魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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本日投稿 1/2回目


0064:御前。

 そうしてパーティーメンバーが双子に一斉に襲い掛かる。近接攻撃には疎い二人だ。俺が引けという命令を出す前に捕まった。

 

 「え?」

 

 「なっ! 魔力が……」

 

 双子の奴隷が脱力し地面へと膝を突く。何をした。腕輪のようなものを身に着けさせてから、双子に変化があったように思える。

 

 「この国の魔術師団所属の方が譲ってくれたんだ、魔力封じにって」

 

 あっさりと二人はパーティーメンバーに捕縛され、残りは俺だけになる。

 

 「何故、アルバトロス王国の魔術師の話が出てくる!」

 

 「ああ、それは――」

 

 どうやらアイツらは、入国後に王城へと赴き陛下への謁見を願ったそうだ。冒険者ギルド本部から派遣されたお偉方と一緒に。アルバトロス王との面会は叶わなかったが、第一王子とは話が出来、土下座を全員したようだ。

 同じ冒険者として迷惑を掛けたと頭を下げたこと、生け捕りを約束するのでなるべくギルドに厳しい処分を下さないで欲しいと願うと、返事はされなかったがアルバトロス王には話を通しておくと確約された。

 

 その時に一緒に居た魔術師団副団長から魔術具を借り受ける。

 必ず生きて連れてこいという意思表示なのだろう、と。

 

 「本当は強大すぎる聖女さまの魔力を制限する為のものらしいけれど。こんな魔術具を作ることが出来る国に喧嘩を売ったこと、ちゃんと反省するんだよ」

 

 そう言ってヤツは俺へと向かってくる。癖で大剣を手に取ろうとしたが、そうだった回収し損ねていたのだった。

 

 「なっ! お前……!」

 

 仕方なく未だに使い慣れていない両刃の剣を抜き、優男が抜いた剣と鍔迫り合いとなる。こいつ……中、遠距離担当じゃあないのかよ。聞いてねえぞ。

 

 「僕も前衛を務められる。――君が居たから、そうする必要がなかっただけ」

 

 火花を時折散らしながら腕に力を込めてぐっと俺に詰め寄る優男。そしてふっと力を抜き右側へと流され、たたらを踏む俺。

 

 「ふっざけんなぁぁあああ!!」

 

 何度も剣戟を繰り出すが、軽くあしらわれて往なす。なんだ、これは。俺と優男にこんなに力量差があるのか、信じられない。

 

 「悪いね。これ以上暴れられてギルドの印象を悪くしたくないんだ。今回は君をAランクに任命したギルドにも責任があるけれど……」

 

 アルバトロス王と亜人連合がどう考えるか次第だろうね、と俺の耳元でささやく優男。

 

 「――ぐっ!!」

 

 腹に重い一撃をくらって俺の意識が刈り取られた。

 

 「――……ここは。どこだ……」

 

 石畳に右頬を付けて倒れていた。明かりは少なく、天井上の採光用の隙間から微かに漏れているだけ。石畳から顔を上げて体を起こして、きょろきょろと周りを見渡す。

 周囲三方は壁、残りの一方は鉄格子がはめ込まれている。完全に牢屋じゃないか。クソ、なんで俺がこんな目に遭わなきゃならない。万事順調だったはずなのに、どこから狂い始めた……。いや、まて実力はあるのだから、脱走くらい可能だろう。

 

 着ていた装備は剥かれているな。

 

 「出ろ、政治犯め……!」

 

 ぞろぞろと騎士の恰好をした連中が十五人程度やってきた。木製の手錠を嵌められ装備も何も着けていない男一人相手に、随分と仰々しいな。この国の騎士は腑抜けなのだろう。

 数人掛かりで無理矢理に押さえつけられながら、立ち上るように促される。城のような建物の中を進み、とある場所へと辿り着く。一段高い場所には豪華な椅子が一脚座しており、席は空。ステージ下の横には沢山の人間の姿が。あの優男とSランクパーティーメンバーの姿もある。

 そして、黒髪のチビ餓鬼に特徴的な巻髪の女、俺に確認を取っていた女と赤髪の双子に、巻髪を庇った男。あの魔力量が多い銀髪のスカシ野郎もいた。どいつもこいつも良い服を着て、俺に厳しい視線を向けている。

 

 ――陛下、ご入来!

 

 そんな声が聞こえてステージ横の入り口から、随分と贅沢な衣装を着込んだ中年男が現れた。そうしてステージ真ん中に置かれている椅子へと腰を掛ける。

 

 「さて、よくもまあお主一人で……いや三人か。ここまで仕出かしてくれたものだよ」

 

 はあと大げさにため息を吐くアルバトロス王(仮)は俺に射抜くような視線を向ける。なんでそんな目で見る。人を蔑み馬鹿にしたような目だ。

 

 「はっ!」

 

 目の前の男に鼻を鳴らす。

 

 「ぐっ! ――痛てえなっ! なにしやがる!」

 

 傍に居る騎士が俺の頬を何の遠慮もなく打ち抜いた。手甲の所為で、頬が切れ血が滲む。

 

 「手荒な真似をするな。ソレと同類にはなりたくなかろう。――さて皆の者、こ奴の処分についてだが本来ならば見せしめに斬首が妥当であろう。だが、殺してはならん」

 

 男のその声で周囲が騒ぎ始めるも『甘い』『温い』『慈悲など必要ない』『陛下はなにを考えておられる』……言いたい放題だ。どうやら此処にいる連中は俺を殺したくて仕方ないらしい。

 

「亜人連合と我々アルバトロス王国の決め事は違うやもしれぬ。勝手に処罰を下し、彼らの掟よりも温いものならば我々が亜人連合から糾弾される可能性もあろう」

 

 逆もまた然りだ、とアルバトロス王。

 

 「だからこそ急ぎ彼の国との接触を図っておる。冒険者が我々の要望に応え、生きて捕まえたのだ。魔力封じの魔術具も付けられておる。逃げられるはずもない」

 

 人の行く末を勝手に決めるな。俺は俺の生き様に従って生きているのだ。抑圧されていた前世から解放されて、清々していたというのに。黙って聞いてりゃあ好き勝手、抜かしやがる。

 

 「うるせえよっ! 俺の命をてめえが勝手に決めるんじゃねえっ!」

 

 「貴様、いい加減にっ!」

 

 俺の傍に居た騎士の一人が激高するが、意味が分からない。キレたいのは俺の方で、公僕に過ぎない騎士が、何故そんなに怒るんだ。

 

 「よい」

 

 「しかし、陛下っ!」

 

 「よいと言うておる」

 

 「……はい」

 

 「小僧。――貴様が犯した罪を数えられているのか?」

 

 討伐依頼の出ていないドラゴンを倒したこと、あまつさえそれを放置し瘴気を孕むようになった責任。

 瘴気に当てられて狂化した魔物が旅人や村に街へと及ぼした被害。討伐に向かった騎士や軍人が被ったもの。フェンリルに怪我を負わせて錯乱させ、王都近郊の森へ野外訓練へと出ていた学院の生徒が襲われ、その中には貴族に王族が居たこと。

 

 そしてドラゴンの瘴気を払うため大規模遠征を行わざるを得なかったこと。その時に聖女と貴族の子女たちへ暴言を吐き手をだし怪我を負わせたこと。勝手にアルバトロス王国へと入ったこと。

 

 「我が国は冒険者を重宝していない故、理解に乏しい所があるがこれだけは言えよう」

 

 間をおいて、告げられる。

 

 「お前が犯した罪は、既に自身では償えぬ領域に達しておる。先も申したが、我が国だけでは判断が出来ん。冒険者ギルド本部に周辺国も巻き込むであろう」

 

 ――どう責任を取る?

 

 取れるかよ、そんなもの。どうやれば良いのかさえ思いつかない。しんと静まるデカい部屋で俺は黙り込むしかないのだった。

 

 ◇

 

 辺境伯領から王都へと転移魔術で弾丸移動した日から、二日が過ぎていた。国王陛下より亜人連合へ旅立つまでは公爵邸で過ごせとのことだったので、公爵さまのお屋敷で過ごしていたのだけれど、疲れていたのか殆どを寝て過ごしていた。

 

 「ナイ、陛下から招集が掛かった。城へ行く、用意するぞ」

 

 ソフィーアさまが来客室へとやって来て、そう告げた。亜人連合へと渡る手段を確定させたのだろうか。公爵さまにソフィーアさまと護衛のジークとリンに私は、近衛騎士の人たちに謁見場へと案内され中へと入る。

 中にはセレスティアさまとマルクスさまの姿もあるし、王国の高官の人たちも勢揃いしていた。ザワザワと騒がしい謁見場。暫く待っていると銀髪オッドアイくんが、近衛騎士の人たち十数名にがっちりと囲まれて謁見場へとやって来た。

 

 そしてようやく陛下が姿を見せ、陛下対銀髪くんの勝負にすらなっていない話し合いが、目の前で繰り広げられている。

 

 ――うーん。

 

 国の長を務める人を前にして取る態度じゃないよね。なんとなく眺めていたのだけれど、この謁見に何の意味があるのだろうか。陛下がこうしたことに理解が及ばないなと首を傾げていると、早々に謁見は終了したのだった。

 

 「どうした?」

 

 謁見場を出て廊下を歩いていると、ソフィーアさまが私の顔を除きながら問うてきた。

 

 「今回の謁見に何か意味があったのかなと」

 

 「確かに意味が無いように見えるがな」

 

 「ええ。意味がないようで意味はあるのですわ、ナイ」

 

 ひょっこりと現れたセレスティアさまが、ソフィーアさまの言葉を補足するように私の左横に立つ。ちなみに右側にはソフィーアさまがいて、お二人に挟まれている形である。

 

 後ろにはジークとリンにマルクスさまが。前には警備の近衛兵さん。厳重に警備されているよなあと目を細めつつ、二人の言葉に耳を傾けた。

 

 「王国内の貴族も一枚岩ではないのは分かるだろう?」

 

 声に出すほどでもないので、頷いて先を促す。

 

 「強硬派に穏健派、中立派様々ですわね。――で、今回の騒ぎですが……亜人連合の機嫌など無視して裁いてしまえば良いという声が上がりまして」

 

 アルバトロス王国のお貴族さまたちは理性的だと考えていたのだけれど、どうやら過激な人たちも居るようだ。銀髪くんの仕出かしたことを考えれば死刑一択らしい。うーん、簡単に人の命を奪いすぎのような気もするけれど、向こうもセレスティアさまに弓を引いているから、庇う理由はないのだろう。

 

 「ああ。どうにも情報が錯綜しているようで、好き勝手に解釈する連中が現れたんだ。で、先ほどのパフォーマンスだな」

 

 そういえば銀髪くんが犯した罪を陛下が丁寧に解説していたなあ。あとどれだけの被害が出てどれだけの公金が消えていったかも。

 なるほどなあ。理解していない銀髪くんを諭すフリをして、正しく理解できていない国内のお貴族さま向けの解説でもあったらしい。

 

 辺境伯領で被害があったから周辺領だけでなく、辺境伯領と国境を面している国にも被害があった可能性もある。

 私の想像に過ぎないけれど、冒険者の銀髪くんたちが不法入国していたので、アルバトロス王国にもこうなってしまった理由の一端があるだろうから、突かれると痛い部分になるのかなあ。銀髪くんが勝手に入国していなきゃ起こらなかった可能性もあるのだから。上手く誤魔化すか、正当な理由がないと周辺国から付け込まれることにもなる。

 

 ようするに感情に任せて先走るなと、釘を刺したようだ。

 

 「これで勝手な行動に出れば、無能を捌く理由にもなりえる」

 

 「ええ。国に迷惑を掛けるしかない貴族なんて必要ありませんものね」

 

 アルバトロス王国よりも他国は冒険者を重宝していると聞くから、冒険者の性格や素行は余り加味されていないのだろう。強さ=ランクなのか。

 うーん。どんだけ世紀末列伝なんだろう、他国って。あんなのが沢山居る可能性もあるのか。アルバトロス王国に生まれて良かった。

 

 ただ、どんだけ世紀末列伝であってもルールがある。ギルドも問題を起こした銀髪くんを処罰したいだろうし、アルバトロス王国だけの問題で済まない。確か、銀髪くんを捕まえる為にギルドから精鋭パーティーが派遣されて、直ぐに捕まえたと聞いたし。

 

 「まあ、兎にも角にも亜人連合へ向かうことが一番優先すべきことだな。どこの国もギルドも、彼の国との戦争は避けたいだろう」

 

 「ええ。竜騎兵を用意できる国なんて大陸では亜人連合しか存在していませんもの。……大役ですわよ、ナイ」

 

 空中戦となれば遠距離攻撃を行える魔術師が重宝されるけれど、上空を飛んでいる騎兵を撃ち落とすのは難しいそうだ。魔術も高度な技術を要するし、魔力消費も多いから直ぐにガス欠になる魔術師が殆ど。

 

 「ああ。私たちの――アルバトロス王国の命運が掛かっているんだ。任せたぞ」

 

 「私はお飾りですよ。卵を届けるのが役目で政治面は補佐に就く方の仕事でしょうし……」

 

 やることなんて殆どない。あとは笑って接待してればいいんじゃないのかなあ、多分。

 

 「……お前は」

 

 「……」

 

 ソフィーアさまがあからさまな呆れ顔を浮かべ、セレスティアさまが鉄扇を広げて口元を隠して無言だけれど、目が笑っていない。

 

 そんなに不味いことを言ったかなあ。お飾りなのは周知の事実だし、政の教育は受けていないのだから無理があるし。本当に軽い神輿でしかない、私なんて。

 一応空き時間には亜人連合について記されている本を読んだけれど、いまいち掴みどころがない。閉鎖的な国だと聞いているし、人間が訪れることはまずない場所。卵を無事に返して、竜の浄化儀式を果たしたことを伝えることが、私が背負うべきモノだろう。

 

 「まあ、いい。戻ろう。――明日には出発なんだ、ちゃんと寝て休めよ」

 

 なんだか遠足に行く前の小学生みたいな扱いであった。




 また夜に投げますねー。
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