ありがたや」

 

 「神獣さまよ! 初めてお目に掛かれたわ。きっと幸せが訪れるのよ」

 

 そうして街行く人たちが神獣さまの姿に驚いて声を上げるけれど、誰も近づいて触ろうなんて試みない。神獣さまを見れたと喜び、頭を下げて敬っている人がほとんどだ。小さな子供はまだ神獣さまの立場を理解しておらず、指を指して『わんわん!』と言っているけれど。子供の手を引いている母親に『指を指しちゃ駄目』と叱られて、頭に手を置いて強制的にお辞儀をさせられている。

 わんわんと言われた神獣さまは面白そうに笑っているので、気にしてはいない様子。二千年近く生きてきて、小さな子供に怒るのもおかしな話か。子供に『チビ!』と指を指されたから切れる自信が私にはある……。

 

 「妙な服を着ているな。一体、どこの者なんだ?」

 

 「男より背の高い女がいるわ。あんな大女なら、きっと凄い力を持っているのでしょうね」

 

 外を歩くミズガルズとアルバトロスの人たちを見た、ドエの都に住まう方々の素直な感想だった。これ、私が外を歩いた方が良かったかもしれない。ドエの人たちは黒色にほど近い髪と目の色で、女の人の背の高さは成人女性でも私と遜色なさそうだから。

 ソフィーアさまとセレスティアさまと私と比べると二十センチ近く背丈の差があるし、リンと比べると三十センチほど違うので見た目の雰囲気が私が一番ドエの人々に馴染む。とはいえ、籠に乗っているし勝手はできないから遅いけれど。晒し者のようで申し訳ないと、少し心が痛む。

 

 いろいろと考えていれば雑多な街並みから、落ち着いた雰囲気の住宅街へと入れば少し静かになる。ただやはり道行く人は神獣さまの姿に驚き、隣を歩くヴァナルの姿を見て首を傾げていた。

 更に街並みに高級感が増し、大きな道へと出ると籠が止まり地面に降ろされた。まだ簾は開かれないので、降りるなということだろう。そうして九条さまが大きな門の前に立ち、息を吸い込んだ。

 

 「九条新右衛門、大樹公の命によりお客人を連れ戻って参った! 開場されたし!!」

 

 耳につんと響く九条さまの大きな声。叫ぶ必要は微塵もないので演出なのかもしれないと待っていると、籠が浮く。重そうな蝶番の音が聞こえて静まると、前へと進み始め本丸まで籠の中で揺られていた。

 簾が開かれて籠から降りると、目の前には大きな白城が。瓦も真っ白なので、凄く幻想的な光景である。城の中から老齢な男性が出てきた。時代劇だと『爺』とか呼ばれていそうな雰囲気で、若さまに翻弄される苦労人といった感じ。

 

 「お客人、遠き地よりよくぞ参られました。どうか城主、大樹公とお会いして頂きたい」

 

 「こちらこそお招きいただき有難うございます。ドエの都を司る方との謁見、心より感謝いたします」

 

 私の言葉にとんでもございませんと告げる老齢の男性。九条さまも申し訳なさそうな雰囲気だし、神獣さまに振り回されているのだろうか。とりあえず城主さまに会って、神獣さまとヴァナルの番話をどうするつもりなのか、確認しなければと城を見上げるのだった。

 

 




 明日、6/5は自作の発売日となります! 早売りしている所もありますが、ご興味のある方手に取って頂けると幸いです!

 ・3万字弱の加筆、特別書下ろし五千字、イラスト全部で十点あります!

 楽しんで頂けると良いのですが……><; 
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