魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0384:探索中。

 南の島の森の中を散策することになり、中に入るメンバーが集まっていた。前回の探検メンバーより編成は少ないのだが、緊張感と危険を感じ辛い。

 ジークとリンがいれば大体のことに対処できるのに、クロとロゼさんとヴァナルに雪さんと夜さんと華さんがいるから、戦力的には飽和状態である。

 ちなみにフソウの神獣である彼女たちの強さは、どれほどのものか分からない。フソウでは魔物が出ることはほとんどないし、護り神の位置にいるから戦った記憶は殆どないとのこと。妊娠しているんだし無理はせず運動がてらに行って、なにかあった時は周りのみんなを頼ろうと話している。私もいつも通り後方支援を担う。

 

「それじゃあ、出発しましょうか」

 

 大蛇さまが住む沼地の近くで、私はいたって普通のトーンで声を上げた。隣にはジークとリン、案内役のダークエルフのお姉さん。

 

 「案内役はお任せください」

 

 以前もお世話になったダークエルフのお姉さんが長い銀糸の髪を揺らして微笑んだ。南の島は気温が暑いので、この島に移住した方々は基本薄着である。大きな胸の谷間に目が行くのは自然の摂理で致し方なく、決して悔しいからではない。

 

 「ああ。無茶はするなよ」

 

 「うん。気をつけようね」

 

 ジークとリンが静かに告げ、三人でグータッチする。終えると、クロがみんなとやりたいらしく、鼻先と拳の面どうしを当てあい笑う。

 

 『うーん。魔物のほうが遠慮するんじゃないのかなあ?』

 

 クロを見て羨ましかったのか、ロゼさんがぬっと身体を伸ばし、ヴァナルが鼻を掲げる。そんな一匹と一頭に笑みを向け、ジークとリンと私は手を伸ばして、それぞれとグータッチを済ませた。

 

 『マスターはロゼが守る!』

 

 『ミンナマモル』

 

 ふふんとドヤ顔をしているロゼさんとヴァナルを見た雪さんと夜さんと華は、微笑ましそうに見守り、ゆっくりと立ち上がる。

 

 『急ぐ旅でもありませんからねえ』

 

 『ゆっくりと参りましょう』

 

 『ですね』

 

 妖艶に笑う神獣さまを、フソウの面々は複雑そうな顔で見ていた。やはりお腹の仔が気になるようで、彼女たちにはゆっくりとして欲しいようだが、あまり動かないのも問題だから。安定期には入っているから、大暴れしない限りは大丈夫なはず。

 

 「……承知致しました。我々の出番はなさそうですな」

 

 しょんと肩を落とす九条さまを始めとするフソウの面々。彼らの実力はどんなものか、少し気になっている。ジーク曰く『弱くはないはず』との見解だ。あと日本のお侍さんは強いと言う私の願望も入っているのだろう。

 

 『気をつけて、行ってくるのじゃぞ』

 

 大蛇さまがぬっと鎌首を擡げて、私たちの見送りにきてくれている。流石に大蛇さまの巨体で森の中を移動すると、森が破壊されるから止めておくと少し寂しそうに教えてくれた。

 

 「はい。では」

 

 お見送りの大蛇さまに手を振って、森の奥へと進み始める一行。

 

 「九条さまたちは、なにか欲しいものや気になるものはありますか?」

 

 私は九条さまの顔を見上げて問いかけた。目的が分からないままウロウロしても意味がないし、一定の方向性があればダークエルフのお姉さんが良い場所に案内してくれる。客人の彼らから言い出すのは気が引けるだろうけど、私たちは一度この島を散策しているので問題ない。

 

 「島のものを持ち帰って良いなら、やはり食べ物関係ですな。フソウの土地に合い、我々の口に合うなら、育てて広め民の皆が食せるならば最高でございましょう」

 

 九条さまが晴れ渡った空を見上げる。北に位置するフソウの平均気温は低い。あと島国だし鎖国状態だから、自給自足が基本である。

 お米や野菜は普及しているけれど、果物となると一気に品種が減るのだとか。枇杷やアケビに桃などあるが、ぶどう、オレンジ、メロンとか西洋由来の品が貴重で、せっかくだから持って帰りたいようだ。

 

 「フソウで育てられる品があると良いですね」

 

 気温差があるから難しそうだが、ハウス……温室栽培ができればチャンスは十分にあるはず。でも温室栽培すると販売価格が高くなりそうだ。できれば露地栽培で手間が掛からず、大量生産が出来れば一番良いだろう。……高望みし過ぎか。

 

 「ええ。このように暖かい場所は初めてなので、期待しております」

 

 九条さまが歯を見せながら笑った。まあ、九条さまも良い所のお坊ちゃんだし、使者の代表として選ばれたなら、優秀な証明なので彼に任せておこう。森を進むこと暫く。ダークエルフのお姉さんが一番前を歩き、道なき道を進む。木々に絡む蔦や足元に生えている苔に、遠くから聞こえる鳥の鳴き声。

 

 一年生の時に合同訓練で向かった、王都近郊の森とはまた違う雰囲気だ。魔物に出会うこともなく、危険な生き物は蛇や蜂に、蛭や蚊に気を付けなければならないくらいで、その点については魔術を施せば問題解決してしまう。

 

 フソウの皆さまが驚いていたけれど、魔力持ちの方がいれば使える。ただ、フソウには魔力という概念がなく魔術は浸透していない。不思議な力を持った人が偶に現れ、巫女さんや陰陽師に祈祷師が存在するので、彼らがフソウにおける魔術師と聖女の立ち位置なのだろう。アレコレと考え事をしていれば、前を行くダークエルフのお姉さんが立ち止まり木の上を見上げた。

 

 「おや?」

 

 お姉さんが不思議そうな声を上げ、彼女に倣って私たちも顔を上げた。

 

 『ニンゲン! ニンゲン! ニンゲンガイル!』

 

 少したどたどしい言葉遣いで頭上から声が響いた。誰かいるのかと目を細めるけれど、なにも見えない。

 

 「声の主は鳥か?」

 

 「みたいだね、兄さん」

 

 ジークとリンは捕捉できたようだ。二人とも顔を上げ、同じところに視線を向けている。私は未だ声の主がどこにいるのか分からないままだ。

 

 「大きい鳥ですなあ。嘴も立派で、さぞ長生きされたのでしょう」

 

 九条さまがしみじみと囁いた。どうやら彼も声の主の場所を特定できている。うーん、もしかして彼らは気づかぬうちに魔力で身体強化を施している口だろうか。私の視力は悪くないのだが、騎士の方や軍人の方と比べるとどうしても劣る。

 

 「ナイ、分からない?」

 

 「うん。どこだろう……?」

 

 リンが居場所を特定できない私に気づいて声を掛けてくれた。彼女が少ししゃがんで、指で場所を示そうとしたその時である。

 

 『ニンゲン、バカ! ニンゲン、アホウ! オロカモノ! ヒトデナシ!』

 

 声の主が再び言葉を発した。どうやら人間嫌いな御仁のようだが、最後の台詞は少し意味合いが違うのでは……と首を傾げてしまう。

 人間に属する面々が微妙な顔となり、クロが『好き放題言っているねえ』と呑気に言い、ロゼさんは『マスターは良い人だ!』と訴え、ヴァナルは無言、雪さんと夜さんと華さんは『確かにそんなお方もいますが』『個人差ありますから』『まともな出会いがなかっただけでは?』と仰る。幼竜さんはジークの肩の上で首をこてんと傾げているだけで、鳥さんの喋った内容が分かっていないみたい。

 

 「否定はできない、かな……。けれど、なんで嫌いな人間の言葉を喋っているんだろう」

 

 自然に生きる彼らにとって、人間は文明を築き上げるために自然破壊をしている。森を切り拓き、村や街を作っていくことを知っているなら、人間が嫌いになっても仕方ないのだろう。

 

 「私たちは亜人に類するので、鸚鵡が我々を罵倒することはないのですが……あ、彼はこの島に住む生き物の中で割と長生きをしているようです。根城があるのですが、気分で日中はどこにでもいるので……まさか人間嫌いを発症しているとは思いもよりませんでした」

 

 私の呟きを聞いたダークエルフのお姉さんが、申し訳なさそうに小さく頭を下げた。森の奥に住む鸚鵡さんで、百年くらいは生きているかも知れないとのこと。いつもは大人しいのに、私たちの気配を感じてこちらにやってきたようだ。

 前に島にきた時に遭遇しなかったのは、多くの人たちがいたことが原因だろうと、ダークエルフのお姉さんが教えて下さった。

 人間の営みだし、人間より強い種が出てくれば淘汰させると考えている私は、『まあ、そういう生き物もいるよね』と解釈するのであまり気にしてはいない。自然に生きる鸚鵡で、南の島には人が住んでいないから、人間を嫌いになってしまった理由は気になる所である。

 

 『ニンゲン、バカ! ニンゲン、アホウ! オロカモノ! ヒトデナシ!』

 

 同じ言葉を繰り返す鸚鵡に視線を向けて、目を細めるのだった。

 

 ◇

 

 人間嫌いの鸚鵡さんを見つけた。今も木の上で同じ文句を言い続けている。私も目が慣れたのか、保護色になっている緑の鸚鵡さんを見つけることができた。人間が嫌いならばわざわざ関わらなくても良いのに、と思ってしまう。

 それとも逆に私たちに訴えたいことでもあるのだろうか。

 

 『ボクが話を聞いてこようか?』

 

 タイミング良くクロが私の肩の上で声を上げ、尻尾でぺしぺしと背を叩いて訴えていた。どうやらクロは凄く気になるようだ。

 

 「良いの?」

 

 念の為に確認しておこうと、クロの顔を見て問いかけた。

 

 『うん。あまりにも言い続けているから、ちょっと気になってきたかも』

 

 クロが顔を引き寄せて、私の顔にすりすりしてくる。そんなに気になるなら聞いて貰うべきかと、お願いしますと言葉を発す手前にダークエルフのお姉さんが背を屈める。

 

 「あの……私からもお願いして良いでしょうか。我々亜人連合国の者は島に足を踏み入れてしまいました。島の主の許可を得ていますが、納得できない者がいるならば同意を得たいので……」

 

 ダークエルフのお姉さんが申し訳なさそうな顔を向けて私とクロを見る。美人さんにお願いされると断り辛いと、クロにひとつ頷くと脚を屈めて勢い良く飛び立ち鸚鵡さんの下へと一瞬だった。

 

 「誤解が解けると良いのですが……」

 

 心配そうに上を見上げたダークエルフのお姉さんがぼそりと呟いた。

 

 「ですね」

 

 鸚鵡さんがなにを根拠に人間嫌いを発症したのか分からないけれど、理由が分かって、誤解であれば解けると良いけれど。もし無理だと分かったら……どうすれば良いのだろう。

 

 「ご立派な姿勢ですなあ。我々も見習いたいものです」

 

 九条さまが指で顎を撫でながら感心していた。多種多様な生物が住む世界だし、できることなら仲良くしたい。クロのように人間と凄く友好的だったりする方が多くなってくれれば良いのだが……。

 無理なら自然保護地区を設けて人間の立ち入り制限を設ければ、少しはマシになるかもしれない。大型種には狭い世界だから無理があるけれど、小さな生き物たちであれば自然は確保されるわけだし。

 

 『ナイ~』

 

 暫く待っているとクロが戻ってきた。

 

 「お帰りなさい。ご苦労さまです、クロ」

 

 言葉を解せない生き物とは、クロが毎回こうして相手に話を聞いてくれる。クロがいなければ鸚鵡さんの言葉を無視して、違和感を引き摺りながら島の探索を続けていただろう。

 

 『ううん、鸚鵡と話すのは大したことじゃないんだけれど……』

 

 珍しく歯切れの悪いクロ。

 

 「けれど?」

 

 言葉の続きを促したいので、首を傾げながら問うてみる。

 

 『ちょっと信頼を得るには無理があるのかなあって。あ、エルフや亜人連合国が入ることは別に構わないって。島が大きくなったから、そんなこともあるだろうって言ってたよ』

 

 とりあえず、亜人連合国の方々が受け入れられているなら良かった。私たちはゲストに過ぎないし、ずっと島で暮らす予定のダークエルフさんたちは気が気ではなかっただろう。

 

 「ありがとうございます。しかし人間と打ち解けるのは難しいのですか?」

 

 『うん。無理そうかなあ……問題が解決すれば打ち解ける機会はあると思うけれど』

 

 クロは首を大きく捩りながら、尻尾をべしんべしんと私の背を叩く。背中に当たった尻尾がちょっと痛いなあと、苦笑いしながらクロの話を聞くのだった。

 

 鸚鵡さんが言うには、五十年ほど前に難破した船が島に辿り着いたそうだ。一ヶ月後には戻って行ったのだけれど、その一ヶ月間に難破船の船員さんたちが問題行動を起こしたらしい。

 島の生き物を食べるために殺したなら致し方ないけれど、鸚鵡の肉は不味いと食べ残し、他の動物や島に自生している果物や野菜を彼らは食べて生活していたようだ。

 サバイバル生活に慣れると暇を持て余したのか、綺麗な柄の入った鸚鵡を手あたり次第に捕獲し母国に帰っていったとのこと。その中には鸚鵡さんの番である旦那さんもいたそうだ。

 鸚鵡さんの番である旦那さんは、島で一番綺麗な柄の鸚鵡だったから執拗に狙われ捕らえられた。仔を成して次の世代を盛り上げようとしていた所だったとか……。難破船が島に辿り着かなければ、島には鸚鵡さんが沢山生息していたはずだし、旦那さんを連れ去られたことも根に持っている。

 

 「それは……ごめんなさい、としか言えないね」

 

 『だよね。どうにかならないかな、ナイ?』

 

 むーと難しい顔で私を見ながら問うクロ。

 

 「伝手のある国に問い合わせをするくらいしかできないかな……五十年前に難破した船の履歴が残っていれば大分絞れるはずだよ。でも鸚鵡って五十年も長生きするものなの?」

 

 個人でできることはここまでだろう。まあ、知り合いが国のトップにほど近い方ばかりと言うのが異常な状況であるのだが、こういう時には便利である。ある程度の対価を引き渡さなければならないが、五十年前の情報に価値があるのかは微妙な所だ。

 逆に何故その情報をと聞き返され、当事者の国があればばだんまりを決め込まれる方が面倒になりそうだった。

 

 「大型の鳥です。おそらく長生きしましょう。あと力が強い者であれば生き残っているかと」

 

 五十年は生きるし、それ以上長く生きる鸚鵡はいるそうだ。確かに木の上で訴えている鸚鵡さんは、五十年以上の時間を生きた記憶を持っているのだ。ダークエルフのお姉さんの言に嘘はないはず。

 

 『一目で良いから会いたいって言っているんだ。もしかしたらナイがどうにかしてくれるかもって言っちゃった……ごめんねえ』

 

 クロが翼を上手く動かして顔を隠す。反省するポーズを取る猿みたいだな、と一瞬思ってしまったが口にはするまい。

 

 「できることはやってみるけれど難しいかもね。島で捕獲された鸚鵡さんたちが見つかると一番良い報告かな? 船の船員さんたちは生きていない可能性もあるよって伝えて貰って良い?」

 

 とはいえ、仲間を連れ去られたしまった悲しさややるせなさは理解できるつもりだ。強い生き物が勝つ世界だから、見つからなければ鸚鵡さんに素直に『手掛かりはなかった、ごめんなさい』と言うしかない。

 

 『うん、ありがとう、ナイ。もう一回行ってくるね!』

 

 クロもお人好しと言うかなんと言うか。面倒見が良い所為で、苦労を背負い込んでいる気がする。でも、悪いことではないし、クロが以前ご意見番さまであれた証拠なのだろう。

 肩の上から飛び立って、鸚鵡さんの隣に並ぶ。なんだか鸚鵡より竜の方が小さいって違和感があるなと、しげしげと眺めながら復讐したいなら船員さんたちは生きていないか、かなりお年を召しているかだろう。……どうしたものかと考える。

 

 『攫われた仲間が戻ってくれば、それで良いって』

 

 クロが戻ってきて滞空したまま顔を見合わせ、話したことを教えてくれた。もしかして鸚鵡さんが人間をなじったのは、私たちの興味を引くためだったのかもしれない。

 鸚鵡って頭が賢いと聞くから、ああやって訴える方法を見出したのかも。まあ、八割くらいは本音だろうけれど。

 

 「そっか。アルバトロスに戻ったらみんなに聞いてみるね。フソウに赴くから、ナガノブさまには直接かな。出島に行けるなら、商人さんに手紙を託してミズガルズにも問い合わせできるはずだよ」

 

 真っ先にできることはこれくらいか。雪さんと夜さんと華さんの妊娠報告にフソウに赴くつもりが、他にも用ができてしまうなんて。

 

 『お願い。ありがとう、ナイ』

 

 「まだ結果は出ていないから。気が早いよ、クロ」

 

 クロが私の肩の上に乗って、ぐりぐりと顔を擦りつける。ちょっと痛いけれど期待の表れと思うと、頑張りますかと気が張るので不思議なものだ。

 

 「では先を目指しましょうか。果物が欲しいと言うことなので、もう少し歩くことになります」

 

 ダークエルフのお姉さんが体力は余っていますかと暗に問いかけた。討伐遠征でもっと険しい道程を歩くことがあるので、ジークとリンと私は問題ないし、ロゼさんとヴァナルと雪さんと夜さんと華さんも問題ない。幼竜さんはジークの肩の上で、興味深そうに島を見ているだけなので疲れていない。クロも私の肩の上にいるから問題なし。

 

 「私たちは平気です。九条さま方は大丈夫ですか?」

 

 「戦場を掛けるより楽なものです。それより我々の為に骨を折っていただき申し訳ない」

 

 九条さまたちは女性を歩かせることに抵抗があるようだが、異文化と思って諦めて下さい。鸚鵡さんの件で時間を押しているし行きましょうと促して、場を去って行く。鸚鵡さんにじーっと背を見られていたことなど露知らず。

 

 ダークエルフのお姉さんの案内によって、果物が群生している場所へと辿り着いた。彼女の説明を聞いてみると、この辺りを根城にしている鳥が好んで食べるものが果物のようで、フンから種が落ちて自生したとのこと。あまり見たことのない果物が沢山生えており、凄いなあと感心しながら周りを見ていた。でも、一番楽しんでいるのは九条さまたちだ。

 

 「これはなんだ!?」

 

 目を輝かせながら私たちに振り向いて問うてくる。ダークエルフのお姉さんが苦笑しながら、口を開いた。

 

 「ドラゴンフルーツですね」

 

 確か、見た目が竜の鱗っぽいからドラゴンフルーツと名付けられたと聞いている。竜と名の付くものだし、もしかしてクロも好きなのかなあと顔を見ると、尻尾をぱたぱたとさせて興味深そうに果物を見ている。ヴァナルと雪さんと夜さんと華さんも同様に、果物を見ていた。お腹を壊さないなら問題ないだろうし、味見してみようかと問いかけると嬉しそうに返事をくれた。

 

 「食べてみても良いだろうか?」

 

 「構いませんよ。木に成って熟れている果実が甘くて美味しいです。少しお待ちくださいね」

 

 九条さまとダークエルフのお姉さんが楽しそうに会話を繰り広げている。身長差が酷いけれど、九条さまたちは果物に気を取られてそれどころではない様子。食べられる果物を教えて貰い賞味して、姿形を絵に残し味を記録している。

 種は持って帰っても問題ないと大蛇さまから許可を取っているので、彼らは食べた物の種のみ持って帰るようだ。

 

 「持ち帰ったものが、どれかひとつでもフソウの気候に合えば良いのですが……」

 

 「気候の変化に強い種があると良いですね」

 

 九条さまが手に持っている種をしげしげと眺めながら、種を植えた未来はどうなるのかと思いを馳せるのだった。

 




 【お知らせ】ストックがなくなったので、明日8/21~9/1まで更新をお休みさせて頂きます。再開は9/2~の予定です。二巻の作業、頭を抱えながら進めております。面白くなっていると良いのですが……。
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