魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0557:亜人連合国へ行こう。

 卵さんから孵ったポポカさんたちはグリ坊のアシュとアスターに構われつつ『ピョエ』とポポカさんらしくない鳴き声を発しながら、毛が生え揃い小さなポポカさんへと変わっていた。あと残りの卵さん三つも無事に孵り、仔ポポカさんが六羽となった。

 

 親ポポカさんたちも卵から孵ったばかりの仔たちのお世話を始めており、大変微笑ましい姿を見せてくれている。その隣でグリフォンのジャドさんが首を回転させながら『可愛いですねえ』と惚気ているのが、サンルーム内の日常になりつつあった。

 

 家宰さまとソフィーアさまの手腕により、私の予定調整ができた。

 

 少し前にダリア姉さんとアイリス姉さんと交わしていた亜人連合国に赴く約束を果たす日がやってきたのだ。女神さまは竜の方が沢山住んでいると聞き及び、楽しみにしていたようで雰囲気がぽやぽやしている。

 子爵邸の自室で準備を終えたジークとリンと私は時間まで少し暇をつぶしている。女神さまはポポカさんたちの様子を見てくると仰って、ここにはいない。床の上にはヴァナルと雪さんと夜さんと華さんがまったりしており、毛玉ちゃんたち三頭は女神さまの後ろを尻尾ぶんぶんで付いて行った。ロゼさんは久しぶりにヴァナルのお腹の所でまったりしている。ロゼさんは転移を担ってくれるので、英気を養っているようだった。

 

 『久しぶりだねえ。向こうに赴くのは』

 

 「そうだね。いろいろ忙しくて出向く暇がなかったから」

 

 クロが私の肩の上で首を傾げている。亜人連合国へ遊びに行こうとしていたのだが、何気にいろいろとイベントが起こって足が遠ざかっていた。子爵邸の土を移設して畑の妖精さんの移民が成功しているのかも気になるし、竜の方たちが増えていると聞いているので三年前とどれだけ違うのかも興味がある。

 エルフの街も反物の輸出で活気づいているし、ドワーフさんも鍛冶依頼が多く舞い込んでいるため毎日仕事に明け暮れているとか。ドワーフの村に最初に訪れた時は寂れているという印象が強く

 

 「久方ぶりだな」

 

 「ね」

 

 ジークとリンが視線を合わせて小さく笑うと、彼らの腰に佩いているカストルとレダから微かな魔力が放たれた。

 

 『俺らを鍛えたドワーフにまた会えるのかぁ! 超楽しみだぜ、お嬢ちゃん!』

 

 『相変わらず馬鹿剣は煩いのね』

 

 微妙な魔力を感じたのは彼らが喋るからかと納得するのだが、やはり彼らが口を開くと姦しくなる。どうにも女神さまがいると彼らは畏まってしまうようで、無言を貫き通していた。今は女神さまが側にいないので、お喋りし放題という訳である。

 なんだかチキンな剣だなあと微妙な気分になるものの、ジークとリンにとって彼らは相棒である。柄を握った時の馴染み方や切れ味が既存の剣とは全く違うらしい。

 

 「そっか、レダとカストルを創った方となると親みたいな感じになるのか」

 

 『おう。使い手も大事だが、創り手も俺らに取っちゃあ大事な存在だなあ!』

 

 私の言葉にカストルが勢い良く答えてくれた。カストルはリンのことを自分のことを十全に使ってくれる人間だと理解しているようだ。まあ最近は討伐遠征に行くこともないので、レダとカストルの活躍の場が減っているので申し訳ないけれど。

 武器や兵器は使われないまま役目を終えるのが一番だという格言もあるので、その辺りはどうなのだろうか。なんとなくリンの腰に佩いているカストルからジークが履いているレダへと私は視線を移す。

 

 『マスター、私はマスターの魔力を日々取り込んで強くなっております。そろそろ魔術を放てそうな気がします!』

 

 レダは私が視線を向けたことに気付いたようで、柄の部分がへにゃりと柔らかくなって少し曲がっていた。器用なことをすると感心していれば、とんでもないことを言い放った。長剣が魔術を放つって一体どういうことだろう。

 確かにゲームだと火を放ったり、水を出したり、風を起こしたりしているけれど。そんなことができるのかと疑問符を浮かべれば、私も手からビームを放てるなと納得する。魔力がモノを言う世界だから、なんでも魔力の所為にできてしまうのは如何なものだろう。

 

 「放つのは良いけれど……あまり無茶をしないでね、レダ」

 

 一先ず彼女の暴走を止めねばと、無難なことを言っておく。私の声を聞いたレダが柄の部分を先ほどより更に曲げている。

 

 『ああ! マスターに優しい言葉を掛けられましたわ! くっ……これ以上ない快感です!』

 

 艶めかしい声を上げるレダに部屋の中にいる一同が呆れかえった。彼女が私に対して向ける感情は明後日の方向を目指している。レダが私のことを一番に置いていることを周りも認めているので、彼女の言葉がどんどん過激になっている気がしなくもない。まあ、他の面子の前で妙な発言さえしなければ良いか。

 

 『うわ、相変わらず気色悪ぅ!』

 

 『うっさい、馬鹿剣!!』

 

 カストルとレダはいつも通りだなあと遠い目をしていると、部屋にノックの音が響いた。ジークがいるので扉を開放していたので、既にノックの主の姿は見えている。同行するソフィーアさまとセレスティアさまの準備も整ったようで出発の時間が迫っているのだろう。

 

 「ナイ、準備は良いか?」

 

 「ふふふ、亜人連合国へ赴くのは久しぶり。ナイ、わたくしが粗相を犯せば当主として罰してくださいませ! 竜のお方に失礼があったとなれば言語道断ですもの!」

 

 小さく笑みを携えていたソフィーアさまが、セレスティアさまの声を聞くなり怪訝な顔を浮かべる。セレスティアさまはバッと鉄扇を広げて口元を隠し、いつもより気合が入っているドリル髪がぶわりと揺れた。

 

 しかしセレスティアさまが粗相を犯すことはあるのだろうか。時折、一人で勝手に舞い上がっていることがあるけれど、酷ければソフィーアさまが抑え込んでいる。恐らく妙なことにはならないけれど、竜のお方がセレスティアさまに興味を示せば鼻血くらい余裕で吹き出しそうだし、背中に乗ってみるなんて言われた日には即行で返事をして亜人連合国の大地を駆けるか飛ぶかするのだろう。

 悪いことではないから良いかと私が小さく息を吐くと、カストルとレダも小さく息を吐いた。いや、長剣が息を吐くっておかしいけれど。

 

 『テンション高い姉ちゃんだよなあ』

 

 『まあ、竜が沢山いると聞きましたから、彼女の場合仕方ないのでしょう』

 

 レダは私が関わらなければ普通だよなあと目を細め、私は当主としてみんなの顔を見る。

 

 「では、行きましょうか」

 

 「ああ」

 

 「ん」

 

 真っ先にジークとリンが返事をくれた。

 

 「行こう」

 

 「参りましょう。ええ、早く竜のお方に会いにいかねば!」

 

 そっくり兄妹に続いてソフィーアさまとセレスティアさまも返事をくれるが、某お方は欲望が駄々洩れである。

 

 『セレスティアはボクたちをほぼ毎日見ているのに、そんなに竜が珍しいのかなあ……?』

 

 「クロ。話が長くなるから黙っておこう」

 

 クロが不思議そうに私の肩の上で思いっきり首を傾げる。確かにクロとアズとネルをほぼ毎日彼女は見ているし、休憩時間の時にはクロがセレスティアさまに声を掛けて話し込んだり遊んでいることもあるのだから。

 アズとネルはジークとリンが大好きなので中々難しいけれど、セレスティアさまの髪が萎れていると気になるようで、クロと一緒にテーブルの上で三頭並んで彼女を見つめているのだが。ただ今は話を彼女に振れば絶対に長くなると確信しているので、私はクロの鼻の上を右手の人差し指で軽く押さえる。にょわ、と妙な声がクロから聞こえたけれど、気にしたら負けだ。

 

 本当はユーリも一緒に連れて行きたいけれど、まだ幼過ぎるのでもう一年くらいは我慢だろう。お貴族さまの子供は五、六歳くらいまで屋敷から出ない子もいると聞く。医療が発達していない弊害だよなと考えながら、サンルームでポポカさんとグリフォンさんたちと遊んでいた西の女神さまを拾い、みんなで庭に出た。

 

 「ロゼさん、申し訳ありませんが……お願いします」

 

 『ロゼ、頑張る! マスター、あとで魔力頂戴?』

 

 ロゼさんを囲んで私が声を掛けると、ロゼさんは気合の入った言葉を紡ぐ。有難いことに西大陸の端から端くらいまでなら、今の面子を問題なくロゼさんは転移できるとのこと。竜が三頭いるから少しキツイと愚痴っており、クロとアズとネルがいなければ千人くらいは余裕で転移できるとか、できないとか。

 えーっと……現役の魔術師団の方で千人もの人数を転移できる方はいない。末恐ろしい情報を聞いてしまったと呆れつつも、まだロゼさんはできること、やれることを増やすつもりらしい。副団長さまと猫背さんを師匠と仰いでいるし、西の女神さまにもこっそり魔術を習いに行っているとか。西の女神さまから話を聞いた時には、あの人見知りの激しいロゼさんが……! と感激したけれど、とんでもスライムさんになりそうで怖かった。

 

 「ロゼさんが転移で使った分だけなら構わないよ」

 

 私の言葉にロゼさんはぷうと身体を膨らませる。どうやら消費した分以上の魔力が欲しかったようだ。私は少し拗ねたロゼさんボディーを撫でて機嫌を直して貰う。

 

 「ロゼの欲望は尽きないね。でも亜人連合国に行くのは楽しみ」

 

 西の女神さまが機嫌良くロゼさんを見下ろしながら、早く行こうと私を急かした。ロゼさんの転移で行くのだから、ロゼさんを急かせば良いのに西の女神さまは私を突く。何故ぇ、と言いたいがロゼさんは私の命がないと動かない。その辺りを女神さまはきっちり把握しているようだ。そうしてセレスティアさまにも『早く行きましょう!』と視線で諭され、私はもう一度ロゼさんを撫でる。

 

 「では今度こそ。ロゼさんお願いします」

 

 『分かった! ロゼの周りに集まって!』

 

 ロゼさんが声を上げると地面に魔術陣が浮かぶ。なんだか前に転移を行った時より、魔術陣の円周が大きくなっているのは気の所為だろうか。眩い光に包まれて視界が真っ白に染まりお腹に浮遊感を覚えると、亜人連合国と隣国の境にある、ドワーフさんの村の前に転移を終えていた。

 

 ロゼさんが展開していた魔術陣が消え、視界がクリアになっていく。少し離れた場所にはダリア姉さんとアイリス姉さんとドワーフの長老さまである、伝説の鍛冶氏のお爺さんと職人の小父さま数名が待ってくれ、護衛の方なのか獣耳が生えている筋骨隆々な亜人の方も数名いらっしゃった。

 私たちの姿を見るなり、ダリア姉さんとアイリス姉さんが纏っている衣装を優雅に靡かせながらこちらへと歩いてくる。その後ろをドワーフの皆さまと護衛の方もついてきていた。

 

 「女神さま、ようこそおいで下さいました」

 

 「ナイちゃん、いらっしゃい~!」

 

 ダリア姉さんが女神さまに礼を執り、アイリス姉さんが両腕を伸ばして私を抱きしめる。むにっとなにかを押し付けられているような感覚に阻まれながら、私は周りをきょろきょろと見渡す。アイリス姉さんが私の行動が気になったのか、少しだけ抱きしめている腕の力が弱くなった。

 

 「よろしくね。畏まらなくて良いから」

 

 「代表さまと白竜さまは?」

 

 女神さまがダリア姉さんに返事をし、私は気になったことを聞いてみる。いつもであればディアンさまとベリルさまも出迎えてくれるはずなのに。

 

 「あの二人はご意見番の寝床を掃除しているわ」

 

 「仔竜たちの遊び場になっちゃったから、いろいろと散らかっているんだよねえ~」

 

 困った顔を浮かべてダリア姉さんとアイリス姉さんが事情を教えてくれた。ご意見番さまは辺境伯領の森の中で眠っているから、亜人連合国のご意見番さまの寝床だった場所はみんなに開放されたらしい。

 そして若い竜の方たちの遊び場になり、少しばかり様相が変わってしまったとか。女神さまがくると知って、ディアンさまとベリルさまはなるべく元の姿に戻すつもりだったのだが間に合わなかったようである。

 

 「気にしなくて良いのに。それは自然なことだ」

 

 『ね~?』

 

 女神さまの言葉にクロが同意の声を送る。女神さまとクロがそう言ってしまえば、ディアンさまとベリルさまの苦労が水の泡だ。私はディアンさまとベリルさまの努力が無駄にならぬようにと、女神さまと肩の上に乗っているクロにせめてお二人には言わないで上げてくださいと伝える。

 

 「では、行きましょうか」

 

 「行こう。少しだけ歩いてね~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが先頭を歩き、私たちアストライアー侯爵家一行と女神さまが続き、最後尾をドワーフさんたちと護衛の方が続く。さて、亜人連合国は以前訪れた時より変わっているのかなと首を傾げるのだった。

 

 ◇

 

 亜人連合国に入って一番最初にあるドワーフさんたちの村へと赴いた。以前は寂れた雰囲気が強かったのだが、新しい建物が増えているため小綺麗になっている。エルフのお姉さんズ曰く、建て直しや改築をして綺麗な見た目になったのだから、華やかな雰囲気があっても良いだろうとエルフの皆さまがプランターを持ち込んだそうだ。

 確かに以前にはなかった建屋の窓に鉢植えが置かれ、小さな花を咲かせている。ドワーフさんたち曰く、花を育てることに興味はないが枯らすのは忍びないので世話をしているとか。なんだかエルフの方々が強権を発しているように見えてしまうが、険悪にはなっていないようだし良いかと鍛冶場に赴く。

 

 「広い」

 

 鍛冶場も以前より拡張されて掃除も行っているようだ。

 

 「お嬢ちゃんの依頼以外にもいろいろと受けるようになったからな。火を司る妖精も居着いてくれたから、窯の火が絶えることはねえ。良いことだ」

 

 私が依頼を出す時にいつも受付を担ってくれるドワーフさんが両手を腰に当てながらにかっと笑う。髭をもさもさに生やしているので口元が分かり辛いけれど、目元には笑い皺ができていた。

 女神さまはドワーフさんの言葉を聞いて、きょろきょろと周りを見渡して窯に視線を向けて目を細める。煌々とオレンジ色の火が付いて、熱気がこちらまで届いていた。ドワーフさんの言葉通り、窯の上には妖精さんが鎮座してこちらを見下ろしている。

 

 「あ、本当だ。火属性の守護を持つ妖精がいるね」

 

 女神さまが火の妖精さんへ視線を向けると、恥ずかしいのか消えてしまった。

 

 「普通の妖精さんとは違うのですか?」

 

 私が普通の妖精さんとなにが違うのかと聞いてみると、女神さまは窯から私へ視線を移してくれる。

 

 「守護持ちの妖精は珍しいし、他の妖精と比べると強いし寿命も長いんだ。この場所が気に入ったみたいだけれど、汚くしたら知らないって言っている」

 

 小さく笑っている女神さまの側に火を司る妖精さんがぱっと現れて、肩に手を突いて私を見ていた。確かに髪の毛がめらめらと赤く燃えているし、なんだか強そうだし熱そうだ。よく火傷しないなと感心していると、女神さまの言葉に鍛冶場にいたドワーフさん一同が固まる。

 

 「うっ……掃除、頑張ります」

 

 どうやらドワーフさんたちは掃除が苦手なようである。確かに以前の鍛冶場は道具が散乱していたり、埃が落ちてもいた。今は改築したばかりということもあって綺麗な状態だ。5S――整理・整頓・清潔・清掃・躾――は大事と言われているし、ドワーフさんたちには現状維持を是非とも頑張って欲しい。

 

 「ん。逃げられないようにね」

 

 くすくすと小さく笑う西の女神さまにダリア姉さんとアイリス姉さんが身体を向けた。

 

 「助かります、女神さま」

 

 「ドワーフは部屋や仕事場を綺麗に保とうって意思が弱いから~」

 

 なんだかドワーフさんたちがどんどん小さくなっているような気がする。ふと、ジルヴァラさんのような妖精さんがいれば問題がなくなるのではと考えるが、妖精さんが居着くというのは珍しい現象なのだそうだ。火の妖精さんのように、お家の妖精さんがドワーフさんの下へとやってくるように願うばかりである。ドワーフさんたちにはレダとカストルの点検をお願いして、次はエルフの街に行く予定だ。

 

 『マスター! 綺麗になって戻ってきますわ!』

 

 『良い男になってくるぜ!』

 

 ジークとリンがドワーフさんたちにレダとカストルを預けると、二振りが声を上げた。元気で良いけれど、元気過ぎではないだろうか。まあ二振りを預かっているジークとリンが大人しいから足して割って丁度良いのかもしれないけれど。

 

 「分かった。ドワーフの皆さまに迷惑を掛けちゃ駄目だよ」

 

 『はい!』

 

 『あいよ』

 

 私が声を掛けるとレダとカストルは返事をくれた。ドワーフさんたちに二振りをお願いしますと託せば、ジークとリンもお願いしますと頭を下げる。ドワーフさんたちは良い顔で『任せておけ!』と仰ってくれ、外まで見送ってくれた。そうして外に出るとダリア姉さんとアイリス姉さんが転移を使ってエルフの街へ行こうと申し出てくれた。

 

 「それじゃあ行きましょうか」

 

 「行こう、行こう~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが転移魔法を唱える。以前はどちらか一人が担当していたのに何故か二人で発動させていた。何故と首を傾げるが、今回は女神さまがいらっしゃる。二人で唱えて移動するのも仕方ないのかと考えていると、魔法光に包まれてエルフの街へと転移を終えていた。

 

 「緑が増えている?」

 

 転移を終えて視界に入る景色を以前と比べれば、エルフの街の中にある緑が増えている気がする。ドワーフの村にもプランターが増えていたから、エルフの街にも緑が増えるのは当然なのかもしれない。

 ツリーハウスの窓にも花が飾られて綺麗だし、街を歩くエルフの方が多くなっているような。妖精さんたちもフラフラと空を飛んで、追いかけっこをしたりエルフの方の髪を引っ張って悪戯を敢行していた。小さい竜のお方もエルフの街に遊びにきているようで妖精さんと戯れている。私たちに気付いた小竜さんたちがワラワラとこちらにやってきた。

 

 『聖女さまだー』

 

 『久しぶり~』

 

 小竜さんたちが顔を撫でてーと私の目の前に顔を差し出す。相変わらず無邪気な彼らは可愛いなと、言われるまま手を伸ばして顔を撫でると喉を鳴らして気持ち良いと伝えてくれた。

 

 『……?』

 

 一頭の小竜さんが女神さまを見上げて首を捻っている。凄く特別な雰囲気を醸し出しているけれど、西の女神さまだとは分からないみたいだ。女神さまはそんな小竜さんをじっと見つめてどうすれば良いのか悩んでいる。

 

 私が撫でてあげて下さいと伝えると、私の側にいた小竜さん二頭が『首の所、気持ち良い~』『顔も気持ち良い~』と撫で気持ち良い所を伝えてくれる。おずおずと手を出して女神さまが目の前の小竜さんに手を伸ばすと、小竜さんの方から女神さまの手に顔を当てる。女神さまはへにゃりと笑って小竜さんを嬉しそうに撫でている。私に撫でられるのが飽きた小竜さん二頭はジークとリンとクロとアズとネルとソフィーアさまとセレスティアさまに挨拶をしていた。

 

 「そろそろ代表と白竜が戻ってくるはずよ」

 

 「裸は駄目だから、竜の姿のままでくるからね~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが私たちに声を掛けて空を見上げたので、私たちも釣られて空を見上げる。綺麗に晴れている青空には所々に白い雲が流れている。夏の入道雲ではなく、晩秋に良く見る薄い雲だった。

 

 「しかしそれだと降下できないのでは……?」

 

 超大型竜となるディアンさまとベリルさまが降りられるスペースがエルフの街にはない。降りられるのは中型の竜のお方が限界だろうと頭を捻っていると、ダリア姉さんとアイリス姉さんが私を見ながらくすくす笑っていた。

 

 「そうなのよ。街に図体のデカい竜が降りられる場所はないから」

 

 「広い所に降りて私たちが向かうよ。あとね~竜たちの間でお迎え争奪戦があったみたい~」

 

 エルフのお姉さんズが苦笑いをしていると、空にちらほら竜のお方たちが飛ぶ姿が見えた。側にいた小竜さんが私の後ろから、脇に顔を挟み込んで上を見て『みんなきた~』と声を上げた。

 女神さまの方にいた竜の方も彼女の隣で『みんなくる~』と呟いている。もしかしてディアンさまとベリルさま以外の竜もエルフの街にお迎えにきてくれるのだろうか。空を見上げていると竜の方の姿がどんどん増えていく。小型から大型の竜のお方まで大きさはいろいろだった。そして地面を踏みしめる音が複数聞こえてきた。

 

 「あー……嬉しくて、みんなきたみたいね」

 

 「珍しい~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが森の奥を見つめる。私も彼女たちに倣って奥を見つめるのだが、竜のお方の姿は認められない。ジークとリンには見えているかなと彼らに振り向くと小さく頷いた。

 もう少し待てば私も見えるようになるともう一度空を見上げると、赤竜さんと青竜さんと緑竜さんが三頭並んでエルフの街の上空を旋回している。ディアンさまとベリルさまはどこだろうと、上を見ていると首が痛くなってきたので視線を戻せば森の奥から小型の竜のお方がこちらに走ってくる。

 

 「わらわらときたわねえ」

 

 「元気だね~」

 

 エルフのお姉さんズの呑気な声が聞こえ、私の隣にいる西の女神さまが『竜ってこんなにいたっけ?』と小さく呟いた。古代人の方々が生きていた頃なら竜のお方も沢山いそうだけれど、私はその頃を知らない。魔素が多かったと聞くから、大型の竜のお方の方がある程度いたが、小型から中型の竜のお方の数は少なかったのかもしれないなと、一人で勝手に納得する。

 

 わーと元気にこちらへやってきた小型の竜の方たちは嬉しそうに私たちの周りを回っていると、ディアンさまとベリルさまが低空でフライパスをする。エルフのお姉さんズが少し呆れつつ、お迎えの小型の竜の方たちへと視線を向けた。

 

 『乗って』

 

 『乗る』

 

 『案内する~』

 

 小型の竜の方たちに乗ってとせがまれるものの、私は彼らから落下する未来しか見えない。運動神経は至って普通だし、特に鍛えている訳ではないし、乗馬に慣れている訳でもない。

 

 「じゃあ彼らに乗って行きましょうか。揺れるけれど移動は楽だし早いもの」

 

 「振り落とされないようにだけ気を付けてね~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが極々当たり前の様に言い切った。大丈夫かなと心配するものの、物は試しというのだから頑張って一人で乗ってみようか。一先ず小型の竜のお方にはゆっくり走って欲しいと伝えれば大丈夫だろう。西の女神さまは大丈夫かなと彼女を見ると既に騎乗を終え、みんなに早くと言いたげな視線を送っている。そうして他の方たちも小型の竜のお方の背中に乗っていた。

 

 「ナイ」

 

 リンに私の名前を呼ばれてそちらを向くと、手を差し伸べられている。どうやら一緒に乗ろうということらしい。一人で乗るより安全だなと私は判断して、リンが乗っている小竜のお方の下へ足を向けた。

 

 「ちょっと他の方たちより重くなっちゃうけれど、よろしくね」

 

 『大丈夫。力持ちだから~』

 

 二人分の重さを背負わなければならないので小竜の方には辛かろうと断りを入れれば、頼もしい声が返ってきた。何度か小竜の方を撫でてリンの手に私の手を重ねると、ひょいっと竜のお方の背の上に引っ張り上げられる。

 

 そうしてリンの前にすっぽりと納まった私は妙な心境になりつつ、落ちるよりマシだと自分に言い聞かせた。そうしてぴゅーと走り出した小竜の方たちが、ディアンさまとベリルさまが降り立った場所を目指す。

 暫く走ると開けた場所に出て、そこには超巨大な黒竜と白竜が私たちを見ている。小竜の方から降りて、お二人に挨拶をしようと近寄って行くとディアンさまがゆっくりと頭を下げる。それに倣ってベリルさまも頭を下げると、上空を飛んでいる竜の方たちと地上の小竜さんたちが一斉に咆えた。一度、鳴き声を上げると直ぐに収まり、ディアンさまが口を開く。

 

 『女神さま、この度は亜人連合国に赴いて頂き感謝致します。我々一同、貴方さまを歓迎いたします』

 

 「ありがとう。特別待遇なんていらないし、あの竜のねぐらに行けるだけで嬉しいよ。あと彼がどう生きていたのか話を聞けると良いな」

 

 ディアンさまが口上を終えると女神さまも言葉を返す。彼女の言葉にクロがきょとんとして『恥ずかしいから止めて』と言いたげな雰囲気を醸し出している。ディアンさまは女神さまの言葉を拒否はできないので、承知しましたと答えていた。なんだかクロにとって羞恥プレイが始まりそうだなと、恥ずかしそうにしているクロに私は視線を向けてドンマイと無言で告げるのだった。




 コロナに掛かって更新を停止させて頂いておりました。申し訳ありません、更新再開です!
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