魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
――人が二人集まれば争いが起こる、というけれど。
まさか、既に兆候が出るとは意外なことである。共和国の研修生がプリエールさんのグループともう一人の女性のグループに分かれ、二グループが形成されていた。
貧しい方とお金持ちの方に分かれていると、はっきりと分かってしまうのが悲しい所だが、事実として共和国には差別があるのだから分かれるのは仕方ないと目を瞑っていた。水と油が交わるのは難しく、お互いに関わらず一定の距離を置くだろうと私は考えていて、喧嘩になって分かり合える可能性もある……なんて甘く見ていたことが裏目に出たのだろうか。
建国祭まであと一ケ月を切った頃、子爵邸の執務室でソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまが微妙な顔を浮かべながら報告を下さった。
どうやら富める方々のリーダー格の女性が問題発言をして、事態を重く見たプリエールさんが教会と共和国に相談を持ち掛け私の下まで報告が上がった。報告に上がった彼女が私に接触を試みようとするかもしれないから、気を付けて欲しいというものだ。今はまだ研修生グループの中で留まっているため様子見するとのこと。
とりあえず、研修生全員にお貴族さまと平民の差について確りと教育を施し、共和国の代表としてアルバトロス王国にきていることを忘れるなと伝えたそうだ。共和国の監督者は平謝りをしていたそうで、少々気の毒だったとのこと。
「……私に目を掛けて欲しいって言われても……無理なのでは?」
そもそも問題発言をした女性に対して抱いている私の価値は、研修生十名の中の一人という認識しかない。プリエールさんであれば鸚鵡さんの件があるので、いろいろと聞きたいことや話したいことがある。
治癒魔術についても問われれば答えるし教えるけれど、こればかりは先生役と生徒役の間で合う合わないがある。いろいろと試して自分で良い術式を見つけたり、やり易い方法を見つけるのが一番だと考えるが、問題発言をした女性はどう考えているのだろうか。仮に私が彼女に目を掛けたとしても、得することはないはずなのに本当に不思議である。
「無理かもしれないが、ナイが声を掛けて相手をすることがあるだろう。黒髪黒目信仰があるならば声を掛けられただけでも嬉しいのだろう」
「そして他者に自慢する、と言うわけですわね」
「女性らしいですねえ」
ソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまがなんとも言えない顔で声を上げた。
共和国に黒髪黒目信仰があると知っているが、研修生たちは私をキラキラと輝くような目で見ていなかったし、奇跡を起こしてくださいなんてことも言われなかった。おそらくアルバトロス王国にくる前に、共和国のお偉いさん方から私の扱いについて研修でも受けたのだろうと考えていた。
少しテンション高めに声を掛けられた程度だったので、妙なことにはならないだろうと踏んでいたのに変な事態になりそうだった。そういえば女性は副団長さまに黄色い視線を送っていたなあと小さく息を吐く。
「魔術本を寄付しようと考えていたのですが、あまり行動に移さない方が良いのでしょうか……」
シスターと神父さまに相談して教会経由で研修生の皆さまに渡れば良いと考えていたのだが、行動を起こすといろいろと勘違いをされそうだ。注意を受けているようだから、下手な行動に出ることはないはずだが念には念を入れておこう。
「その方が無難だが……せっかくナイが考えて行動に移そうとしたんだ。アストライアー侯爵の名は使わず、誰か、別の者の名を借りて寄付をすれば良いのではないか?」
ソフィーアさまが、誰かの無責任な行動で善い行いを潰されて学べる機会を失うのは損失だと言葉を付け足す。
「あとは、少し時間を置けば良いでしょう。お師匠さまあたりなら魔術の講師を務めておりま……駄目ですわね。お師匠さまの顔目的でしたもの、彼女」
セレスティアさまも、準備し始めていたのですから今更中止することはないと仰った。
「私の名前を使いますかと言いたいですが、どこまで情報を手に入れているか分かりませんからね……ご当主さまと懇意ではない方が望ましいですが」
そうなると話が難しくなってきますねと言った家宰さま。確かに仲の良い方に頼めば、勘の良い人は私が手配したものと気付きそうである。仲が良い方でも、共和国の研修生たちに情報が渡っていない範囲の方で、研修生がきていることを知っていてもおかしくない人物となると大分限られそうである。
他国の方となると不自然過ぎるし、流石に陛下にお願いはできないし、公爵さまと辺境伯さまも身近過ぎる人物だろう。副団長さまにお願いすると、セレスティアさまの懸念通りミーハーな方々は別の意味で喜ぶ。
「とりあえず魔術本の手配は進めてください。最悪、行動に移した方だけに贈らないという手段を取ることもできます」
そうなると、私が相手の女性に対して明確な拒否をしていると周りにアピールできる。怒られたのに行動を改められないなら、最後の手段としてアリだろう。寄贈したいと教会に願い出ているし、魔術本と医術本の手配は進めて誰かの名前を借りるのが一番穏便だろうと、お昼まで当主のお仕事を務めるのだった。
――昼下がり。
ユーリの部屋を目指し、子爵邸の廊下を歩く。午前中はお仕事だからと毛玉ちゃんたちを構ってあげられないためか、私と一緒に毛玉ちゃんたちが歩いている。時々、桜ちゃんが先に進んで前で止まり、こちらに戻って後ろをくるりと一周して横に付いたりしながら歩いている。
「疲れないのかな?」
歩くのが大変そうだけれど、桜ちゃんはご機嫌な様子で私の顔を見上げたり、また先に歩いて止まったりを繰り返している。
『面白いみたいだよ。あとは私を見て~ってアピールじゃないかな』
クロが私の肩の上でご機嫌に答えてくれた。毛玉ちゃんたちは生まれたばかりということで、クロから見ると可愛いようだ。最近は怒涛のペロペロ攻撃が敢行されなくなったためか、クロは床に降りて彼らの相手を務めている。流石に五頭に寄られると毛玉の中に埋まってしまうが以前より自由が利くようで、長い尻尾で毛玉ちゃんたちを上手くあしらっている。
「桜ちゃんが楽しいなら良いか」
私が彼女の名前を呼んだことで、桜ちゃんが立ち止まりこてんと顔を傾げた。歩きながら器用に顔を傾げているが、置いていかれていると気付いてぴゅーと走り始める。そんな桜ちゃんを楓ちゃんと椿ちゃんが『なにをやっているのやら』みたいな様子で受け入れて、松風と早風は素知らぬ顔で私の隣を歩いていた。
「忙しいな」
「ね」
私の後ろを一緒に歩いているジークとリンが桜ちゃんたちを見て笑う。そっくり兄妹の方の肩の上には小さな竜がちょこんと乗って、ジークの気を引こうと脚をふみふみしているし、リンの肩の上で顔をすりすりと擦り付けていた。
「そういえば、竜さんたちの名前は決まったの?」
誰かに名前を贈る行為は結構難しいからせかしたくはない。ただ少し日が経っているし、進行状況を聞いてみるのもアリだろうと、私は歩きながら二人の顔を見上げた。
「いくつか候補は絞ったが……」
「……最後の最後で迷ってる」
ジークとリンは幼竜さんと仔竜さんの名前の最終候補まで絞っているようだ。ならそんなに心配は必要ないだろうと『そっか』と軽く返事をしておいた。もう直ぐ素敵な名前が聞けるだろうと、クロと視線を合わせると嬉しそうに目を細めている。
『良い名前が貰えると良いね~』
クロが幼竜さんと仔竜さんへ声を掛けると、そっくり兄妹の肩の上で二頭の竜が可愛く一鳴きする。
「そう、追い込まないでくれ」
「ナイが悩む気持ち、少し理解できた」
それぞれの竜さんたちに顔を合わせたジークとリンが苦笑いになっていた。名前を贈るって本当に大変だよねえ。竜さんたちは長く生きるし、彼らが認めた者にだけ名乗るのだから妙な名前は付けられない。私もクロに名前を付けた時は必死に頭を回転させて絞り出した。結果的に良い名前だったから問題なく済んだけれど……由来や意味を知らずに付けて、後でスラング言葉だったと知ったなんて目も当てられない。
「あ、着いた」
ユーリの部屋の前に辿り着いた。扉を二度ノックすると乳母さんの声が耳に届く。お昼ご飯を終えたあとはユーリの部屋に顔を出すようにしているので、直ぐに扉が開いて乳母さんが出迎えてくれる。
「ご当主さま、ごきげんよう」
乳母さんが笑みを浮かべて、私たちを部屋の中に招き入れてくれる。
「ごきげんよう。ユーリの様子はいかが……って毎日同じことを聞いても困りますよね。なにか不便なことや足りない物があれば直ぐに用意します」
ユーリが子爵邸で過ごすようになって三ヶ月強。泣かなかったユーリがようやく泣いて、それから彼女の感情面の成長が早くなった気がする。
「いつも手厚くして頂いているので、なにも問題はありません。ユーリも笑ったり泣いたり、怒ったりと忙しいので元気いっぱいですよ」
乳母さんは小さく肩を竦めながら笑う。ユーリはご飯を終えてすやすやと寝息を立てていた。起こさないように小声で乳母さんと話しながら、ベビーベッドの中で眠るユーリを見る。
一緒に暮らし始めた頃より髪の毛の量が多くなっているし、彼女が起きていれば動く物に反応したり、床の上をずりずりと這って場所を移動しようと試みている。身体を進ませるにはまだ力が足りないようで、自分の思い通りにいかないことに腹を立てて大泣きすることもあった。
「そろそろ動き回る時期になるのでまだまだ大変ですが、引き続きユーリのお世話をよろしくお願いします」
「もちろんです。アンファンも時間を見つけてはユーリと顔を合わせているので、乳母である私たちは少し楽をさせて頂いておりますわ」
乳母さんなりの気遣いだろう。十歳の子供に赤子の面倒を全面的には任せられないだろうし、逆に邪魔になることもある。アンファンの教育もお願いしているので手間を掛けているに違いない。
サフィールの報告では、アンファンは知識の吸収が早く読み書きの勉強以外にも、簡単な計算もこなせるようになっているそうだ。私に対してはまだ警戒心を張っているが、周りの皆さまのお陰で態度に出すことはなくなった。私がユーリと触れ合っていると、むっとした顔を浮かべているので嫉妬に苛まれているみたいだ。どこかで機会を設けて、すべてをぶっちゃける場でも設けた方が良いのかなあと、ユーリの部屋から出て行くのだった。
◇
新しく賜った王都の侯爵邸と侯爵領にあるお屋敷で働く方々たちの候補選定が始まっている。とりあえず、子爵邸で働いている方々の中から幹部候補者を選び『侯爵邸で働きたい』と望んでくれれば異動をお願いする。三年間、子爵邸で尽くしてくれたお礼というか、頑張っている人が報われる形にしたい。いろいろと動き始めているなあと考えつつ、直近で執り行われる建国祭で陛下に贈る品のチェックを行っていた。
先ほど亜人連合国のディアンさまが届けてくれた品を、もう一度みんなで見ている所だった。やはり希少品なので、見てみたいと皆さまの顔に出ており子爵邸の限られた場所で、私の目があるところであれば大丈夫だろうと、執務室の机の上に鉄製の剣が鎮座している箱を覗き込んでいる。
「相変わらず、ドワーフさんたちの仕事は丁寧だね」
一本の長剣は鉄で鍛え上げた物だ。流石に魔石や竜の鱗を使った品は王家から遠回しに遠慮願いたいと申し出されてしまっている。前年より豪華な品を贈らなければならないと考えていたのだが、ソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまに詳しく話を聞くとどうやらそうでもないらしい。毎年、毎年、見栄を張って財政難に陥る家もあるから無理のない範囲で贈るのが通例らしい。
ならばなにを贈ろうかとなって、ヴァナルと雪さんと華さんと夜さんの抜け毛を詰め込んだクッションとか、エルとジョセとルカとジアの尻尾から抜けた長い毛をミサンガにした品とかも考えていたが、王家に贈る品ではないなあと諦めた。
結局、ドワーフさん製の長剣とか腕輪とか指輪に首飾り等々の武具や装飾品だなとなって制作依頼をお願いしていた。今回で三度目となるので、ドワーフさんたちも予定を空けてくれていたから有難いことだった。
「ああ、装飾が凄いな」
「良く分からないけれど、凄い」
ジークとリンが感嘆の声を上げる。今回は鉄製ということで装飾を凝って頂いていた。刀身は普通だけれど、柄と鞘の部分の装飾が凄く豪華だし金で拵えたから当然金ピカだ。
『えー……俺ちゃんの方が凄いぞー! 斬れ味を変えられるし、刀身の長さだって自由なんだぞー! ドワーフが作ったっても鉄製の剣じゃーん。俺の方が凄いんだー!』
『カストル。ジークフリードさんとジークリンデさんが言及したのは装飾についてで、肝心の刀身の部分には触れていません。これだから馬鹿剣は』
カストルとレダがジークとリンの腰元で声を上げた。まじまじと鉄製の剣に視線を向けているのが気になるらしい。自分の相手をして欲しいとカストルが大きな声を上げレダが諫めている。
『む。馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!』
『ええ。私はマスターをこよなく愛する馬鹿ですね』
『……』
『…………なにか言いなさいよ!』
『……』
『ちょっと!!』
二振りの剣の小学生レベルのやり取りは放置で良いとして。問題はアルバトロス城の壁の上で王都の皆さまに顔見せすることになったことである。今、執務室にはソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまはいない。三人が戻ってくるのを待っている最中だ。
「建国祭、聖女の衣装で参加した方が良いのか……お貴族さまとして豪華な衣装を纏うべきか……どうしよう」
侯爵位を賜ったため、貴族として軸足を置くべきか聖女として軸足を置くべきなのかと迷ってしまう。仕事を辞めるつもりはないが、聖女の仕事の比重は減っているので、そんな私が聖女を名乗るのは他の聖女さまに対して失礼に当たる。
学院に入る前ならば一日中聖女の仕事をして教会のお手伝いもしていたのに、在学中に爵位を頂いたことで環境が一変した。一度、教会とアルバトロス上層部に自分の身の置き方を相談してもよさそうだ。
「聖女の格好で良さそうだが」
「聖女の服を着てくれないと、ナイの傍に控えられない。聖女一択」
ジークとリンが即答する。聖女の衣装に慣れているし、公式の場で着慣れない服を着て転倒なんて洒落にならない。やはり聖女の衣装一択かなと考えを改めていると、ソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまが戻ってきた。
「ナイ、教会とアルバトロスから報告だ」
お三方が執務室から消えていたのは、連絡用の魔術具に知らせが入ったからだ。魔術具から届く知らせは、重要なものから凄く軽いものまであるため対応している方は限られる。
私が応答しても良いのだが、貴族の主は椅子にどっかりと構えているのが正解なのだそうだ。亜人連合国からの連絡は私の部屋に直通だし、ディアンさまとベリルさまとダリア姉さんとアイリス姉さんはアルバトロスを介すべきと考えれば王家に連絡をしている。
「はい。いかがしましたか?」
教会とアルバトロスからの連絡ならば討伐依頼でも掛かったのだろうか。でも魔物の出現が頻発しているとも聞かないし、アルバトロス王国は平和そのものである。なんだろうと小さく首を傾げると、お三方が微妙な顔になりソフィーアさまが代表して答えてくれる。ジークとリンは静かに壁際に控えた。
「昨日、共和国の研修生の間で諍いが起きた」
「え……喧嘩をする要素が見当たらないのですが……」
集団生活をしているならば喧嘩が起こることもあるだろう。人が二人集まれば対立する、なんて言葉があるのだから。でも彼女たちは共和国の代表で国を背負っている。だから喧嘩をしても得になることはないのだから、よほどの理由があったのだろうか。
「諍い、と言っても口喧嘩の類だな」
「例の問題視された方とプリエールさんとの間で言い合いに発展したそうですわ」
「まさか報告が上がった側から事が荒れるとは」
ソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまが小さく息を吐く。呆れているというか、致し方ないといった様子である。本来であれば報告を上げるほどのものではないが、私がちょくちょく教会に研修生の様子を伺いに行っているから報告すべき案件と判断してくれたのだろう。
「内容は?」
ともかく喧嘩の理由を知らなければ話にならない。
「あまり良いものではないが……喧嘩の原因は例の少女が黒髪黒目から賜った魔術本を共和国で売れば金が入ると口にしたことからだな」
ソフィーアさまが微妙な顔で教えてくれた。私が寄付をした本をどうしようが自由だけれど、勉強に役立てて欲しいと願っていたものだから少し悲しい気分になる。本はまだ寄贈していないので未遂に終わっているが、聞いて気分の良いものではなかった。
「プリエールさんが偶然耳にして諍いに発展したそうです。手はお互いに出していませんし、共和国の監督官が割って入って収まったとのことです」
セレスティアさまが鉄扇を開いて口元を隠す。目は笑っていないので静かに怒っているようだ。どちらに、とは言うまでもない。共和国の方々の間で起こっていることだから、処分の判断は誰が下すことになるのだろう。
「やはり本の寄贈は誰かの名前を借りた方が良いですね。しかし、売却される可能性があると知ってしまえば、共和国の研修生に贈るのは躊躇いますね……」
家宰さまが、あまり気になさらないようにと最後に言葉を付け足した。そして壁際では『ジークリンデ、落ち着け! 痛い! 俺の柄をそんなに強く握らないでぇ!』『マスターのご厚意を無下にするなんて……!』と騒いでいる。カストルとレダの使い手も確実に怒っており、執務室に妙な空気が流れている。これで私が落ち込めば、みんな私に気を遣う羽目になるから、むーと考える素振りを見せながら顔を上げる。
「話を聞いて乗り込むという手段もありますし、問題を起こした方には贈らないという方法も取れますが……」
大人げないと一瞬頭の中に浮かんで、結局口にするだけで終わってしまう。
「まあ、私を利用しようとした方はどうでも良いです。喧嘩を起こしたプリエールさんにはどれほどの責がありましょうか?」
ぶっちゃけ私を利用しようとした方はどうなっても良いのだが、私のために喧嘩に発展させたプリエールさんはどうなるのだろうか。治癒魔術を広めて共和国の役に立ちたいと目を輝かせて、私に教えてくれたのだ。その決意は確かなもので無下にしたくない。
「取り急ぎの連絡をとのことだったからな」
「おそらく未決定でしょう」
「全てを決定してから連絡することもできますが、急いで報告されたのであれば、ご当主さまが肩入れしても構わないと判断されていそうですね」
お三方が、どうするのかと私に視線を向ける。関わって良いならば、これしかない。
「プリエールさんになるべく責が及ばぬように望みますと伝え頂けますか」
私の言葉に三人とも確りと頷いてくれた。喧嘩の内容が共和国だけでなく教会とアルバトロス王国に伝えられたなら、ご迷惑を掛けて申し訳ないと共和国から平謝りされたことだろう。多少なりともプリエールさんに責が及ばなければ良いのだが。
「あと、近々で研修生の授業に赴きたいですね」
「それは……午前の仕事を終えれば問題はないが、なにをする気だ?」
「悪い顔になっておりませんか、ナイ?」
私の要望に微妙な顔になるソフィーアさまとセレスティアさま。おそらく問題発言をかました女性は謹慎くらいの判断をされていることだろう。というかされてください。共和国に戻ってしまえば相手はできないため研修生でいる間が勝負である。
「私に構って欲しいようですし、構ってみようかなと」
さて、黒髪黒目である私が女性を構い倒せばどうなってしまうのか。お三方と壁際に控えているジークが微妙な顔を浮かべ、リンは小さく笑っている。
『ナイが悪い顔になってるなあ……手加減してあげてね?』
「善処するね」
クロににこりと笑って、どうするかなーと思考を巡らせるのだった。