魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0381:アルバトロスが滅ぶかと。

 お城の転移陣に移れば、案内役の近衛騎士さまが待ち構えていた。騎士さまは何故か私の肩へと視線を向けたあと、すぐさまジークとリンの肩へと視線を変えた。

 

 「!」

 

 騎士さまが凄く驚いているけれど、幼竜さんがジークの腕の中にいるのは不味いのだ。子爵邸の中や個人的な時間であれば良いのだが、今は公式の場である。聖女の護衛を放棄した騎士と捉えられても仕方ない状況は避けたかった。

 

 「ミナーヴァ子爵、会議場へご案内致します」

 

 「お手間を取らせて申し訳ありません、案内よろしくお願い致します」

 

 びしっと礼を執った近衛騎士さまに私も目礼で答えて移動を開始する。お城の中を自由に闊歩できれば良いのだが私が移動を許されている範囲は、防御魔術陣がある場所と警備レベルの低い場所のみ。

 官僚職に就けば更に移動可能な場所が増えるけれど、領地持ちの子爵位というだけなので勝手に歩き回ればみんなが困る。陛下にお願いすれば、お城の図書室の出入り自由許可くらいは頂けそうだけれど。

 転移陣から歩いて暫く、会議場が見えてきた。廊下に飾られているフルプレート鎧の陰から見知った姿を確認すれば、向こうも私に気付いて頭を下げる。

 

 「ナイさま! ――!?」

 

 「ミナーヴァ子爵。――!!」

 

 フィーネさまとメンガーさまは私の名を呼んだ直後、驚いた顔になる。お二人の護衛役の方々も私を見て驚いていた。彼らの視線の先はジークとリンの肩の上に固定されているけれど、とりあえず挨拶をしなくちゃ始まらないと口を開く。

 

 「フィーネさま、メンガーさま、ご参集なされていたのですね。長期休暇中でしたのに、申し訳ございません」

 

 フィーネさまは聖王国に戻り、メンガーさまも自領へと避暑のため戻っていたはずなのに。せめて二学期が始まってから共和国の方たちの行動を知りたかったけれど、文句を垂れても仕方ない。

 

 「あ、いえ! まさか今更話が動くことになるなんて誰も考えてなかったですから」

 

 「ええ。俺は話を知りませんが、内容を知れば予測くらいはできようと公爵閣下から呼び出しを受けました」

 

 フィーネさまは聖王国とアルバトロス王国の転移魔術陣を使用すれば、時間を掛けず移動することができる。でも、メンガーさまは伯爵領から王都のお城までの移動手段をどうしたのだろう。首を傾げていればメンガーさまが私に気付いて、少し視線をずらしてこう告げた。

 

 「ヴァレンシュタイン副団長が俺を迎えにきてくれました……まさか彼が送迎を担ってくれるなんて。ところで子爵……?」

 

 領地のメンガー伯爵邸前に転移して、にっこりと笑いながら陛下と公爵閣下からの呼び出しですと告げられたそうだ。フィーネさまと私は、メンガーさまになんとも言えない視線を向ける。

 がっつりと王国に取り入れられていないかなあ。でもまあ出世したいなら、陛下と公爵さまを頼ってお城で働けるようにして頂けるなら、伯爵家の三男坊であれば出世街道を走っていることになるだろう。学院の特進科に入れるくらいだから、官僚職に就いても問題なさそうだ。

 

 「どういたしました?」

 

 「何故、ジークフリードの肩の上に孵ったばかりの竜が乗っているのですか?」

 

 あれ、メンガーさまがいつの間にかジークのことを呼び捨てにしている。関わることってあったかなと記憶を探るが、アガレスの時にヴァナルの背中の上に一緒に乗っていたし、その時からだろうか。

 凄く聞き辛そうなメンガーさまの言葉に、うんうん頷いているフィーネさま。そんなにクロが私の肩の上にいないことが驚くようなことなのかと首を傾げる。割とクロは色んな方とフレンドリーで喋っているけれども。でもまあ、思い直せば一番の居場所は私の肩の上だった。特に子爵邸の外に出ている時は。

 

 「新たな竜の卵が孵り子爵邸でお世話をしているのですが、ジークに一番懐いておりまして。流石に登城している最中は騎士の腕の中では不味いだろうと、肩に移って貰ったのです」

 

 白金の幼竜さんはげしげしと前脚で顔を掻いていた。ジークの肩幅は広いので私の肩の上より安定しているだろう。クロは誰かの肩の上にいることに慣れているから問題はないのだから。

 

 「それだとクロさまがジークリンデさんの肩の上にいる理由になっていないですよ?」

 

 フィーネさまがメンガーさまに変わって言葉を紡ぐ。

 

 「あ、それは単に私の趣味です。ジークとリンって凄く似ているので、ジークにだけ竜が乗っている違和感が凄くて落ち着かないんですよね」

 

 趣味か、趣味なの、趣味でそんなことを……とフィーネさまとメンガーさまに、護衛の皆さまと案内役の近衛騎士さまたちが困惑していた。困惑するほどのことかなあとクロを見れば、クロもクロで疑問符を頭の上に浮かべている。

 アルバトロス王国と聖王国のお偉いさんたちを待たせる訳にはならないと、会議場へと足を進めた。そうして中で待っていた人まで、私の肩に視線を向け彷徨わせたあとジークとリンの肩を凝視する。

 

 遅れて現れた公爵さまと辺境伯さまに手招きされて、私の肩の上にクロがいない事情を話せば『ナイの趣味でワシを驚かすな』『アルバトロスが滅びるのかと……』と凄く失礼なことを微妙な顔して告げられた。

 公爵さまと辺境伯さまの傍にはソフィーアさまとセレスティアさまが控えていた。事情を聴いて領地から転移で戻ってきたようで、私の侍女として会議に参加することになる。久方振りでもないのだが、毎日顔を付き合わせていた面子なので揃い踏みすると落ち着くのは何故だろう。

 セレスティアさまがジークとリンを見て羨ましいと零し、魔術具で写真を撮らせて欲しいと願い出ていたので私も欲しいと彼女に伝えておいた。

 

 続いて陛下も姿を現し私を凝視したあと、近衛騎士さまが耳打ちで事情を話せば長い長い溜息を吐く。いや、クロと喧嘩することなんてないし、そもそも喧嘩したくらいでアルバトロスが滅びるわけはないのだけれど。私って凄く恐れられている……と、疑問を持ちながら考えていれば宰相補佐さまの声で会議が始まった。

 

 私を起点にしてやっかいなことが起こりそうと大雑把な説明が入り、聖王国のお偉いさんが指名される。

 

 「東大陸に赴いた宣教師に急いで確認したところ、そのような人物とは接触していないとのことでした。であれば、今後共和国の者と接する機会があったとしても、アガレス帝国に留めておけと厳命しております」

 

 まだ聖王国の宣教師さんとは接触は叶っていないようだった。ウーノさまの連絡が遅ければ、西大陸に渡っていた可能性もあるから追加でお礼の手紙を認めないと。

 

 「迅速な行動感謝いたします。――我々も共和国には黒髪黒目であるミナーヴァ子爵には手を出さないで欲しいと書状を送っております」

 

 効果はどれほどのものか分からないが、無茶をする共和国の若者を止めることくらいはできましょう、と宰相補佐さま。徒歩移動で旅しているようだし、文化も違うであろう大陸を渡るにはかなり気合と根性が必要になる。会えないと分かれば落胆も酷いだろうし東のアガレスで足止めされて、共和国へと戻って頂けると僥倖だ。クロが肩の上にいない軽さに違和感を覚えつつ、一旦解散となった。

 

 この後はゲームについて擦り合わせの会議となっており、先ほどまでは表向きの会議である。

 

 「さて、この場には深く事情を知る者しか残っていない。大聖女フィーネよ、ゲームとやらの展開を教えてくれるか?」

 

 あれ、陛下がフィーネさまの名前を呼んだのは初めてなのでは。この辺りも関係性が変わってきているようで、フィーネさまに対しての信頼度が少し上がっているみたい。

 

 「は、はい! アルバトロス王、御前失礼致します。凄く簡単にではありますが……物語の主人公と恋仲になった男性とアガレス帝国に異世界召喚された黒髪黒目の第一作目の主人公に会いに旅に出る話となります」

 

 ゲームでは穏やかに黒髪黒目の主人公と謁見を終え、旧知の仲となるらしい。要するに共通ルートを終え個別ルートに入ったヒーローとアガレスの帝都へ旅に出るというものらしい。

 旅の途中色んな方と出会いながら、ヒーローと関係を深めていくそうだ。主人公は差別を受けており、ヒーローの真っ直ぐな愛と黒髪黒目の前作主人公の言葉で差別の解消と対立していた人たちとの融和、そしてヒーローと幸せになるのだとか。フィーネさまが説明を終えると、何故か私に視線が突き刺さる。

 私を目的に関わった人の多くは碌な目に合っていないので、仮に共和国の方々と仲良くなれるのかという疑問の視線だった。

 

 「さて、仮に共和国の者が辿り着いた場合、ミナーヴァ子爵はどうでるか?」

 

 陛下が私に視線を向けて問うてくる。

 

 「個人的見解、ということを念頭に置いて頂けると助かります。相手の出方次第ですが……力や権力がある方であれば対処できましょう。ただの純粋な共和国民であれば、強く出る無茶はできないかと」

 

 子爵位を持っているので、自分の判断で人を斬ること処分することはできる。その後の影響を考えなければ、だが。

 普通の人が黒髪黒目の私に一目会いたいと、王都の街中で願い王都に住まう方々の関心を集め同情を得られるならば会わざるを得ないだろう。力や権力があればアルバトロス上層部や子爵邸に使者を送り打診できるけれど、平民や力を持たない一般市民であるというなら、こういうやり方しかないのではないだろうか。

  

 「今まで後手に回っておりましたが、私の立場であれば先手を打つことも可能です。折よく長期休暇期間なので、アガレス帝国へ向かうこともできましょう」

 

 今の今まで後手に回っていたから、先手を取っても良いかもしれない。とはいえアルバトロス上層部の判断次第で、勝手はできないけれど。第二、第三の巡礼の旅に出る人がいてもおかしくなく、私に会いたいと願う人が増えれば面倒なことこの上ない。だから今回は先に手を打っておくのもアリじゃないかなあ……。

 アルバトロスの黒髪黒目の聖女は恐怖の大魔王さまだと呼ばれても、私的には問題ない訳でして。私の言葉に驚いた顔を浮かべる面々に、さてどうなるのかなと目を細めた。

 

 ◇

 

 お城の会議場から子爵邸に移動して、フィーネさまとメンガーさまと私に、ソフィーアさまとセレスティアさまに、ジークとリンに、事情を知っている護衛の皆さまとあーでもないこーでもないと話し合った。

 フィーネさまから聞いた、乙女ゲームセカンドIPの二作目の主軸の話はこうである。

 差別を受けている共和国内のとある地区に住んでいた主人公が差別を解消すべく決意して、共和国首都にある有名学園へと入学。そこでヒーローと出会い好感度を高め、お付き合いをするようになる、と。

 そこまでが共通ルートとなり、個別ルートはアガレス帝国に異世界召喚された黒髪黒目の前作主人公に会うために、巡礼の旅に出るのだとか。

 

 共和国内の黒髪黒目信仰はアガレス帝国のような皇帝のために尽くせというようなものではなく、単純に崇めている神さまが黒髪黒目の容姿で女性なのだとか。

 黒髪黒目は神の生まれ変わりと信じられ、黒髪黒目の人が現れれば周囲から大層手厚く持て囃され幸せな人生を全うできる……らしい。女神さまの生まれ変わりと崇められることが、本当に幸せなのかと疑問だが、価値観は人それぞれなので本人が良しとするならなにも言うまいて。

 

 共和国には身分制度はなく、大統領を国のトップに据えて選挙が執り行われているのだとか。詳しい政治的な部分はゲーム内で語られておらず、フィーネさまが申し訳なさそうな顔をしていた。まあ、知りたければ共和国に問い合わせるか、隣接しているアガレス帝国が詳しいから聞いてみようと話が決まる。

 

 登場人物も特殊な力はなく至って普通の人間で、ヒーロー側のご両親が政治に関係している人物が多くお金持ちだとか。

 

 確かに差別からの解放であれば、政治屋にお願いするのが一番なのだが、主人公の相手となるヒーローは将来政治家になるつもりなのだろうか。親からの地盤を継ぐとして、人の意識を変えるのは大変だし、時間が掛かるので根気強さが必要となる。

 

 『だからこそ黒髪黒目の前作主人公に会いに行くんです』

 

 フィーネさまの言葉だった。信仰心の厚い共和国の皆さま。黒髪黒目の前作主人公から『差別は止めて!』と懇願されれば、効果があると踏んだらしい。ゲームでは前作主人公の言葉によって、差別はなくなったそうだ。

 

 確かに効果はあるだろう。ただ人の心の内まで覗ける訳ではないから、本当に差別を止め仲良く手に手を取り合うという状況が考え辛い。

 なんだろうね……小学校の担任の先生がいじめを見て『いじめは止めましょう』と学級会で宣言し、一時だけ話を受け入れる小学生の図のように見えて仕方ないのだ。随分と時代が進み、かなり厳しくなっているから今の小学校の現状を知ることはないが。

 

 フィーネさまからの話を聞き、先手を打つことに躊躇いが出てしまった。泣きつかれると共和国に行かなきゃならない気がするし、共和国内で黒髪黒目の立ち位置を把握しきれない。一応、アガレスの使者がアルバトロスにやってきた後、共和国からアルバトロスにきた使者さんは私の姿を遠目から拝み倒していたそうだから、ちと怖いのだ。こう、宗教のトップに祭り上げられそうな勢いを感じる。

 

 力には力で、話し合いには話し合いで、が基本だ。相手がどうでるかは未知数だけれど、ゲームを信じるなら魔術や魔法は使えないし、銃等の火薬を使用した射撃系武器も存在しないとのこと。

 

 「難しいねえ」

 

 話し合いは終わり、子爵邸の自室でぼやく。クロは籠の中で幼竜さんと一緒にいるのでちょっと肩が寂しいような。ロゼさんはヴァナルのお腹の横に、雪さんと夜さんと華さんもヴァナルの側で床にべったりと寝ころんでいる。少し前、毛を梳いて毛量を減らしているから少しは過し易いはずだ。お猫さまは気ままに屋敷内をウロウロしているし、ジルヴァラさんはお屋敷のどこかでお掃除をしているだろう。

 

 フェーネさまは聖王国へ戻って状況把握、メンガーさまは直ぐに動けるようにと学院宿舎へと戻っている。ソフィーアさまとセレスティアさまは勤務時間を終え、各邸へと戻って子爵邸は普段よりちょっとだけ静か。

 

 「また妙な話になったな」

 

 「ナイがまた巻き込まれそう」

 

 部屋で報告書を一緒に作成していたジークとリンが私の声に反応して『また』と告げた。またって……と思うけれど『また』なので彼らの言葉に反論ができない。そっくりな兄妹はそっくりな顔のいつもの表情で、からかいを含んだ声だった。

 

 「まだ巻き込まれると決まったわけじゃないよ!」

 

 先手を打とうとした私が言えることではないが、まだ巻き込まれると決まったわけでもない。巻き込まれたら、巻き込まれた時だ。その時は諦めて私の全力を持って対応するし。

 

 「そうか? ナイ、無茶をするなよ」

 

 「しないから。共和国に行くつもりはないしね」

 

 ジークは私が巻き込まれる前提で考えているらしい。共和国の現状を考えると、私は赴かない方が良いだろう。せいぜいアガレス帝国へ赴いて、ウーノさまと面会するくらいだ。

 

 「長期休暇はゆっくりするの?」

 

 リンが私を見ながら問うた。

 

 「うーん。先手を打っても良いんじゃないかって言っちゃったけれど、関わると碌なことにならない気がするんだよね……命令がない限りは待機かなあ。仮に共和国の人たちがアルバトロスに辿り着いても門前払いされる可能性もあるからね」

 

 リンに問われて答えてみたものの、どうあっても巻き込まれてしまうのは気の所為だろうか。いや、大丈夫、絶対と心の中で唱えても、頭の中の違う所で本当にと問いかけてくる。本当かなあ、みたいな顔になるジークとリン。

 

 「長期休暇中、どこかにお出かけしておくのもアリ?」

 

 行先はミズガルズ、フソウ、南の島、亜人連合国、リーム、割と行先が選べる。アガレスも候補にあるけれど共和国と近いから避けた方が良いのだろう。先手を打つなら真っ先に目指す場所だったけれど、話を聞いた限りだと下手に動かない方が良い気がするのだ。まあ、国の判断次第だけれど。

 

 「長期休暇が明けたらどうするつもりだ。結局、ナイの居場所はアルバトロスだろう」

 

 「うん。私の帰る場所はアルバトロスだよ。ジークとリン、みんながいるからね」

 

 私に言葉にジークとリンが微笑んだ。私の帰る場所はアルバトロスしかない。学院を卒業すれば子爵領が帰る場所となりそうだが、今は王都の子爵邸が私の家なのだから。

 クロが籠の中から飛び私の肩の上に乗って、顔をすりすりと擦り付ける。どうしたのと目線で問うと、なんとなくと言いたげだった。籠の中に残っている幼竜さんは、こてんと首を傾げて籠の中から降りようとする。飛べないので危なっかしいなと見ていると、リンが籠まで歩いて行き抱き抱える。そうしてジークの下へ行き、ジークに幼竜さんを渡せば嬉しそうに一鳴きして、彼の腕の中へと収まった。

 

 「なんでジークとリンに一番懐いているかなあ……」

 

 ちょっと愚痴を零すと、ジークとリンは苦笑いになる。幼竜さんは私の魔力量が多すぎて怖いらしい。親和性が高いと言われている私の魔力を怖がるとは、これいかに。

 

 「そのうち慣れるんじゃないか?」

 

 「ナイだから、大丈夫だよ」

 

 ジークとリンが微笑んで、ジークの膝上にいる幼竜さんをリンが撫でている。怖がっているのに私が手を伸ばしても、余計に嫌われるか怖がるようになるだけ。伸びそうになった手を抑えて、ぐっと我慢する。私が幼竜さんに触れられる日はいつになるのやら。

 

 『不思議だよねえ……訴えたいことはボクが分かるんだけれど、知られたくないことや本心までは分からないから』

 

 クロが私の肩の上で尻尾をてしてしと動かしながら、教えてくれた。あれ、肝心な事が今分かったような。クロ、動物の言葉が全部分かっているのかと思いきや、知られたくないことは分からないらしい。

 まあ、全て丸聞こえなんて困るから良いんだけれど、幼竜さんが私を怖がっている本当の理由は分からず、クロも不思議で首を傾げていると。ディアンさまとベリルさまは、幼竜さんが私を怖がっている所を見て、微笑ましそうに眺めているだけで特にアドバイスをくれるわけでもない。その横でダリア姉さんとアイリス姉さんが『どういうことなの?』『なんで~?』と問い詰めていたけれど、お姉さんズの言葉に彼らが答えることはなかった。

 

 「私が生きている間に触れられると良いけれど」

 

 苦笑いを浮かべ、ジークの膝の上で寝息を立て始めた幼竜さんに苦笑いをすれば、部屋の中にいたみんなが、そのうち懐くだろうと慰めてくれたのだった。

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