魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
南の島に赴くまでにあと一週間を切っている。ようするに七月に入るまでにあと一週間とも言えるのだが。
プリエールさんたち共和国の研修生は富裕層の皆さまは一度ご実家に戻り、他の皆さまはアルバトロス王国に残るので南の島へ赴くと返事を頂いている。番の鸚鵡さんたちの里帰りになるので、楽しんで貰えれば良いし仲間との再会もあれば嬉しい。
雪さんと夜さんと華さんと毛玉ちゃんたちとポチとタマとグリフォンさんは初めて島に赴くので結構テンションが高い。毛玉ちゃんたちはお気に入りの遊び道具――太い縄とかボールもどき――を持って行って良いか私やヴァナルと雪さんたちに聞いているし、グリフォンさんは庭でエルとジョセに島がどんな場所なのか聞いていた。
障壁展開させているお城の魔術陣には旅立つ直前に補填を行えば、あとはアルバトロス王国にいる聖女さま方でどうにかなるそうだ。二週間の滞在予定なので戻ってきたら直ぐに補填を行うようにとお願いされている。
今も魔術陣への魔力補填を終えたところで、また騎士団に赴いて猫背の魔術師さんに治癒を施そうと長い廊下を歩いていた。侯爵位を得たためか、官僚の皆さまは私の姿を見るなり廊下の端に寄って礼を執っている。爵位を持っていなかった頃と大違いだなあと、苦笑いを浮かべて私の後ろを歩くそっくり兄妹の顔を見上げた。
「もう直ぐだねえ」
「どうしたいきなり?」
「兄さん、ナイは島に行くことを言っているんじゃないかな」
ジークとリンは私の突然の言葉に目を丸くしつつも、理由が分かれば笑ってくれる。現地でお肉が調達できれば捌いて食べるつもりなので、南大陸で買い付けた香辛料やスパイスの出番である。東大陸のアガレス帝国でも唐辛子を手に入れているので、辛いお肉が食べたければ味を変えることができるようになった。楽しみだなあと顔が緩くなるのを自覚していると、クロが顔を私の頬に擦り付けた。
『ナイは本当に楽しみにしているねえ。大所帯になったしみんなで楽しめると良いねえ』
「うん。島の大蛇さまにも挨拶しなきゃだし、ダークエルフさんにもお礼を言わなきゃね。寝泊りできる場所を確保してくれたから、お貴族さまの方たちを誘い易いから」
他にも水場とお風呂があるし、焼き窯もあるそうでパンを焼くこともできるし、ピザとかも焼けるので挑戦しようと考えている。チーズとトマトソースはあるし、あとは干し肉でも乗せれば形になるだろう。塩胡椒も高価な品だけれど、お貴族さまになったので手に入れることができる。蛸や烏賊が取れれば海鮮ピザも作れるだろうし凄く楽しみだ。へへへと笑いながらジークとリンと私は騎士団の隊舎に辿り着く。
約束の場所である近くのベンチには既に副団長さまと猫背の魔術師さんが私たちを待っており、遅れてしまったと小走りで彼らの下へと行くのだった。
「遅れて申し訳ありません」
私はベンチから立ち上がった副団長さまと猫背の魔術師さんに小さく目線を下げる。そういえば猫背の魔術師さんの名前を聞いていなかった。あまりにも初対面の印象が凄くて、名前を聞くのを忘れて今に至る。今更聞き辛くあるので、どうしたものかと考えるもそのうち知ることになりそうだとお二方と視線を合わせる。
「いえいえ。僕たちも今し方きたところなのでお気になさらず」
「だいじょうぶ。まっていない」
彼らも礼を執り、手順は既に分かっているので猫背の魔術師さんに治癒を施した。初めて会った時よりも猫背は改善しているが、酷いものが大分マシになっただけなので未だに猫背姿である。ただ誰かに見られてもぎょっとされない程度にはなっているので本当にマシになった。引き籠もりも少し改善され、研究室から毎日十分から二十分程度は外に出て、陽の光を浴びているとのこと。運動も城内の庭を歩いており、見慣れない怪しい魔術師がいると噂が流れたそうだ。
事情を話せば直ぐに噂は消えたが、最近はイケメンがいると侍女さんたちや女性の下働きの皆さまの間で新たな噂が流れているらしい。確かに食事を摂れるようになったので、痩せこけていた顔と身体に肉が付き始めているし、髪を結んで顔を出したからご尊顔が整っていることが分かる。女性はイケメンに敏感だなあと感心していると、副団長さまが真面目な顔で口を開き、猫背の魔術師さんは彼を見てこてんと首を傾げた。
「聖女さま、いえ、アストライアー侯爵閣下。大切なお話があります」
「どうしましたか?」
副団長さまが聖女ではなく爵位で私のことを呼んだので、アルバトロス王国に関することであろうか。無茶を言われなければ良いなあと願いつつ彼の言葉を待つ。
「共和国の研修生たちから七月の頭は南の島へ赴くと聞きました…………僕も連れて行ってくださいませんか? ご迷惑はお掛けしません! 野宿で十分ですし、食料も自前で準備致します! ですので、どうか……どうか!!」
彼は神妙な顔から真剣な顔へと変えて私に力説した。男性陣が少ないので、副団長さまたちがくるならジークたちが過ごし易くなるだろうか。おそらく副団長さまが島に赴けば、研究調査に精を出すだろうから遊び倒すことはないだろう。寝床はまだあるし、食事も提供できるので問題ない。ただ勢いでこられても困るので、確認しておかなければならないことがある。
「構いませんが、お仕事は?」
仕事があるのかないのかだけは確認を取っておかないと、副団長さま不在によりアルバトロス王国と魔術師団の皆さまにご迷惑を掛ける訳にはいかない。彼の実力は本物なので、護衛として駆り出されることが多々あるのだから。
「閣下のご許可を頂ければ、団長に申請して仕事として赴くことができると考えております。勿論、駄目だと言われれば休暇として赴くので、閣下がお気になさる必要はございません。国に迷惑を掛けない範囲で参りますよ」
にーこりと笑う副団長さまが背を屈めながら私に顔を近づけてくる。これ、許可を出さなければ無理矢理に一緒にくるパターンだと目を細めれば、猫背の魔術師さんが副団長さまの外套を掴んだ。
「ねえ、はいんつ。はいんつがきょうみを示すばしょがあるなんてすごく珍しい。ぼくもきょうみある」
どうしたのだろうと首を傾げるが、猫背さんはどうやら興味を引かれたようだ。島ではなく、副団長さまが興味を持っているということに反応したようであるが。
「おや、貴方も興味がありますか。島の主である大蛇さまと言葉を交わすことができますし、ダークエルフの方々ともお話ができますよ。魔法について知りたいのであればエルフの方々も来島するようなので聞き放題……かもしれません」
副団長さまが猫背の魔術師さんの興味を更に引くように喋っているけれど、体力のない方が島に赴いて森の中を探索するのは大変ではなかろうか。とはいえ外に興味を持ってくれたことは良いことだし断るのは気が引ける。暑さが一番の問題だけれど、暑熱対策をしていれば多少はマシだろう。
「なにそれ、すごい!」
またしてもにーこりと笑った副団長さまが私を見た。おそらく最終決定をお願いしますということらしい。ディアンさまには人数が増えても構わないと言って頂いているし、副団長さまであれば島の全容や秘密を解き明かしてくれるかもしれない。猫背の魔術師さんの体力が持つか心配であるが、聖女であるアリアさまとロザリンデさまと私がいるので不測の事態に陥らなければ問題はないだろう。
「では魔術師団長にご許可が下りれば、ということで宜しいでしょうか」
「勿論です」
「はいんつ、ぼくの分のきょかもとって!」
「仕方のない方ですねえ。では、新たな攻撃魔術の術式を作って頂けますか?」
「いいよ、わかった」
なんだか妙な取引が行われているけれど、世界を滅ぼせるような術式だけは開発しないでくださいねと願うしかなかった。
◇
ナイに首飾りを贈ったが、俺もナイから天然石を貰ってしまった。
まあ、ナイの場合はみんなへのお土産という意識が強いから、俺が勘違いや自惚れることはない。ただみんなに贈った品でも嬉しいと思えたのは驚きである。
夜。ナイから貰った紫色の天然石を自室の窓際に置いて星の光に当てていた。ナイ曰く、星の光に当てていれば石の力が満ちるらしい。本当かどうかは分からないが、こうして手間を掛けることで思い入れが増えていくのだろうと実感している。
「柄じゃないが……」
俺がこんなことを始めるなんて自分自身でも予想が付かなかった。ナイもリンが贈った黒い天然石を大事にして、星の光が降り注ぐ夜に窓際に置いているし、リンも同じように自分の部屋でナイから貰った紫色の天然石を置き昼日中は袋に入れて持ち歩いている。
ナイも俺も同じように袋に入れて持ち歩くか、首に下げれるように加工して飾りとして使うかのどちらかだ。ドワーフの職人に頼んで耳飾りか首飾りにして貰うか迷ったが結局袋に入れてお守り代わりに持ち歩くことになった。
俺がナイに贈った首飾りは日常使いしてくれている。何故かナイ付きの侍女が俺に『肌身離さず付けておられますよ』と静かに教えてくれた。接点の少ない侍女に教えられた意味は分からないが、なにか思うところがあったのだろう。少しでもナイが喜んでくれているなら嬉しいことだ。
ラウ男爵夫妻が俺の行動を知り凄くにやにやしていた。恥ずかしいが、彼らには世話になっているしなにも言えず仕舞いだった。首飾りを贈って俺とナイとの関係が進展したわけでもなく、いつも通りのやり取りの一つだっただろう。
クレイグとサフィールに俺がナイに贈り物を贈ったことを告げれば『ようやくか』『遅いくらいじゃないかなあ』と苦笑いになっていたので、どうやら俺の気持ちを二人は知っていたようだ。ただ二人は『ナイは鈍いからなあ』『多分、直接言わないと気付かないんじゃない?』と言われてしまった。確かに彼女は人の悪意に敏感だが、好意には凄く鈍いところがある。
俺はそのお陰で彼女の側にいることができるのだが。
身分はまだ足りないが、他の男に取られてしまうくらいなら。いっそ……と窓の外に輝いている大きな星を眺めるのだった。
◇
――南の島に辿り着いた。
今回のメンバーは私たち幼馴染組であるジークとリンとクレイグとサフィールと私、ソフィーアさまとセレスティアさま、彼女たちの婚約者であるギド殿下とマルクスさまが参加している。ヴァナルと雪さんと夜さんと華さんと毛玉ちゃんたちも一緒だし、エルとジョセとルカとジアにポチとタマとグリフォンさんも一緒だ。
お猫さまとジルヴァラさんを誘ったけれど『外は嫌じゃ!』『主さまの留守を守ります』と告げ、こちらにはきていない。アリアさまとロザリンデさまも参加しており、南の島を満喫したいとのこと。亜人連合国からはディアンさまとベリルさまと赤竜さんと青竜さんと緑竜さんがきており、一緒に赴いているダリア姉さんとアイリス姉さんが『珍しいこともあるのね』『本当にね~』と驚いていた。
聖王国からフィーネさまとアリサさまが参加し、エーリヒさまも大きくなった島の規模に驚いている。共和国の皆さまも島が珍しいのか目を輝かせながら周囲を見ていた。
他にも副団長さまと猫背の魔術師さんに他の魔術師さんが二名きて島の調査に入るそうだ。魔術師組は完全に仕事としてきているので、新たな発見がなければプリエールさんたちと一週間でアルバトロスに戻り、調査が必要と判断すれば二週間を島で過ごす。副団長さまはアルバトロス王国に戻れば、速攻で奥方さまの機嫌取りを行わなければならないそうだ。離婚案件にならないか不安だが、その辺りはお貴族さまの事情なので大丈夫だと思いたい。お土産とか沢山持って帰れば奥方さまの機嫌が少しマシになれば良いなあ……。
あとは料理を担う方々とお世話を担う侍女さんと下働きの方たちと護衛の皆さまがいる。大所帯になったので楽しくなりそうだ。
これから二週間、目一杯島を楽しむ予定である。
プリエールさんたち研修生は一週間が経てばアルバトロス王国へ戻って行くので、良い息抜きの場になると良いのだけれど。今回はディアンさまとベリルさまが飛竜便を担当してくださり、まだ竜の姿である彼らにお礼を伝えると『気にするな。いつでも言えば良い』『誰かを乗せて飛ぶことが楽しいと思えるようになったのは貴女のお陰です』と仰ってくれた。
ありがたいことなので、こっそり私の魔力を渡すとお二人は大きな竜の顔を下げて目を細めたのだが、ポチとタマに見つかってしまい『代表、狡い!』『魔力、欲しい!』とお二人の周りを凄い勢いで走ってみんなが何事かと気にしてた。
毛玉ちゃんたちが海を見て一斉にわーっと勢い良く走って行く。海の中には入らず波打ち際で波と戯れている。水は苦手なのかなと首を捻ると、私の横にジークとリンとクレイグとサフィールが立った。
「毛玉ちゃんたち、流石に泳げないみたいだね」
流石に教えて貰わなければ泳げないようで、脚に波がつくとぴょんと後ろに跳ねて吃驚していた。島はアルバトロスより暑いから毛を梳いたけれど、暑熱対策は確りとしておかなければ。慣れていないだろうし、幻獣でも倒れることもあるだろう。ヴァナルと雪さんたちが目を光らせてくれるそうだが、ヴァナルと雪さんたちも環境に慣れていなければ暑さに参ることもある。
「海は初めてだから、おっかなびっくりみたいだな」
「慣れれば大丈夫」
ジークとリンが毛玉ちゃんたちを見てふっと笑った。そういえばリンは前に泳ぎをマスターしたけれど、ジークは泳げるのだろうか。今回エーリヒさまが同行しているから、教えて貰うには丁度良いのかもしれない。私がジークに教えても良いけれど、女から男性に物事を教えるのはカッコ悪いという意識が根付いているのでやらない方が無難だろう。
「俺も泳げないからなあ。毛玉たちを笑えない」
「僕も泳げないから、毛玉ちゃんたちと一緒だよ」
クレイグとサフィールが苦笑いを浮かべながら毛玉ちゃんたちを見ている。クレイグとサフィールも泳げるようになれば海水浴を楽しめるけれど、今後の頑張り次第だろうか。遠泳に挑戦してみたいなあと私は沖へと視線を向けながら、ふと感じたことを口にする。
「島、また少し大きくなった?」
私の声にジークとリンとクレイグとサフィールが一斉にこちらへ顔を向けた。島が大きくなる速度は落ちているようだけれど、去年より少し陸地面積が増えている気がする。
「空から見た感じだと、一回りくらい大きくなった気がするな」
「多分、大きくなってる」
「ナイの所為か」
「ナイは本当に無茶をするね……またナイの魔力を注げば更に大きくなるのかな?」
『お? 魔力を注いでくれるなら大歓迎だぞ! お嬢ちゃんの魔力であれば島から大陸に変化を齎せそうだからな!』
ぬっと大きな顔を私たちに近づけた大蛇さま。ギド殿下とマルクスさまと共和国の皆さまがぎょっと驚き目をひん剥いた。一応、島の主である白い大蛇さまがいると伝えておいたが、あまりの大きさに驚いたようだ。ジークとリンは大蛇さまの登場にさほど驚いていないけれど、クレイグとサフィールは少し顔を引き攣らせている。島も大きくなった気がするが、大蛇さまも胴回りが太くなっている気がする。
「流石にもうできないかと。島の隆起で海面上昇すれば問題となってしまいます」
魔力を注ぐこと自体はできるけれど、注いだ後を考えると止めておいた方が良い気がする。
『気にせんでも良いのだがなあ……久方振りだな! 島を楽しんでくれると嬉しいぞ。あと二週間と言わずもっといても良いんだぞ!?』
「ありがとうございます。大蛇さま、またお世話になります」
ふすーと鼻息を吐いた大蛇さまが目を閉じるのだが、蛇って確か瞼というより膜だった気がする。脱皮の時期が近づくと視界不良で大変そうだなあと、大蛇さまを見上げていると雪さんたちと毛玉ちゃんたちへ視線を向ける。
『知らないうちに増えたのぅ。赤い天馬も珍しいが、フェンリルとケルベロスの
大蛇さまが目を細められるか分からないが、海辺で戯れている毛玉ちゃんたちを見ながら言った。毛玉ちゃんたちも健康上に問題はなく、ヴァナルも雪さんたちは狼系なので交雑が可能だったのだろう。
雪さんたちがヴァナルを運命の番と言い出したことから始まった関係であるが、当人……当犬たちが幸せなら大蛇さまが告げた通り口を出すことではない。毛玉ちゃんたちが元気に生きていけるなら良いなと願うばかりである。大蛇さまと挨拶を終えると、他の方々も島の主である彼に挨拶をしていた。とっつきやすい蛇さまなので、初対面の人は驚きつつも大蛇さまと話している。
『おや。番の鸚鵡は里帰りという訳だな?』
大蛇さまがプリエールさんの前で鎌首を上げると、番の鸚鵡さんが羽を広げる。
『ニンゲン、助けてくれてた。世話になってる』
『ほう。良く生き延びていたなあ。一先ず、おかえりと言っておこう。島の者が世話になっとるようで感謝するぞ』
鸚鵡さんからプリエールさんへと大蛇さまは視線を変えてお礼を述べた。プリエールさんは背筋を伸ばして口を開く。
「い、いえ! ソルくんとは偶然出会ってご一緒することになりました! アストライアー侯爵さまのご支援で困ることもありません。島にお邪魔することになったので、よろしくお願い致します!」
『あすとらいあーこうしゃく?』
大蛇さまが頭の上に疑問符を掲げており、プリエールさんがどうしたものかと困り顔を浮かべている。
「え、えっと黒髪の聖女さまとお呼びすれば分かり易いでしょうか」
プリエールさんは私の別称を持ち出すけれど、自分が口にして良いものなのか少し戸惑っているようだった。特に気にしていないし、呼んでくれる方も少なくなっているなあと私の二つ名を耳にして目を細める。
『お嬢ちゃんのことか。けったいな名前だのう』
大蛇さまがちらりと私を見たのだが、変な名前とはこれ如何に。変だと苦言を呈すのであれば名前を考えてくれた陛下にお願いします。まあ、大蛇さまは島の主で陛下はアルバトロスの主だから一生会えることはなさそうだけれども。陛下が大蛇さまと出会えば驚きそうであるが、本当に出会ったならばどうなるのだろうか。
また大蛇さまは他の方々と律儀に挨拶をして、最後にぬっと鎌首を上げた。
『無駄に島の命を取らないなら、お主らの好きにすれば良い。あと我、寂しいのは嫌いだから遊びにきてくれると嬉しい』
大蛇さまは島にダークエルフさんたちと竜の方々が増えたというのに、まだ寂しいようだ。直接会話を交わせる方が少ないようで、お喋りの相手が欲しいらしい。ダークエルフさんたちは物静かな方たちが多く、竜の方たちは少々おっかないとのこと。
ポチとタマくらいのサイズであれば問題はなさそうだけれど、会話を交わすとなれば少し難しいかもしれない。ポチとタマの会話は小さい子供を相手にしているようである。もう少し時間が必要かなと大蛇さまを見上げていれば、ダークエルフの女性が姿を現した。
「皆さま、よくいらしてくれました。寝泊りできる場所へご案内致します。私についてきてください」
ダークエルフさんと挨拶を交わし大蛇さまと別れて、荷物を持ち浜辺で遊んでいる毛玉ちゃんたちを呼んでコテージへと移動する。自分の荷物は自分で持つのが基本だけれど、やんごとなき身分の方たちは持っておらず荷物持ちの方が確りと抱えている。
私もやんごとなき身分となってしまったので、下働きの方に荷物を持って頂き手ぶらで歩いている。凄く落ち着かないけれど、慣れないといけないのだろうと前を向く。浜辺から整備された森の中の道を進むと、木で組まれた家が見えてきた。
コテージとかロッジに分類される建屋だろう。中も広いし、寝泊りだけなら問題なく過ごせる。少し不便なところは台所がないことだろうか。外に洗い場と釜戸があるので、料理はそちらで作ることになりそうだ。
お魚さんを釣ったり、森の中の果物を楽しんだり、持ってきた食材でBBQを開催する予定である。フィーネさまが海で泳ぎたいと言っていたし、砂浜でビーチフラッグとかも楽しそうだ。
副団長さま方はさっそく森の中へと入り、古代遺跡や珍しい動植物がいないか確かめると言い残して消えた。行動が早いのは好奇心の表れだろうか。魔術師組は放っておいても、アルバトロス王国に戻る時に回収すれば良いかとみんなが頷いている。割と手厳しいけれど、魔術師の方だしお仕事できているから自制はできるはず。
割り当てられた部屋に入る。広くはないけれど、ちゃんとしたベッドも置いてあり本当に宿泊用のコテージだ。リンは私と同部屋なので機嫌が良いし、私も彼女であれば気を遣う必要はないので有難い。
クロはきょろきょろと部屋を見渡し、ヴァナルと雪さんたちは床に腰を下ろして、毛玉ちゃんたちは部屋の匂いが気になるのかすんすんと鼻を鳴らして床を嗅いでいる。荷物を置き、ある程度片付けて部屋を出た。直ぐにジークとクレイグとサフィールと合流してコテージの外に出る。
「夕飯までに時間はあるな。なにをするんだ、ナイ?」
クレイグが腰に手を当てながら問うてきた。私たちに気付いたエルたちが、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
「流石に探検できる時間はないから、この辺りで時間を潰そうかなって。移動に慣れてない方は疲れているみたいだし、あまり動き回るのもね」
私はエルたちを撫でながらクレイグの質問に答えると、それもそうだと彼は同意の言葉をくれた。飛竜便での移動に慣れていない方もいるので、今日はゆっくり過ごして明日に備えよう。
二週間の滞在期間があるのだから慌てる必要はない。私は木の上に吊るされたハンモックに勢い良く飛び乗れば、すてんと一周回って地面にぶつかる。クレイグが呆れた顔になり、ジークとリンとサフィールが急いで私を起こしてくれた。どうしてひっくり返るかなあともう一度ハンモックに挑むも、くるんと一周回るのだった。
投稿再開です! ですが、また止めるかもしれません(汗 その際は更新再開日を告知致しますので、よろしくお願い致します!┏○))ペコ