魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0365:とりあえず城へ。

 ――ミズガルズ神聖大帝国からアルバトロス王国へ戻って数日。

 

 簡単な報告を王国と教会へ済ませて、子爵邸に戻っていた。お味噌さんとお醤油さんとお米さんの試食は、学院がお休みの日にフィーネさまとメンガーさまを子爵邸に招いて行うつもり。まだ返事は頂けていないけれど、調理は学院では無理だし、お城だと迷惑が掛かるし勝手に使える訳がない。なので次に学院へ赴いた際に相談する予定。

 招く日は私が作る。子爵邸の料理人さんたちにもレシピを覚えて頂くために実演を兼ねる。レシピを伝えてもアルバトロスの味になりそうなので、この辺りは我儘を通させて頂く。部屋で出張の疲れを取っていると、ベッドの近くにいた神獣さま――狼サイズになっていた――がぬらりと顔を上げた。

 ちなみにヴァナルは横ですやすや寝息を立てているし、お猫さまはそんなヴァナルのお腹の辺りでくるんと丸まって一緒に寝ている。ロゼさんはその横で子爵邸の図書室から本を持ってきて暇を潰している。

 クロは私の肩の上で、顔を上げた神獣さまに視線をやった。

 

 『ごきげんですね』

 

 『良いことでもあったのでしょうか?』

 

 『魔力の流れが心地良いですね』

 

 顔を上げた雪さんと夜さんと華さんが私を見る。呼び方については名前呼びの許可を頂いているので問題ない。彼女たちも私のことを名前で呼ぶことになっている。子爵邸の面々は驚きつつも、またかと受け入れてくれていた。そして、まだ増やす気なのですか? と割と真剣な表情で迫られた。

 増やす気はないけれど、雪さんと夜さんと華さんとヴァナルの仔が産まれる予定な訳でして……。また増えますと凄く言い辛いけれど、また増えますと正直に答えた。報告書にミズガルズで起こったことを認めなければならないし、黙ったり嘘をついても後でバレる。

 私の言葉にドン引きしている面々には申し訳ないけれど、雪さんと夜さんと華さんが出産を迎えるなら、専用の部屋を設けて産箱を作らないと、なんて考えている時点で産まれてくる子供を楽しみにしている。

 

 『ナイはフソウで、オショウユサンとオミソサンとオコメサマを手に入れて喜んでいるからね』

 

 クロが目を細めながら、雪さんと夜さんと華さんへ言葉を掛ける。クロにはフソウの調味料の知識がないことと、私の影響をモロに受けてお醤油さん、お味噌さん、お米さまと言うようになっていた。まあ可愛いから良いかと、訂正を求める訳でもなくクロの言いたいようにして貰っているけれど。自室に集まっていた幻獣の皆さまと、ジークとリンも巻き込んで話を繰り広げていた時だった。

 

 ――わ、私の庭がぁぁあああ!

 

 と、はっきりとは聞こえなかったけれど男性の悲鳴に近い大声が響き、部屋にまで届いていた。

 

 「叫び声? どうしたんだろう、珍しい」

 

 貴族のお家なので、みんな物静かに過ごしている。叫び声なんて……稀に家庭菜園にマンドラゴラもどきが生えて『びゃああああああ』と怪音を轟かす時があるけれど……人の声が響くことは珍しい。

 

 『なんだか騒がしいね』

 

 肩の上でクロが首を傾げると、雪さんと夜さんと華さんが窓の外を見、ヴァナルも寝息を立てていたのにふっと顔を上げて窓の外を見た。子爵邸の庭が騒がしいと気が付いた瞬間、亜人連合国との連絡用の魔法具に魔力が走ってエルフのお姉さんズの声が聞こえる。

 

 『ナイちゃん!』

 

 『大変、タイヘン、たいへん、大変だよ~!』

 

 魔法具からダリア姉さんとアイリス姉さんの慌てた声が自室に響く。一緒に部屋にいたジークとリンが何事かと驚いて、魔法具へと視線をやった。私もどうしたのだろうと、庭の騒がしさは二の次にして魔法具の前に立った。クロも魔法具を前にして騒いでいるお姉さんズの声を聞きながら首を傾げている。

 

 『自称、勇者さまがやらかしたわ!』

 

 『勇者を止めた冒険者が怪我をしたんだって~!』

 

 お姉さんズは事のあらましを教えてくれた。勇者さまは冒険者ギルドに赴き冒険者登録を行い、順調に冒険者ランクを上げ、個人Aランクまで昇りつめたそうだ。どう凄いのか分からないけれど、割と凄いことのようで周囲から認められ始めていたのだとか。

 そこへ暴れていた竜の討伐依頼が発生したけれど、同時に亜人連合国にも知らせが届き、ディアンさまとベリルさまが暴れている竜を捕まえた。暴れていた竜は亜人連合国で『反省の谷』と呼ばれる場所まで連行されて、竜の皆さまの手によって再教育中なのだとか。これで話が終われば良かったけれど……終わらなかった。

 

 竜の討伐依頼が発生した――ディアンさまたちによって直ぐに取り消されたけれど――際に勇者さまがハッスルしたらしい。討伐依頼と同時にSランクパーティーに加入を申し出たそうだ。

 でも断られてしまった。一応、Sランクパーティーリーダーは勇者さまに説得を試みたけれど、駄目だったらしい。それから数日後、勇者さまは勝手に竜の被害を受けた村へと足を踏み入れ、竜を探していたのだとか。

 多分、亜人連合国の方々が対処したとは全く知らず。そうしてSランクパーティーの方々も勇者さまを追いかけた。冒険者ギルドから彼が無茶をしないように、保護依頼を掛けたそうだ。で、紆余曲折あって勇者さまが銃を抜いてSランクパーティーリーダーを撃ってしまった……と。

 

 「そんな……」

 

 銃がどんなに危険なものかは通達していたのだが、きちんと冒険者ギルドは脅威を把握できていなかったのだろうか。いや、でも。未知の物に対して疑いを持つのは仕方のないことかもしれない。

 

 『でね、たまたま復興用の資材を運んでいた竜たちと、いけ好かない白い竜が居合わせてね』

 

 『急いでアルバトロスのナイちゃんの所に行くって! というかもう着いているはずだよ~!』

 

 Sランクパーティーリーダーは二年前に銀髪くんを捕縛してアルバトロスの謁見場まで連れてきてくれた人だ。名前を聞いて驚いた。

 かなりの実力者だろうと踏んでいたのだけれど、不意打ちを頂いた形だそうで避けられなかったらしい。――戦闘態勢のリーダーであれば避けられたと、豪語するパーティーメンバーも凄いけれど。まさか先ほどの庭の騒がしさは!

 

 「っ! すみません、失礼します!」

 

 言うや否や、魔法具から体を反転させて走り始める。本当は屋敷内を走るなんてしないけれど、緊急事態だ。

 

 『私たちもナイちゃんの家に向かうわ!』

 

 『ダリア、急ごう~!』

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんの声を背中に受けながら部屋を出る。もちろんジークとリンも一緒だし、クロも肩の上に乗っている。ヴァナルも飛び起きてお猫さまがくるりと落ち、ヴァナルが動いたならば雪さんと夜さんと華さんも一緒。

 

 『騒がしいのぅ』

 

 ヴァナルから転げ落ちたお猫さまが床にちょこんと前脚を揃えて座り、呑気に三又の尻尾を揺らしているように感じた。廊下をただならぬ勢いで走るけれど、私の足は並以下である。後ろからリンの手が伸び抱えあげられて、びゅっと勢いが増した。

 そうして庭に出ると、目の前には二頭の竜と顔も知らない男性と女性に、地面に横たわる人の姿。少し離れた場所でエルとジョセとルカとジアも彼らを心配そうに見ている。倒れている人の下にはアリアさまとロザリンデさまもいて、顔色が優れない。彼女たちの雰囲気から推測するに、不味い状況であると一瞬にして分かってしまった。

 

 「リン、降ろして!」

 

 「離すよ、ナイ気を付けて」

 

 リンの腕から飛び降りて、アリアさまの側に近づくと彼女の魔力消費が激しいことに気が付いた。目には見えないけれどアリアさまの魔力量は多く、暖かな雰囲気を醸し出しているのだが、今はそれがない。

 お城の魔力補填を終えたあとよりも酷い状況で、怪我を負ったパーティーリーダーがどうなってしまうのかなんて……すぐに……いや、駄目だ。勝手に判断すべきではないし、アリアさまが治癒魔術を施しているのだ。そうして『生きて欲しい』と強く願うアリアさまの声が響く。なら私にできることはなにかと考えながら、口を開いた。――騒ぎを聞きつけた子爵邸の主だった面々もこちらへと駆けつけてくる。

 

 「アリアさま!!」

 

 彼女の横へ滑り込み、魔術を施す為に男性へと掲げていた腕を取る。魔力が足りないのであれば……足りない端から注ぎ込んでやれば良い。私の魔力はおあつらえ向きに私以外の誰かとの親和性が高いのだから。アリアさまへ魔力の譲渡は何度か行っているし、高威力の治癒魔術を使用し随分と魔力を消費したはず。アリアさま自身への影響もあるだろうに。どこの誰とも知らないであろう男性に術を施すとは無茶なことをと口の端が伸びる。

 

 ロザリンデさまが驚きの表情を浮かべ『傷が……失われたものが再生されていますわ……』と呟いた。なるほど確かにと、パーティーリーダーの彼を見る。

 お腹の右部分がごっそりと失われていたのに、ボコボコと組織が再生されていく様は、ちょっと、いや大分グロテスクではあるけれど。赤い肉が……いや、止めておこう。盛り上がって治っていくと、最後は皮膚の再生に入ったようだった。アリアさま、一体どんな魔術を使用したのかと彼女を見る。

 

 「ナイさま……私、頑張りましたよ。褒めてくださいね……」

 

 大汗を流しながら気を失うアリアさまを抱き留めるのだった。ちょっと重いと思ったのは一生の秘密である。

 

 ◇

 

 気を失ったアリアさまを抱えているのだけれど、腕が持たない気がしてきた。アリアさまの体重が重いのではなく、単純に私がヒョロイだけ。もうちょっと筋肉を付けても良いかなと考えるが、そもそも身長が足りておらず伸びなきゃ始まらないのである。

 抱き留めているアリアさまと私の横を掠めた人が二人いた。顔は先ほどみたけれど、一体どちら様だろう。一応、子爵邸へと入れるのは資格を持った人か正門から正々堂々と入るしかない。とはいえ空からの来訪にはノーガードとなっていた。だから天馬さまのエルとジョセは勝手に出入りできるし、辺境伯領や亜人連合国から飛んできた竜の方々は自由に出入りできる。

 

 「リーダー! リーダー!!」

 

 がばっと地面に寝転がっている青年に駆け寄った年若い女の人。まだ十代くらいだろうか。

 

 「落ち着け、息をしている。さっきよりも顔色が良くなっているんだ。治療を施してくださった聖女さまのお陰だ」

 

 がっちりとした男性が年若い女の人を嗜める。地面に寝転がっているリーダーさん――仮だけれど――も若そうだけれど、二十代中頃だろうか。華奢だが筋肉質な身体つきで顔も整っているから、年若い女の人の彼氏さんだろうか。取り敢えず状況を聞いて、問題の有る無しに関わらず国と教会に報告案件だろう。アリアさまが治癒を施した経緯も報告しなければならない。

 

 『ダイジョウブ?』

 

 『ナオッタ?』

 

 二頭の竜の方が首を下げながら、私に顔を寄せてくる。アリアさまを抱き留めているので顔に触れることができないことを理解しているのか、彼らの方から顔を擦りつけてきた。いつもであれば私が手で竜の方の顔や体を撫でるのを待ってくれるのに、本当に良く見ている。クロも負けずに尻尾で私の背中を叩いて主張しているし、なにをやっているのやら。

 

 「怪我は治ったけれど、体力を消耗しているから目が覚めるまで時間が掛かるかもしれないね」

 

 見た目とダリア姉さんとアイリス姉さんから聞いた話を考慮した判断だけれど。アリアさまは魔力欠乏に依って気絶しているけれど、目が覚めて暫く経てば総魔力量が増えているかもしれない。悪いことではないけれど無茶をしたものだと苦笑いをうかべていると、ざっと足音を立てて私の隣に立つ人たちが。

 

 「すまないが……子爵邸に無断で入った経緯を聞かせて欲しい」

 

 「場合によっては、罪に問わせていただきますわ」

 

 剣呑な空気を纏ったソフィーアさまとセレスティアさまの言葉だった。ジークとリンも状況を鑑みてレダとカストルの剣の柄に右手を添えているので、馬鹿なことをすれば容赦なく切ると無言で訴えていた。

 ソフィーアさまとセレスティアさまは事情を知らないので警戒しているのは分かる。ジークとリンは先ほどお姉さんズの話を聞いていたのに、手加減というか手心がないというか。それでも目の前のSランクパーティーの方々が敵ではないと言い切れず仕方ない。

 側にはヴァナルと雪さんと夜さんと華さんが逃げられないようにと隙間を埋めているし、エルとジョセも先ほどいた場所から動いて周囲を取り囲んでいる状況だった。……え、子爵邸がわくわく動物園どころか幻獣パークになってしまっている。あ、いや、今はそんなことは棚の上に置いて。

 

 「ナイちゃん!」

 

 「ナイちゃ~ん」

 

 名を呼ばれ声の方へと振り返ると、ダリア姉さんとアイリス姉さんが走ってこちらへとやってくる。少し後ろにはディアンさまもいて、事の大きさが見て取れる。

 

 「傷は治ったの?」

 

 私の近くに立ち止まって、リーダーさんを見下ろす亜人連合国の皆さま。年若い少女と男の人がぎょっとした顔になっているけれど、亜人の方ってそんなに珍しいのだろうか。

 

 「はい。アリアさまが治してくださいました」

 

 ダリア姉さんの質問に答えると、アイリス姉さんが口を開いた。

 

 「いけ好かない竜の話だと、命が危ないって聞いていたのによく治ったねえ~この子も凄いや」

 

 「ベリルさまが?」

 

 何故、事情を知っているのだろうかと首を傾げるとディアンさまがしゃがみ込んで私の顔を覗き込む。

 

 「彼は説明のためにアルバトロス城へと向かった。今回のことは我らの同族がきっかけで迷惑を掛けてしまった形となる。冒険者ギルド本部にも行かねばならぬし、少し忙しくなりそうだ」

 

 ふっと笑うディアンさまの顔には影が差している。真面目な方だから、今回起こったことを丸く収まるように考えているのだろう。一番悪いのは……諸悪の根源は勇者さまだけれど、暴れていた竜が齎した結果でもあるから。亜人連合国の心象が悪くならないようにと立ち回るのだろう。

 

 「あ、あの! リーダーは怪我を負ってしまいましたが、今回のことは冒険者ギルドに所属する冒険者がルールを破った結果です! ――ご迷惑をお掛けして申し訳ありません!」

 

 「すみませんでした!!」

 

 冒険者さん二人が盛大に頭を下げた。うーん詳しい経緯を聞いておらず、自分で状況を補完するしかないけれど、銃を抜いてしまった勇者さまが悪いのでは。

 

 「いや、私たちが早く行動に出ていれば結果は違っていたかもしれん。それに君たちは問題行動を起こした者を止めるために命を受け動いたのだろう? 謝る必要はない」

 

 ディアンさまの言葉に勢いよく頭を下げる冒険者のお二人。ディアンさまも冒険者さんたちも真面目だなあと感心しつつ、疑問が湧いたので声に出してみた。

 

 「そういえば勇者さまはどちらへ?」

 

 「アルバトロス城だ。捕らえて城へと連れて行ったからな。もう逃げられまい」

 

 ディアンさまの言葉を聞いたダリア姉さんとアイリス姉さんが『馬鹿よね』『馬鹿だねえ~』と言い放った。冒険者として西大陸で過していれば、皇女殿下方への不敬は問われなかったはずだ。勇者さまが欲を掻いて北へと渡れば速攻捕縛予定だったし、本当に馬鹿なことをしたなあ。

 とりあえず勇者さまに付けられていた影からの報告と、私たちも事の経緯をアルバトロスと教会に説明して擦り合わせが始まり、冒険者ギルドと北も巻き込んだ事態に発展するのかな。

 

 「そうでしたか。――場所を移しましょう。このままでは彼女も彼もきちんとした休息を得られません」

 

 私の腕の中にいるアリアさまをどう運ぼうか。ディアンさまとジークは男性なので触れるのは憚られる。緊急事態だから問題視されないけれど、妙な勘違いを引き起こす人がいてもおかしくはない。

 頭を悩ませているとセレスティアさまが『わたくしが運びましょう』と名乗り出てくれた。リーダーは仲間の彼が抱えてくれるだろうから問題ないだろう。アリアさまをセレスティアさまへ預けて、ディアンさまと私は立ち上がる。

 

 「え? あ、あの?」

 

 「お、俺たちは戻らないと……」

 

 「戻って頂いても良いのですが、アルバトロスへ入国した経緯を説明して頂けると、こちらとしては助かります。おそらく冒険者ギルドの方々も事態説明のためにアルバトロスへ参られるでしょうから」

 

 困り顔の冒険者の二人を見ながら、理由を説明する。勝手に戻って問題に上げられても面倒である。今であればアルバトロスも亜人連合国も冒険者ギルドも忙しなく動いている最中なので、ついでに説明しておいた方が後々楽になる。

 年若い女の人と男性が顔を見合わせてどうしたものかと考えているが、目が覚めていないリーダーをこのままにしておく訳にもいかないだろうに。

 ほらーさっさと行きますよと言わんばかりに行動を開始し、亜人連合国の皆さまと子爵邸のみんなは子爵邸の中へ、エルとジョセたちは庭に残り竜の方と一緒に過ごすそうだ。ついでに詳しい状況を片言しか喋れない竜の方に聞いてくれるので、正直助かる。エルとジョセにお願いしますと頭を下げれば、いえいえいつもお世話になっているお礼ですと言ってくれた。

 

 「行きましょう、皆さま」

 

 冒険者の方たちがいるので、特に理由もなく私は聖女の言葉使いになってしまう。ロザリンデさままで『わ、わたくしもですか』と驚いた顔になっているけれど、アリアさまと一緒に別邸から庭へと出てきたので、アリアさまの行動の報告をして頂かなければ。

 

 あとは大丈夫かなと庭へ視線を向けると、大きく庭の土が穿たれた場所に膝を突いて突っ伏している人の姿を捉えた。麦わら帽子がトレードマークの庭師の小父さまである。子爵邸の裏にある家庭菜園も専門外なのに助力してくれている、子爵邸の大事な一員。

 一緒に外へと出ていた家宰さまに『予算と人足を一定期間増やします』と伝えてくださいとお願いすると確りと頷いてくれ、ディアンさまも『同族がすまないな……』と言ってくださり助力すると願い出てくれるのだった。

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