魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0473:案の定。

 ――南の島。三日目の朝。

 

 気の早い方たちは朝早く起きて島の探検に向かっている。私は『ポエー』という不思議な鳴き声で目を覚ますと、リンの顔のドアップが視界に映った。どうやら夜中に私のベッドにリンが忍び込んでいたようだ。相手がリンだったので、ベッドの中に潜り込んできたことを全く気付かなかった。

 クロたちは知っていたようで、起きるなり『仲が良いねえ』と揶揄われる。で、リンと一緒に部屋から出て今日はなにをしようかと話しながら、食堂に赴こうと廊下を歩ていれば副団長さまがいた。私の顔を見るなり微妙な面持ちになるのだけれど、なにかあったのだろうか。

 

 とりあえず朝の挨拶を交わして彼と相対する。ヴァナルと雪さんと夜さんと華さんと毛玉ちゃんたちは外に出て遊びに行くのか、廊下をぴゅーと走って行った。

 

 「聖女さま、申し訳ないのですが……」

 

 「副団長さま、どうしましたか?」

 

 少し気まずそうな副団長さまに、本当に珍しいと感心する。いつもにこにこ顔でなにを考えているか分からないのに、今は凄く私に気を使っている雰囲気を漂わせているのだ。明日は大雨が降るかもしれないと考えながら、副団長さまの顔を見上げた。彼の話によれば猫背の魔術師さんが寝込んでしまったようだ。部屋で寝ているから、少し様子を診て欲しいとのこと。

 

 「あー……まあ仕方ない、のでしょうね」

 

 私は副団長さまの話に苦笑いになる。急に動いたのだから疲れて寝込むのも致し方ないのだろう。島を楽しんでいたようだし、子供が遊び疲れて熱を出したようなものである。とはいえ彼の状態を知らないから安易に判断はしてはいけない。

 

 「本当に申し訳ありません。休暇中ですが、彼を診て頂けますか?」

 

 「構いませんよ。森の中で倒れなくて良かったです」

 

 副団長さまが少し気落ちしているので、彼にも人の心があったのねと感心しながらご飯の前に猫背の魔術師さんの様子を伺いに行くことになった。ロッジの中にある一部屋にリンと副団長さまと一緒に入る。猫背の魔術師さんはベッドの上で横になっていた。私たちに気が付いて身体を起こそうとしているので、私はやんわりと制止する。

 

 「聖女さま、ごめんなさい」

 

 ベッドサイドで顔だけを向けて彼はしょぼんとしていた。今日も探検に向かおうと気合を入れていたが、身体が付いて行かなかったようだ。副団長さまにも迷惑を掛けてごめんなさいと謝っている姿は本当に幼い子供のようである。

 少し体温が高いが、緊急性はなさそうなので一番簡単な治癒魔術を施しておいた。あとは猫背さんの気力次第で早く治る場合もあるだろう。むーとなにか考えている猫背さんに私は笑みを浮かべ、気を付けて欲しいことを何点か伝えておこうと口を開く。

 

 「気になさらないでください。でも、他の方に比べて体力が備わっていないのですから、無茶はなさらないでくださいね」

 

 彼は外に出始めた所である。次に森の中に入るなら、エルにでも頼んで背中に乗せて貰うのもアリだろうか。一瞬どこかの誰かさんが凄く羨ましそうにしている顔が浮かんだけれど、きっと気の所為である。

 

 「今日は大人しくしてる……」

 

 「そうしてください。ご飯は食べられそうですか?」

 

 彼も無理は駄目だと理解しているようで随分と素直だった。クロも彼を心配しているのか私の肩の上でこてんと首を傾げている。リンは私の横で『この人大丈夫かな?』という顔で控え、副団長さまは猫背さんの体調が酷くないと知りほっとしていた。

 

 「此処の料理美味しいから、食べられるよ」

 

 「良いことです。料理番の方に食べやすい品を作って頂けるように頼んでおきますね」

 

 食事が喉を通るなら直ぐに元気になれるだろう。料理番の皆さまが作る品は美味しいので、食事は私も楽しみにしている。大したことがなさそうで良かったと息を吐けば、私の後ろで控えていた副団長さまがぬっと顔を出した。

 

 「僕たちは調査に向かいます。新たな発見があれば一緒に調べ尽くしましょう。その前に体調を整えてください」

 

 副団長さまは今日も森の中に入って遺跡がないか探すようだ。見つかれば私が巻き込まれそうなので、少々見つかって欲しくない気持ちがある。魔術師組も元気一杯だと感心しながら、猫背さんの部屋から出た。

 

 「聖女さま、お手間を掛けて申し訳ありません」

 

 「いえ。大したことなくて良かったです。体力さえ付けば寝込む機会も少なくなりましょう」

 

 副団長さまはふうと息を軽く吐いて私を見る。猫背さんの動ける時間や範囲は広くなっているし、お目付け役で副団長さまが付いているのだから心配は必要ないだろう。今回はまあ少し無茶をし過ぎただけだ。

 

 「島に連れてくるのは少し早かったですかねえ。とはいえ興味がなければまた彼は引き籠もってしまいますので……難しいものです」

 

 「彼と副団長さまは仲が良いのですね」

 

 魔術一辺倒な副団長さまは、仲が良くなければ他人の面倒なんてみない気がするけれど。

 

 「え?」

 

 「えって……同期ですよね?」

 

 目を見開いた副団長さまは意外という表情をありありと見せた。同期と聞いていたのに、仲が良くないのだろうか。それとも副団長さまのことだから、利害関係で成り立っているのだろうか。

 

 「同期入団ですねえ。彼と僕は仲が良いように見えますか?」

 

 「疑問を疑問で返されても困りますが、私には仲良さそうに見えますよ。それに副団長さまが誰かを連れてくるのは珍しいですし」

 

 たとえ利害関係であったとしても、副団長さまは猫背さんの面倒をみているのだから仲は良い方ではなかろうか。副団長さまは魔術師団の方々に案外頼られている。副団長さまほど魔術に傾倒しているなら『孤高の魔術師』とか呼ばれていそうなのに、その手の二つ名は聞いたことがない。

 

 「はっきりと言ってしまえば死なれては困りますからねえ。でも確かに興味がなければ気に掛けないですし、彼は僕にとって大事な方となるのでしょうか……?」

 

 副団長さまの言葉に私は答えず肩を竦めるだけに止めた。副団長さまも答えは求めていなかったようで、いつものにこにこ顔に戻って窓の外を見る。

 

 「まあ人間関係を考えるより、島の秘密を探らなければなりません! 時間は有限ですし僕はこれで!」

 

 小さく頭を下げた彼は颯爽と歩き始め、特徴的な紫色の外套を翻らせながら外へと出て行く。副団長さまを待っていた魔術師の方々が嬉々とした顔で彼の側に侍り、森の中へと消えて行った。その光景を窓から見ていた私は、やはり魔術師の方は己の欲望に忠実だと苦笑いを浮かべた。

 

 「ナイ、朝ご飯食べて今日はなにをするのか決めよう」

 

 「そうだね、リン。ジークとクレイグとサフィールは起きてるかな?」

 

 リンが笑って右手を差し出したので私は彼女の手を握る。

 

 「多分、起きている」

 

 「待たせちゃ悪いか。急ごう」

 

 そう言って廊下を歩いて食堂へと向かえば、ジークとクレイグとサフィールが待ってくれていた。遅れた理由と詫びを入れて、料理人さんが作ってくれた朝ご飯を堪能する。今日はいつも通りのパンとスープだけれど味を変えてくれている。食べられることに感謝をしながら箸を進める。時折、みんなと話をしながら今日はなにをしようかとなった。

 

 「釣りは昨日したし、泳ぐのも悪くないけれど……猫背さんが寝込んでいるからロッジからあまり離れたくないかも」

 

 なにかあっても困るし、今日はゆっくりしていても良いような気がする。ハンモックで読書しても気持ち良さそうだし、幼馴染組が必ず一緒という訳でもないし。私の考えを告げるとクレイグが凄く変な顔を浮かべ、ジークとサフィールが苦笑いを浮かべている。なんだろうとクレイグと視線を合わせれば、ドン引きされている。

 

 「…………ナイ、お前、あの人の名前知らねえのか?」

 

 クレイグの疑問にそういえば私は猫背さんの名前を知らないと思い至る。

 

 「そういえば聞かないままだった。でもみんなも知らないでしょ?」

 

 流れに流れて猫背さんの名前を聞き損ねていた私も悪いけれど、猫背さんも私の名前を知ろうとしていなかったし、副団長さまも特に気にした様子はなかった。もしかして対人関係に難ありの集まりだったのだろうかと胸がチクリと痛む。

 

 「えっと昨日、温泉に入っている時にお互いに自己紹介を済ませたよ。ね」

 

 「ああ。爵位は聞けなかったが、おそらく貴族家出身だろうな」

 

 サフィールとジークが遠慮気味に教えてくれた。なるほど裸の付き合いだから無礼講だと言って、昨夜の温泉でお互いに自己紹介をしたようだ。

 

 「どうしよう。今更名前なんて聞けない……失礼だよね……」

 

 頭を抱える私にクレイグが『馬鹿だなあ』と呟き、サフィールが『自然に名乗りができる機会があると良いけれど』と困ったように告げ、ジークが『名乗る間がなかったからな』と言う。

 確かに私は『黒髪の聖女さま』で通ってしまうから、猫背さん的に気にならなかったのだろうし、私が侯爵位持ちなので彼から名前は聞き辛い状況である。失敗したなあと悩んでいると、隣に座るリンが私の服の袖を軽く引っ張った。

 

 「ナイ、ナイ。私も知らないからナイと一緒」

 

 「ありがとう、リン。意識して、名前聞き出さないとずっとこのままになりそうだよね」

 

 このままずるずると猫背さんの名前を知らないまま過ごすより、さっさと白状して名乗りをした方が良さそうだ。猫背さんは私の名前に興味はなさそうだけれど、お貴族さまならばどこの家の方なのか知っておくべきだ。ソフィーアさまがこの事実を知れば呆れられそうだと苦笑いを浮かべると、私の肩の上に乗っているクロがぐしぐしと顔を擦り付ける。

 

 『ボクが名前、聞いてあげようか?』

 

 「クロもありがとう。でも自分で蒔いた種だし、私がちゃんと聞かないとね。あと名乗らなかったことも謝らないと」

 

 クロはコミュ力も高いので、猫背さんの名前を自然に聞き出すことができるのだろう。とはいえ忘れていたのは私の責任である。自分で聞くべき案件だし、クロの気持ちだけ受け取ると尻尾で背中をぺちぺち叩いてくれた。頑張れと言いたいのか、私の言葉を聞いてクロは納得してくれた。

 

 「ま、今日はゆっくり過ごすかあ。俺、ロッジの周りウロウロしてくる。誰かくるか?」

 

 クレイグの声にジークとサフィールが手を上げる。私とリンはいってらっしゃいと彼らを見送り、部屋に戻って本を手に取りハンモックへと足を運ぶのだった。

 

 ◇

 

 ハンモックに何度か嫌われながら、どうにか乗って本を読み始めた。クロは日向ぼっこが気持ち良いのか寝息を立てているし、リンも静かにハンモックの上で読書を楽しんでいる。少し汗ばむ陽気だけれど木陰になっているから、風が吹くと少し体感気温が下がって悪くない。

 『ポエー』と鳴く気の抜けそうな珍妙な音が響き、鳴き声の正体が気になるものの森の中へ入るつもりはない。また『ポエー』と声が聞こえて今日は良く鳴くなあと本を読み進めている。ゆらゆらと小さく揺れるハンモックに眠気を誘われ目が落ちそうになるけれど、読んでいる本が丁度面白い所なのでかっと目を見開いて頑張っていた。

 

 ふいに気配を感じて本から視線を離すと、毛玉ちゃんたちがこちらに向かってきている。彼らの後ろにはヴァナルと雪さんと夜さんと華さんの姿もあった。どうしたのかと私は身体を起すとバランスを崩してハンモックから滑り落ちる。

 

 「だ、大丈夫、ナイ!?」

 

 リンが声を上げ、慌ててハンモックから降りて手を差し伸べてくれた。私は彼女と視線を合わせて苦笑いを浮かべる。

 

 「大丈夫。下が土で良かった、ありがとう」

 

 私がリンにお礼を告げると、彼女はへなっと情けない顔になる。クロがうたた寝から目が覚めたようで、翼を広げて私の肩に飛び乗った。

 

 『ナイはどうして落ちるんだろうね?』

 

 クロは仕方ないと言いたげにぐしぐしと私の顔に顔を擦り付けると、毛玉ちゃんたちが私の周りを取り囲んだ。彼女彼らの口にはまん丸い鳥が加えられており、ジタバタと暴れもせずなにが起こっているのか理解していない間抜けな顔を晒していた。

 

 『ポエー』

 

 『ポエー!』

 

 『ポエ~』

 

 椿ちゃんと楓ちゃんと桜ちゃんが口に咥えている鳥が珍妙な声で鳴く。島に入ってから時折鳴いていたのは目の前の鳥たちだったようだ。情けない鳴き声に気が抜けそうになるが、毛玉ちゃんたちはどうして口に咥えて私の下へとやってきたのだろう。

 松風と早風も真ん丸鳥さんを口に咥えているのだが、生きているので食べる気はないようだ。真ん丸鳥さんも真ん丸鳥さんでじっとしているし生存本能が薄い気がする。

 

 「えっと……どうしてみんな鳥を口に咥えているの?」

 

 私は毛玉ちゃんたちと視線を合わせるためにしゃがみ込めば、毛玉ちゃんたちは口を開いて真ん丸鳥を解放した。ぽてっと地面に落ちた真ん丸鳥さんは、ゆっくりと体勢を立て直して立ち上がるのだが逃げて行かない。

 本当に危機意識が野生動物ではないのだが、大丈夫かと心配になってくる。真ん丸鳥さんは身体同様の真ん丸いつぶらな目を私に向けて、こてんと身体ごと顔を傾げた。

 

 「飛んで逃げて行かない……」

 

 私が驚きの声を上げると、リンも私の隣にしゃがみ込む。真ん丸鳥さんは警戒することもなく、リンの下にも歩き始めてこてんと身体ごと顔を傾ける。

 

 「可愛い……かも? でも真ん丸だから、鳥にしては不細工な姿だね」

 

 リンの声にソレはブサ可愛いというものではと思い浮かぶ私であった。リンの言ったとおり、真ん丸鳥さんは鳥なのに羽が分かり辛いし、空を飛ぶには随分とおデブちゃんである。飛べるのかなあと私が首を傾げると毛玉ちゃんたちも同じように首を傾げ、彼らの横に雪さんたちとヴァナルが並んでお尻を地面に落とした。

 

 『鳥たちは、自然にできた(うろ)の中に隠れていました。それを偶然この子たちが見つけました』

 

 『逃げていかないので捕まえるのは簡単でしたよ』

 

 『食べる気がないなら捕まえなくとも良いのですが、これも教育の一環かと』

 

 雪さんたちの言葉に真ん丸鳥さんを見る。怪我も負っていないし、毛玉ちゃんたちは甘噛みしたままこの場まで移動してきたようだ。器用なことをと毛玉ちゃんたちを見れば、ドヤ! と顔を空に上げて褒めろと訴えている。

 

 『逃げない。どうしてだろう?』

 

 ヴァナルが微妙な顔をしながら声を上げた。よちよち歩く真ん丸鳥さんはヴァナルにもすり寄って、前脚の所にちょこんと挟まった。可愛いと思ってしまったのは秘密である。

 

 「私たちが怖くないみたいだね。敵って認識されても良さそうだけれど……って膝の上に乗ろうとしてる。本当に警戒心がないなあ」

 

 「ね。真ん丸で可愛いな」

 

 私はリンと視線を合わせると、真ん丸鳥さんがどうにか膝の上によじ登ってきた。そうして身体を寝そべらせているのだが、真ん丸い身体の所為で寝ているのか起きているのか分からない。緑色の羽を撫でるとふわふわだし、真ん丸なのでお肉も多く身についている。食べたら美味しいのかなと首を傾げると『ポエー!』と上がったので、食べないで欲しいと抗議の声が上がったようだ。

 

 『ちょっとお話聞いてみるね~』

 

 クロが私の肩から飛び降りて膝の上の隙間に乗り移る。真ん丸鳥さんは竜が目の前にきたことで、ぴょえっと身体を跳ねて驚いた。その姿にクロが吃驚させてごめんねと謝りながら、なにやら話し込んでいる。

 誰とでも意思疎通できるのでこういう時は有難いなあと長い尻尾をゆらゆらと揺らしているクロを見ていると、話が終わって私の方にクロが顔を向けた。

 

 『この仔たちは隠れて暮らしていたんだけれど、最近、島が騒がしいから驚いていたって。で、毛玉ちゃんたちに見つかったから食べられるのを覚悟していたんだって言っているよ』

 

 「……迷惑だったかな?」

 

 島を見つけて二年強経つのだが、島全体をくまなく調べた訳じゃないから未知の物があるはずとダークエルフのお姉さんが言っていた。どうやら真ん丸鳥さんも未知の生物にカウントされるようだ。迷惑を掛けて申し訳ないと真ん丸鳥さんの嘴の下を指で撫でると『ポエ~』と気の抜けた鳴き声が上がる。

 

 『白い大きな蛇に狙われて隠れていたから、ナイたちが原因じゃあないはずだよ。ちょっと待ってね』

 

 クロが気持ち良いみたいだよと教えてくれたので、暫く撫で続ける。羨ましそうに見ているリンと毛玉ちゃんたちの視線を浴びながら、クロの言葉を待った。

 

 『怖い白い蛇も見なくなったから、島が騒がしいから興味が湧いて隠れていた所から出てきたみたい。好奇心が旺盛なんだけれど、弱いから直ぐに数を減らしちゃうって言っている……』

 

 確かに好奇心が旺盛で人間の膝の上に乗っている。リンの膝の上にも真ん丸鳥さんが乗って気持ち良さそうにしているから、警戒心はゼロだし、なにかに捕まって食べられてしまうのも頷けた。

 

 「もしかして怖い白い蛇は……大蛇さまのことかな?」

 

 『どうだろうね。力を付けたから島の主は食べなくなったんじゃないかなあ。強くなると魔力がご飯替わりになるから、この仔たちを食べなくなった理由にはなるかな?」

 

 大蛇さまが若かりし頃は真ん丸鳥さんを捕食していたようだ。自然に生きる生き物なので恨みつらみはないだろう。しかし、懐いているこの仔たちをどうしようか。保護するというのも変だし、とりあえず亜人連合国の皆さまに相談しようと膝の上の真ん丸鳥さんを抱えて立ち上がる。

 リンも膝の上の真ん丸鳥さんを抱えて立ち上がった。残りの真ん丸鳥さんは毛玉ちゃんたちの背中にいそいそと乗って歩く気はないようだった。なんつー横着と言いたくなるけれど、もしかして真ん丸鳥さんの生態なのだろうか。毛玉ちゃんたちも嫌がっていないし良いかと黙っておき、ディアンさまたちがいるダークエルフさんたちの拠点を目指す。

 

 コテージから歩くこと暫く、ダークエルフさんたちが住む拠点に辿り着く。森の中のコテージと同じ雰囲気だけれど、建屋の規模が向こうより大きい。私はディアンさまがいるコテージの扉の前に立って、扉を二度ノックし口を開いた。

 

 「こんにちは。どなたかいらっしゃいませんか?」

 

 『ポエー!』

 

 私の声と同時に真ん丸鳥さんも大きく一度鳴く。特徴的な気の抜けそうな鳴き声に私は苦笑いになってしまう。クロとリンが『元気だねえ』と感心していると、扉がゆっくりと開いてダークエルフのお姉さんが出迎えてくれた。

 彼女の直ぐ後ろにはダリア姉さんとアイリス姉さんがいて、私に手を振ってくれている。お二人に笑みを浮かべて小さく会釈をして、ダークエルフのお姉さんと視線を合わせた。相変わらず見上げているのは、どうにかならないかと言いたくなるけれど。

 

 「すみません、ご相談があってお伺いさせて頂いたのですが……」

 

 「代表を呼びますね。中に入って少しお待ち頂けますか?」

 

 ダークエルフのお姉さんに『もちろんです』と私は返して、部屋の中へと案内される。コテージの壁には弓矢や狩猟道具が飾られており手入れも行き届いていた。ダリア姉さんとアイリス姉さんによって応接室に通され椅子に腰を下ろすと、リンは私の後ろに控え毛玉ちゃんたちは床の上に各々お尻を落とす。ヴァナルと雪さんたちも床にお尻を付けるとディアンさまがやってきた。

 

 「随分と懐かれたようだが……見たことのない種だな」

 

 「私も見たことがないですね。飛べないようですが、本当に警戒心がありませんねえ」

 

 ディアンさまに続いて、ベリルさまも部屋にやってきて真ん丸鳥さんを見下ろす。私の正面にディアンさまが椅子に腰を下ろして後ろにベリルさまが控えた。

 

 「毛玉ちゃんたちが彼らを連れてきたのは良いのですが、逃げることもなく懐いてしまったようなので、どうすれば良いのかご意見を伺いに参りました」

 

 「なるほど。彼らの好きにさせておけば良いだろう」

 

 私の問いにディアンさまが答えてくれる。本当に好きにさせておいて良いのだろうか。このまま人間に慣れ過ぎて、自然の中で生きられないとなれば問題だ。

 

 「ですがあまり人間に懐いてしまうのは……」

 

 「島では無駄に命を奪わなければ構わない。強ければ生き延び、弱ければ淘汰される。人間に懐いて保護下に入り生き延びるのも一つの手だ」

 

 ディアンさまが私を見て小さく笑う。確かに彼の言う通りではあるけれど……自然の中で育って欲しいと願うのは私のエゴなのだろうか。難しい問題だなと眉間を顰めていれば、ダリア姉さんとアイリス姉さんが私の横に腰掛けた。

 

 「一緒に過ごすくらいは良いんじゃないのかしら? ご飯はお腹が空けば勝手に取りに行くでしょうし」

 

 「彼らが選択したことだしね~。まあご飯は自前で用意できなきゃ問題だけれど暫くは様子見かな~?」

 

 確かにご飯くらいは自前で確保して貰わないと困る。そういえば真ん丸鳥さんはこの五羽以外にも島にいるのだろうか。

 

 『いるみたいだよ。いろんな場所に散らばって隠れているんだって』

 

 私の疑問にクロが答えてくれる。なるほどコロニーを形成してそれぞれで暮らしていたようだ。ご飯は木から落ちた果物や地面の草花らしい。動きがゆっくりで虫や動物は捕まえられず、草食になったとか。本当によく自然の中で生きられたなあと感心しながら、大蛇さまにも報告しておこうとダークエルフさんの拠点から島の沼地を目指すのだった。

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