魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0361:帰郷。

 ミズガルズに一旦戻った後、魔人の少女は村へ戻り復興作業に入ると聞き、帝宮も援助するとのこと。ベリルさまたち亜人連合国も支援するということで、飛行許可をミズガルズの帝宮に取り付けた。

 人間との融和はまだまだ先かもしれないが切っ掛けは作ったし、勇者と魔王の伝承を変えていく努力をするそうだ。まあ、その方法が吟遊詩人に頼む辺り、情報伝達方法が古いなあと考えてしまう。

 識字率と紙の普及が隅々にまで渡っていないから仕方ないのかもしれないが。勇者さまは、ミズガルズへと戻る方法がほぼないので、監視を付けて不味いことが起こりそうなら違反冒険者としてギルドに裁いて頂くらしい。魔人の少女と皇女殿下と手紙のやり取りを交わす約束を取り付けて……。

 

 そしてもう一つ。ミズガルズ帝室組とアルバトロスの王太子殿下と外務卿さまに驚かれたことがある。フソウからの使者として九条さまと一緒に戻っていたのだ。やはり着物姿は珍しいようだし、髷を結っていることに目をやっている。

 

 とりあえず、神獣さまがアルバトロスへ渡ることと国交を持ちたいことを伝えると、殿下と外務卿さまの顔が引きつり私へ視線を向けるけれど、よろしくお願いいたしますとしか言えない。政治に関してはやはり王族か役職持ちのアルバトロス上層部の方に任せるに限るのだから。

 

 ――そんなこんなでアルバトロスへ戻ってきた。

 

 気温差が凄くて、ちょっと身体が付いていけないけれどその内に慣れるだろう。だってアルバトロスは十八年間過ごした所で、愛着のある土地。

 まあ、いろいろと己の身に問題が舞い込んでいるけれど、今の所大きな問題にはならず解決している……いや、いないか。これから神獣さまとフソウ島の使者の方とアルバトロス王国側との謁見である。

 

 母国に戻って一夜明け王城の謁見場手前の控室で、かなり緊張している方々の姿を見て苦笑する。

 

 緊張している面々は、フソウ島の方々である。使者さんの代表は九条さま。良い家柄の武家の息子さんで、文武両道であり大樹公さまに気に入られている方なのだとか。彼の他にも護衛兼お付きの人として、数名がフソウ島からやってきている。初めての国外、しかも大陸を横断するという事態にかなり戸惑っていたし、竜の背中に乗るというトンでも事態で縮こまっていたけれど。

 神獣さまは竜の背に乗って、大喜びしていた。フソウ島に居付いていたから、外に出られるのが嬉しかったらしい。他にもミズガルズへと一緒に同行していた王太子殿下と外務卿さまがいらっしゃる。

 昨夜、真っ先に簡易的な報告は済ませてあるけれど、これからはアルバトロス上層部の皆さまへ知らせるパフォーマンス的な場となる。フソウの皆さまが一緒なのは、友好的に王太子殿下や外務卿さまと挨拶を済ませ、神獣さまをアルバトロスに預けるというお知らせをする為だった。

 

 『しかし……この暑さはどうにかならぬものか』

 

 『我々の毛並みでは暑い場所となると慣れるまでに時間が掛かりますね』

 

 『ですがヴァナルさまとご一緒に過ごせるのです。我慢すべきかと』

 

 神獣さまは三つの頭を器用に動かして、三頭で喋っている。彼女たちはアルバトロスの気候に慣れないようだ。フソウ島は日本の北海道くらいの気温だから、アルバトロスの気候――おそらく九州の鹿児島くらいの気温――には慣れぬ様子。

 それに毛並みがふさふさのダブルコートなので、寒さに特化しているから致し方ないのかも。暑さに慣れなければ、最悪は毛をカットして貰うかフソウに戻って頂くかだよなあと思案する。

 

 『よからぬことを考えていないか?』

 

 『嫌な気配がしましたね』

 

 『ヴァナルさまとは離れませんよ』

 

 ぬぬぬ、と三頭が揃って私の顔を見る。目の前に顔が迫ったので迫力というか圧が凄い。流石神獣さま、と言いたいが実はこれ顔を撫でて欲しいだけである。竜の背中で大陸間移動していた時、ヴァナルの頭を撫でていると羨ましそうにこちらを見ていたのだ。番であるヴァナルに手を出したから嫉妬しているのかと思いきや、どうにも違うらしい。

 彼女たち曰く、人間に撫でられたことなんてないから、ちょっと撫でてみて欲しいと願われた。神獣さまたちが嫌でないのなら、私は一向にかまわないので雪さまと夜さまと華さまの顔を順に撫でてみたのだ。

 うっそりとした顔になって私の手を受け入れてくれ、今後も撫でて欲しいと願われてしまう。毛並みが良くて気持ち良いから問題ないし、できることなら私の後ろで超絶な視線を送ってくるセレスティアさまも受け入れて欲しいと願わずにはいられなかった。

 

 「良からぬこと……は考えていたかもしれません。でも暑さに慣れなくて、皆さまが体調を崩してしまっては本末転倒です。ヴァナルと番となったのであれば仔が産まれるでしょうし、生まれてくる仔に問題が発生してはなりませんから」

 

 『ボクは分からないから……』

 

 私の言葉に『む』『ぬ』『ぐ』と短く漏らす神獣さまと、暑さと寒さに強いクロがしゅんと肩を落とし、影の中に潜むことが少なくなっているヴァナルがクロを見上げて『ダイジョウブ?』と問いかけていた。

 とりあえずしばらくはこのままで、暑さにどうしても耐えられなければ、毛を梳いて貰うか思いっきり毛を短くしてみようという話になる。神獣さまの毛を切る行為に使者の九条さまたちの顔が青くなっていたけれど、申し訳ないが彼女たちの体調が優先である。

 

 扉の向こうからノックの音が聞こえ顔を向けると、案内役の近衛騎士さまと外務部の方が一緒に姿を現した。

 

 「お待たせいたしました、王太子殿下、フソウ国の皆さま、ミナーヴァ子爵。謁見場へとご案内致します」

 

 あれ、外務卿さまの名前が呼ばれなかったのは何故だろう。こういう所でちょっとした不幸な目にあっている気がする外務卿さま。当の本人はちょっと傷ついているようで、ぐっと言葉を呑んでいた。

 大丈夫ですかと視線を送ると、今にも泣きそうな顔になっている。外務卿さまの今の心境をうかがい知ることはできないが、大の大人の、しかも男性の泣き顔はどう対処して良いのか分からないので勘弁してください。女性であれば、寄り添って話を聞くだけでも多少は効果があるはずだけれど……男の人が泣いた時って放置の方が良いのだろうか。

 

 先に王太子殿下と外務卿さまが歩き、その後ろを私とフソウの使者である九条さまたちが歩いていく。九条さまたちは西洋建築が珍しいのか、きょろきょろと廊下に飾られている壺やフルプレートの鎧を見ている。天井も凝っているから興味があるけれど、今は謁見場へと行かなければならないので興味を必死に抑えているようだ。

 

 そうして謁見場の中へ殿下と外務卿さまが先に入場する。しばらく扉の前で待っていると『陛下、お成り!』と係の方の声が響く。先に王太子殿下と外務卿さまが中へと向かったのは、ミズガルズ帝宮の大貴族さまの顛末を知らせるため。報告を簡素に済ませた後、九条さまたちと神獣さまと私が一緒に入場する。

 

 謁見場へ入ると、アルバトロスのお偉いさんたちの視線が神獣さまへと向き、次に九条さまたちへと視線が刺さる。月代の髷を結い着物姿の男性は珍しいようだし、神獣さまに対しても三つ頭だし大きい姿なので驚いている様子。

 フソウの面々に視線をずっと向ける訳にはならないのか、私へと突き刺さる。なんだか『またやらかした』とか『妙なものを引き連れて』みたいな視線を受ける。確かに今まで関わってきた方たちは、西洋風の装いだからアルバトロスのお偉いさん方は飲み込めたのかもしれないが、和装姿は珍しすぎて頭と心のキャパが超えてしまったのかも。

 

 先に入場していた王太子殿下と外務卿さまは、横へ移動していた。九条さまと私は陛下の真正面に立ち膝を折る。神獣さまは立ったまま尻尾を揺らしながら、陛下の顔を見上げている。ヴァナルは、私と神獣さまの間で伏せをして大人しくしていた。

 

 一応、九条さまたちには陛下の御前に立つ際の作法を伝えているのだけれど、西洋式は慣れないらしくフソウのしきたりに倣っても良いか問われてしまった。

 敬意を払っていることが伝われば良いはずなので、問題は少なかろうと伝えておいたけれど。さて、どうなってしまうのか。

 

 「フソウ国、譜代武家、九条新右衛門と申す。此度の謁見、誠に感謝いたします。アルバトロス王よ」

 

 九条さまが正座になって拳を床に付けてお辞儀をした。深いものではなく床を見つめる程度だけれど、正座の文化を分からない方々がどよめいている。

 怒っている気配はなく、ただ単純に作法の違いに驚いているだけだろう。大丈夫そうかなあとちらりと九条さまを見ると、陛下の面を上げよの声でフソウの皆さまは顔を上げた。この辺りはアルバトロスもフソウも変わりがないようで、やりやすい所だろう。神獣さまにも陛下は視線を向けているけれど、表情が読み取れない。

 

 『フソウ国で護国を担っておりました』

 

 『此度は我らの番さまを見つけ、彼に受け入れて頂きました』

 

 『アルバトロスが我らを受け入れてくれたこと、感謝いたします』

 

 九条さまに続いて、神獣さまが言葉を発する。陛下の片眉がピクリと上がり口元が引き攣っていたことを知る由はなかった。

 

 ◇

 

 九条さまが挨拶したあと神獣さまも挨拶を陛下と交わしたけれど、陛下は難しい顔のまま言葉に対する反応が遅かった。周りの人たちもとんでもないものを連れて帰ってきたのでは、という反応だった。神獣さまの言葉を聞いて、九条さまは微妙な顔になっているしやはり護国を司っていたと神獣さまがいなくなることに、なにも思わない訳はなく。

 

 「護国を担う……それはフソウ国にとって大きな痛手ではないか? 民から支持を集めていた其方を失えば、チョウテイもバクフも困るだろう」

 

 陛下が普段より少し低い声音で声を上げながら神獣さまを見つめる。確かに、生きる伝説として神獣さまは民の方から支持されているようだった。越後屋さんが初めてみたと驚き頭を下げていたのが証拠だろう。見様によってはヴァナルと私が奪った形になってしまうので、本当にフソウの上層部は話を呑んでくれたなと感心する。

 

 『確かに。ですが我らは運命の番を見つけてしまいました』

 

 『本能に抗うことはできません』

 

 『そも、我らはフソウで勝手に神獣と崇められていたのです』

 

 ああ、人間より力を持つ魔獣に分類され、人間に敵意がないので崇められるのは当然の結果だろう。最初にフソウにきた神さまを案内したのが彼女たちであり、神さまの子孫である人間を助けていたから神獣となるのは当然で。二千年の時を経てようやく番を見つけたことは彼女たちにとって至上の喜びだった。二千年住処としていたフソウ国を出ることになったとしても。

 

 「しかし……なあ……クジョウと申したな。其方は神獣がアルバトロスに参ることをどう捉える? 使者の立場ではなくフソウの民として個人の意見を聞かせて欲しい」

 

 「は! ……正直な所を申しますと、取られてしまったと言うのが本音でしょうか。しかしながら帝も大樹公も神獣さまがフソウの地からあるばとろすへと移り変わることをお認めになりました。そしてあるばとろすと友好な関係でいたいとも願われております」

 

 とやかく言っても致し方ないでしょう、と九条さまが告げる。この辺りは朝廷と幕府が上手いこと民の皆さまを説得するつもりなのだろう。神獣さまの言葉をなにより重く受けてとめているようだし、仔ができるならと喜んでいた節もあるから。

 

 「そうか。して、仔はきちんと成せるのか? 魔獣について詳しくない故に失礼な疑問になるやもしれぬが」

 

 陛下が申し訳なさそうな顔をして神獣さまへと問う。まあ下世話な話だけれど、大事な話になる。神獣さまとヴァナルとの間に仔ができて、乳離れすればフソウに住むことも可能だし。そうなると新たな守護神さまとして居付くことになるのかなあ。

 

 『問題なく』

 

 『成せます』

 

 『大きな括りでは、我らもヴァナルさまも魔獣ですから』

 

 そうか、成せるのか。陛下も少々面を喰らっているけれど、彼女たちやヴァナルが言うのであれば大丈夫なのだろう。謁見場の隅っこに控えている副団長さまが凄く良い顔で私を見ているから、子爵邸に直ぐ行きたいとか言ってしまうのだろうなあ。直ぐに想像できる辺り、彼との付き合いも長くなったものである。亜人連合国の領事館にも顔を出さなければならないし、今日は忙しい日になりそうだ。

 

 「承知した。しかし国の護りを失ったのは痛手だろう。ミナーヴァ子爵、彼女らがフソウ国へ頻繁に戻れるルートを構築せよ。我々もできることがあるのならば手を貸そう」

 

 「はい、陛下。手を尽くし、神獣さまがフソウ国へと戻る術を築き上げましょう」

 

 あれ、妙な方向に話が流れたと思うが、神獣さまがいつでも戻れる方法は存在した方が良い。急に熱が冷めて別れる! なんて事態も在りうるのだから手は尽くしておいた方が良いだろう。

 そういえば魔獣の番の皆さまには離婚という概念はあるのだろうか。あとで聞いてみようと頭に刻む。あとは九条さまがアルバトロスとの国交を開きたいと申し出る。かなり距離が開いているので、物流関係はかなり難しいが神獣さまがいらっしゃるので縁を取り持っていたいようだ。

 

 私の仕事はこれで終わりかなあと息を吐く。勇者さまをどう扱うのか上層部の判断が分からないけれど、きっと彼はギルド本部で冒険者として頑張っているはず。

 アルバトロスから出国したなら管轄外だし、見張り役は付いている。妙な行動にでれば即刻命を刈り取られるだろうが、勇者さまが亡くなったという知らせは受けていない。ミズガルズの話だったのに、フソウ国まで出てきて大きく動いたものだなあと誰にも分からないように息を吐く。

 

 謁見が終わり、公爵さまと辺境伯さまに挨拶を交わす。私の隣に神獣さまとヴァナルがいることに公爵さまは愉快そうな顔を浮かべ、辺境伯さまは微妙に顔が引き攣っていた。まあ神獣さまは大きいし、そりゃ吃驚してもしかたない。愉快そうな顔で笑っている公爵さまの胆力があり過ぎなのだ。

 

 「またナイは不可思議なものを引き寄せたな」

 

 「ミナーヴァ子爵ですからね。ハイゼンベルグ閣下」

 

 二人の第一声がコレだった。なんだか私の扱いが雑になってきていないだろうか。肩の上でふふふと面白そうに笑っているクロもクロである。

 いや、文句を言うつもりは一つもないけれど。辺境伯家の娘さまはずっとニヤニヤしっぱなしですが、この方はどう致しましょう。放置で良いのか、なにか言葉を掛けた方が良いのか。一応、帰りのベリルさまの背中の上で神獣さまとソフィーアさまとセレスティアさま、ジークとリンに王太子殿下と外務卿さまたち主だったメンバーと挨拶は交わしている。

 神獣さまだというのに、普通に会話できる上にヴァナル大好きオーラを醸し出しているのでちょっと可愛いというかなんというか。頭が三つあるのでちょっと怖い雰囲気があるのだが、純情な恋する乙女――推定年齢二千歳――である。

 

 とりあえず神獣さまに私の後ろ盾であると紹介して、穏便に挨拶を済ませた公爵さまと辺境伯さま。他にも紹介しなければならない方がいるが子爵邸に顔を出すだろうと、いつもの面子と神獣さま、そして子爵邸を見たいと申し出た九条さまたちと戻るのだった。

 

 ――子爵邸・地下室

 

 本当なら馬車に乗り込んで戻るものだけれど、危ないかもしれないと転移魔術陣を使用させて頂いた。戻るやいなや、私の影からロゼさんが飛び出てヴァナルの頭の上に乗る。神獣さまが目をまん丸にしたけれどロゼさんを知っているので一瞬で鳴りを潜めさせた。

 昨日は戻ってすぐ報告書の作成に追われていたので、子爵邸で働く方々や天馬のエルとジョセ、ルカとジルに挨拶していないしお猫さまもどこかに消えて姿を現さなかった。ジルヴァラさんは私の顔を見て安堵したのか、お掃除に精を出していたし。みんなフリーダムだなと苦笑いしていたのだが、神獣さまを受け入れていただくことができるだろうか。

 

 『不思議な感じがする家ですわ』

 

 『ええ。なにかとても強い力を感じます』

 

 『あら……小さな人が飛んでいます』

 

 西洋建築を見慣れないのか神獣さまと九条さまご一行がまたきょろきょろと地下室を見渡している。上に上がりましょうと案内すれば、侍女さんが、私たちが戻ってきたことに気が付いて頭を下げた。お客さんがきたからお茶をお願いして、来賓室へと歩いて行く。時折、キラキラと光るのは妖精さんたちだろう。魔素が多いと感心しながら歩く神獣さまに、未知の出来事が起こっているので驚いている九条さまご一行。

 妖精さんが見えれば良いのだけれど、祝福を安易に施す訳にはいかないしどうしたものか。お婆さまがいれば、話が早いけれどどこに行ったのか分からないしなあ。まさかミズガルズに残ったままなのだろうかと、背中に汗が一筋垂れる。ま、まあ、ご意見番さまの次に長生きしている彼女だから勝手に戻ってこれるだろう。

 

 九条さまとお茶を済ませて、子爵邸の庭へと出る。

 

 「結界、でござるか?」

 

 九条さまが子爵邸を覆う結界に気付いて、空を見上げながら感心している。神獣さまたちも驚いていて、ちょっと面白い。術式を開発したのがダリア姉さんとアイリス姉さんに副団長さまなので、割と複雑なものになっている上に魔力消費量も多いそうだ。

 

 『聖女さま、おかえりなさいませ』

 

 『ご無事でなによりです』

 

 「エル、ジョセ、ただいま。ルカとジルもって……お猫さま、どうして外に?」

 

 外に出た私たちに気付いてエルとジョセとルカとジルが現れた。何故かルカの背中の上にお猫さまが乗っており、一体どうしたのだろう。お屋敷の中で寝ていることがほとんどななのに。エルとジョセとルカとジル、天馬さま四頭の顔を撫でていると神獣さまが驚いた様子で『天馬……』『しかも強い』『特殊個体の仔まで……』

 

 『おお、ようやく帰ってきたか! 暇で暇で仕方なかったのだ! 我の相手をせいっ!』

 

 そう言ってお猫さまがルカの背中から私の腕の中へと飛び移って、私はお猫さまを確りと受け止める。危ないよ、と告げてもしれっとした顔で『落とされても受け身くらい取れる』とお猫さまが告げた。ぽよぽよなお腹で言っているから説得力が低いけれど、猫だしなあ。器用に三つの尻尾を揺らしているので、良く絡まないなあと感心する。また神獣さまが『今度は化け猫!』『尻尾が三又!』『流暢な言葉使い!』

 とまあ、神獣さまと九条さまたちは子爵邸の様子に驚きっぱなし。庭の裏の畑の妖精さんに、ジルヴァラさんと会ったらどうなるだろう。これから面会するお隣さんたちにもどんな反応を見せてくれるのか。ベリルさまが竜から人化できることに驚いていたけれど、ディアンさまもできるし他の竜の方もできると聞いている。

 

 神獣さまに慣れて欲しいという視線を向けて、お隣さんへと案内するのだった。

 

 

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