魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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本日二回更新です。2/2回目


0059:再びの謁見場。

 近衛騎士に案内されて謁見場へと入り最前列の一番良い場所へと案内された。落ち着かないので気分を紛らわせる為にきょろきょろと周りを観察してみる。随分とざわついて落ち着きのない様子だった。

 

 「ヴァイセンベルク辺境伯領で無法を働いたのみならず、ご令嬢二人と聖女さまに手を出すとは……」

 

 「冒険者ギルドの質が疑われますな」

 

 「ああ。個人のやらかしならば首を切って誠意を見せれば、ギルド運営者は首の皮一枚はかろうじて繋がるだろうが」

 

 誠意ってお金になるのだろうか。今回の被害額って相当のものにならないかな。フェンリルの件は学院のお貴族さま一年生全員の命を危機に晒したようなものだし。

 警備にあたっていた軍や騎士の人に死者は出なかったものの、怪我人が出ていた。学院も予定していた授業内容の変更を余儀なくされている。あと元王族も居たし将来の重役候補もいたものねえ。

 

 辺境伯領は国防を担う土地柄だから領軍は精鋭揃いだというのに、瘴気を出す竜の死骸の影響で狂化した魔物に手を焼き国へ助力を願ったのだから、私たちの知らない所で被害を被っているだろう。

 

 「しかし、竜を倒したのは一体どういうことでしょうな。討伐依頼は発布されていないと聞きましたぞ」

 

 竜を倒した実力は認めなきゃならないけれど、無用に手をだすのはご法度みたいだから、冒険者ならばそのルールは把握していそうなものだけれど。

 

 「腕試しに倒したということならば実力者だが……あの国の存在を忘れている時点で無知を晒している。――平民出身者か?」

 

 「時折、平民の間では異能者が現れますからなあ。その手の類の者かも知れませんなあ」

 

 「――我が国への宣戦布告か?」

 

 「そうだとすれば冒険者の背後関係が気になりますな。陛下はどうお考えになられるか」

 

 口々に今回の出来事を話し込んでいるお偉いさん方。どうにも冒険者が竜に手を出したことに納得していない様子。あと、亜人連合国家を上に見ている気がするし、銀髪オッドアイくんの背後関係も疑われるのか。

 Aランク冒険者の仕業として捉えられていないということか。それだと随分と話が大きくなってしまう。アルバトロス王国は周辺国とは友好路線。まあ相手国がそう考えてくれるかは、わからないけれど。大事になりそうだなあと遠い目になる。 

 

 ――国王陛下、ご入来!

 

 声が届くと同時にみんな一斉に口を閉じて静まり返る謁見場。そして一斉に平場に居る全員が平伏。

 

 一段上がった玉座の数メートル横にある専用の出入り口から陛下がやって来た。音のない謁見場に陛下が身に着けているマントが床を引きずる音が耳に届く。

 そうして王妃殿下、少し遅れて第一王子殿下と婚約者で王国に留学中の王女さまがやって来た。陛下が玉座へ座る音が聞こえて、王妃殿下や第一王子殿下に王女さまの足音が止まる。

 

 「皆の者、表を上げよ。招集させた理由はもう広まっておるようだな。宰相、皆へ説明せよ。事実を曲解せぬように、きちんとな」

 

 「承りました、陛下。――その前に、ヴァイセンベルク辺境伯卿とセレスティア嬢」

 

 宰相さまが辺境伯さまとセレスティアさまの名を高らかに呼ぶと、謁見場入り口の扉が開いて、二人分のシルエットが確認できた。

 呼ばれた通り辺境伯さまとセレスティアさまご本人である。どうやら辺境伯さまが抱えている魔術師の手によって転移してきたのだろう。謁見室のど真ん中、絨毯が敷かれ玉座へと真っ直ぐ伸びている道を、確りとした足取りで正装を纏っているお二人が陛下の下へと歩いて行き、玉座の前で膝を突き頭を下げた。

 

 「陛下、此度の件ご助力感謝いたします」

 

 「礼は後で良い、今は竜の一件についての方だ」

 

 は、と短く言葉を吐いて辺境伯さまとセレスティアさまがこちらへとやって来た。目が合ったので黙礼をすると、お二人も返しながら列へと加わった。

 

 「では、経緯をわたくしから皆さまに説明をさせて頂きます。質問は説明が終わり次第に受け付けますので」

 

 説明が終わるまでは突っ込むのはナシ、宰相さまの話をきちんと聞けということか。そうして宰相さまの説明が始まると、周囲の皆さまの顔色がどんどん悪くなっている。陛下はため息を吐いているし、王妃殿下は扇を広げて口元を隠し目を細め、第一王子殿下と王女さまも険しい顔。

 うーん、ぶっちゃけてしまえば銀髪オッドアイくんに特別な感情なんて持ってないし、仮にあの行動を擁護すれば自分の立場が危なくなるし、リンやソフィーアさまとセレスティアさまへ暴言を吐いたことは言語道断。

 

 「我が国としては、まず亜人連合と素早く連絡を取り事態の経緯を説明、冒険者ギルドに頭を下げて頂くほかないかと……犯罪者は周辺国へも通達し指名手配、賞金首にしてでも捕縛すべきと判断いたします」

 

 ――皆さまはどう判断されますか?

 

 宰相さまの問い掛けにざわついていた謁見場が静まり返る。言葉を発して問いかけた彼が周りを見渡すと、一人の初老の男性が手を上げその彼を指名する。

 

 「経緯は把握いたしました。冒険者ギルドにはAランク冒険者とやらの身柄引き渡しも求めるべきかと。しかし、亜人連合との連絡は一体どうやって……?」

 

 そういうと宰相さまの横に控えている書記官さまが、紙に文字を書き込んでいく。

 

 「それは私が答えよう。――我が国への宣戦布告とも考えられる行動だが周辺国が喧嘩を売るとは考え辛い。兎にも角にも亜人連合との連絡を最優先だ。彼の国との隣接国は少しなりとも交流がある。そこを頼る」

 

 「しかしそれでは陛下が頭を下げる羽目になりましょうぞ」

 

 「致し方ない。それで彼の国の怒りの矛先が我が国に向かぬのなら安いものだ」

 

 やっぱり亜人国家を格上に置いている。大陸の北西なので、大陸の南に位置するアルバトロス王国とは距離が随分とあるので、地政学上は全く恐れる必要はないのだけれど。事情がよく分からないなあと、首を捻ると陛下と目が合った。

 

 ――とても嫌な予感。

 

 なんで大勢臣下の居る謁見場でピンポイントで私と目が合うのだろう。やはり嫌な予感しかしないと背に汗が伝うと、陛下が立ち上がる。

 

 「――聖女ナイ」

 

 この国の最高位に呼ばれたら、迅速に前へと出るのが臣民としての礼儀である。

 

 「はい」

 

 「こちらへ来なさい」

 

 平民服姿は詫びを入れれば怒られないだろうから、行くかと足を一歩踏み出し玉座の前へ。直ぐに平伏して、絨毯が敷かれた床を見る。

 

 「陛下の御前にこのような姿で出なければならない不躾をお許し下さい」

 

 「かまわぬ。――例のモノを出しなさい」

 

 「?」

 

 陛下の言葉にいまいちピンとこない私。きょとんとした顔をした所為か宰相さまが『空気読めよ』と呆れた顔をしてる。

 出すものなんてなにもない。私がジャンプしてもお金なんて落ちてこないし、むしろお金ならば陛下の方がたくさん所持してる。あと差し出せるものって魔力くらいなのだけれど、他に……あ、もしかして。

 

 腰に下げていた巾着袋を取り出して口をおもむろに開いて、卵を取り出す。そうするとお盆のようなものを持った騎士が、ここに置けと言わんばかりに私に向けたので、卵を置こうとした瞬間。

 

 「――痛っ!」

 

 痛みにはある程度なれているであろう近衛騎士さまが声を上げた。

 

 「な、なんだ?」

 

 「一体どうしたのだ!」

 

 「まさか、聖女さまが……?」

 

 こんな衆目の最中に魔術なんて使ってもなんの得にもならないから。私しか触れない可能性があるのって報告されていなかったのか。

 

――聖女が王家に牙を剥いた!

 

 周りの人はもしかしてコレが何か理解していないだろうし、こんなことを頭の中で考えてる……?

 

 ◇

 

 犬が尻尾を踏まれてきゃいんと悲鳴を上げたように、近衛兵さまの悲鳴が謁見場に響いた直後。私に対する周囲の目が物凄く冷たい。いや、王家に謀反なんて一介の聖女ができる訳ないじゃないですか。仕事でいう所のしゃっちょさんなのだから、へーこらゴマを擦る相手である。

 

 「ヴァレンシュタイン、説明せよ」

 

 「はい、陛下。聖女さまがお持ちになっているものは『竜の卵』です。浄化儀式の際の魔術的要素で繋がり、聖女さまのみが卵に触れることが許されているようです」

 

 その瞬間周りの人たちの目の色が変わるのがはっきりと伝わるのだった。副団長さま、私しか触れないという情報は要らないのでは。もしかすれば私以外の誰かが触れる可能性だって残っているというのに。

 

 「おお」

 

 「魔石かと思うたが、アレが竜の卵!」

 

 「……文献でしか見たことなかったのに」

 

 物凄い反応を見せている人といまだに訝しんでいる人、よく状況が分かっていない人に分かれてる。私が王家に牙を剥くなんてあり得ないし、なんで一番先に関係のない近衛兵さまを襲わなきゃならんのよ。

 

 「むう……」

 

 「陛下?」

 

 椅子の肘掛けを利用して頬杖をつく陛下に、宰相さまが問いかける。

 

 「いや、亜人連合へ事態説明の為に第一王子に派遣団長を務めさせるのが誠意の見せ方かと考えておったが……」

 

 ん、なにやら話の方向がとんでもなく飛んで行った気がするし、その矛先がピンポイントで私を狙っているような。だって陛下がじっとこっちを見てるんだもーん。

 

 「ふむ。――聖女ナイ、特使を務めて貰うぞ」

 

 うげえ。でも、逃げられないなあ……。卵も返却しなきゃだし。多分そういう意味合いで陛下も私を選んだのだろうし。

 

 「はい。誠心誠意努めさせて頂きます」

 

 そうして頭だけあげていたのを、また深めに下げる。

 

 「頼んだ。しかし外交に明るくないのは事実、其方の補助を完璧に行える者を同行させよう。移動については転移魔術陣を使う」

 

 転移魔術陣――限られた王族関係者しか使えない外交用の魔術陣である。

 

 友好国とはこの魔術陣で繋がっており、双方合意の下で魔術陣を発動させて行き来を行うものだ。結構な魔力量を消費する為に、陛下に宰相さまや外務卿が海外へと渡る際、魔力タンクとして呼ばれることがあった。ちなみにその時は魔力の補填だけさせられてとんぼ返りである。お給金はキチンと頂いているので文句はない。良い小遣い稼ぎだし。

 

 ということは魔力陣への魔力補填も仕事に入るのか。いまだに魔力が回復しないので数日は休養したい所だけれど、どうなるだろうか。

 まあ、魔力持ちは私だけではないし、ぶっちゃけ魔力持ちの人を何十人も集めて注がせるということも出来るので、最悪の場合はそうするのだろう。

 

 「宰相、外務卿。派遣団の構成員を決める。――近衛と軍は護衛の精鋭を選出せよ」

 

 なんだか怒涛の勢いで予定が決まっていく。学院が長期休暇で良かったけれど、二か月の内半分はこの一件で潰れてしまいそうだ。

 まあ長期休暇といっても帰省する故郷なんてないのだし、旅行気分で亜人連合に行くと考えた方が気が楽だ。

 派遣団長を務めなければならないけれど軽い神輿扱いのようだから、聖女として適当に頭を下げていればどうにか乗り越えられるだろう。政治的な判断は国王さまが就けてくれた補助員の人の仕事だしね。

 

 「聖女ナイ、亜人連合との連絡が付くまで数日掛かる故、待機しておれ。――浄化儀式、真に大儀である」

 

 そうして私を見下ろしながらゆっくりと陛下が頷き。

 

 「侍従を何名か遣わす。見目を整えておきなさい」

 

 あれ、教会の宿舎に王家の侍従さまたちが派遣されるの……。王家の侍従を務めている人なんて、女性のお貴族さまである。

 ぶっちゃけその人たちから見れば、教会の宿舎なんて鳥小屋同然。自分が住んでいるところだから、こんな風に蔑みたくはないけれど、お貴族さま視点になるとそうなる。あの場所に王家の使いがやって来るなんて不味いし、そもそも見目を磨く施設がないのだ。兎も角、顔を上げた。

 

 「陛下、発言を宜しいでしょうか」

 

 「構わんよ」

 

 「私の現在の住まいは王都の教会横にある教会職員用宿舎でございます、そこに王家に仕える高貴な方々を迎えるには少々不都合が……」

 

 「は? ん、な…………済まないな、最近歳の所為でどうやら耳が遠くなっておるようだ。もう一度、言ってくれるか、な?」

 

 陛下、言葉遣いが乱れているような。眉間に右手を当てて揉みこんでいるのだけれど、もう一度言ってしまっても大丈夫だろうか。でも、陛下の言葉である。言わないと。

 

 「私の住まいは教会横の職員用宿舎で日々を過ごしております。そこへ王家の使いの方がいらっしゃるのは……」

 

 言葉を少しだけ変えてもう一度伝えると、陛下が眉間から手を放し、口元が歪に伸び上がる。

 

 「教会は……教会は国の障壁を維持している聖女に、何故そのような場所を提供しておるのだ!」

 

 私的には十分なのだけれど。雨風凌げるし、自分の部屋があってプライベートは確保されているから。そうして目を見開いて、公爵さまを睨みつける。

 

 「ハイゼンベルク公爵っ!!! 貴様、聖女の後ろ盾であろうっ! 何をしていたっ!!!」

 

 「聖女さま自身が望んでいることでしたので。もちろん公爵家の影を護衛として就けておりました」

 

 以前に何度か貴族街へ移り住まないかと言われていた。屋敷の掃除や庭の手入れが大変からと言って断っていたら、公爵さまは物凄く渋い顔をしつつ何も言わなかったけれど。

 陛下に怒鳴りつけられているのに、平気な顔をしてしれっと言い返しているけれど大丈夫かな、公爵さま。血の繋がりがあるし、公爵さまの方が年上だから問題はないのだろうか。周りの人は黙って行く末を見守っているし。

 

 「……この問題は後回しだ! 公爵、聖女ナイをしばらく貴様の邸で過ごさせろ。環境の見直しはこの件が終わってから協議する! ――解散だ、関係者は速やかに動け!」

 

 そうして謁見場に居た人たちが散り散りに動いて行く。一部の人は走ってこの場を去っているから、状況は不味そうだ。

 

 使節団代表を務めることになったけれど、これからどうなるのやら。というか亜人連合国って一体どんな国なのか。

 彼の国へと行く前に、知識詰め込んでおかなきゃなあ。アレ、この辺も予測して陛下は公爵邸に滞在しろと命じたの……かな。単純に怒っているように見えて、そこまで考えていたのなら侮ってはいけない。流石は一国の王を務めるだけはあるのか。

 

 「大変なことになったな、ナイ」

 

 「ね」

 

 「暫く公爵さまの家で過ごさなきゃいけなくなった……」

 

 何度か訪れてはいるけれど生活基盤が全然違い過ぎて落ち着かないだろうなあ。陛下には不評だったけれど、教会宿舎は気に入っていたのだけれど。ジークとリンはそんな私を見て苦笑い。そうして公爵さまとソフィーアさまが私の横へとやって来た。

 

 「ナイ、帰るぞ。ソフィーアから話は聞いた。とりあえずは飯を食って寝ろ。――なんだその不満顔は」

 

 「いえ、なんでも」

 

 「そろそろ平民気分でいるのを止めて、貴族の生活にも慣れろ。今までの環境が異常だっただけだ。まあ教会の扱いが不当とも言えるが……教会も一枚岩ではないからな」

 

 事情があるのは分かる。組織だし、派閥があるからいろいろと面白おかしくなっているのだろう。政教分離しているし、腐敗はしていないのだからまだマシだろうなあ。

 

 ――あ、卵の管理を王家に渡すの忘れてる!

 

 しまったあと嘆くけれど、もう遅い。私の間抜けぶりが露呈しただけである。多分何も言わなかったのは、私が持っていて大丈夫ということだろう。仕方ないと背を丸くして、公爵さまの後ろ姿を追うのだった。

 

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