魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0404:声を掛けたい。

 学院の校門から校舎へと続く道をミナーヴァ子爵ご一行が歩いている。ミナーヴァ子爵を先頭に公爵令嬢と辺境伯令嬢を侍らし、直ぐ後ろには騎士科に所属する現役教会騎士の男女二人が控え、その後ろに警備の騎士が数名就いているのだ。子爵の横には無邪気に笑う男爵令嬢がいて、聖女仲間故に仲が良いようだ。

 学院で今一番飛ぶ鳥を落とす勢いのある人物で、平民聖女から貴族に成り上がった強者である。竜を従えると噂が流れ、実際に肩の上に小さな竜を乗せており否定できない。王都の子爵邸では幻獣が沢山住み着いているとも聞き及ぶが、一年生の身分に過ぎず、爵位を持たない俺には雲の上の人物であった。

 

 「なあ、ミナーヴァ子爵の婚約者って決まっているのか?」

 

 アルバトロス王立学院の一年の普通科に通い、直ぐに仲良くなった友が声を掛けてきた。彼もミナーヴァ子爵ご一行を眺めながら目を細めている。少々、気が強く豪快なところがあり、貴族としてどうなのかという振る舞いを見せる時がある。

 

 「聞いたことはないな」

 

 ミナーヴァ子爵が婚姻していると耳にしたことはない。噂好きな貴族社会だし、学院内は噂の好きな女子生徒が多くいる。子爵に婚約者がいるならば噂になっているが、そんな話は一切聞いたことがなかった。

 

 「子爵が卒業するまであと半年と少し……彼女の夫の座に就けたなら、一気に有名になれるな」

 

 「確かに名前は売れるけれど……」

 

 確かに……確かに名前は一気に売れる。けれど、どうやって彼は子爵と接触するつもりなのだろうか。学院内では付かず離れずの距離で、彼女の後ろ盾であるハイゼンベルグ公爵家とヴァイセンベルク辺境伯家のご令嬢が侍っている上に、護衛の騎士まで侍らせている。

 彼女が子爵になりたての頃、学院内で直訴をした人の二の舞だろう。学院を卒業した姉から話を聞いたのだ、直訴をした男子生徒は教会で名を上げているが、一歩間違えれば不敬だと首を刎ねられても致し方ない状況だった、と。

 

 「……無謀過ぎる」

 

 この一言に尽きるだろう。

 

 「分からないぞ。巡り合わせが良ければ、俺らでも空席に座すことができるかもしれん」

 

 そりゃ、凄い偶然が重なって子爵に気に入られれば、多少の可能性はあるかもしれない。だが、一介の生徒が鉄壁の守りを突き破ることができるのだろうか。それこそ直訴を敢行した男子生徒によって警備を厳重にされただろうし。凄く前向きな思考の友人の首が飛ぶと良い気はしないので、考えを改めさせるべく口を開いた。

 

 「無茶を言うなよ。ミナーヴァ子爵と婚姻を結ぶなら、もっと良い身分の男をアルバトロスか教会か、後ろ盾の二家が彼女に紹介するだろう。他国の王子を婿に入れることもあるんじゃないか?」

 

 アルバトロスと教会がミナーヴァ子爵を他国に嫁がせることはないはずだ。国を守る障壁を展開するための魔術陣に、週に一度魔力補填に赴いていると聞く。噂によると、筆頭聖女さまより補填の間隔が短いそうだ。

 

 「……他国の王子が婿に入るなんて、自尊心がずたぼろじゃないか?」

 

 「国の為と割り切れるなら、食いつく話だ。要するに野心家の君と同じだな」

 

 気の強い、自立心が高い王子であれば嫌がるかもしれないが、国の為と割り切れるならば最高の婚姻先だろうに。そりゃ、愛があるなら一番良い……言いたくはないが……言ってはならないが……子爵の容姿には色気が足りないのだ。可愛くはあるが。

 欲情できるかと問われれば、親戚の年下の女の子を見ているようで無理な気がする――って、目の前の男は可能なのか。だって貴族は次代を残すのが一番の務めであるし、婿に入るなら一番張り切らなければならぬことである。

 

 「なるほど。そう言われると理解できる」

 

 「諦めた方が身のためだよ」

 

 「何故?」

 

 「子爵の相手が務まるとでも? 子爵家だけの付き合いなら問題ないけれど、亜人連合国や他国のお偉いさんとも渡り合わなきゃいけないよ。その度量と愛想や愛嬌が君にあるの?」

 

 友人には申し訳ないがきっぱりと言わせて頂く。今気づいておかなければ、彼は破滅の道を歩むだけだ。しかも半年と少しと期間が短いので、目の前の男が暴走しやすい環境でもあるから。どうにも面倒な友人を持ってしまったものだと小さく息を吐いていると、背後に気配を感じた。

 

 「君たち! ミナーヴァ子爵のことが気になって、気になって仕方ないようだね。ならば『ミナーヴァ子爵を見守る会』に入らないかい?」

 

 俺たちに上級生が後ろから声を掛けてきた。眼鏡を掛けた真面目そうな二年生で、その後ろには数名の生徒を侍らしている。

 

 「は?」

 

 「あ?」

 

 一体何事だと俺と友人は短い声を揃えて出してしまった。爵位が上とか年齢が上とかいろいろと関係なく、つい声に出てしまったのだ。

 

 「気になるのであれば放課後、この場所で……――」

 

 上級生は俺たちの耳元でとある場所を告げる。人気の少ない校舎の一角で一体なにをするつもりなのだろうか。颯爽と歩いて行く上級生の背を見送りながら、友人と顔を見合わせた。

 

 「どうする、行くか?」

 

 「教師に話した方が良いな。俺はそのまま担任に報告するよ。君は先に教室に赴いてくれ」

 

 友人に放課後に赴くかどうかを問われるが保留にしておいた。子爵のあずかり知らぬ所で妙な会合が開かれていると知れば、良く思わないだろう。子爵本人に伝えるには面識もなにもない俺では無理なので、正攻法で教諭陣、ようするに学院を頼る他ない。

 

 「教師に告げ口をするつもりなのか?」

 

 「なんと言われようとも構わないよ。問題が大きくなるより良いさ。それにね、教諭たちに問題視されていて今日の放課後に取り締まりがあれば、俺たちの立場が悪くなる」

 

 俺の言葉を聞いた友人は難しい顔になる。どうやら事の深刻さに気付いたようで反論する気はないようだ。行こうと促して友人は普通科の教室へ、俺は職員室を目指す。

 

 「失礼します」

 

 暫く歩いて、職員室の扉を抜ける。担任教諭の机はどこだときょろきょろと顔を動かせば、机に座して今日の授業の準備をしていたのを見つけることができた。

 

 「先生、話があり訪ねて参りました」

 

 「どうした、真剣な顔をして……ここでは言い辛いことか?」

 

 教諭は椅子に腰を下ろしたまま俺を見上げ、顔色を判断してくれた。気遣いのできる人は有難いと感謝し、部屋を移動することを願い出る。そうして職員室の隣にある小さな部屋に赴いて、先ほどのことを洗い浚いぶちまけた。

 

 「……お前はミナーヴァ子爵を見てどう感じている?」

 

 「どう、ですか。単純に凄いくらいにしか……平民聖女でありながら、子爵位にまで上り詰めた傑物でしょう。実力も運も兼ね揃えていた結果かと」

 

 教師に問われたことを素直に答えた。力がなければ成り上がれなかっただろうし、運がなければ誰かに潰されていたはずだ。貴族社会はそこまで甘くはなく、欲深い者が子爵を潰していてもおかしくないし、利用していたかもしれない。

 現に聖女を貴族へと格上げしたことで、アルバトロスから利用されているが、同時にアルバトロスの庇護下にある。頭の回転が良いならば、益を齎せば守ってくれると子爵も気付いているだろう。

 

 「そうだな。で、だ。その手の人物に厄介事は付き物だと思わないか?」

 

 「大変でしょうね。現に『ミナーヴァ子爵を見守る会』なるものが存在しているようですし」

 

 厄介事が降りかからなければ聖女のままであっただろう。一学期は何故か北大陸のミズガルズ神聖大帝国から皇女殿下方が留学をし、交流を持っていた。詳しくは知らないが、子爵はミズガルズへ赴いていたと小耳に挟んでいる。

 彼女が一年生の時も、二年生の時もいろいろとあったと聞いているのだから。それにしたって……ミナーヴァ子爵を見守る会とは一体どういう存在なのか。

 

 「学院で騒ぐくらいなら些末なことだ。もっと大きな視点で見てみなさい。君であれば考えられるだろう?」

 

 教諭が真剣な瞳を俺に向けてくる。各国から小さな話から大きな話まで舞い込んでいる可能性もある。子爵の婿が不在というならば、狙っている国も当然あるだろうし、聖女として利用したい国もあるのだろう。確かに学院内での騒ぎくらいなら些末なことかもしれない。

 

 「まさか……学院は『見守る会』を容認していると?」

 

 「ああ。子爵にも存在を話して許可を頂いている。学院の生徒は彼女に声を掛けられないことで不満を抱える者もいようと、大事にならない限りは我々も子爵も目を瞑る、とな」

 

 まさか子爵本人まで知っているとは……。でも、学院側も隠して運営させるわけにもいかないし、駄目だと言われていれば取り潰ししていたはず。不満を緩和させるためにワザと容認しているのか。あと少しで子爵は卒業となり、自然に消滅する会である。

 

 「知らせにきてくれたお前さんなら、無理や無茶はすまい。もし暴走しそうな奴がいたり、会自体が逸脱するようなら私に教えてくれ。頼んだぞ」

 

 待ってください。どうして俺が見守る会の動向を見守らなければならないのでしょうか。とばっちりのような気がするのだが、先ほどの友人も気になっているようだし、見守る会の者たちと意気投合して暴走しても困るだけ。ならば俺は監視役として見守る会を見守る役に徹した方が良いのだろうと、教諭の言葉に頷いて内申書を良く書いて貰うようにと取引した。

 

 ――放課後。

 

 友人と共に人気の少ない校舎に入る。とある部屋の扉の前、息を一飲みしてドアに手を掛けて中へと進む。するとどうだろう。男ばかり集まっているのかと思いきや、女性も多く参加している。

 男子生徒は婿候補や伝手ができないかと狙い、女子生徒は可愛さで見守りたい、愛でたい派と、子爵とどうにか縁を持ちたいと願っている派がいた。大丈夫かと心配になりつつ、教諭からの頼まれ事を遂行するために輪の中へと加わるのだった。

 

 ◇

 

 漆黒のドラゴンに会ったのは偶然だったのか、神が俺に与えた幸運だろうか。

 

 黒髪黒目の容姿を持つ少女、アルバトロス王国のミナーヴァ子爵が俺とプリエールと面会したのが二週間ほど前である。会談の場でしゃしゃり出たことを父親からしこたま怒られ、部屋で反省していろと自宅に監禁状態だった。

 

 ようやく解放され共和国の首都中心部をウロウロとあてもなく彷徨っていたところ、小さな漆黒のドラゴンに出会った。人気のない路地裏で俺の方を向いてじっと見ており、何故か不思議と惹かれてしまい、いつもは立ち入らない危険な路地裏へと足を踏み入れた。

 

 「ドラゴン……? 蜥蜴じゃなく?」

 

 血生臭い臭いの立つごみ箱の上で、俺の言葉に反応したドラゴンが小さく首を傾げる。確か前世で姉が乙女ゲームの違うシリーズにドラゴンや魔物が沢山出ており、世界観も繋がっていると言っていた記憶が微かにある。

 黒髪黒目の少女も肩の上にドラゴンを乗せていた。もしかして俺も目の前のドラゴンと仲良くなるか従えることができれば、一躍有名になれるのでは。

 この世界にはインターネットが発達しておらず通信機器さえお粗末だが、前世の選挙だって有名人が知名度で議席を得ることがあるのだから、有名になれるのであれば政治家への道が明るくなる。

 

 『蜥蜴とは心外だな。俺の魔力を感じ取れないのか?」

 

 ドラゴンが目を細めてごみ箱の上から俺を見る。逃げる気配は全くなく、俺くらいならば一捻りできる自信があるのだろう。ドラゴン、だしな。

 

 「喋れるのか……凄いな。魔力という言葉を聞いたことがあるが、共和国では扱える者がいない」

 

 この機を逃す訳にはいかないと、目の前のドラゴンの機嫌を損なわないように会話を広げてみた。黒髪黒目の少女との再接触は難しいので、どうにか別の道をみつけるか、これを足掛かりにして……そうだ。

 黒髪黒目の少女はドラゴンや鸚鵡に優しい。小さなドラゴンを保護していると共和国政府からアルバトロス王国へ打診して貰えば、ミナーヴァ子爵へと話が舞い込むのではないだろうか。共和国も黒髪黒目の少女との縁は取り持ちたいはず……――一筋の光が差したような気がした。

 

 『ふむ。魔力は全ての生きる者に大なり小なり宿るものだ。お前の魔力は大したことはない。だが教えれば、多少は扱えるようになるかもしれないな』

 

 「俺が魔力を扱えるのか?」

 

 ドラゴンは悠長に首を傾げた。薄暗い路地裏の一角。飢えたホームレスが俺たちを襲っても良さそうだが、気配は一向になく周りは静かである。

 

 『ああ。まあ才能と努力次第だ』

 

 魔術や魔法を扱えることは男の浪漫である。

 

 もし魔術を扱えるようにならば、プリエールは俺を見る目が変わるだろうか。俺は彼女と明るい未来を幸せに歩みたい。なのに彼女は、黒髪黒目に意見した俺を止めたのは何故だろう。

 俺の提案に乗りアガレス帝国に行くことを了承したのに。俺の言うことは全て受け入れてくれていたのに……嫌な記憶を打ち払い、目の前のことに集中する。この機会を逃せば、次のチャンスはいつ巡ってくるか分からない。

 

 「そうか。なあ、アンタはドラゴンだろう。空を飛べるんだよな?」

 

 もしかすれば黒髪黒目の少女を知っているかもしれないと、自然に話題に上るように下準備をする。

 

 『勿論だ。東大陸も西も北も南も渡ったな――西以外、魔素が少なくて興味はないが……この国の魔素が最近上がったからきてみたが』

 

 俺の質問に答えたドラゴンの声がだんだんと尻すぼみになっていった。最後の方は聞き取れず、一体なにを言いたかったのだろう。

 

 「すまん、聞き取れなかった」

 

 『気にするな。大したことは言っていない。それより、どうした? なにか興味があることでもあるのか?」

 

 興味、か。ならもう直接聞いても良いだろう。

 

 「少し前、黒髪黒目の少女と会ったんだが、黒髪黒目の人間をアンタは見たことはあるか?」

 

 もしアルバトロスのミナーヴァ子爵以外に黒髪黒目の者がいるなら、そいつでも構わないんだ。女の方が女神の生まれ変わりとして奉られるが、男でも一応女神の生まれ変わりとして扱われるそうだ。まあ、黒髪黒目の女が産まれないので、緊急的な扱いなのだろうが。

 

 『西大陸のアルバトロスで一人、見たことあるな。白銀の竜を肩の上に乗せていたぞ』

 

 「まさか、ナイ・ミナーヴァ?」

 

 『名前までは知らんよ。ただ遠目に見たことがあるだけだ。凄い魔力の持ち主だったからな、そりゃ竜も懐くわけだ』

 

 やはりこの世界において黒髪黒目は希少であり、東西南北の大陸を知るドラゴンでさえアルバトロスのミナーヴァ子爵しか見たことがないようだ。目の前のドラゴンがどれくらいの時間を生きているのかしらないが、流石に十年、二十年ということはあるまい。

 

 「アンタは興味がなかったのか?」

 

 ドラゴンが懐くというならば、何故目の前のドラゴンは懐かなかったのだろうか。孤高の厨二病を患っているわけでもなかろうにと首を傾げた。

 

 『群れるのは好きじゃないからな』

 

 「そうか。なあ、俺はアルバトロスのミナーヴァ子爵……黒髪黒目の少女にもう一度会いたいんだ」

 

 少々ドラゴンから厨二病の気配を感じつつ、俺の願いを口にする。俺の父のように『黒髪黒目の少女を無下に扱うな』と怒るだろうか。

 

 『会ってどうしたいんだ?』

 

 「会って、とりあえず話をして説得する。共和国の差別解消のために一芝居打って欲しいと。共和国内であれば黒髪黒目の言葉は絶大に効果がある」

 

 ミナーヴァ子爵には内政干渉になると言われたが、言葉を齎すだけで良いのだ。差別を解消するように動くのは共和国政府で動けば良い。黒髪黒目の言葉があれば、ゲーム通りに上手くいくはず……! 俺は自然に歯を食いしばっていた。

 

 『面白いなあ……そんなことで簡単に差別が解消できるのか? 黒髪黒目の言葉より、魔術を覚えて洗脳でも施した方が早かろうよ』

 

 「せ、洗脳って……! あ……」

 

 俺、姉がプレイしているゲームを横で見て、洗脳じみているとぼやいていたな。どうして黒髪黒目が告げた一言で共和国に住む多くの者が差別を止めようと心を入れ替えたのか。

 黒髪黒目が言霊使いであれば、洗脳されてもおかしくはないし、凄く納得できる理由となってしまう。ドラゴンの言う通り、魔術で洗脳を施した方が早いのではと、心の俺が俺に囁く。

 

 「なあ、俺に洗脳の魔術を教えてくれるか?」

 

 心の声に靡いてしまった。でも後悔はしないと、ドラゴンを真っ直ぐ見据える。

 

 『構わんよ。対価をくれるなら、な』

 

 「学生の俺に払える金はない。だが父親の後を継げば、それなりの金が入るはずだ。それで良いか?」

 

 父の跡目を継ぐのままだ先ではあるが、ドラゴンは長生きすると聞くし多少は我慢して貰わねば。

 

 『竜に金は必要ないのだが……まあ、なにも提示しない者よりマシだな。分かった。俺が魔術を教えてやろう。だが今日は時間切れだ。お前の魔力の波長を覚えたから、また会おう』

 

 そう言い残したドラゴンはごみ箱の上からゆっくりと羽ばたき、空の上へと飛んで行く。ドラゴンの言葉を信じて良いのだろうか迷うが、俺が取れる道は限られている。

 正攻法で政治家となり共和国民の意識をゆっくりと変えていくよりも、魔術を覚えて洗脳した方が早い。俺の魔力は少ないと言っていたから、共和国民全員には施せないだろう。ならば、共和国政府の重要ポストに就く人物を洗脳できれば……。ゲームの黒髪黒目の少女もたった一言で意識を変えたのだ。そんなチートを持っているのならば、俺にだってチートがあっても良いじゃないか。よし、と拳を握り帰路に就いた。

 

 ――数日後。

 

 自室の窓を叩く音で目が覚める。窓を見ると黒い小さなドラゴンが器用に滞空飛行をしながら、俺に視線を合わせた。急いでベッドから起きて窓を開けると、部屋へと舞い込む黒いドラゴン。

 机の上に降り立って『魔術を教えにきた』と律儀に口にした。ドラゴンは暇を持て余しているそうで、俺に魔術を教えるのは気まぐれだとか。俺は気まぐれでもなんでも良いから、藁をもすがる思いで魔術を教えて欲しいと頭を下げる。

 俺が下手に出たことにドラゴンは気を良くして、胸を張り魔力について語り始める。この世界に生きている者には大なり小なり宿るもので、放出型と体内循環型に分かれ、放出型であれば魔術を使用できるとのこと。俺は運良く魔力放出型で『洗脳』であれば、扱えるだろうとドラゴンが言った。

 

 「よろしく頼む」

 

 『分かった。俺も人に教えるのは初めてだからな。実験台になってくれ』

 

 どうやらドラゴンは誰かに手解きするのは初めてらしい。それでも一時間ほどで初歩的な魔術を使えるようになったのだから、俺に才能があるか、ドラゴンの教え方が上手いのかどちらかだろうと、本命の洗脳魔術について教わるのだった。

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