魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

623 / 740
0623:森の中へ。

 森の中に入って暫くの時間が経っていた。

 

 ダークエルフさんたちがおやつ兼栄養補給として持たせてくれていた島バナナさんを食べながら休憩している最中である。島に自生している果物を見つけると少し恵みを頂いて、子爵領の試験場で育ててみる予定である。

 ヴァルトルーデさまとジルケさまが珍しそうに島バナナさんを見つめて皮を剥き、実を一口分放り込んで咀嚼している。私が頂いている島バナナさんはきちんと熟成して甘くて丁度良い食感だった。種類が違うと日本で食べていたバナナとは全然違い、凄く堅い品種もあるとエーリヒさまから聞いている。国や土地が違えば同じ名前の品でも随分と様変わりするのだなと、私は彼の話を聞きながら感心していた。

 

 「甘いな」

 

 「美味しいよ」

 

 片眉を上げたジルケさまは島バナナさんが甘過ぎるようである。ヴァルトルーデさまは程よい甘さの島バナナさんに目を細めていた。ジルケさまは甘い羊羹が好きなのに、島バナナさんの甘さは微妙に受け入れられないようである。

 こういう個人の味覚で感じ方が変わるのも面白い話だなあと、私は島バナナさんを最後の一口を放り込んで咀嚼していると目の前にある茂みがガサガサと揺れ始めた。

 風で靡いたものではなく、明らかに大型の獣が動いて木々が揺れているものである。ジークとリンが素早く立ち上がりレダとカストルの柄に手を掛け、案内役のダークエルフさんも短剣を抜いて警戒態勢を取る。女神さま二柱は茂みが揺れたことになにかあったと顔を向けるも警戒をしていない。私の肩の上にいるクロもこてんこてんと首を傾げていると『あ』と声を上げる。

 

 『大丈夫だよ。知ってる気配だ』

 

 クロの声に一同息を吐くものの、茂みの揺れは収まらない。こちらに何者かが近づいているのは分かるので、一体誰だろうと私は首を捻る。ガサゴソと鳴る枝葉が擦れる音を聞いていれば、ざっと一番大きな音が鳴った。

 興味深そうに茂みの中から顔を出しだ竜のお方が目を丸くして私たちを見ている。あれ……見覚えのある仔たちだ。

 

 「ポチとタマだ。島にいたんだね」

 

 誰かと思えばポチとタマである。いつの間にか王都の子爵邸から南の島に移り住んでいたようだ。私が声を上げるとポチとタマは嬉しそうな顔を浮かべ、茂みの中から身体を出してこちらへとやってくる。クロが『久しぶりだねえ』と声を上げ、ジークとリンの肩の上にいるアズとネルも嬉しそうな顔をしてポチとタマを見ている。

 

 『聖女さまだー!』

 

 『久しぶりー! だあれ?』

 

 くるくると私たちの周りを回りながらポチとタマが声を上げた。無邪気な彼らは側にいるヴァルトルーデさまとジルケさまがどんな方なのか分からないようで、脚を止めすんすん匂いを嗅いでみたり、顔を覗き込んでいた。

 

 『西大陸と南大陸を司っている女神さまだよ~』

 

 クロがポチとタマにヴァルトルーデさまとジルケさまがとんでもない方だと告げる。でもポチとタマは女神さまの存在をイマイチ理解していないようで、首を傾げながら女神さま方の顔を見ていた。

 ヴァルトルーデさまとジルケさまは彼らの反応が少し新鮮だったようで、珍しく苦笑をしていた。でも、嫌という雰囲気ではなく単に興味のない者もいるんだなという感心の方が強そうだった。

 

 「珍しい名前だね。ヴァルトルーデだよ、よろしくね」

 

 「確かに聞き慣れねえ響きだな。ジルケだ。よろしくな」

 

 名前に関しては突っ込まないで欲しいと私が願っていると、ポチとタマが尻尾を振りながら楽しそうに口を開いた。

 

 『ポチー! よろしくー』

 

 『タマー! よろしくねー』

 

 自己紹介が順調に終われば、散策を再開させようとなった。ポチとタマも一緒に行動するようで、ダークエルフの方と一緒に先を歩き道を均してくれるとのこと。有難いのでお礼を伝えれば二頭はドヤ顔を披露しながら尻尾をふりふりしている。クロとアズとネルより大きい身体――二メートルくらいはある――で尻尾を振れば凶器になりそうで少々怖い。

 

 「ナイが聖女って呼ばれることに違和感」

 

 「そういや、聖女の活動している所は、ナイよりアリアとロザリンデの方が良く見るからなあ。ちと違和感があるのは仕方ねえのか」

 

 ヴァルトルーデさまとジルケさまは私がポチとタマから『聖女』と呼ばれていることが気になったようである。

 

 「侯爵位を賜ってから、活動自体減っていますからね。今では名ばかりかもしれません。治癒の力もアリアさまの方が優れていますしね」

 

 こればかりは仕方ないのだろう。侯爵位を持つ者が教会の治癒院に顔を出せば、王都の皆さまは遠慮して私の下にやってこない気がする。そもそも警備の人数も多くなるので教会が狭くなり、収容人数が少なくなれば治癒を施せる人数が少なくなる可能性がある。

 まあ、これからは侯爵領と子爵領の教会で治癒院を開くことになるだろうし、王都ではなく自領で頑張らなければ。子爵領で見つかった魔力量の多い子供たちは、それぞれ自分たちが進みたい道へと歩み出し結果が出てくる頃合いである。優秀でなくても良いから、自立した生活が送れるようになると良いと願うばかりだ。

 

 「ナイは魔力量で誤魔化しているよね」

 

 「確かにな。アリアは本当に天才型っつーか。ロザリンデは努力型だな。ナイもまあ努力型だろうよ。魔力で押し切ってるけど……」

 

 ヴァルトルーデさまが楽しそうな表情を浮かべて私を見下ろし、ジルケさまは少々呆れ顔で私を見ている。魔力量でゴリ押ししているのは自覚しているけれど、治癒を施す際は割と細心の注意を払いながら術を施しているのだが。魔力制御はまだまだ甘いのかと私は反省しつつ、これ以上私の話題で盛り上がってはいけないと口を開く。

 

 「そういえばヴァルトルーデさまは魔術師団の方々に魔術を教えに王城に赴いているんですよね?」

 

 「うん」

 

 いつの間にかヴァルトルーデさまは魔術師団の魔術師の方々に魔術を教えるという仕事を手に入れていた。そうなった経緯を聞けば、公爵さま、もといボルドー男爵さまが紹介したとか。

 ボルドー男爵さま経由で陛下に話が届き、魔術師団にも報告が入り、団長さまは女神さまに教わるなど恐れ多いと仰り、団員の皆さまからは『是非に!』と声が上がったそうだ。団長さまは、団長という最高位の立場にあるのに、部下の皆さまの熱意に負けてしまったようである。

 

 「授業は進んでいますか?」

 

 「問題ないけれど、昔と違って魔力量が足りなくて発動できない術がある。残念そうにしている人間が多いけれど、ハインツとファウストは改良しようと頑張ってるね。楽しいみたい」

 

 やはり副団長さまと猫背さんは特別というか、変人の中の変人のようだ。私が副団長さまと猫背さんが嬉々として魔術式を改良している姿を思い浮かべていると、ジルケさまがヴァルトルーデさまの顔を見上げた。

 

 「妙な魔術教えんなよ、姉御」

 

 ジルケさまの言葉を察するに死者蘇生とか転生とか輪廻とか不老不死などのヤバい魔術を女神さま方はたくさん知っているのだろう。確かに人間が習得すれば問題が出てきそうである。

 ヴァルトルーデさまは『その辺りは弁えている』と真面目な眼差しを末妹さまに向けていた。ジルケさまは『なら良い』と納得できたようで、無茶をしないように確認のための言葉だったのだろう。

 

 「授業は楽しいですか?」

 

 「楽しいよ。真面目に習う子たちが殆どだから」

 

 ヴァルトルーデさまの言葉に私が真面目に習っていない方は大丈夫かと片眉を上げていれば、ジルケさまが私の耳元で『多分、姉御は相手にしねえと思う』と囁いた。

 ジルケさまが囁いた言葉はなんともヴァルトルーデさまらしいなと納得してしまう。そして真面目に習わない方は副団長さまから、魔術師団に不要ですと宣告されそうだ。そろそろ初任給が支払われるようで、ヴァルトルーデさまは楽しみにしているとのこと。そしてそれを全額私に渡すそうである。いや、それはどうだろうか。

 

 「女神さま方が屋敷に滞在してくださるだけで、家賃は十分頂いているのですが……」

 

 女神さま方が滞在していることは王都の街ではバレバレである。噂が回り切ったようで、これからは王都の外へと広がっていくのだろう。そして私が夜会を開いたことにより、夜会参加の打診の手紙が増えている。

 ソフィーアさまとセレスティアさまと家宰さまが先に手紙を選別してくれ、私は参加の可否を決めるのだが結構な量があった。夏を越せば社交シーズンは終わり、領地に戻るのがお貴族さまのスタンダードである。

 

 島から戻って秋になるまでに一度か二度くらいは夜会に参加してみたいと考えているのだが、初心者は知り合いの方が開催したものに限る。ので、ハイゼンベルグ公爵家とヴァイセンベルク辺境伯家が開く夜会に参加予定にしていた。あとは丁寧にお断りの手紙をいれるか、名代を出すことに決めていた。私が眉をハの字にしているとヴァルトルーデさまがドヤと顔色を変えた。

 

 「でも、仕事したからナイに納める」

 

 流石に働いたお金を全額私に納めるのは違う気がした。

 

 「それならばお給料の一割程度を頂いて、残りはヴァルトルーデさまが好きに使えば良いかと」

 

 自由に使えるお金も必要だろうと私はヴァルトルーデさまを見上げる。そうすると彼女はドヤ顔から眉尻を下げて情けない顔になった。

 

 「お金を誰かに払うことがない」

 

 「……そうでした」

 

 そうだった。女神さまは基本屋敷から出ることがなく、王都のお店に気軽に立ち寄ることもない。それなら頂いたお金は全て私が管理して、ヴァルトルーデさまが大陸をウロウロできるようになれば、その時に働いたお金を返せば良いだろう。

 他人様のお金を預かるのだからきっちりと管理をしなければ。いつか欲が湧いてしまい、教会のお金をかすめ取っていた方たちを同じにはならないと誓う。暫く歩いていると、ポチとタマが『お家ー!』『ぼろぼろー!』と声を上げ、ダークエルフのお姉さんが『前に見つけた遺跡のことですね』と教えてくれる。

 

 「本当だ。なにか見えてきた」

 

 「なんだ、あれ。確かにボロボロだな」

 

 不思議そうな顔をして二柱さまは森の奥にある遺跡に視線を向けていた。私は赴いたことがあると伝えなければと口を開く。

 

 「遺跡です。以前見つけて調査をしましたが、古い資料が出てきたことと、送還陣がありました。あと中には罠があるので入る時は気を付けないといけないはずです」

 

 一応、私たちが遺跡に入ったあと、ダークエルフの皆さまがくまなく探索してくれたそうだ。私たちが見つけた物以外になにか新たな発見はなかったとのこと。

 

 「古くはないような?」

 

 「だなあ。一万年とか経ってないだろ、この感じ」

 

 女神さまの時間の概念に自分たちの感覚がおかしいのかと首を傾げたくなるが、女神さまと同じ考えでいると頭がバグりそうである。一先ず、目の前の遺跡は一万年もの時間は経っていないようだ。興味があるなら入ってみますかと私が問えば『行く』と短く二柱さまから声が上がるのだった。

 

 ◇

 

 ピチョンと天井の壁から水が滴り落ちる音が鳴り響く。ヴァルトルーデさまとジルケさまと私たちは一緒に、以前見つけた遺跡の中を探検中である。案内役のダークエルフさんを先頭に、ジーク、私、リン、ヴァルトルーデさまとジルケさま、最後尾にポチとタマが歩いていた。

 ポチとタマは道幅が限られているので少し狭そうな顔をしているものの歩けないことはない。天井から滴り落ちる水に驚いて、短く声を上げたりしているものの楽しそうであった。

 

 ダークエルフのお姉さんは遺跡を探索しつくしているようで、遺跡の部屋はほぼ覚えたとのこと。隠し部屋もいくつか見つけているけれど、なにもない部屋が多かったとか。

 私たちは魔術陣が施されていた部屋を目指している最中である。一応、封印処置を施したけれど、未来で誰かが意味も分からず解き放てば迷惑千万だと考え、ヤバそうな代物であれば女神さま二柱さまに破壊して貰う腹積もりだ。ガンドさまと亜人連合国には許可を頂いているので問題はない。あとはヴァルトルーデさまとジルケさまの判断次第だ。

 

 「こちらですね」

 

 案内役のダークエルフさんが私たちの方へと振り向き、手を部屋の方へ指している。扉もないので中は見えていた。ダークエルフさんはそのまま中へと入り、私たちも続く。

 部屋の中は独特の雰囲気だった。空気の流れがないというか、湿気が満ちてむっとしているというか。窓がないので致し方ないけれど、長居はしたくないと感じるくらいに湿気が多い。

 

 床には薄く魔術陣が描かれているのだが、所々、経年劣化によるものなのか記されている文字や模様が消えている。陣の上には立たず、周りを囲んで魔術陣を私たちは見下ろした。

 

 「面白いね。召喚するやつかなって思ったんだけれど……」

 

 「送還の方か。けどよ、これ母上殿のところに繋がってるのか? ……いや、んー? 肝心な所が消えてて分かんねえな」

 

 ヴァルトルーデさまとジルケさまが声を上げる。亜人連合国の報告にあった通り送還陣のようだ。二柱さま曰く、結構な距離を飛べるような術式だから実力のある魔術師か魔術師相当の人間が施したのだろうと教えてくれる。

 そういえば大賢者とか魔導書とかもあったなあと思い出す。すっかりと忘れていたけれど、こんなことなら屋敷の図書室から魔導書を持ち込んでいても良かったかもしれない。

 

 「ヴァルトルーデさまとジルケさまから見て送還陣に悪意とかありそうですか?」

 

 「悪意はないよ」

 

 「でも、今の各大陸の魔術や魔法の技術を考えると、親父殿の星以外に飛ばせる仕組みだから過剰なものだよなあ」

 

 どうやら召喚陣を施した方の悪意は感じられないが、ロストテクノロジー過ぎるようで今の時代の人間が扱えば事故を起こしそうだと教えてくれた。必要な魔力量も尋常ではないし、術の詠唱時間も長くかかるだろうとのこと。試してみたい気もするが、なにが起こるか分からない代物だ。ヴァルトルーデさまとジルケさまは陣を破壊して、悪用されないようにした方が無難だろうと判断を下した。

 地球に行ける可能性がある魔術陣だけれど、地球に行く予定もないので壊してしまっても問題はない。エーリヒさまとフィーネさまには申し訳ないが、独断で決めさせて頂こう。私がふうと長く息を吐けば、ポチとタマがずいと首を伸ばして口を開く。

 

 『けすー?』

 

 『ぶっこわすー?』

 

 ポチとタマがケラケラと笑いながら、これからどうするのかを問うてくる。

 

 「うん」

 

 「床の石剥いじまって、ポチとタマの爪で傷を入れときゃ良いだろ。燃やすのもアリだが空気が流れてないしな。あとはあたしか姉御が石をいくつか消し炭にすれば、陣を再生させようとしても完成しねえ」

 

 ヴァルトルーデさまとジルケさまがポチとタマに語り掛けると、彼らは『がんばるー!』『いしはぐー!』と声に上げ魔術陣の上に乗る。器用に石畳の隙間に後ろ脚の爪を入れて、ぐっと力をいれると石が剥がれた。

 ゴロゴロと石が転がって、石同士がぶつかると割れるものもある。時間経過で劣化していたのか、脆くなっていたようだ。しかし質量は変わりないだろうし、小さな竜の力で石畳を剥ぐという技は素直に褒めるべきだろう。

 

 「凄いなあ」

 

 『ポチとタマも立派な竜だからね~それぐらいできるよー』

 

 私の声にクロが自慢気に答えてくれる。周りの皆さまはクロが答えたことが面白かったようで、小さく笑っていた。ポチとタマにも私の声が届いており顔をこちらへ向ける。

 

 『ちからもち!』

 

 『すごいの!』

 

 ドヤ顔をしたポチとタマは石畳を剥がし続ける。随分と床から剥いだ石材が増えた頃、ジルケさまが半歩前に出た。

 

 「そろそろ良いぞー」

 

 彼女にポチとタマは『はいー!』『うんー!』と声を返して、こちらへと戻ってくる。私に『がんばった!』『やくにたった!』と声を上げながら顔を近づけてくるので、手を出して彼らの顔を撫でた。ぺしんぺしんと彼らが尻尾を縦に振っているので、床の石材が浮いているのは仕方ない。

 

 「じゃあ、私がやるね」

 

 ヴァルトルーデさまが声を上げればジルケさまが『姉御、頼む』と返事をした。ヴァルトルーデさまはいくつか石材が重なっている所の前に床に膝を突き手を差し出す。

 

 「――」

 

 彼女がなにか口にしていたけれど聞き取れることはなかったが、一瞬にして石材が塵となり空中に粉塵が舞っている。火を付けたらどうなるだろうと、阿呆な考えが私の頭の中に過るものの多分粉塵の量が足りないし、石という素材で爆発してくれるのか微妙な所だ。危ない考えは捨て去ろうと頭を振って、私はヴァルトルーデさまとジルケさまにお礼を伝える。

 

 「気にしなくて良い」

 

 「な。別に大したことでもねえしよ」

 

 特に二柱さまは今回協力を仰いだことを問題にはしていないようだ。良かったと安堵しつつ、次は図書室っぽい所を目指そうと送還陣があった部屋をあとにする。

 また廊下を歩いて暫くすれば、本が沢山あった部屋へと辿り着いた。中に入ると本棚に本は置いていない。まあ案内役のダークエルフさんから『部屋にはなにもないですよ』と告げられていたので、興味本位で赴いただけである。

 

 「ちょっと残念」

 

 ヴァルトルーデさまは本が残っているかもしれないと考えていたようだ。数冊、棚の中に残っているものは歴史的価値が少ないのだろう。

 

 「村で見せて貰えば良いだろ、姉御」

 

 「湿気が多いと紙は劣化しますからね」

 

 「そうする」

 

 ジルケさまと私とヴァルトルーデさまの話にダークエルフの方が微妙な顔になっていた。恐らく女神さま方を村へ招き入れることを考えていたのだろう。移住し始めて三年ほどしか時間が経っていないので、まだまだ開拓中であり、女神さまをお迎えするには不適切な場所だと考えているのかもしれない。

 でもヴァルトルーデさまとジルケさまは気にしない方なので、深く考えないで欲しいのだが……流石に今伝えるのは無理だと判断して私は黙っておく。

 

 「出よう」

 

 「そうだな、なんもねえし。他の部屋も面白そうな所はないんだよな?」

 

 「はい。我々が調べた限りでは」

 

 「見つけられていない場所もある?」

 

 「かもな。でもダークエルフの連中が見つけられなかったんだ。新しい所が見つかる可能性はないんじゃねえの?」

 

 二柱さまとダークエルフさんの会話を耳にしつつ、私は部屋の端へと移動して仕掛けらしきものはないよねえと壁をぺちぺちしてみる。ポチとタマが興味深そうな顔をして私の行動を真似、彼らも壁を鼻先でぺしぺしし始めた。

 なにもないなーと壁を触っていると、ポチが『?』と疑問符を頭に浮かべていた。どうしたのと私がポチに問うとタマが私の横で首を傾げる。クロもなにかあったのかなと首を傾げて、ぺしぺし背中を叩く速度が上がっていた。

 

 『へっこんだー!』

 

 ポチは私の方へ向いて楽しそうにしている。確かにポチがぺしぺししていた壁の一部が凹んでいた。今以上に押せばなにか仕掛けが発動しそうである。

 押したら碌なことにならないのは理解しているので、ジークとリンは『押すなよ』『駄目だよ』と言いたげだ。流石に押しはしないとそっくり兄妹に笑ったあと、ヴァルトルーデさまとジルケさまとダークエルフの方を呼んでみた。

 

 「ナイ、どうしたの? あ」

 

 「……見つけたのか」

 

 「良く見つけられましたね」

 

 ヴァルトルーデさまとジルケさまとダークエルフの方がこちらへとやってきて、少し呆れ顔になっていた。私が見つけた訳ではないとポチの方へ視線を向けると、ポチとタマは既に違うものに興味が移っていたようで壁際から離れていた。

 私が見つけたと勘違いされるのは解せないと、見つけたのはポチだと伝えると興味を先に持ったのは私だろうと言われてしまう。何故と抗議をしたいが、ジークとリンとクロも味方に付いてくれないので諦めた。

 

 「えっと、仕掛けを発動させれば新たな場所が見つかると思いますが、今の面子で向かってなにかが起こっても問題かなと」

 

 妙なことになって面倒な展開は避けたいから、亜人連合国の皆さまも誘い、私たち一行も誘って遺跡探索を続けてみたいと告げる。副団長さまと猫背さんが私たちが先に向かったと知れば残念がる。ダリア姉さんとアイリス姉さんからも抗議の声が上がりそうだ。私的には戦力を揃えて突入したい。

 

 「あたしらがいるから平気だろ」

 

 「みんなで探検する方が楽しい」

 

 ジルケさまはなにかあれば神力を振るってくれるようだが、ヴァルトルーデさまは大勢で探索した方が楽しそうと言いたいようだ。姉上さまには逆らえないのか、ジルケさまはむっと口籠りなにも言わなくなってしまった。

 

 「ナイ、戻って明日」

 

 「そうですね。では皆さまと一緒に奥の部屋に行ってみましょう。これでなにもなければ謝れば良いだけですしね」

 

 「ん」

 

 少し勝手かもしれないが、ヴァルトルーデさまと私で方針を決めさせて頂いた。あとは戻って皆さまに今日の一件を話して、興味のある方は明日参加して貰えば良いだろうと、元来た道を戻って行く。遺跡から外へ出れば、陽が水平線に沈みそうになったいた。割と時間が掛かってしまったと笑い、早く戻ってご飯を食べようとなる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。