魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
子爵邸でフィーネさまとメンガーさまを招いて、日本食を堪能してから子爵邸で過ごす方々にも振舞ったのだけれど、受け入れられる人微妙な面持ちで口にする人、やはり味に好みがあるようで意見は分かれていた。
私が好きだと言うことで表立っては口にしないので、みんな大人だなあと感心している。強制する気はないので、好きな人は食べれば良いし、嫌いな人は自分の好きなものを食べて貰えば良いだけ。
料理長さんたちには、日本食の作り方を手解きしておいたから、いろいろと新たな料理を開発してくれるはず。次にフソウへ赴けば、麹菌とみりんさんとかも手に入れる予定である。料理の幅が広がるみたいだし、楽しみにしていることのひとつだ。
学院から戻って、家宰さまから子爵領の状況や子爵家の財政状況を聞き、決裁が必要な書類にサインを施していく。王都の子爵邸にある庭の修復も終え、元通りになっている。
竜の方がいきなり舞い降りてきたことに驚いたが、頭を抱えていた庭師の小父さまの心は癒えたのだろうか。その辺りのフォローも手厚くお願いしますと家宰さまに告げると、彼に代わってソフィーアさまが半歩私の前に出る。
「ナイ、自称勇者の処分が決定した」
ソフィーアさまの隣でセレスティアさまが鉄扇を広げ、流し目で彼女を見ていた。今回、勇者さまをアルバトロスから放逐した件は各国から口うるさく指摘されている。冒険者ギルドも同様で、何故危険な人物を野放しにしたと責任を問われていた。
もちろん北のミズガルズも自国の人間を管理せよと抗議されており、迷惑を掛けて申し訳ないと頭を下げる他ない。
「……彼はどうなりますか?」
勇者さまはアルバトロスでは勇者と認められず、自称という形容詞が付けられた形で呼ばれるようになっている。一応、名前も公表されているのだけれど、名前は何故か呼ばれない上に『自称勇者』と呼んだ方が通りが良いのだ。
私も勇者さまの名前で告げられるよりも『自称勇者』と聞く方が分かりやすいから、問題はないけれど。悲しいかな、勇者さまの扱いはその程度であった。勇者さまはメンガーさまの『セーブデータを利用したのか?』という質問から、がっくりと項垂れ抵抗しなくなっている。どうも図星を突かれたようなので、あとは勇者さまが自分のやらかしたことを自覚してくれれば良いのだが。
「以前やらかした銀髪のアレと同様に各国の冒険者ギルドで見世物にされた後、亜人連合国にて竜の恐ろしさを体験する……――」
ソフィーアさまの言葉は続く。大貴族さまたちの粛清も終わり、大体の膿は洗い流せたので、北の皇女殿下方の嫁入り先が決まったそうだ。割と早く決まっていたから帝室は裏で動いていたのだろう。
ちゃんとした北のお貴族さまであり、帝室派の方なのだそうだ。で、勇者さまに四人の嫁入り先が決まったと報告し、音声録音できる魔術具で皇女殿下方から録音ボイスを届けられるそうだ。懇切丁寧に未来の旦那さまの素晴らしさを説くのだとか。勇者さまからすれば寝取られた形となる、とのこと。それから先は、まあ冒険者ギルド本部の裁量となる。
「ミズガルズで斬首に処す予定だが、撃たれたSランク冒険者パーティーリーダーが渋っているようでな。彼曰く、なにも理解しないままでは刑に処す意味がないと主張しているそうだ」
今回、勇者さまの一番の被害を被ったのはSランク冒険者パーティーのリーダーさんだ。アルバトロス、亜人連合国と北のミズガルズから迷惑を掛けたと謝罪の手紙を彼らへ送っている。彼らも彼らで、油断したことが一番の原因だし、こちらも迷惑を掛けたので何らかの形で礼を返したいとのこと。
ギルドからは一時的に彼らのランクを下げることとなった。あとボランティアで依頼をいくつか捌いてから、ランクが戻るとのこと。冒険者登録をしている――身分証明となり各国への入国が可能――ものの正規ルートで入国しなかったことを問題視されているそうだ。緊急事態だったので、一時的な降格で、彼らならばすぐに戻れるとのこと。
勇者さまが銃を人に向けて撃つなんて予想外で、彼の異常性を見抜けなかったから。それを言われると、前世の記憶を持っている私たちも注意喚起が足りなかったし。
甘い処分を下せば、方々から突き上げをくらうので冒険者ギルドも手心は加えないはず。だからこそ『斬首に処す』とソフィーアさまが教えてくれたのだ。話が通じない人が多いのは、命の価値が低い世界だからだろうか。いや、でも前の世界でも話が通じない人って割と直ぐ側にいて頭を悩ませていたから、どこの世界でも変わりはないのかもしれない。
ん、でも話が通じない人って、所謂転生者の人たちだなあ……まさか前世の人たちの方が頭のやべえ度合いが高いのだろうか。そう言われると、私もマトモな人間だと分類し辛いな。
「なら勇者さまが罪を理解すれば、罰を下すのは構わないと?」
リーダーの真意は知らないけれど、言葉だけを汲み取るならばこうなる。
「そのようだな。まあ、自称勇者の様子では難しいだろうが……」
「無理矢理に言い寄られる怖さを知って欲しいものですわ。自称勇者さまは女性の敵でございましょう」
最近は捕らえられた牢の中でぼーっと過ごしているそうだ。ご飯は食べているから問題ないし、睡眠は眠くなれば勝手に寝落ちするだろうし。あとは精神的に発狂しないように気を付けており、牢の主が監視しているのだとか。
無理矢理に言い寄られる怖さなら、同性の人に狙われるのが一番かなあ。男性なら特に嫌悪を感じるだろうし、効果的なのかも。あ、一時的にアガレスの鉱山送りに処すのも手かもしれない。銀髪くんがおいでおいでと勇者さまに手招きする幻が見えてしまった。その後ろにはちゃっかりとアガレスの元第一皇子殿下の姿も。なんつー嫌な光景と頭を左右に全力で振る。
「どうした、ナイ?」
「いきなり頭を振ってどういたしました? 大丈夫ですの?」
ソフィーアさまとセレスティアさまが驚いた様子で私に問う。ジークとリンは執務室の壁際でいつものことだと言わんばかりにこちらを見ていた。クロは驚いて『ぴゃ』と肩から飛び上がったけれど、私が頭を振るのを止めると定位置に舞い降りたし。
「い、いえ。嫌な光景を振り払いたかっただけで、特に意味は……」
私が言い淀むと何故か詳しく聞き出された。おそらく報告でアルバトロス上層部に伝わるのだろうなと予想がつき、仮に勇者さまが東に送られたとしても私の所為じゃないはず。そういえばノベルゲームも据え置きのRPGも濃いオネエキャラが一人はいるよねえと、ふと過ぎる。しかも筋肉隆々で女の子より女の子して、男に目がないオネエキャラ。
メンガーさまにゲームにいたのか聞いてみよう。
勇者さまが好きだったなら、勇者さまを差し出せば喜んで受け取ってくれそうだし。オネエさんに銃の危険性を説いて貰うのもアリなのだから。国や冒険者ギルドの判断次第だけれど、提案するだけ提案して勇者さまが反省してくれれば儲けものなのだから。
「あと、暴れていた竜なんだが……」
「亜人連合国所属ではないことは明確ですが、反省の谷で言い訳に次ぐ言い訳をしているそうですわ。みっともない」
冒険者ギルド本部近くで暴れていた竜は『黒い竜にそそのかされた!! 暴れてみせれば、力を与えてやるって!!』と亜人連合国の反省の谷でそう言っているそうな。黒い竜といえばディアンさまだけれど、彼がそんなことをするはずがないし、やった所で意味がない。
とすれば……彼以外の竜でそれなりに力を持っている竜である、と。黒色かあ。そういえば黒フードの女魔術師もいたなあと記憶から引っ張り出す。もしかして繋がっていると首を傾げるものの、現時点では仮説である。考え過ぎて頭が禿げてもいけないし、とりあえず目の前の長期休暇を楽しむだけだと窓から子爵邸の庭を見る。
「ん?」
アルバトロス王都の晴れ渡る空をぴゅーと飛んでいる竜の方から、キラリと光るモノが落ち子爵邸の庭に落下する。直ったばかりの庭に落ち被害が出れば、庭師の小父さまがまた涙目になってしまう。なにかが敷地の庭へ落下したのは確定なので、とりあえず外に出て確認しようとみんなで顔を見合わせる。
外に行こうとすると気配を察知したのか、ロゼさんが私の影からしゅばっと飛び出て、私室からヴァナルと雪さんと夜さんと華さんか顔を出し後ろを歩く。いつの間にかジルヴァラさんも姿を現し、彼女の腕の中にはお猫さまが。子爵邸で働く方々も物々しい様子にどうしたのかと顔を出し、私たちの様子を伺っている。そうして庭へと出て、落下地点へと歩いて行く。
「…………」
ちょこん、と地面に転がる鶏の卵ほどの綺麗に光る石の塊。二年前、大規模討伐遠征で拾ったクロの卵と同じもの。
「卵、だな」
「卵、だね」
クロの卵を見たことがあるジークとリンは卵と断定し。
「竜の卵か」
「ナイ、ナイ! 凄いですわ! 竜のお方がナイにお預けになったのでしょう!! これは立派に育ててみせなければ、竜の皆さまに示しが付きませんわ!!」
ふうと、軽く息を吐くソフィーアさまとテンション爆上がりのセレスティアさま。べしべしと私の肩甲骨を叩かないでください。ちょっと痛い。いや、気持ち良いかも? 絶妙な加減だった。
『卵だねえ。どうする? お隣に状況聞いてみる?』
クロは肩の上で私の顔を覗き込み。
『ロゼ、竜の卵を初めて見た!』
ぬぬ、とスライムの身体を伸ばして卵に触れようとするロゼさん。ジルヴァラさんとお猫さまは黙ったままじっと見ているだけ。
『……竜にこんなに簡単に会えるものなのですね』
『成体なら理解できますが、卵だなんて本当に珍しい』
『西大陸はいったいどうなっているのでしょうか』
『ナカマ増エル、嬉シイ』
私の横に並んで座っている雪さんと夜さんと華さんにヴァナルが目を細めながら言い、騒ぎに気が付いたエルとジョセたちが駆けつけてくるまでそう時間は掛からなかった。
◇
――空から竜の卵が落ちてきた。why?
元日本人なのについ英語になってしまったが、なにをどう見ても子爵邸の庭に竜の卵がちょこんと座している。
私たち子爵邸の面々とクロとロゼさんと雪さんと夜さんと華さんにヴァナル、ジルヴァラさんにお猫さまにエルとジョセとルカとジアが卵を取り囲んで、凄くカオスな状況だけれども。しかしまあ、竜のお方も気軽に寄越してくれたものだ。今までは辺境伯領で産まれた幼い竜の方が時折遊びにくるだけだったのに、まさか直接卵を落としてどこかに去ってしまうとは。
『ずっと地面じゃあ可哀想だし、誰か拾ってあげて欲しいなあ』
クロが私の肩の上で声を上げると、勢いよく挙手する方が。誰かと言われて手を挙げるなら彼女しかいない。クロはクロで嬉しいのか、長い尻尾で私の背をいつもより強く叩いてる。クロが本気を出せば私なんて軽く吹き飛ばされるから、加減はしていれているはず。
「クロさま! わたくしが大役を担わせて頂いてもよろしいでしょうか?」
セレスティアさまのドリル髪がいつもより張っている気がする。綺麗にセットされているのだけれど、今の状態はわっさわさというかなんと言うか。幻獣関係で悲しいことがあるとしな垂れているので、彼女の気分で少し変化するのかもしれない。魔力量が高いから髪の毛にまで魔力が届いていれば、あり得そうだし。
『勿論。ありがとう、セレスティア』
クロの言葉にぱあと良い顔になる彼女。長年の友人であるソフィーアさまは呆れ顔だが、まあセレスティアさまだしなあといった面持ち。貴族のご令嬢さまが地面にしゃがみ込むのは凄く珍しいのだが、竜の卵を触れるということでドレスが汚れることは忘れ去っているご様子。
ドレスの裾を両手で器用に膝の内側へと当てて、しゃがみ込むセレスティアさま。竜の卵に触れられるのは嬉しいけれど、緊張もしているようだった。
地面に転がっている卵を両手でゆっくり丁寧に掬い上げる彼女の顔はまさしく恋する乙女。婚約者である赤髪くん、マルクスさまにもそんな顔を見せれば良いのに、未だにど突き合いの夫婦漫才を学院で繰り広げているからなあ。マルクスさまの将来は尻に敷かれることが決定していた。
「あ、ああ! 触れることができましたわ!! セレスティア、もう死んでも後悔はありません! 夢のひとつが叶いましたもの!」
「いや、死ぬな。やるべきことはまだあるだろうに……はあ……」
セレスティアさま、将来はクルーガー伯爵家を切り盛りしなきゃならないので死んじゃ駄目です。あの家、女性が有能でなければ駄目になりそうだから。それが分かっているからこそ、ソフィーアさまはやるべきことがあると告げたのだから。
「ナイ! ナイ! 竜の卵ですわよ! きっと立派に育つのでしょうね。雄大な空の上を雅に飛ぶ姿を今からでも想像できますわ!」
幼い子供のようにはしゃぐセレスティアさまを見上げて、差し出された卵を両手で受け取る。クロの時のように私以外誰も触れない、ということはないようだ。
「お隣に行ってきます。勝手に子爵邸で育てる訳にはなりませんし、もしかすればディアンさまたちも知らない可能性がありますから」
とにもかくにもお隣さんに事情説明に赴かなければ。丁度窓の外を見て、竜の方を視認して良かった。知らないうちに子爵邸の庭に落ちて、知らないまま誰かが持ち去る――おそらくあり得ない――なんてことになり得ても困る。
「ですわね。きちんと事情をお話して、亜人連合国の判断を仰いでおく方が無難でございましょう」
「なら、アルバトロスにも報告だな。また上層部の方々が頭を抱えそうだが、悪い話ではないからな。あと先生も喜び勇んでこっちにくるな。まあ、いつものことだが」
セレスティアさまが真面目な表情になり鉄扇を開いて口元を隠し、ソフィーアさまがアルバトロス上層部にも話を通しておくと言う。副団長さまは、まあいつも通りである。嬉々とした顔で観察日記をつけるのだろう。フソウからやってきた雪さんと夜さんと華さんとも、嬉しそうに会話を繰り広げ、凄い勢いで紙に書き起こしていたのだから。
「ジーク、リン。護衛お願いします」
私の後ろに控えていたそっくり兄妹に声を掛けた。
「ああ」
「うん」
まあ、いつも通りでジークとリンは短く同意の言葉をくれるだけ。私がお隣さんに向かう時は最低限の人数である。亜人連合国の方々が私に危害を加えることはない、というアルバトロスの判断が下っていることが大きい。
ディアンさまたちは必要ならばいくらでも迎え入れるようだけれど、ダリア姉さんとアイリス姉さんは知らない人がいると結構警戒しているしなあ。人見知りとかしない方なのに、何故だろうと首を傾げたくなる。
行ってきますと子爵邸の面々に挨拶をし、幻獣のみんなにも声を掛ける。ロゼさんはひゅばっと私の影の中へと入り、雪さんと夜さんと華さんにヴァナルは一緒に付いてくるとのこと。
エルとジョセたちは子爵邸の庭に戻って、ゆっくりと過ごすようだ。庭を抜けて、お隣さんと子爵邸を繋ぐ小さな門の扉を開く。勝手知ったる亜人連合国領事館はいつも通り、人気はなく静かな庭だ。しばらく歩くと玄関に辿り着き、金属の金具を持って呼びだしの為に数度扉を叩く。
「こんにちは。ナイです」
おそらく領事館の中にまで声が届くことはないけれど、つい声を上げてしまうのは前世の習慣なのだろうか。領事館の玄関先には妖精さんが飛んでおり、私の肩に止まったりジークとリンの頭の上で踊っていたり自由気まま。卵も気になるようで、ちょんちょんと指先でつついたり、乗ってみたりしている。
可愛いく微笑ましいし害はないので、いつも好きにして貰い妖精さんの行動を咎めることはない。そういえば北へと向かったはずのお婆さまはどこにいるのだろうか。妖精さんだから自由気ままな生活らしので、誰も気に留めていないのがなんともはや。
「ナイちゃん!」
「ナイちゃん~いらっしゃい~!」
がば、と玄関の扉を開けたのはダリア姉さんとアイリス姉さんだった。少し後ろにはディアンさまとベリルさまの姿もある。
「ダリア姉さん、アイリス姉さん、ディアンさま、ベリルさま。突然の来訪申し訳ありません。少しご相談したいことがあり、赴かせて頂きました」
卵を落とさないようにと細心の注意を払いながら、目の前に方々に頭を下げる。ダリア姉さんとアイリス姉さんが私の両脇に立って、中へ入るように勧めた。ジークとリンにも視線で入るようにと促して、亜人連合国の廊下を歩いて行く。お貴族さま同士だと定型の挨拶があるのに、そういうことを亜人連合国の皆さまは気にしない。
礼儀と作法も大事だけれど、お客さんをもてなすことの方が大事らしい。本当かどうかは怪しいけれど、気に入った方はこうして歓迎するのだとか。有難いなとおもいつつ、お世話になってばかりなので恐縮しっぱなしである。
「ナイちゃんならいつでも歓迎よ。さ、中に入ってお茶でも飲みましょう」
「そうだよ~。向こうにいても暇だし、ナイちゃんがくると楽しいことが一杯あるから~」
ダリア姉さんは私の腕を取り、アイリス姉さんは後ろに回って背中を押す。ディアンさまとベリルさまは私の手の上に気付いて、視線を固定させていた。
「君が手に抱えているソレは……」
「おや。また仲間が増えて嬉しい限りですね、若」
ベリルさまの言葉に、穏やかな表情で『そうだな』と答えるディアンさま。勇者さまの一件で、反省の谷に竜が一頭増えているし、今度は子爵邸に卵が増えている。ヴァイセンベルグ辺境伯領の大樹の下にも竜の方たちは、順調に卵を増やし子育てをしているそうだ。しかし最近、竜の方々が増えすぎではないだろうか。南の島が移住先として候補にあがるけれど、島なので土地が限られている。
これ、生態系崩していないのかなと心配になってくる。竜の方々が増えれば、強さランキングで頂点に位置する方々だ。人間なんてひとたまりもないし、大陸そのものが竜の皆さまのものになってしまうのでは。それはそれで自然なことだから従う他ないけれど……セレスティアさまが凄く喜びそうと考えてしまうあたり、私も私で深く物事を考えていない。
――で。
亜人連合国の皆さまの見解である。
「君の下であれば心配はあるまい。むしろ強い個体に育つだろうから、我々からも願いたい。困ったことがあれば、直ぐに駆けつけよう」
「ですね、若。数が減り心配が尽きませんでしたが、皆喜んでいますし問題はありませんよ。卵を落とした竜は我々が突き止めましょう。単一個体で卵を生み落としたようですから、直ぐに判明するはずです」
「大昔みたいに、竜が空を沢山飛ぶ光景がそのうちみられるのかしらね?」
「エルフも増えると良いのにね~」
というのが、四人の見解である。クロと同様に魔力が栄養源らしく、一定量に達すれば孵化するらしい。本当は亜人連合国で孵って欲しいけれど、親竜さまのお願いだから子爵邸で孵ることが決定した。まさか、また誰か卵を持ってこないよねと首を傾げつつ、私の手の平の上に鎮座する卵を見つめるのだった。