魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0380:巡礼者。

 朝一番に葬送を執り行ったので時間はお昼前である。幼竜さんの飛行訓練に赴こうと、また大木の下へと移動した。未だに幼竜さんの定位置はジークの腕の中、時折リンの方へと移動して肩の上で身体を舐めて手入れしている時もある。

 クロ曰く、飛びたいと望んでいるのであれば無意識で飛べるのに、幼竜さんは飛びたいけれど飛べないのだとか。不思議だねえと呑気に首を傾げるクロに苦笑いを浮かべながら、大木の下で暮らしている仔竜さまたちに交じり、幼竜さんが翼を広げ動かしているのに飛べる気配はない。

 

 「難しそうだね……」

 

 大木の精霊さんに手招きされたので、大木の根っこを椅子代わりにして座って見守っていた。相変わらず精霊さんから伸びた髪は私の手首に絡みついている。特に理由はなく無意識の結果らしいのだが、私が離れるとすっと離れてくれるし特に害はなく問題はなかった。

 

 「みたいだな」

 

 「飛べないものなんだね」

 

 ジークとリンが難しそうな顔で言葉を紡いだ。クロは仔竜さんたちと一緒に交じって、幼竜さんに飛び方を教えていた。親竜さんたちも微笑ましく見守っているのだが、飛べないことに首を傾げている。セレスティアさまは微笑ましい光景を静かに見守っていた。いろいろと思うことがあるだろうし、誰も突っ込む人もいない。

 

 『トベナイのカナシイ』

 

 ヴァナルが伏せをしたままで、私たちの言葉の後に続いた。

 

 『竜も大変なのですね』

 

 『飛べると良いのですが』

 

 『一生懸命に飛ぼうとしている姿は可愛らしいですが』

 

 雪さんと夜さんと華さんも練習をしている幼竜さんへと視線を向け言葉を零した。まだまだ時間が掛かりそうだと静かに見守っていれば、幼竜が一鳴きしながらジークの腕の中へと戻ってきた。練習が嫌になったのか、疲れたのかは分からないけれど、他の竜の方々もジークの腕の中へと飛び込んだ幼竜さんに微笑ましい視線を飛ばしている。

 

 『疲れてしまったようですね。今日はここまででしょうか』

 

 大きな成竜さまが首だけを伸ばして、私たちの前に顔を出す。

 

 「ありがとうございます。飛ぶことは難しいのでしょうか?」

 

 『どうでしょうか。飛べるはずなのですが……空が怖いのかもしれません」

 

 そういえば親竜さまが空から卵を落としていたからなあ。それが心理的に恐怖を感じてしまう原因なのだろうか。こればかりは幼竜さんが頑張るしかないし、飛べなくとも生きていけるから。

 一度息を吐いて子爵邸に戻ろうと、監視小屋の人たちと挨拶を交わしてロゼさんの転移で王都まで戻った。飛行訓練は子爵邸の庭でもできるので、クロとディアンさまとベリルさまに師事する予定。幼竜さんも飛行訓練を嫌がっていないので、ぼちぼちやって行けば良いだろう。

 

 「ご当主さま。アガレス帝国の第一皇女殿下からお手紙が届いております」

 

 戻ってきて早々に家宰さまが顔を出し私を呼び止めた。それであれば執務室で開封しようと、着替えてから向かいますと告げる。ウーノさまとは定期的に手紙のやり取りをしているのだが、私的な連絡が多く家宰さまに呼び止められることはほぼない。

 珍しいのだが、おそらく政治的な話題なのだろう。早く内容を知らせたいが故に、家宰さまを経由したのだから。急いだ方が良いなと、侍女さんたちの手を借りつつ着替えを済ませた。

 

 「お待たせしました。直ぐに手紙を開封しますね」

 

 「よろしくお願い致します。アルバトロス上層部には知らされていないようなので、緊急事態というわけではないでしょうが、なるべく急いだ方がよろしいかと」

 

 家宰さまがペーパーナイフを取り出して、ウーノさまからの手紙を開封して手渡ししてくれた。開かれた口から中身を取り出して、冒頭の定型挨拶は読み飛ばし本題に辿り着く。

 記された内容は共和国から黒髪黒目の私に一目会いたいと巡礼の旅に出た者二名が、アガレス帝国を経由して西大陸へと渡ろうとしているらしい。割と高貴な方々で、品のある方だったそうだ。聖王国から派遣された宣教師さんを頼ると言って、また旅を続けているそうだ。徒歩や馬車移動となるのでかなり時間は掛かるだろうが、アルバトロスに辿り着くという意思は強いらしい。

 

 手紙の締めくくりには、アルバトロス上層部にも同じ内容をお知らせしておきますと記してあった。個人の問題で終わらないとウーノさまは見抜き、アルバトロス上層部にも知らせていた。なら、さっきの家宰さまの言葉が間違っているのだけれど、今頃はお城の中は大変なことになっている可能性がある。

 

 私の情報が共和国へ漏れたことをウーノさまは謝罪しているが、正規で入国した人を母国に追い返すこともできないし問題を起こした訳でもない。そもそもアルバトロスと共和国は一応の繋がりがある。

 手紙に記して事前に教えてくれるだけでも有難かった。読み終わった手紙を家宰さまに渡して目を通して貰う。読まれても問題ないし、読まれても問題ないようにウーノさまも個人的な内容は一切記していなかった。

 

 「聖王国の宣教師さんを頼る……頼れるのでしょうか?」

 

 「巡礼の旅に出ている者の態度や言い分次第でしょう。大聖女さまを通じ聖王国へ知らせた方が良さそうですね。大聖女さまがアガレスへ拉致されたことで、聖王国は宣教師が東へ渡り布教活動を行っているようですから」

 

 フィーネさまが丁度アルバトロスに留学しているから、タイミングは良かったのかもしれない。ただ大聖女であるフィーネさまと聖王国上層部は頭を抱えるだろう。

 巡礼の旅に出ているとされる共和国の人たちが教えを乞いたいと願えば、聖王国入りは可能ではないだろうか。あとは聖王国からどう出るか。

 

 一応、アルバトロス王国は共和国との伝手はあるにはあるが、深く関りを持ってはいない。黒髪黒目信仰をきっちりと守っている方々らしいが、私は彼らを目にすることはなかった。

 聖王国にも伝えなければならないが、アルバトロス上層部や西大陸各国にも伝えなければならないことだろうか。各国へ話を伝える判断は陛下を始めとしたアルバトロス上層部が担ってくれるだろう。

 家宰さまに手紙の用意をして頂き、頭を捻りながら文面を考える。こういう時にソフィーアさまがいれば教えて貰いながら記すのだけれど、彼女は長期休暇中で領地へ戻っているし、セレスティアさまも辺境伯家へいったん戻ると別行動を取っているから。

 

 「文面を考えるのは難しいですね……」

 

 「こういうものは慣れですよ。難しく考えなくとも、本題や結論を先に記し補足内容は後から示せば良いのです」

 

 家宰さまがにっこりと笑みを携えて私に告げた。家宰さまも優秀な方であり、手抜きは一切しないので割とスパルタな部分に入る気がする。とはいえ私の為に労を割いてくれているから、無下にする訳にはいかないし、彼の言うことも確かなことだ。

 聖王国のフィーネさまには、東大陸の共和国の黒髪黒目信仰をしている割と高貴な方が西大陸へ渡るためにアガレス帝国へ渡ったはずの宣教師さんと接触を図っていること。アルバトロス王国には、東大陸の共和国から黒髪黒目信仰している高貴な方が二人、アルバトロス王国を目指していると伝える。

 細々したことは直ぐに召喚されて事情を話すことになるから、ウーノさまの手紙を持って証拠とすれば良い。アガレス帝国の第一皇女殿下が認めた手紙なので、信憑性は十分にあると判断されるだろう。

 

 「しかし、今頃になってご当主さまに会いたいと仰る東大陸の者がいらっしゃるとは……」

 

 「……ですねえ」

 

 むむむと考える様子を見せる家宰さまに、私は同意の言葉を発する。あれ、そういえば乙女ゲームの第二シリーズの二作品目って、主人公とヒーローが異世界転移させられた黒髪黒目の一作品目の主人公に会いに行くため、共和国からアガレス帝国へと巡礼の旅に出るというものではなかっただろうか。

 アガレス帝国の件も片付き、第二シリーズの二作品目をフィーネさまから事細かく聞き出していなくて、詳しい状況は語れないけれど。というかアガレス帝国で黒髪黒目召喚は私を呼び寄せているから、ゲームの皺寄せがここにきているのだろう。本来であれば巡礼の旅はアガレス帝国で終わっていたのに、西大陸の南に位置するアルバトロス王国まで旅することになっている。

 

 「アガレス帝国の方々もご当主さまには並々ならぬ感情を抱いていましたし、共和国の方が更に黒髪黒目信仰を仰いでいる可能性もありましょう」

 

 「まさか……でも、用心しておくに限りますね」

 

 どうなるかはまだ分からないけれど……できうる限りの対策を取っておくべきだろう。勇者さまのような後味悪い展開にしたくはないのだから。

 兎にも角にも今認めている手紙を早々に使者の方に預けて知らせるべきだと、執務机に向かって筆を走らせる私だった。

 

 ◇

 

 フィーネさまに早く伝えなければと王城へ使者を送ったものの、長期休暇中ということを綺麗に忘れていた。とりあえず聖王国に戻っているので、フィーネさま宛の手紙と聖王国上層部宛の手紙を送って頂けるように、アルバトロス上層部へお願いしておいた。今頃は送り先の方々の手元へと渡っているに違いない。そして。

 

 ――どうしてこんなことに!

 

 と、フィーネさまは頭を抱えているに違いない。聖王国の教義を広めるためにアガレス帝国に繰り出し、順調にゆっくりと信徒を増やしていたそうなのだが、またしても私に関わることを持ち込まれるとは誰も考えてはいなかっただろう。

 あれ、でも『二度あることは三度ある』という前世での格言というか諺があるので、あり得ることなのだろうか。巡礼の旅に出た良い所のお嬢さんとお兄さんの行動を止められれば話は終了。止められなくてアルバトロスに辿り着けば、私と面会……くらいにはなるのだろうか。巡礼の旅に出た彼らに悪意があるなら不味いことになりそうだし、純粋な信仰からであれば無下にするのは憚られるような。

 とはいえ、黒髪黒目の私が貴方たちに会いたくないと断れば終わってしまう話ではある。私が会いたくないと言っているのに、会ってしまえば私の意思を無視した形となり黒髪黒目信仰をしている共和国の人々は怒るだろう。そうすれば巡礼の旅に出た彼らは、共和国での居場所がなくなる。

 

 「妙なことにならなきゃ良いけれど」

 

 ウーノさまからの手紙を読み、使者を送ったのが本日の昼間。今は夜の帳が降りて外は真っ暗だ。料理人さんたちが精魂込めて作ってくれた美味しい夕食を満足するまで食べて、お風呂から上がったところ。

 子爵邸で働く人たちも長期休暇を取り里帰りしており、子爵邸内の人数は減っている。そういう理由から、お風呂の介添えは付かずリンと一緒にゆっくりと湯船に浸かりゆっくりとした時間が流れていた。

 

 濡れた髪の水分を布でふき取りながら、子爵邸の廊下を歩く。

 

 前世で、お風呂上りに電気代がもったいないからとケチって部屋移動していたら、ぷちゅっとなにか足裏で潰れる音がして、片足だけで跳びながら必死で電気のスイッチを入れて足裏を見た時の恐怖は今でも忘れていない。

 べっとりと足裏に付いたゴキ〇リの中身と、廊下には自重で押しつぶされた本体が無残に晒されていたことを……。

 

 嫌なことを思い出したなあと、自室に入って椅子に腰を下ろす。

 

 『大丈夫、ナイ?』

 

 クロが籠の中で幼竜さんと一緒に寝ていたのだが私の声で起きたようだ。幼竜さんを起こさないように、むくりと身体を起こしてこちらを見ていた。幼竜さんは飛行訓練で疲れて、ぐっすりと眠っている。前世の嫌な記憶はどうでも良く――良くはないが――て、今は現実に起こっていることに目を向けなければ。

 

 「どうだろう。なにが起こっても良いように、みんなで対策を練らないとね……」

 

 私を起点に巻き込まれてしまうのは、アルバトロス王国と聖王国と共和国は確実。私に手を出せばディアンさまを始めとした亜人連合国が参加すると手を挙げるだろうし、リーム王国も共和国に抗議くらいはしてくれるかも。あ、今回はウーノさまからの手紙で私に伝わったのだからアガレス帝国も参加だろう。

 

 『アガレスの時みたいにならなきゃ良いけれどねえ。でもナイに会いたいって人は西大陸のアルバトロスを目指しているんだよね?』

 

 「うん、そうみたい。伝手を使って北大陸のミズガルズかフソウに暫くの間、居候させて頂くのもアリかな」

 

 クロと私が話していると、床で寝転がっていたヴァナルが起き上がりベッドサイドに顔を乗せて上目遣いで私を見た。ヴァナルのお腹の所で寝ていたロゼさんが部屋をころころ転がって行く。

 どうしたのとヴァナルの頭を撫でると、目を細めて私の手を受け入れているので深い意味はなかったようだ。ヴァナルが羨ましかったのか、雪さんと夜さんと華さんもベッドサイドに顔を乗せて撫でろと主張してきた。苦笑いをしながら順番に撫でていく。ヴァナルも雪さんと夜さんと華さんも長毛なのでもふもふしている。

 夏場なので、梳きばさみで毛量を減らしているのだが効果はどれほどのものだろう。転がったロゼさんが跳びながら戻ってきて、ベッドの上へと昇り私の下に寄ってきた。ロゼさんに触れるとひんやりしていて気持ち良い。

 

 『逃げておくのもアリだねえ』

 

 「でも黒髪黒目がいないって大声出されて暴れられても困るしねえ」

 

 アルバトロス王国で民の人たちに『黒髪黒目に会いにきた。共和国では治療できない病を治して欲しい!』とか吹聴して信じ込ませてから、私に会いたいと主張したとして……。そうなると会わざるを得なくなる気がする。王家も教会も私も聖女の地位を貶める行動は取らせたくないし、取りたくない。

 

 「私たちだけで考え込んでも仕方ないし、協議の場が設けられるはずだよ。ゲームに関わっているみたいだし、メンガーさまとフィーネさまの意見も聞いてからだよね」

 

 ジークとリンの意見も聞いてみたけれど、今の時点ではなんとも言えないとのこと。家宰さまも状況がまだはっきりしておらず、動きを注視しておくべきという言葉に留まっていた。ソフィーアさまとセレスティアさまは帰省しているので意見は聞けず。

 

 『そうだね。エーリヒとフィーネにも聞いてみてから考えた方が実のある話になるのかな?』

 

 「多分ね。明日から忙しくなるだろうし、そろそろ寝よう。おやすみ、クロ、ロゼさん、ヴァナル、雪さん、夜さん、華さん」

 

 起きると召喚命令が下りそうだなと目を閉じた。そうして朝一番、着替えを済ませ朝ご飯を食べようと食堂に赴くと、クレイグとサフィールにジークとリンが待っていた。自分の席に腰を据え、侍女さんたちの手により朝食が配膳される。みんなで手を合わせ『いただきます』と告げれば、美味しい美味しいご飯タイムであった。

 

 「ご当主さま。城から使者が参り手紙を託されました。すぐさま確認をとのことでございます」

 

 侍女頭さんが銀のトレイに手紙を載せて顔を出した。口の中に入っていたものを飲み込んで、侍女頭さんに開封をお願いする。礼を告げながら手紙を受け取り、中の便箋を取り出した。

 

 ――直ぐに城へ参内せよ。

 

 いろいろとすっ飛ばして纏めるとコレに尽きる。お城の官僚の皆さまはもしや不眠不休であったのだろうか。申し訳ないことをしたなあと席から立ち上がって、侍女頭さんには城へ向かう準備をと告げる。

 せっかく作って頂いたご飯が勿体なさすぎるのだが、こればかりは仕方ない。手を付けていないものはクレイグとサフィールか屋敷で働く人たちが美味しく食べてくれるだろうと、後ろ髪を引かれる気持ちを我慢する。

 

 「ごめん、食事中に席を立つのは良くないけれど……行ってくるね。クレイグとサフィールはゆっくりご飯食べてて! ジーク、リン、急だけれどお願いします」

 

 ご飯を残してしまうのは凄く、凄く、すごーく気が引けるが、国からの招集ならば致し方ない。

 

 「おう、行ってこい」

 

 「気を付けてね、ナイ」

 

 軽い調子で私の声に答えてくれるクレイグと、心配そうに見ているサフィール。

 

 「ああ」

 

 「行こう、ナイ」

 

 ジークとリンは騎士服に着替えるために席から立ち上がる。クロも一緒に付いてくるようで、ついばんでいた果物から顔を離して私の肩へ飛び乗る。

 クロと一緒に食べていた幼竜さんが一鳴きしてなにかを訴えると、リンが気づいて抱き抱え一緒に部屋へと行くようだ。幼竜さんはジークとリンに懐いているので、心配は要らないだろうと自室へ行こうと食堂を出る。

 

 「本当にトラブルが尽きないな、ナイは」

 

 「だね。なにもなければ良いんだけれど……」

 

 背後からクレイグとサフィールの声が聞こえた。最近、なにか起こっても報連相をして、そこから対処するようになってきているような。トラブルに慣れてきているとも言えば良いだろうか。ちょっと、嫌かもしれないと苦笑いを浮かべながら足を進め。

 

 「なあ、サフィール。ナイの奴……飯、中断できたんだな。俺はすっげえ驚いた」

 

 「クレイグ、ちょっと酷いんじゃないかなあ。でも、貴族としてちゃんとナイが振舞えるようになってきた証拠じゃない?」

 

 ぼそりと零れた失礼極まりない会話は、私の耳に届くことはなく。

 

 着替えを終え、ヴァナルと雪さんと夜さんと華さんも加わり屋敷の地下室へと向かいお城まで転移するのだが、ここで問題が起きた。護衛であるジークとリンが幼竜さんを抱えているのは恰好が付かないのでは、と。聖女を守るために付けられた護衛がジークとリンである。これじゃあ竜を守る騎士だよねとなってしまった。

 

 とはいえ幼竜さんは私に近づくことは殆どなく、ジークとリンの側にいるかクロと一緒に戯れているかだ。話を理解しているのか、幼竜さんはこてんこてんと左右に首を傾げながら考える素振りを見せて、ジークの左肩へと移動した。どうやらクロを真似たらしい。

 けれど双子の騎士の片方だけに竜が乗っているのは、バランスが悪いというかなんというか。ジークとリンがそっくり兄妹ということもあるけれど。あ、そうだ。

 

 「クロ、クロ」

 

 私は試したいことがあって、クロの名前を呼べば長い尻尾がゆらゆらと揺れた。

 

 『うん?』

 

 「リンの右肩に乗ってみて」

 

 『良いよ』

 

 クロはそう言ってリンの右肩へと飛び乗った。背の高い赤毛の騎士の肩に、小さな竜がちょこんと乗っている姿はなんとも言えないものがあった。

 

 「魔術具、持参しておくんだった……似合ってるから、お城の中はこのままでも良い?」

 

 白が基調の騎士服に、白銀の竜と白金の竜がちょこんと乗っている姿は良い物がある。白と銀なのでちょっと同化しているけれど、クロと幼竜さんの存在感が強いから呑まれることはない。黒色の騎士服でも似合いそうだなあと妄想を広げてみる。

 

 「構わないが……」

 

 「クロは良いの?」

 

 微妙な顔をしているジークといつもの顔のリン。ただリンはいつも私の肩の上に乗っているクロが気になるようで、念のため確認を取った。

 

 『ナイが言うなら構わないけれど、リンは大丈夫?』

 

 「私は構わないし、ナイの希望なら文句なんてないよ」

 

 話は付いたので転移をしようと、魔力を練る。地下室の床に刻まれた転移魔術陣に青白い光が灯ると、お腹の中身が空中へ浮く感覚に襲われる。転移の際に毎回経験しているけれど、慣れることはないなと笑みを浮かべれば、転移が終わりアルバトロス城の中に辿り着いていた。

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