魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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本日二回更新です。1/2回目


0062:【前】なんで俺が。

 つまらない人生だったように思う。俺の中の価値観と世間での価値観が全く持って合うことがない。

 

 ――弱いものをいじめたら駄目。

 

 ――金を巻き上げたら駄目。

 

 ――嘘を吐いては駄目。

 

 ――奪うのは駄目。

 

 ――殺しも駄目。

 

 一体、なにを楽しみに生きていれば良いのだろうか。やりたいことをやれと言われたのに、俺のやりたいことは世間から認められることはない。

 やりたいようにやれば、俺の人生そのものが終了を告げてしまう。だから、世間になるべく溶け込むように、本性を隠して生きていた。そんな俺が若かりし頃に出会ったインターネットゲームは、現実から逃避する為の丁度良い場所だった。

 

 『暇。PKしようぜ』

 

 『あー、初心者狩りするか』

 

 『良い装備付けてたら奪って売ったろ』

 

 『低ランクの装備なんて売っても金にならねー(笑)』

 

 気の合う仲間とのチャットは楽しかったし、レベルを上げて良い装備を身に着け狩場を占領し、強敵を倒してレアドロップを狙う。拾ったレアアイテムを競売に掛けて利益を得、更に良い装備を揃えまた狩場に出る。

 

 そして最高の瞬間がPK――プレイヤーキラーだった。

 

 『どうしてこんなことをするんですか!』

 

 『……』

 

 PKを終えた後に負け犬の声なんて無視をした。落ちた装備を拾って、テレポートして競売に掛けて小金を稼いだ。

 

 俺が生まれ育た国の日本のMMORPGプレイヤーには敬遠されている行為だったが、ゲームシステム上は認められている。

 だから初心者狩りや低ランクの狩場へキャラクターチェンジして、ちまちまとMOBを狩っているソロプレイヤーやPT中の奴らを襲い、右往左往している姿を眺めるのは快感だった。

 そうしてどんどん沼にハマっていき高校卒業後に新卒で採用された会社を一年で辞め、家に引きこもった。ログイン時間は十二時間以上プレイしていたこともあるし、更にそれ以上プレイしている時もあった。

 

 『便所いきてー』

 

 『ペットボトルでOK』

 

 冗談で言われたことを移動が面倒だと本当に実行したこともある。知名度はあまりないゲームであったが、一緒にプレイする仲間と悪さをする仲間がいたから見事に嵌まっていたというのに。プレイ中に何が起こったのか分からないが、死んだのだ。あっけなく。

 

 死んだ、転生した、孤児だった。

 

 幼少期の記憶は余りない。はっきりと転生したと自覚したのは十歳頃。環境が全くよくない貧民街の片隅でどうにか生きていた。

 

 周りからは『トーマス』と呼ばれていた。おたふく風邪の機関車じゃあるまいし、奇しくも前世と同じ音の『トーマ』と呼べと言うと呆れ顔で周りは呼び始めた。

 

 前世の知識は役に立つ。子供の身ではあったが知恵は回るので、貧民街の大人に取り入っておこぼれを貰う。

 街中の人間から財布を掏ってこいと命令されたり、店に並んでいる品物をかっぱらってこい、貧民街に迷い込んだ一般人を襲って有り金を全部奪ったことも。中々にクレイジーではあったが、俺の性分には合っていた。躊躇なく命令を実行する俺は、貧民街の大人に気に入られた。

 

 暫くして貧民街の大人から俺の異常な強さを煙たがれるようになっていた。やり過ぎだと止められることもしばしば。冒険者になればいいと言われ貧民街から追い出された。まあ、いい。よく聞くゲームやアニメと同じ冒険者ならば腕っぷしの強さで生きていける。

 

 言葉は理解できるが読み書きは出来ず、ギルド受付職員の手によって登録を済ませ初心者として冒険者生活が始まったのだった。

 

 最初はギルド職員に言われるまま、薬草採取やゴブリンに狼モドキを倒す依頼を受けた。そうして日銭を稼いで宿と飯を手に入れる。まるでオンラインゲームを始めた頃のお使いクエスト気分でノルマをこなしていた。

 

 ギルド職員の言う通りにしていれば、何の問題もなく依頼を達成し、装備を改めより良いものへと変えていく。

 

 ――ゲームだな。

 

 そうゲームだ。ゲームの世界と同じなのだ。雰囲気は少々違うこともあるが、おおむね一緒。エネミーとして登場していたMOBの名前も似ていたし、姿かたちも似ている。装備やアイテムがドロップしないのは手痛いが、依頼をこなせば金が入る。命を天秤に掛けている所為か、実入りが良い。

 

 しばらくソロで活動してFランク冒険者からEランク冒険者へと昇格した時。

 冒険者としての講習を受けろとギルドから言われた。何故今更そんなものを受けなければならないのか。

 依頼を受けて、目標を倒したり採取するだけの簡単な仕事だというのに。腕も十分にあるし、俺ならばDランクへ直ぐに上がれると褒めてくれていたというのに何故なのか。

 

 『規定なのですぅ~。必ず受けてくださいね~』

 

 ゲームにもふざけた喋り方をするNPCが居たなと、甲高い声を出して困った顔をする受付嬢に舌打ちをして、仕方なく講習を受けたが聞く気など全くなかった。

 大した内容ではないし、獲物を倒す攻略法を伝授してくれる訳でもない。国がどうだの、貴族がどうのだの、ギルドとの連絡に、魔物の死体処理だのと言われても、それはお前たちギルドの仕事だろうに。

 そもそも冒険者登録カードで国を超えて狩場に行けるのだから関係ない。まあ、まだ国を超えられるランクには至っていないが。貴族が出した依頼を受けたことはないが、下の連中から金を奪って生活している連中なんかに気を使う必要もない。

 

 テレビで見る政治家連中と一緒だ。口だけで大して働きもせず、下の者を働かせて金を得ているだけではないか。

 

 そんな連中を敬う必要などない。関わることもないのだろうし。

 

 Bランク試験を受ける頃、俺に転機が訪れる。

 

 『僕たちと組まないか? 実力は聞いているし丁度前衛を務められる人を探していたんだ。大剣使いで一番腕が良いと聞く、どうだ?』

 

 確かこいつらは、もうすぐBランクからAランクへの昇格試験を受けるパーティーだと聞いた。

 ソロで動く奴には個人でランクが決められ、複数で動く連中にはチームとしての価値をギルドが査定するようになっている。

 個人のBからパーティのAか。悪くない話だった。当然分け前は人数分に割られるので、総取りとはいかないがランクが上がれば報酬が上がるし、難易度報酬で色が付く。ソロBランクよりもパーティーAランクの方が魅力的なのは、火を見るよりも明らか。そして目の前の連中は最近頭角を現して、Sランクも目の前だと噂されている。

 

 『わかった、よろしく頼む』

  

 そんな連中に声を掛けられたのだ。俺は二つ返事で了承し破竹の勢いでSランクパーティへと駆け上るのだった。

 

 ◇

 

 娯楽の少ない世界でSランクパーティーの一員というのは、周囲の人間たちからすると芸能人や有名スポーツ選手といった扱いと同じだった。そして生まれ変わってからはストレートの銀髪に赤い瞳と金の瞳という光彩異色。顔も、平面顔ではなくきっちりと目鼻立ちが通っており、口元も眉のバランスも整っていた。

 

 だからモテにモテた。

 

 酒場に行けば女連中が寄って来るし、誘えば直ぐに乗ってくる。本当、顔面偏差値ガチャに恵まれた。

 

 冒険者としても順調だった。難しい討伐依頼をこなし報酬を得て名声も得る。時には国を超え、他国へと渡り依頼をこなした。お貴族さまからの依頼を受けることもあったが、あんな連中は相手にしたくないからパーティーの奴らに任せた。

 

 『もう少し、素行を改めようトーマ』

 

 ギルドに併設されている酒場で、パーティーリーダーの優男が俺に声を掛けた。困ったような顔で俺を諭そうとしている。その後ろにはメンバーの連中の姿が。

 

 『あ、なんでだよ』

 

 ちっと舌打ちをして飲んでいたエールのジョッキを強めに置いて、音をワザと立てる。

 

 『僕たちはSランクパーティーだよ。今までは良かったかもだけど、品格も審査の対象になるからね』

 

 『冒険者にそんなもん必要ねーだろ。俺たちに必要なのは強さだ!』

 

 『もちろんそれもあるよ。でも、それだけじゃいけないってこと』

 

 『なんだよ……ソレ……!』

 

 そんなもの必要ないだろう。必要なものは実力と魔物を倒す知恵と度胸だ。強敵に恐れをなさず突っ込んでいける気概。

 こいつらと上手くいっていると思っていたのは、俺の勘違いだったのだろうか。まあ、いいさ。俺が抜ければ、チームはSランクパーティーとして成り立たないのだから。

 

 ――これが切っ掛けか。連中の甘さに嫌気が差し始めたのは。

 

 『待って、トーマっ! やり過ぎだ!』

 

 『はあ!? 舐めたこと言ってんじゃねーよ。止めを刺さなきゃ俺たちがヤラれるだろうが!』

 

 目の前の得物に大剣を突き立てると、血がじわりと流れてくる。

 

 『なるべく綺麗な状態で納品をって言われたじゃないか!』

 

 『十分だろう! コイツは手強いんだぞ! 倒せる奴なんて殆ど居ないんだから文句は言われねーよ!』

 

 喧嘩が絶えなくなった。理由は些細な事だ。俺のやり方に文句を付ける回数が多くなってきていたし、チームの連中と対立することが増えていた。

 

 『トーマ、話があるんだ』

 

 『なんだよ』

 

 いくつかの依頼をこなした頃。真剣な顔で優男がギルドの酒場で告げてきた。

 

 『君を僕たちのパーティーから除名する』

 

 『は? おい、俺が抜けたらどうなるかわかってんのかよ』

 

 『前衛が足りないね。でも僕たちはこれ以上君と一緒に活動をすることは難しいと判断したんだ。これ……』

 

 『なんだよ、コレ』

 

 『手切れ金……かな。トーマには一番無茶を強いてきたからね』

 

 随分と大きな金額だった。このチームを抜けても良いと思えるくらいには。こんな正義面した連中と一緒に居ることに嫌気が差していたのだ。

 金をくれるというのならば、いい機会ではないだろうか。俺の実力はこいつらとつるみ始めた時よりも随分と強くなっている。おそらくソロでもAランクは余裕だろう。

 

 『……俺もお前らとつるんでいるのが馬鹿馬鹿しくて仕方なかったんだ。慣れあいは好きじゃない。――抜けさせて貰う、じゃあな』

 

 そうして俺はSランクパーティーを抜けることになった。そして優男の顔を見る。絶対に見返してやるんだと。ソロでSランクの称号を持っている奴は極少数。俺もその内の一人になってやるのだ、と心に誓って。

 

 『――クソっ!』

 

 出直した俺に与えられたソロランクはBランクだった。

 

 筆記試験は俺の考えていることと逆張りしておけば簡単に通ったが、実技は長らく連携を組んで活動していた為なのか、様子見で当然のランクだとギルドの連中から言われたのだ。そして暫くソロで活動をしていると、連携しながら戦っていたツケなのか随分とソロの腕が鈍っていた。

 

 『おい、戦闘奴隷を見繕ってくれ。金ならある』

 

 にこやかに笑いながら俺の下へとやってくるふくよかな奴隷商。俺は遠距離攻撃を行える戦闘奴隷を手に入れようと、とある街に立ち寄った。俺が住んでいる国では奴隷は合法だ。下女下男として使うヤツも居れば、肉体労働の為に買うヤツもいるし、俺のように戦闘用に買うヤツもいる。もちろん性奴隷としても売っている。

 

 『なるべく女が良い』

 

 女が使い物になるのかという疑問は魔力量次第だ。魔力さえ備わっていればある程度の戦闘力を期待できるし、外へと魔力を放出できるならばソイツは魔術師向きだ。

 女性ですか……と思案顔になる奴隷商に『早くしろ』とせっつく俺。そうして店の奥へと案内されると、そこにはエルフの双子の女が居た。

 

 『使えるのか?』

 

 ええ勿論と鷹揚に頷いて説明を始める奴隷商。男は必要ない。どうせまた俺と揉めるのがオチだ。

 

 どうやらエルフ――亜人はこの大陸の人間からは毛嫌いされているそうだ。そして大陸北西部へ逃げ込み、閉じこもっていると。

 閉じこもっているのに何故エルフの奴隷が居るのだと聞くと、亜人の集まる国の掟を破り追放されたエルフと人間の間にできた子供らしい。

 どういう経緯で奴隷に落ちたのかは謎らしいが、親からはぐれたか捨てられたかのどちらかだろうと。随分と成長しているようにみえるが俺と同じ年らしい。

 

 魔力値はハーフエルフということもあり、俺よりも高くパーティーによくいる魔術師連中よりも数段上。弓と魔術が使えるというのに値段を聞くと随分と安い。亜人のハーフを買う好き者は少なく、処分に困っているそうだ。

 

 『こいつらで良い、くれ』

 

 戦闘と性処理用と思えば安いものだ。亜人を毛嫌いしている理由は理解できないし、見目は良いのだからなんの問題もない。

 

 『奴隷印を施せるか?』

 

 追加料金が掛かりますが可能ですよ、とのこと。頼むと短く言葉を発して、ハーフエルフの奴隷を手に入れるのだった。そうして俺はまたこいつらを引き連れパーティーを組み、依頼を捌く。面倒な依頼は無視して、単純明快な討伐依頼がメイン。

 

 『トーマさま、凄いです!』

 

 『こんな大きな魔物を一度で倒すなんて!』

 

 何が嬉しいのか双子のハーフエルフは俺に懐いていた。飯が食えて寝床があるのが嬉しいらしい。奴隷なので俺の命令には逆らわない。

 学もないのか世間の常識に疎いので、扱いが楽でいい。背中を任せられるヤツを手に入れたのは、幸運だった。実技は難なく通り筆記や常識は少々手間取ったが、追加講習を受けた。品格は適当に猫を被って常識面をしていればいいのだ。そうして再査定でAランクへと昇格。

 

 ただSランクの壁は厚かった。筆記はパーティーリーダーのみに求められていたが、Sランクとなるとメンバー全員に求められる。

 一度受けたことがあるが、付け焼刃の知識を覚えている筈もなく、双子の奴隷も常識と教養の無さで落ちた。

 

 『クソ!』

 

 『トーマさま……』

 

 『……トーマさま』

 

 止めろ、俺をそんな目で見るな。行き詰った俺を心配そうに見ている双子に忌々しさを覚えつつ、頭を掻きむしりながら空を見る。

 

 『――……ドラゴン』

 

 ふらふら、よろよろ。大きいな。だが空を飛ぶのもやっとという感じだ。飛んでいった方向はアルバトロス王国方面。

 あいつを倒せば、俺の評価が上がるな。物語やゲームの中では最大の敵となるドラゴンだ。よし、決めた。強い魔物を倒せば魔石が落ちるから、ドラゴンを倒せば得られる魔石をギルドへと提出すれば、俺を認めない連中も認めざるを得ない!

 

 『行くぞ、アルバトロス王国だ!』

 

 『はい!』

 

 『うん!』

 

 あの国は魔術で障壁を張っていると聞く。ただ国全域に展開する余裕はないようで、抜け穴があるらしい。もちろん検問所を通れば入国許可を得ていない不審者として扱われるが、抜け道はいくらでもある。

 冒険者として過ごしてきたのだ、道なき道を進むのには慣れているし、魔術に精通している奴隷が居る。障壁の抜け穴を見つけるのは、容易いこと。

 

 ――そうして王国入りを果たす俺たち三人だった。

 

 




 本性がバレる前に真っ当なPTに拾われて、後追放。
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