魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
筆頭聖女選定の儀が執り行われることになり覚悟を決めたものの、教会の皆さまがあーでもないこーでもないと協議しながら適任者を選出するだけなので候補者は日常を送るだけである。選定を受けたのはロザリンデさまとアリアさまと若手の聖女さまがあと二人に、そして私という計五名の聖女さま。みなさま王都の教会所属で、他領からの選出はされなかったようだ。
アリアさまとロザリンデさまはどうしてご自身が選ばれたのか不思議でならないようだが、王太子妃殿下の妹殿下の怪我を治しているし、リーム王国で聖樹に魔力を注ぎ込んでいるし、フライハイト男爵領の魔石鉱脈を発見しているからだろう。
十分に選ばれる理由になるのだが、お二人は私の功績に対して小さすぎるものだと苦笑していた。私が聖女として起こした功績と政治の部分で起こした功績は切り分けて欲しいけれど、一緒に評価されたようだ。筆頭聖女決定の発表は一年後となるので、審査期間が結構設けられていた。どうなるのか分からないけれど、真面目に聖女として働いていれば、周りの皆さまが評価を下してくれるから結果を待つだけだ。
学院を卒業して一ケ月が過ぎていた。
最近の私は王都の子爵邸で領地の書類仕事を片付けつつ、ロゼさんの転移で子爵領に赴き新たな開拓地を考えたり、溜池の運用方法とか、領内で見つけた魔力持ちの方の将来の道筋を考えたりと私の脳味噌が割と忙しい。お城の魔術陣へ赴き、一週間に一度の魔力補填はこなしているし、共和国の研修生が受けている授業にも顔を出している。
物理的なお仕事は午前中で片付くので、肉体的な疲れはない。家宰さまいわく、午前中の仕事さえ確り済ませれば貴族として十分にやっていけるそうだ。
だから私が考えていることは趣味とか自己満足の領域で、普通のお貴族さまには珍しいタイプなのだとか。領地は先代から受け継いだものを維持管理するだけなのが大半の方で、領地の発展を願うタイプの方は珍しいとのこと。自分が所領しているのだから、領地を豊かにして収入が増えるようにと考えそうなものだけれど……まあ、運営が安定してお金が貯まり新規事業に手を出して失敗し大借金を背負う方もいるそうだから、その手には嵌らないように気を付けよう。
今日はC国の使者が訪れて、ジークとリンに邪竜討伐の褒章授与式が執り行われ、同時に二人の叙爵式も執り行われる。アルバトロス城の謁見室前の控室でいつもよりビシッと決めているジークとリンの装いににやりと笑い彼らを見上げた。
「緊張するな……」
「ね」
ジークとリンはそう言うけれど、あまり顔に出ていない。二人が肩の上に乗せている幼竜さんと仔竜さんが、顔を寄せてぐりぐりと機嫌良く二人の顔に擦り付けている。一緒に控室で授与式の開始を待っているソフィーアさまはジークとリンを見て苦笑いを浮かべているし、セレスティアさまは羨ましそうな視線を向けて無言であった。
「叙爵式は他の方も参加するって聞いているから、誰だろうね」
予定を聞くと他の方も叙爵すると聞いている。領地持ちのお貴族さまではなく、法衣貴族さまとなるらしい。ということはジークとリンのようになにか功績を築き上げた方となるのだが、そんな話を耳にしたことはない。爵位を受けるのは私ではないし、叙爵する方が誰なのか気楽に見届けるだけである。私の言葉にソフィーアさまが顔を向けて言葉を紡ぐ。
「さあ、な。ジークフリードとジークリンデの名前は王都の民の間で随分と噂が流れているそうだ。竜使いの聖女さまの命により、闇に落ちた邪竜を難なく倒した英雄だと、子供たちの間で人気になっているし大人たちも酒の肴にしているそうだ」
「……」
「…………」
ソフィーアさまの話を聞いたジークとリンが微妙な顔になる。娯楽の少ない世界では噂の流れは早く、一気に広まったことだろう。他国からの褒章授与と叙任の話で更に盛り上がるだろうし、二人の名前が売れるなら良いことである。今回は私が功績を賜ることはないので、妙な顔を浮かべているジークとリンに頑張れーと気楽に声を掛けるだけ。
「A国の王族もこちらにきているから、浄化の依頼が入るかもしれないな」
「過去の血族の失敗をナイに拭わせるのですか。それは如何なものかと思いますが……ナイ、失敗するのも一つの道ですわよ?」
ソフィーアさまとセレスティアさまの言葉を聞いて考える。A国の方がアルバトロス王国入りしているというなら、確かに浄化依頼をする可能性は高い。受けるか受けないかの判断は教会とアルバトロス上層部が決めることだから、浄化依頼の経緯を聞いて断る可能性もある。まだ少し先のことになりそうだとお二人と視線を合わせた。
「聖女の匙加減でできてしまいますから、一つの選択肢ではあります。でも失敗すると無駄に終わってしまうので、できることなら成功させて寄付を沢山頂いて、領地の開拓費に充てたいですね」
本当に失敗する可能性も十分にあるから、なんとも言えないが……依頼相手が気に食わないとか報酬金額に納得できないなら、術をワザと失敗させることもできる。もちろん聖女側には失敗したというレッテルが貼られるために、損得を計算をしてから行う方が無難だけれど。
「ナイもようやく当主の自覚が芽生えておりますね。以前ならやりたくないと仰っていましたが……がめついと言ってしまうと元も子もないですが、強かな部分もなければ貴族としてやっていけませんもの。良い心構えかと」
セレスティアさまが言いきると、待機部屋にノックの音が響いた。護衛の近衛騎士さまが取次ぎをしてくれ、やってきたのは宰相閣下だと教えてくれる。入室を断る理由はなく部屋に入って構わないと許可を出すと、開いた扉から宰相さまが現れた。
「失礼致します。ミナーヴァ子爵、少し話があります」
「はい、どう致しましたか?」
宰相さまが神妙な顔で私の前に立つので、身構えてしまった。なにか面倒なことでも起きているのだろうかと不安になってくる。
「急な話で大変申し訳ないのですが、叙爵式の際にミナーヴァ子爵にも賜って頂きたく、陛下の命を受けお知らせに参りました」
私の叙爵はまだ先だと考えていたのに、このタイミングで賜るのかと宰相さまの顔を見る。アガレス帝国のウーノさまの戴冠式が七月の頭に執り行われると通達され、それまでに私の爵位を上げておきたいとのこと。私の功績を考えると子爵位のままはあり得ないし、現在の位のままでいるとアルバトロス王国がケチだと評されてしまう。そんなことまで考えなければならないのかと目の前の彼を見つめて口を開く。
「承知致しました。叙爵式にわたくしも参加させて頂きます」
爵位が上がることは陛下から教えて頂いているので、どのタイミングで叙爵式を執り行うのかは不明だった。先延ばしにされるよりも良いかもしれないと、小さく礼を執りながら考えた。
「本当に急な話で申し訳ない。アガレス帝国から先ほど連絡が入りましてな。おそらくミナーヴァ子爵にも個人的な知らせが届いているかと」
「ウーノ殿下とは戴冠式に出席のお誘いを以前に受けておりましたので問題はありません。爵位が上がることも陛下から事前に知らせを受けております」
遅いか早いかの違いだけで、やることは同じであると宰相さまに告げると、彼はにこりと笑みを浮かべて部屋から去って行った。私が決められることではないし、アルバトロス上層部にも事情があるのだろうとみんなの顔を見る。
「おめでとう、で良いのか……?」
「ナイの功績を考えれば当然」
ジークは私がこれ以上の爵位を望んでいないことを知っているためか、微妙な雰囲気だった。リンは私が今までやってきたことを評価している上に、現在の子爵位では足りないと判断しているらしい。
もし仮に私が今までやってきたことを誰かが成し遂げていたならば、確かに子爵位では足りないのだろう。西大陸どころか、東と北と南大陸の国と繋がりを持つことができた。亜人連合国とも平和的外交を築いているし、奇跡的なできごとであると手放しに褒め称えているはず。竜を肩に乗せている人間なんてみたことがないし、フェンリルと天馬と喋るスライムと仲が良く、最近グリフォンさんも居着いて卵を托卵されている。
お屋敷には妖精さんも住んでいるし、猫又さんもいらっしゃる。領地では育てた農作物の収穫量が上がっているのだから、どう考えても子爵位では足りない……拒否してしまうと、アルバトロス上層部の皆さまが困るなあと客観視できてしまった。
「急いている気もするがな……まだ法衣か領地貴族を賜るのか分からないが、ナイであれば良き領主となれるはずだ。責任が重くなっても、それに押しつぶされる口ではないのは知っている。私たちは全力でナイを助けるから安心して叙爵すれば良いさ」
「ええ。新たに賜る爵位に恥じぬように、ナイを全力で手助け致します。魔獣と幻獣の皆さまにも出会えますし、最高の職場ですわ!」
ソフィーアさまは三年間の付き合いで私のことをいろいろと理解したのだろうか。新たに叙爵したことにより責任や背負ったものに対して潰れることはそうそうないだろう。私を支えてくれる方たちが優秀なので失敗する未来が描けないのが原因だけれど。
支えてくれるというのであれば、私も領主として踏ん張らなければとソフィーアさまに視線を合わせて小さく頷いた。セレスティアさまは少々欲望が駄々洩れしているけれど、侍女としてのサポート役は完璧に済ませてくれるので優秀な方である。どんな時にも前向きな言葉で鼓舞してくれるので有難いし、クロたちのお世話も積極的だ。そんな方に最高の職場と言われるなら悪い気はしないので、これからも頑張ろうと思える。だから彼女とも視線を合わせて小さく頷いた。
再度ジークとリンとクロたちに視線を向けて、これからもお願いしますと告げれば近衛騎士さまが私たちを呼びにくる。
「そろそろお時間です」
さて、ジークとリンの褒章授与式が始まると、謁見場へみんなと一緒に歩いて行くのだった。
◇
謁見場には多くの方が集まっていた。公爵さまと辺境伯さまとラウ男爵さまにアルバトロス上層部のお偉いさん方が、大きな部屋の両端にズラっと並んでいる。私は一旦、ジークとリンと別れて公爵さまと辺境伯さまの横に並んだ。公爵さまが私に気付いて視線を下げる。
「おや、ナイ。フェンリルの仔たちはどうした?」
不思議そうな顔で問いかけてきた彼を見て、登城する前の自室で起きた光景が頭の中で再生される。
「影の中に入っています。グリフォンさんたちと屋敷に残るか、私の影の中でヴァナルたちと一緒に過ごすかどちらか選べとなったのですが……――」
毛玉ちゃんたちはいつものように部屋で自由に行動していたけれど、私たちがお城に赴くと雰囲気で察したらしい。五頭でじゃれ合っていたのを止めて、お行儀よく並んで『行こう』という言葉を待っている。
そしてベランダに出て、庭で過ごしているエルとジョセ一家と番の竜さんたちとグリフォンさんに留守にするので、留守番をお願いしますと託した時だった。前はグリフォンさんも一緒に登城していたから、毛玉ちゃんたちは彼女も当然一緒だと考えていたらしい。
こないと理解して鼻をひゅんひゅん鳴らして『どうしてグリフォンは一緒じゃないの?』と訴えている。事情が伝わるか分からないけれど、影の中に入れないグリフォンさんは屋敷でお留守番を務めるよと私が言えば、ベランダから毛玉ちゃんたちがぽんと飛び降りてグリフォンさんをお迎えに行った。困り顔のグリフォンさんと、余裕な顔のヴァナルと雪さんたちの間と私の間を毛玉ちゃんたちはそれぞれ行ったり来たりして、どうすれば良いのか分からず行動で訴えていた。
で、グリフォンさんたちと一緒に屋敷でお留守番をするか、私の影の中でヴァナルたちと一緒に過ごすか……どっちにすると毛玉ちゃんたちに問い掛けると、迷った末に五頭が私の影の中に入った次第である。
一応、毛玉ちゃんたちがお城で自由に過ごせる許可を頂いているのだが、流石にずっとという訳にはならないので、ヴァナルたちと相談をした上で影の中で過ごすことにしたのだ。ヴァナルと雪さんたちの説得により外に出ることを我慢している最中だ。お城から戻ったら沢山遊ぼうねと約束しているので、私の体力が持つのか心配だけれど。
「仔育ては大変だな! ヴァレンシュタインが喜んでおるし、仔守りの人手が足りぬなら手配するぞ?」
公爵さまが豪快に笑って副団長さまの名を呼んだ。副団長さまも魔獣と幻獣の研究と称して子爵邸に足繫く通い、天馬さまの生息分布図の作成を済ませ、今度はグリフォンさんの生息分布図を作りたいらしい。
卵さんの観察も続けているし副団長さまに休息という名の概念は存在するのか、前から疑問を抱えている。一応、副団長さまがこれない時は代わりの魔術師さんが子爵邸にやってくるので、きちんとお休みは取っていると信じたい。
「今は大丈夫です。預かっている竜さんたちも大人しいですし、毛玉ちゃんたちも元気いっぱいですが言葉を理解してくれています。グリフォンの卵さんが孵った時にどうなるかで判断させてください」
私は最後にありがとうございます、と言葉を付け足す。人間の言葉を理解しているし、手が掛かる時はみんなが助けてくれるので大丈夫である。
「分かった。友好的な幻獣と魔獣が増えるのは問題はない。グリフォンの卵が二つに増えたと報告で聞いたが、もっと増やしても良いんだぞ?」
くくく、と笑った公爵さまが恐ろしいことを仰った。これ以上増えると子爵邸内が大変なことになりそうなので勘弁してください。人口比率が幻獣の方が多いお屋敷って一体どんなお屋敷なのだろうと問い質したくなるのだから。私の背後でソフィーアさまが『無茶を言わないでください』という雰囲気を醸し出し、セレスティアさまが『国の公認を頂けましたわ、ナイ!』と歓喜していそうである。
「周辺国はなにも仰らないのですか?」
少し前のヤーバン王国のように、グリフォンを返せなんて難癖を付ける国が出てきてもおかしくはなさそうだ。まあ、ほとんどのみんなが言葉を扱えるので、話し合いの場が用意されれば問題なく解決するはず。
「アルバトロスに文句を付けたならば、それはただの嫉妬だな。増やしたいなら自国で魔力の多い者を探し、魔力を放出させて魔素を高めれば良いとヴァレンシュタインが言っていたぞ。成功するかは未知数だと嬉しそうな顔で最後に言葉を付け足したがな」
公爵さまは強気だけれど、問題が起きた時は凄く頼もしい。ご自身が国軍を預かる身だから余計に好戦的なのかもしれないが。他国との争いになると、いろいろな所に被害が出るので勘弁願いたいが、もし争いとなれば私も領主として戦力を供出しなければいけない立場だなとふと思い至った。
もしかして、公爵さまはその辺りも加味しているのだろうか。子爵家の戦力ってジークとリンと私が筆頭で、お願いすればロゼさんとクロとヴァナルは確実に参戦してくれる。雪さんたちは他国の方だから話が拗れそうなので、お留守番が無難だけれど、エルとジョセ一家も話に納得できるなら『加勢致します』なんて言い出しそうだから、争いは良くない。
「無駄話はここまでか。そろそろ始まる。ジークフリードとジークリンデの晴れ舞台だ。二人の主として確りと見届けてやれ」
「はい。もちろんです」
公爵さまに私が返事をすると、クロが『良かったねえ』と顔をすりすりとくっつけてきた。ジークとリンは私にずっと騎士として付き従ってくれていたのに、私が功績を全部搔っ攫う形だったので、今回のC国からの褒章の申し出は有難いものだった。
二人は少し困っていたけれど貰えるものは貰っておこうというスタンスだし、法衣の爵位を賜ることができたので教会騎士のお給金の他に別口で収入が増える。騎士のお給金だけでも十分にやっていけるけれど、危険に身を投じる身だから職を辞す時もあるだろう。今回の叙爵は一生分保証されているので安心だ。
――陛下、お成り!
謁見場に大音声が響くと陛下と妃殿下に王太子殿下と王太子妃殿下、第三……第二王子殿下と第一王女殿下が一緒に現れた。
王族の皆さまが総出だなあと壇上を見上げていれば陛下が今回の謁見が開かれた目的を説明して、次はC国国王陛下の名代が謁見場に登場して、彼の後ろには箱を抱えた数名が後ろを歩いている。そういえばA国の方々はどこにいるのだろうか。関係がないから待機しているのかなと、視線だけをきょろきょろと動かしてみるがA国の人は見当たらなかった。
「ジークフリード・ラウ、ジークリンデ・ラウ、入場!」
ジークとリンが正面の大扉から姿を現した。いつもと変わらない感情を読み取り辛い顔で長い手足を動かしながら、赤い絨毯の上を進んで行く。彼らの肩の上には幼竜さんと仔竜さんが乗っており、竜さんたちは『キリ!』と顔を引き締めて胸を張っていた。
可愛いなあとクロの顔を見ると『可愛いよねえ』と視線で訴えてくれる。そうしてジークとリンはC国の使者さんの横に並んで、彼の国からの褒章を受け取ることになった。
褒章の内容は金一封と勲章の授与である。竜を倒したということで金額はかなり大きいもので、竜を退治すれば冒険者ギルドでも同等の額を受け取れるのだろう。暴れる竜さんが少ないので受け取る機会は稀であるし、人間が対処できなければディアンさまとベリルさまが出張ってくれるので更に報酬を受け取る機会が少ないけれど。
そうして褒章授与式を終えて、ジークとリンと再度合流を果たす。
「緊張した?」
ふう、と息を吐いているそっくり兄妹の顔を見上げる。
「慣れていないから少しな」
「少しだけ。お金、どうしよう?」
顔には全然表れていなかったけれど緊張はするみたいで、授与式が無事に終わって安堵しているようだ。受け取った報酬はかなりの額になるし、法衣の年金も受け取るから個人でお金の管理は難しいかもしれない。
銀行と同じようなシステムがあるものの、くすねられることもあるし現金の管理は自分が行うものというのが前提である。リンが妙な顔を浮かべて、受け取った報酬をどう管理すれば良いのか考えあぐねているようだ。
「手元の管理が難しいなら子爵家に預けるか? ジークリンデとジークフリードが信頼してくれているなら、という前提だが」
「貴族位を賜るので全て自分のもの、というわけには参りませんしねえ。ジークフリードさんとジークリンデさんの考え方次第ではありますが、寄付活動を行った方が周りからとやかく言われませんわ」
ソフィーアさまとセレスティアさまが助言をくださった。ジークとリンもお貴族さまの仲間入りとなるから、社会貢献をしなくてはならない。もちろん強制ではないが、やっているのとやっていないのではお貴族さまからの目の向けられ方が違う。
教会や慈善団体に寄付するのは慣例となっているので、やらないと白い目でみられるわけだ。もちろん、お金に困窮しているお貴族さまは渋るし、ケチなお貴族さまも出し渋る。
「二人の財産が私にバレバレになっちゃうけれど……お金の管理は個人だと大変だからね。判断はジークとリンに任せるから、候補の一つとして考えておいてね」
二人のお金を預かるようになるなら、報告書でいくら預かっていくら引き出されたと目を通すようになる。なので二人の預金額が私にバレるし、家宰さまとソフィーアさまとセレスティアさま辺りには確実に知れ渡る。
「自分の手元で金を管理するのは不安がある。ナイに任せても良いか?」
「ナイが私が持っているお金の額を知っても問題ないよ。お願いします」
ジークとリンはあまり気にしていないのか、あっさりと子爵家にお金を預け入れることになるのだった。怒涛の一日ではあるが、次は叙爵式だなあとみんなと顔を合わせる。
ジークとリンが賜る爵位を私は知らない。楽しみにしている部分があるので、可能であれば叙爵式まで知らせないで欲しいとみんなに相談していた。
流石に伯爵位はないだろうから、騎士爵から子爵位までとなるのだが……さて、二人のことを冗談で『卿』と呼ぶ機会はあるかなと笑い、そういえば私が賜る爵位ってどうなるのだろうと首を傾げるのだった。