魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0522:再訪。

 ――フィーネさまが聖王国に戻って、二週間が経っている。

 

 北大陸の更に北にある神さまの島の手前にある岩礁まで辿り着き、私が魔力を練るとグイーさまなのか北か東か南の女神さまか誰か分からないけれど、転移を施してくれて神さまの島に辿り着いていた。

 

 友人を誘っても良いということだったので、亜人連合国のディアンさまとベリルさまとダリア姉さんとアイリス姉さんを誘い、フィーネさまとアリアさまとロザリンデさまを巻き込んで私たち一行はバーベキューの約束を果たすべく上陸したのだ。

 副団長さまと猫背さんは向こうから行きたいと申し出があり、陛下に許可を頂いて同行している。外務部からは最近聖王国から戻ってきたばかりのエーリヒさまと緑髪くんが一緒だった。今回はグイーさまの要望通りエル一家とグリフォンさんも一緒である。グリフォンさんたちのお仔は子爵邸でポポカさんたちとお留守番だ。彼らのお世話は私でなくとも、子爵邸の方でもできるのでお願いしてきた。

 

 エーリヒさまとフィーネさまとの間で流れる空気が甘ったるい気がする。そんな二人を見るジークと緑髪くんの目が優しい気もする。そして彼らを見る周りの目が生温かい気もしているが……まあ、良いか。

 

 誰もいない神さまの島で私たち一行が待っていると、ふいに靄が現れてどんどんと人の形を成していく。時折紫電を発しているため、皆さまは驚きを隠せていないけれど私はグイーさまがみんなを驚かそうとしているのだなと分かってしまったので、しばし経過を見守っていた。そうして人の形となって髪の毛や服が形成されていく。マジマジと見ていれば結構グロいなというのが正直な感想だった。

 

 「おお、皆よくきたな! 歓迎するぞ!!」

 

 両腕を広げたグイーさまが嬉しそうに声を上げると、北と東と南の女神さまも姿を現した。私は小さくお三方に頭を下げると、北と東の女神さまは小さく片手を振り、南の女神さまは『おう』と答えてくれた。変わりない様子なので神さまの島で日がな一日を過ごしているようである。久方ぶりの来客にグイーさまは凄く喜んでいるので、まるで大きな子供を見ているようであった。

 

 「お久しぶりではないですが、お邪魔致します。あと先日はお世話になりました」

 

 私は機嫌良く笑っているグイーさまに頭を下げれば、にっとグイーさまが更に笑みを深めた。

 

 「ナイ、気にするな! ところで、あの欲に塗れた不届き者はどうなったのだ?」

 

 あれ、グイーさまであれば黒衣の元枢機卿さまの状況を把握できるのではなかろうか。もしかして覗き込むのが億劫だったのかと首を傾げたくなるが、彼の疑問に答えねばと私は口を開いた。

 

 「今は牢屋の中にいます。そのうち鉱山へ送られるかと」

 

 例の男性の現在は聖王国の牢屋に捕らえられている。隠し財産がないか洗い浚い喋りつくして頂ければ、アガレス帝国の鉱山へと送り届けられる予定だ。どうしてウーノさまが面倒な方を引き取ったのか気になるところではあるが、元第一皇子殿下に可愛がられる可能性がある。まあ、彼がどうなるかは鉱山の中にいる方たちだけ知っておけば良いか。

 

 「鉱山でなにをするのだ?」

 

 「借金返済のためにタダ働きです。ツルハシでひたすら穴を掘り進めることになるかと」

 

 ツルハシで穴を掘って、適宜爆破で掘り進めるのだろうなあと遠い目になる。有毒ガスも出るだろうし本当に過酷な労働条件だ。生臭坊主だった彼は過酷な環境に耐えられるか気になるところである。

 

 「なるほどな! しかしひょろひょろしたあの男にツルハシをマトモに扱えるとは思えぬが……」

 

 グイーさまは彼の行く末に満足しているものの、彼が置かれるであろう生活環境に疑問を感じ取ったようだ。教典より重い物を持ったことがなさそうだから、ツルハシはさぞ重いだろう。そして更に重いツルハシを振り上げて下ろす作業を延々と続けることになる。慣れないウチはゲロを吐きながらの作業になりそうだし、周りの方々に『使えない』と罵られることだろう。

 

 「振っていれば自然と筋肉が付くかと。あとは食事と睡眠の取り方次第でしょうか」

 

 ツルハシは格闘技界隈だと打撃の威力を高めるために使われている道具――ハンマーでも良いけれど――である。腕を振り上げて下ろすという作業と、地面と鶴嘴がインパクトする直前に筋肉を締める行為を打撃に応用できるらしい。試したことはないけれど、テレビだかで偶然観て得た知識だった。鉱山送りに処されたら、筋肉ムキムキになっている可能性も十分あるのだが……想像したくない。

 

 「まあ、男のことはどうでも良いか! 儂はナイたちがくるのを楽しみにしていた! バーベキューとやらを楽しもうではないか!」

 

 ハハハと笑うグイーさまに東と北と南の女神さまが呆れていた。三女神さまは長子である西の女神さまを心配しているようである。でも父神さまであるグイーさまは大らかなのか、あまり気にしていないご様子である。

 

 「西の女神さまの心配は……?」

 

 「もう何千年も部屋に引き籠っているからな。数年、引き籠もりが延びたところで大した差はない。もちろん心配はしているが、出てこないものは仕方ないこともあろう」

 

 グイーさまは私たちがプレッシャーを感じないようにと、あえて軽い調子でいるのだろうか。そう考えると彼の今の態度には納得できる。流石に数千年単位で引き籠もっている娘を心配しない親はいないだろうし、心配しているからこそ私にどうにかならないかと頼った訳である。

 しかしまあ、私とジークとリンとエーリヒさまと副団長さまに猫背さん以外の方々の緊張している姿が新鮮である。フィーネさまは元日本人だというのに、かなり硬くなっていた。アリアさまもコミュ力お化けなのに今回ばかりは、彼女の特殊能力は発揮されそうもない。

 

 「さあ、屋敷に行こう。自己紹介は屋敷に着いてからだな! それと準備が足りないものがあるなら儂が創造すれば済む。遠慮なく申し出てくれ!」

 

 グイーさまがくるりと踵を返して神さまたちのお屋敷を目指す。道行く途中で他の神さまにも出会い、礼を執りながら歩を進めた。割と多くの神さまが住んでいらっしゃるようだ。

 もしかして元居た世界にあった神話のように、ドロドロとした関係もあるのだろうか。そうなるとグイーさまにはテラさまの他にも奥方さまがいそうである。もしくは不倫の末に一緒に暮らしていないのだろうか。

 

 「親父殿は母上一筋だぞ?」

 

 「ええ。適当そうに見えて、その部分に関してだけは真面目ですものねえ」

 

 「唯一、父上さまの誇れるところです」

 

 三女神さまからのグイーさまの評価がボロクソのような気がするのだが……当の本人は気にすることもなく、大きな体を揺らしながら先頭を歩いていた。しかし三女神さまは私の心の中を勝手に読んでいる。

 

 「今更だろ」

 

 「今更ですわねえ」

 

 「お嬢ちゃんは分かり易いもの」

 

 南の女神さまがそっけなく、北と東の女神さまが面白そうに言葉にした。三女神さまの言葉に心の中でそうですか、と返事をする私が悪いのかもしれない。ジークとリンとクレイグとサフィールにも私の心の内はバレバレであるし、ダリア姉さんとアイリス姉さんにも読まれている。

 最近はソフィーアさまとセレスティアさまもバレているのか、良く先読みされて話を告げる前に会話が進むことがある。もちろん確認は大事なので、私の意思や意見を問われるけれど。

 

 そうこうしているうちに神さまのお屋敷に辿り着いた。以前より敷地面積が広くなっているのは気の所為だろうか。広くなっていると感じている方は私以外にもいるようで、グイーさまと三女神さまに不思議そうな視線を向けている。今回、島に初めてきた方たちは前の状態を知らないので首を傾げているけれど。

 

 「お屋敷の庭が広くなっていませんか?」

 

 「ナイたちを受け入れるし、天馬やグリフォンがいると南の娘から聞いていたからな! 広くしておいた。存分に遊んでくれ!」

 

 腕を組みながらガハハと豪快に笑うグイーさまに呆れている面々が三名いた。当然、三女神さまである。そして一番呆れた顔で息を吐いているのは南の女神さまであった。

 

 「力の無駄遣いだよな」

 

 「良いではないか! 力は有り余っているんだし問題なかろう」

 

 組んでいる腕をグイーさまは解いて、南の女神さまの頭の上に片手を置いた。そしてぐりぐりと手で彼女の頭を撫で付けている。

 

 「ぬお! 親父殿、止めろ! 背が縮むだろ!!」

 

 流石に南の女神さまは自分の父親に怒髪天は落とせないようだ。おそらくグイーさま以外が南の女神さまに同じことを行えば、神罰が下っているはず。親子の絆は確実にあるのだなと感心していると、グイーさまが新たな面子を紹介して欲しいと仰る。

 私はグイーさまの前に出て、順にディアンさまとベリルさま、そしてエルフのお姉さんズであるダリア姉さんとアイリス姉さんを紹介した。

 

 「我らを迎え入れて頂き、感謝致します」

 

 ディアンさまが亜人連合国の皆さまを代表してグイーさまと三女神さまに挨拶をしているけれど、彼が敬語を使っている所を初めて見た気がする。ご意見番さま相手であればディアンさまもベリルさまも敬語を使っていただろう。ご意見番さまの生まれ変わりということでディアンさまたちは、クロに敬語を使っているけれどノーカウントとする。

 

 「できることなら、お主らの竜の姿も見てみたい! きっと壮観だろうなあ!」

 

 グイーさまがカラカラと笑いながら告げた。確かにディアンさまとベリルさまの本来の姿は凄く神秘的で雰囲気がある。神さまでも竜の姿はトキメクものがあるのだなと、ディアンさまとベリルさまへ視線を向けた。

 

 「屋敷で竜化すればご迷惑となりましょう。広い場所があればいつでもできます」

 

 「そうか。ではあとで見せてくれ! クロは小さいしなあ……」

 

 グイーさまがにかっと笑ったあと、揶揄うようにクロへと視線を向ける。クロは私の肩の上で長い尻尾をぺちぺちと背中に打ち付けているので、グイーさまの言葉は不本意なようだ。

 

 『小さくないよ! ボク、大きくなれるからね!』

 

 クロはぬっと身体を伸ばしてグイーさまに抗議している。

 

 「じゃあ何故ナイの肩の上にいるのだ?」

 

 抗議されたご本人は全く気にする様子はないまま、クロへと言葉を投げた。

 

 『ボクはナイが好きだからね』

 

 「なんと! ナイは罪深いのう」

 

 クロの声にグイーさまが私に視線を向けた。クロの場合、恋愛感情というよりは親愛とか家族とかそちらに近い気がする。

 

 「クロが言いたいのは、家族愛とかの類いかと」

 

 『ナイは前のボクを救ってくれたからねえ』

 

 私の言葉にぐりぐりとクロが顔を擦り付けると、グイーさまは小さく息を吐いて『そうかそうか』と納得し、他のみんなの紹介を終えてバーベキューを始めようと大きな声を上げるのだった。

 

 ◇

 

 バーベキューを始めようと案内された先は、西の女神さまが引き籠もっている部屋の真ん前だとか。窓からも侵入はできないようで、何千年も放置されている女神さまって如何なものだろうかと首を捻りたくなる。

 

 まあ、引き籠もりの女神さまは一旦置いて、バーベキューを楽しもうと準備を始める。アルバトロス王国から持参した荷物は全てロゼさんが収納してくれていた。参加者が多いので割と荷物が多いのだが、全て収納できたのでロゼさんの中身は一体どうなっているのだろう。

 副団長さまと猫背さんも『凄いですねえ』『本当に』と感心しており、気を良くしたロゼさんはまんまるボディーをぷるんと張ってドヤっていた。グイーさまも感心しており、更に気を良くしたロゼさんが普段より三倍大きくなっていた。私はそんなロゼさんの側に寄り、しゃがみ込んだ。

 

 「荷物沢山持って貰ってごめんね、ロゼさん」

 

 右手を伸ばして普段より三倍大きいロゼさんボディーを撫でれば、いつものロゼさんサイズに戻った。大きいロゼさんも可愛いのに勿体ないと思いながら撫でていると、機嫌の良いロゼさんがぽいっと最後の荷物を吐き出した。

 ロゼさんが出してくれた荷物はアルバトロス王国の男性陣が荷解きして、準備を始めてくれている。野外で楽しむことは男性陣の仕事となるらしい。あとで材料を切るので、私はそっちで協力する予定である。

 

 『ロゼ、大丈夫! マスターの魔力一杯貰ってる!』

 

 ぷるんと身体を震わせてロゼさんが答えてくれる。魔力をあげたつもりはないのに、魔力を一杯貰っているとはこれ如何にと首を傾げたくなる。私の魔力操作が未熟だから、漏れ出た魔力を蒐集してくれているのだろうか。環境汚染がなければ良いかと私は立ち上がりロゼさんの所からグイーさまたち神さまの下へと歩いて行く。グイーさまたちに亜人連合国のディアンさまたちにエル一家とグリフォンさんを紹介したい。

 

 「おお、ナイ! 凄い量の荷物だな! 酒もあるようだし、お主は気配り上手だ!!」

 

 グイーさまが飲み食いするのが楽しみと言いたげに、ロゼさんが吐き出した荷物を眺めていた。東と北と南の女神さまもしげしげと荷物を眺めているので、中身が気になるようだけれど。

 アルバトロス王国で調達できる品だから特に変わったものはないはずである。とはいえ、神さまの島では珍しいのかもしれない。家や街並みはあれど、生活感というものを感じないし、人気というか神気がないような気もする。

 

 「ワインはアルバトロス王国の陛下とハイゼンベルグ公爵閣下とヴァイセンベルク辺境伯閣下から譲り受けました。ウイスキーは教会の枢機卿さまたちからです。グイーさまの口に合う銘柄があれば良いと心配なされていたので、気に入られた品があれば教えて欲しいです」

 

 グイーさまはお酒が好きだろうと踏んで、陛下と公爵さまと辺境伯さまに美味しいワインを教えて頂き、ウイスキーは教会の枢機卿さまから教えて貰い譲り受けている。カルヴァインさまはお酒は嗜まないし、二人の枢機卿さまもあまり嗜まないのだが、お貴族さまに人気の銘柄を預かったのだ。

 陛下と辺境伯さまに枢機卿さま三名は神さまに献上するということで凄く胃が痛そうにしていたけれど、公爵さまは自分がお勧めのワイン以外にも日本酒も私に預けた辺りなにを考えているのやら。公爵さまのことだから、飲み仲間が欲しいだけかもしれない。

 

 「なるほど。この場にきていない者も我らを慮ってくれているのか。よいよい。酒は全部美味いからな。腹の中に納まれば同じよ!」

 

 確かにお腹の中に納まれば全部同じだし、美味しかろうと不味かろうと食べた物は下から出て行く。とはいえ、口の中に広がる美味しさや鼻に抜ける香りを楽しむのことができるのは、生きている者の特権だ。

 

 「いや、味わってくださいね?」

 

 食べ物や飲み物は味を楽しんでこそである。美味しい品があるから不味い品でも楽しむことができるし、珍しい料理に舌鼓したり逆に不味いと感じて同席者と『私は無理かも』と顔を顰めつつ笑うのだ。お酒の味はイマイチ分からないが食べ物と同じであろうとグイーさまの顔を見上げる。

 

 「お主、酒を飲んだことないだろう?」

 

 「ありませんが、個々人に好みはあると知っていますから……あの、きちんとご紹介したい方たちがいらっしゃるのですが」

 

 彼はにやりと笑って私を見下ろしているので話題を変えようと、今回一緒に私たちと共に神の島にやってきた方の紹介を請うてみる。先ほどの紹介は凄くざっくりとした物だったので、改めて彼らを紹介しておきたい。なにせ私が凄くお世話になっている方々なのだから。

 

 「おお、そうだった。ナイ、紹介を頼む」

 

 グイーさまに頷き、真っ先に紹介すべきはディアンさまたちであろうと私は彼らに視線を向ける。ディアンさまたちは呼ばれていると気付いてくれて、こちらへゆっくりと歩いてきた。

 

 「亜人連合国の皆さまです。クロが卵だった頃にお世話になり、縁が続いております」

 

 私の隣に立ったディアンさまが半歩前に出て、グイーさまに丁寧に礼を執る。珍しいこともあるのだなあと目を細めていると、彼が口を開いた。

 

 「亜人連合国代表、オブシディアンと申します。彼女のご厚意により神の島に立ち入ることになったことは光栄です」

 

 「お主、どれほど生きているのだ?」

 

 ジークより身長の高いディアンさまであるが、グイーさまと視線の位置が同じだった。お二方とも身長が高くて羨ましいと渋い顔をしていると、私の後ろからアイリス姉さんの腕が回り引き寄せられる。

 彼女は身体を左右に揺らしながら、グイーさまとディアンさまの会話を聞いている。どうしたのかと顔を思いっきり上げると、どうにかアイリス姉さんと視線が合った。彼女はいつも笑みを浮かべているのだが、今は更に笑みを深めて意味深な顔をしている。私がなんだろうと首を傾げると、今度は横からダリア姉さんの腕が伸びてきた。

 

 「万単位の時が過ぎてから数えることを止めました。人の形を成しているのは竜の姿より彼女らと交流を持ち易いので、ご要望があればいつでも竜の姿に戻ります」

 

 しかしまあ、ディアンさまの敬語は珍しい。彼は竜ということもあり、西大陸のお偉いさん方にも使わないので少し面白かった。

 

 「ハンベルジャイトと申します。この度の入島許可、厚く感謝いたします」

 

 「気にするな! 儂がナイに友人を連れてきてくれと頼んだからな! 楽しんでくれたなら幸いだ。そして娘の引き籠もりが解消されれば言うことがないが……頑固だからなあ……」

 

 ベリルさまも丁寧に礼を執ってグイーさまと挨拶を交わす。今の光景を見たダリアさまが『胡散臭いわねえ』と漏らしているので、ベリルさまの態度が気になるようだ。

 確かにベリルさまはいつも笑っていて表情を変えることが少ないけれど私に対していつも真摯な態度なので、ダリア姉さんとアイリス姉さんが彼に毒を吐いている理由がイマイチ掴めなかった。長い付き合いだろうから、いろいろあったのだろう。もしかすれば付き合いの長さ故に気を許している可能性もあるので、私の心配が杞憂に終われば良いのだが。

 

 「お主らは?」

 

 グイーさまがディアンさまとベリルさまから視線を変えて、こちらへ向き直る。ダリア姉さんは私に回していた腕を離してぴしりと立ち、アイリス姉さんも姿勢を正した。

 ディアンさまとベリルさまがお二人に微妙な視線を向けている気がする。おそらくいつもと違う態度なので違和感があるのだろう。ダリア姉さんとアイリス姉さんが気を張っている所は珍しいと、私も少し面白い視線を向けてしまいそうだった。

 

 「エルフのダリアと申します」

 

 「同じくエルフ族のアイリスです~お世話になります」

 

 真面目なダリア姉さんとアイリス姉さんの態度が新鮮だとグイーさまに視線を向ける。

 

 「世話になるのは我らの方だな。楽しんでいってくれ! まあ、準備をするのはナイであるがな!」

 

 グイーさまの腕が私の頭に伸びてきて、わしゃわしゃと頭を撫で付ける。馬鹿な頭が更に馬鹿になったらどうするのだろうかと、私は両手を伸ばしてグイーさまの腕を掴む。

 

 「グイーさまも手伝ってくださいね?」 

 

 手伝って欲しいとお願いしながら、ぐぐぐと伸ばした腕に力を入れるが、頭の上からグイーさまの片腕は移動してくれそうにない。私の様子にグイーさまが面白そうに笑いを深めながら口を開いた。

 

 「儂にできることがあるならな。調理は手を切る自信がある!」

 

 ガハハと笑うグイーさまに駄目だこりゃと私は肩を竦める。神さまが手を切ったら、地上に天災とか起こりそうだし無難にお酒を飲みながら準備が整うまで待っていて貰おう。

 

 「すまん、もう一度名を教えてくれるか?」

 

 先程みんなを紹介したものの、流石に一度に覚えるのはグイーさまにも難しい様だった。問題ないことだし大勢の方を一度に覚える苦労は私も知っている。

 私はジークとリンとソフィーアさまとセレスティアさまに、エーリヒさまと緑髪くんと副団長さまと猫背さんを紹介する。で、今回誘ったフィーネさまとアリアさまとロザリンデさまも紹介し終えた。

 

 「あれ、お婆さまは?」

 

 私はふと首を傾げた。面白そうな話があれば嬉々として駆けつけるのに、今日はどこに行っているのだろうか。そういえば西の女神さまについて知っていることはないかと聞こうとしていたのに、結局聞かないままで終わってしまっている。本当にお婆さまはどこに消えたのかと首を捻っていると、ディアンさまが首を傾げながら答えてくれる。

 

 「お婆はどこかに行ったままだな……いつもなら面白そうだと姿を現すのだが」

 

 「呼べばきてくれるでしょうか?」

 

 「試してみては如何でしょう」

 

 困り顔のディアンさまに私が問えば、今度はベリルさまが答えてくれる。せっかくみんなが集まっているのにお婆さまが不在というのも変な話だ。それにどこに行ったのか気になるなら、行方不明のお婆さまを呼んでみるのが一番早いだろう。少し魔力を練って地面に流してみる。そして……。

 

 ――お婆さま!

 

 と、心の中でお婆さまの名を叫ぶ。地面に魔力を流しておけば、お婆さまもこの場所が分かり易いだろうと少量施してみたのだが、さて。

 

 『はーい! 呼ばれたから飛び出てみたわ! って、ここはどこ?』

 

 ぱっと私の目の前が光るとお婆さまが翼を羽ばたかせながら姿を現した。グイーさまが目を丸くして驚いているようだが、とりあえず私はお婆さまに答える。

 

 「お婆さま、お久しぶりです。ここは神さまの島です」

 

 『は?』

 

 お婆さまは私の言葉になにを言っているのだと言いたげな顔になり、しばし固まる。

 

 『冗談を言ってわたしを驚かそうとしているのね! わたしは妖精の長。そんな子供騙しみたいな言葉に惑わされないわ!』

 

 気を取り直したお婆さまは両手を腰に当てて胸を張る。私はグイーさまの方へと顔を向けると、グイーさまと三女神さまがお婆さまへと手を振った。

 

 『ほ、ほ、ほ……本物ぉぉおおおおおおおお!!』

 

 辺りに響く声は小さいお婆さまから出た声だと信じられない音量だった。え、え、と困惑しているお婆さまに私はグイーさまの下へと案内して、挨拶をと願うのだった。

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