魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0671:石の効果。

 タウンハウスの侯爵邸にある仮置き部屋に置かれていた品々のほとんどは宝物庫へ仕舞われることになった。盗まれる――起こらないだろうけれど――可能性を考慮して、物理の施錠と魔術的な施錠をして管理をしようとなる。

 

 施錠系と言っても、障壁魔術を部屋全体に施しただけなので正しくは違うけれど。今回、ジークとリンとソフィーアさまとセレスティアさまとヴァルトルーデさまとジルケさまは私と同行していたのだから、頂いた贈り物で欲しい品はないのかと聞いたところ私宛に贈られた品だから必要ないとのこと。ヴァルトルーデさまとジルケさまも『価値が分からない』『興味ねえしな』とつれない言葉を頂いている。

 

 とりあえず、王都の侯爵邸から領地の侯爵邸へと私たち一行は戻っていた。なにより先にユーリと顔を合わせて、私たちのことを忘れていないか確認したのはご愛敬である。

 相変わらずユーリは私を『ねーね』と呼んでくれる気配はないが、彼女と会うたびに成長を感じていた。クレイグが毎日会っていればユーリの成長を感じるのは難しいと言っており、割とショックを受けたのは秘密である。毎日ユーリと顔を合わせたいのだが、どうしても仕事で会えなくなってしまうのだ。ユーリがもう少し大きくなれば私と一緒に国から国を渡ってみるのもアリだろうか。

 

 グイーさまにも紹介したいし、亜人連合国の皆さまとウーノさまやアルバトロス王家の皆さまにフソウの方々にも彼女と顔合わせをして頂きたい。ユーリを待ってくれている気配を感じているので早めに行いたい。しかし幼い子供を抱えてウロウロするのも大変である。まだユーリに躾なんてものは要らないし、学ぶにしても少し先のこと。

 

 ――王都から侯爵領に戻った次の日。

 

 昼下がり。私が自室の窓際にある椅子に座り、うーんと悩んでいれば、一緒にいるジークとリンが苦笑いを浮かべる。私がなにかを考え込んでいると察知したジークは口を開いた。

 

 「南大陸のエルフに会いに行くのが先か、デグラス伯爵を釣り上げることが先か……」

 

 「なるようにしかならないけれど、エルフの村に行くのが先かなあ。亜人連合国の皆さまに一緒にきて欲しいってお願いされてるから」

 

 そっくり兄妹の片割れが腕を組み片眉を上げながら今後のことを予想している。私的にはエルフの方たちの一件を先に済ませたい。デグラス伯爵領もどうにかしたいけれど、表立った口出し手出しは厳禁だ。アルバトロス上層部も関わることになるので、先程お伺いの手紙を送ったところである。

 

 「忙しいね」

 

 今度はもう片方が肩を竦めて私の側に立つ。足元では毛玉ちゃんたちが陽の光を浴びながら、床に背中を擦り付けながらお腹を丸見えにしている。ゴロンゴロンと床の上でのたうち回る――表現が酷いけれど、なんとなく合っている気がする――三頭の姿は可愛い。背中が痒いのか、単にやりたいからやっているだけなのか。私がおいでと手招きすれば三頭は床からがばりと立ち上がり、撫でてと勢い良く寄ってくる。

 

 そうして彼女たちの背を右手と左手を駆使して撫でるのだが、私の腕は二本しかないため一頭は仲間外れだ。ぴーと鼻を鳴らした桜ちゃんは拗ねてしまう。不味いと察知したのか楓ちゃんと椿ちゃんが拗ねた桜ちゃんに寄り添い、次は君の番だよと伝え私の下へ一緒にくる。姉妹愛だねえと私は感動しながら桜ちゃんの頭を撫でて、背中の方へ手を移動させると今度は毛色の違う鼻を鳴らしている。

 

 「だね。でも、エルフの方たちが喜んでくれているから良かったよ。領地の方は家宰さまと代官さまたちに丸投げしてても問題ないから。それにしても国内外から夜会に参加しないかとか、国賓で出迎えるからきてくれないかとかお誘いがきてて驚いた」

 

 領地の運営は子爵領も侯爵領も有能な方が担っているので任せきりである。というか、世界各地を周りながら自領の管理までしていれば私は過労死しているはず。本当に家宰さまと代官さま方にソフィーアさまとセレスティアさまにはお世話になりっぱなしだ。

 なにかお礼を考えても良いだろうか。亜人連合国のドワーフさんの品を贈ると困り顔になるしなにが良いのか。私が王都の貴金属店で選んだ品を渡しても喜んでくれるのか凄く謎であある。それならアガレス帝国に赴いて、ウーノさまの助言を貰いながら選んだ方が喜んでくれそうだった。私のセンスは良いとは言えないのだから。

 

 それにしても各国からいろいろとお誘いを受けるのは予想外だと私はジークとリンの顔を見る。

 

 「そりゃ、創星神さまの使いを務めたナイだ。関係を持ちたいと願う者は多くいるだろう」

 

 「ナイが関わっても良いって思った人の所にだけ行けば問題ない」

 

 腕を組んだままジークが肩を竦め、リンが無表情なままきっぱりと言い切った。確かに私が関係を持ちたいと願っている国や人のお誘いに乗るだけで十分だろう。

 誘われた全ての案件に参加していると、本当に私は過労死するし、侯爵家の皆さまを酷使してしまうことになる。何気にリバティーと名乗った方からも『我が国へきて頂きたい』と誘いがあったので、面倒にしかならなさそうだと『スルー』の箱に突っ込んだのが本日午前の執務でのことである。ソフィーアさまとセレスティアさまも良く誘いを出せたなと呆れていたし、私たち一行に矢を番えていたと知っている家宰さまも彼の鈍感力にドン引きしていた。

 

 「しばらくは配った石が黒く染まった一報を待ちながら、いろいろやらなきゃいけないことを捌いていくことになりそう」

 

 「無茶はするなよ」

 

 「だね、兄さん。元気に見えるけれど、疲れがたまっているかもしれない」

 

 各国に配ったグイーさまの石に変化はないようなので今は待つしかない。神さま案件なので長い時間が必要となる可能性だってあるから、臨機応変に動けるようにしておこう。フットワークの軽さであればアストライアー侯爵家は凄く動きやすいはず。ジークとリンが私の心配をしているが、二人も疲れているだろうに毎度私に甘い彼らだ。

 

 『少しの間はゆっくりするんでしょ? 予定を詰め込み過ぎるのは良くないよ~』

 

 クロが私の顔を覗き込む。私が動けば必然と彼らも一緒に動くことになる。数日は屋敷でゆっくり過ごそう。料理長さんたちが作ってくれるお料理も暫く離れていたから楽しみたい。

 

 「そうだね。ジークとお出掛けの途中から凄いことになったから、またやり直しても良いかも。今度はリンも一緒に行こう?」

 

 ジークとのお出掛けの最中にトラブルが起こって今に至るから、お出掛けをやり直すのも良いだろう。前回はリンが珍しく屋敷で一人留守番をしてくれていたので彼女も誘って。それならクレイグとサフィールも誘うのもアリかとリンの顔を見れば、彼女は少し悩んでいるようだ。

 

 「……良いの?」

 

 少し間を置いてリンは私に問う。

 

 「良いもなにも、リンもいてくれると私は嬉しい」

 

 「行く」

 

 リンが直ぐ答えてくれると、足元にいた毛玉ちゃんたち三頭も『あちゃちも!』『いきゅ!』『おできゃけ!!』と言いたげにくるくるくるくる同じ場所で回っている。目が回るよと私が苦笑いを浮かべると彼女たちは動きを止めた。ぺたんと床にお尻をつけた三頭は平気そうな顔をしているが、目が少し泳いでいる。まあ暫くすれば酔いは覚めると私はジークへと視線を変える。

 

 「勝手に決めたあとだけれどジークは? なにか予定ありそう?」

 

 予定を勝手に決めてしまったと私は彼を見上げた。ジークは組んでいた腕を解いて、片眉を上げながら小さく笑う。

 

 「やり直しなら俺がいないと意味ないだろう。もちろん行くさ」

 

 前回と同じ侯爵領でも良いけれど、違う場所に行先を変えても良いのかもしれない。でも私の顔は全世界の皆さまにバレているから、お忍びで街歩きをするとしても見つかってしまえば大騒ぎとなる。

 仮面を被って変装なんて凄く恥ずかしい。しかし黒髪から金髪のかつらを被れば印象は凄く変わって、バレづらくなりそうだ。かつらを被って厚底の靴を履けば随分と印象が違うはずと、脳内で変装した自分を思い描く。

 

 「変装した方が良さそうだよね。私ってバレると大騒ぎになるから」

 

 しかし有名人でもないのに変装とは……って、私はこの世界における有名人か。

 

 「だろうな」

 

 「だね」

 

 ジークとリンは苦笑いをしている私に肩を竦める。今回はクロも一緒にきてくれるようだが、クロが一緒だと変装しても直ぐにバレるような。クロも変装しようかと話を持ち掛けてみると、意外にも『良いよ~』と軽い返事がくる。私はクロも変装するならばとジークとリンの方を見た。

 

 「ジークとリンも変装しようよ。私の護衛だってみんな知っているから、赤毛の二人が一緒だと勘の良い人にはバレるかもしれないんだし」

 

 私はそっくり兄妹も巻き込んでしまおうと提案する。ジークとリンもかつらを被ってしまえば、正体が分かり辛くなるのではなかろうか。フードを被って顔を隠すという手もあるけれど、逆に目立ってしまうはず。

 

 「構わないんだが、逆に目立たないか?」

 

 「ナイが変装するなら私もする」

 

 とまあ、そっくり兄妹の反応を伺いながら、私たちはお出掛けリベンジ計画を立てるのだった。

 

 ◇

 

 ――聖王国、大聖堂。

 

 大扉から続く長い道を経た祭壇の上には創星神であるグイーさまが創り給うた石が鎮座している。地球の日本という場所で生きてきた私にとって神さまの存在を身近に感じていたためか、天然石のような石に敬意を払うのは少し難しい。

 難しいけれど、今住んでいる世界の方たちからすれば聖遺物に近い存在であるというのは理解できている。ナイさまから石を預かり祭壇に安置してからというもの、大聖堂には沢山の信者の方がやってきていた。

 

 石を見にきた信者の方は、まるで上野のパンダを見るために数時間並んで、目的の生き物は数秒しか見られない方たちと同じ状況である。

 

 パンダと聖遺物を同列に扱うなと言われそうだけれど、係の方が信者の方たちを捌いている姿はまさしくソレなのだ。石を預かってからというもの、ウルスラは毎朝毎夜、石に向かい熱心に祈りを捧げているので、信仰心の篤い方には本当に奇跡の産物なのだろう。

 祭壇の物陰から私、フィーネ・ミュラーはアリサと共に聖堂内を見渡していた。本当に人がひしめいていて、聖地巡礼で芋洗い状態となっている絵面と同じである。あ、聖王国の大聖堂なので聖地巡礼に間違いはないけれど。アリサも毎日毎日訪れている多くの方に目を見張っている。

 

 「お姉さま、毎日凄い人数の方たちが大聖堂に訪れていますね。寄付が増えて喜んでいる方がおられましたよ」

 

 「本当に凄い人ね。まあ聖王国以外の国は王家預かりとなっているから、一般の方たちが直で眺められるところが凄く限られているもの。見れたとしても物々しい警備の奥で鎮座している石だと聞いているわ」

 

 アリサは肩を竦めて笑い、私もふうと息を吐いた。ウルスラは治癒院で患者さんたちに術を施している最中だ。気合が入っているようで、休憩しましょうと誘っても『もう少し頑張ります!』と言って、私たちと一緒に裏へ引かないことが多くなっている。

 無理をするなら強制的に彼女を休ませなければ。高い信仰心というのも困りものである。とはいえ高い信仰心のお陰で、最近の大聖堂は毎日賑わっているのだから文句は言えない。

 

 「ということは聖王国にこられている方たちは母国で見ることができなかった方たち、と」

 

 他国は石に厳重な警備を敷かれており、一般の方たちが目にする機会はほぼないようである。何故、私が知っているかと言えば、大聖堂を訪れた方が愚痴を零していたからだ。

 陛下はケチだと頬を膨らませていたが、聖遺物級の品が盗まれれば国の威信に掛かるため厳重に警戒しているのは仕方ない。ナイさまであれば『失くした? 創星神さまにお願いして同じ品を創って貰いますね』と凄く軽い調子で言いそうだけれど。

 

 「でしょうね。治癒院に訪ねてくれる方も多くなっているから。ウルスラは気合を入れすぎだから、気を配って貰えると嬉しいわ。もちろん他の聖女さまもね」

 

 「はい! お姉さま!」

 

 元気良く返事をくれるアリサに私は肩を竦めて治癒院へと戻るのだった。

 

 ◇

 

 石配りを終え、一週間が過ぎている。ゆっくりしようという期間を終えて、私たちアストライアー侯爵家一行と亜人連合国の皆さまは南大陸にあるG国に顔を出していた。彼の国から知らせがなければエルフの方の存在は知らぬままだったはず。

 

 無下にはできないとG国王家の皆さまからの歓待を受け一夜明け、G国にあるエルフの隠れ里から彼らが王都にやってきている。外ではエルフの方が珍しいのか、少し騒ぎとなっていたようだ。とはいえG国の護衛の方たちは王都で無茶をしようとする皆さまを見事防ぎ切ったようである。ただ王城に辿り着く頃には疲れ果てているようだった。

 

 お城の中庭でエルフの方たちと再び対面することになった。私も亜人連合国の皆さまと南大陸の隠れ里のエルフの皆さまの繋ぎ役として参加させて頂いている。もちろん主役はエルフの皆さまなので、横に立って見守るだけ。

 ヴァルトルーデさまとジルケさまも同席しているから、上手くことが運びますようにと願うしかない。目の前にはダリア姉さんとアイリス姉さんが立ち、後ろにはディアンさまとベリルさまが控えている。彼らの正面には隠れ里のエルフの方が数人、少し緊張した面持ちで相対しながらなにか話し込んでいる。私たちの横にはG国の王家の皆さまが少し引いた様子で正面を眺めていた。

 

 「では、これからよろしくお願い致します」

 

 「よろしくね~」

 

 「はい。皆さまとお会いできた奇跡を喜びましょう。アストライアー侯爵閣下、本当にありがとうございます」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんが軽い声で告げ、隠れ里のエルフの方は真面目に答えていた。私にまでお礼を伝えているが、過剰なものは必要ない。でも、繋ぎ役として今回動いたのだから、それなりの振る舞いが必要となるだろう。私は前に立つ皆さまを見たあと、横にいるG国の王家の皆さまへと視線を向けた。

 

 「いえ。G国の皆さまにもご尽力いただきました。真に感謝致します」

 

 私が礼を執ればG国の皆さまが驚いた顔になる。何故、と私が頭の上で疑問符を浮かべていれば、背後に控えているソフィーアさまが耳打ちしてくれる。曰く、グイーさまの使者を務めた私が軽々しく頭を下げれば対応に困ると。

 そうなのかとぼやきたくなるし、私を上手く利用して踏み台くらいに見てくれる方が気が楽なのだが。確かに失礼な態度を執られれば、むっとする感情が湧いてくるけれどG国の王家の皆さまは私を一個人として見てくれている。恐れる必要はないと目を細めていれば、口を強く結んでいたG国の陛下が口を開いた。

 

 「あ、あ、あ、アストライアー侯爵にそう言って頂けるとは、有難いことですな!」

 

 私の家名を詰まらせながら陛下が告げる。なんだか緊張しっぱなしのようなので、早く撤収した方が無難だろうか。

 G国の皆さまは私が女神さまと一緒にやってくるなんて考えていなかったようだし、エルフの方の来国は予想していたけれど、ディアンさまとベリルさまに赤竜さんと青竜さんと緑竜さんもくるとは考えていなかったようである。王都の外で赤竜さんと青竜さんと緑竜さんが壁から顔を出して、王城を伺っているのが分かる。もしかしてG国の王都の皆さまが騒がしかったのは竜の皆さまが王都の中を覗いていたからだろうか。

 

 エルフの皆さまが王都の道を歩いていたことより、王都の壁の外から竜のお方が顔を覗かせている方がインパクトがありそうだ。私が苦笑いを浮かべていると、ディアンさまが一歩前にでた。

 

 「エルフの者たちと会えたこと、亜人連合国の代表として嬉しく思う。これからお互いの交流が始まるわけだが移動手段が竜によるものしかない。申し訳ないのだが、竜が飛来する許可を頂けるだろうか?」

 

 ディアンさまが前を向いていた視線を、私たちがいる横へと向けた。G国の王家の皆さまは突然のことに驚いて、肩をぴくりとさせている。ダリア姉さんとアイリス姉さんが『そんなに驚かなくとも』『なにもしないのにね~』と笑う。

 私はお二人に慣れたけれど、エルフの方の魔力量は人間を圧倒している。G国の皆さまが感じているお姉さんズの圧は強いのだろう。女神さま方も同席しているし、竜であるディアンさまとベリルさまの圧も強いはず。頑張って耐えているのは凄いと感心しながら、私はやり取りを黙って眺める。

 

 「へ、え? そのまた竜のお方やエルフのお方が我が国に参られると?」

 

 G国の陛下がきょとんとした顔になった。予想外のディアンさまの言葉に思考がついて行っていない。転移で移動しても良いけれど、勝手に国に入ったと言われてしまうと後が面倒なことになる。竜のお方に乗って飛来する方が良いのだろうと私は勝手に納得した。

 

 「ああ。問題はあるだろうか?」

 

 「その亜人連合国所属の竜と分かれば良いかと。我々は竜の見分けをつけることができぬのです」

 

 「なるほど、承知した。では貴国に参る際は亜人連合国の記章を掲げよう」

 

 やはり野良竜と亜人連合国所属の竜の方と見分けがついた方が良いようだ。とはいえ野良竜なんて滅多に見ないし、そもそも存在自体が希少な竜である。野良のお方がいるならば、少し顔を合わせてみたい。亜人連合国の竜の皆さまより強いのだろうか。超巨大竜とされるディアンさま、ベリルさま、赤竜さん、青竜さん、緑竜さんの体長を超える竜のお方がいるなら一目で良いので見てみたい。

 

 私が頭の中で考え事をしていれば、亜人連合国のエルフの方とG国の隠れ里のエルフの方との邂逅が終了していた。これからはお互いに交流を持つとのこと。

 

 G国にもお世話になるので亜人連合国の品とG国の品をお互いに売り買いすることにもなる。交流が広がれば経済が活性する。いろいろと上手く事が運べば良いなあと、G国の方と隠れ里のエルフの方に別れを告げて、王都の外に出た私たちは青竜さんの背に乗るのだった。

 

 そうしてG国から随分と離れた頃。

 

 「やっぱり公式な場は疲れるね~」

 

 「仕方ないわよ。国の面子ってものがあるのだし」

 

 アイリス姉さんが背伸びをして息を吐き、ダリア姉さんが苦笑いを浮かべている。

 

 「これからG国との取引が始まる。あまり無茶をしないようにな」

 

 「ですねえ。貴女方は敵となれば容赦がないですから」

 

 ディアンさまとベリルさまはこれからのことが気になるようで、お姉さんズが無茶をしないように咎めていた。ダリア姉さんとアイリス姉さんも隠れ里のエルフの方を紹介してくれたG国の皆さまを無下にする気はないようで、ちゃんと気を付けると肩を竦める。

 ただ妙な相手がいればG国の陛下に許可を取りつけて、あんなことやこんなことをするのだろう。亜人連合国の皆さまを敵に回してはいけない。

 

 「女神さま方もナイちゃんも今回はありがとうございます」

 

 「だね~助かったよ~」

 

 ダリア姉さんとアイリス姉さんがディアンさまとベリルさまから視線を外して、私たち一団と顔を合わせる。

 

 「気にしない」

 

 「まあ、あたしらは見てただけだからな」

 

 ヴァルトルーデさまは興味から、ジルケさまは南の方たちが粗相をしないようにと一緒にきてくれていた。特に問題なく顔合わせが終わり別れたので、女神さま活躍の場はなかった。ジルケさまの怒りがG国に炸裂すると、また恐怖伝説を築くことになる。なにもなくて良かったと私は息を吐き、ダリア姉さんとアイリス姉さんたちを見る。

 

 「大丈夫です。話を持ち込んだのは私なので、最後まで見届ける責任がありますから。これからは亜人連合国の皆さまと隠れ里のエルフの方たちの交流が上手くいくようにと願うだけですが」

 

 私が告げると、ダリア姉さんとアイリス姉さんは『変なところで真面目よねえ』『ナイちゃんだからね~』と微妙な言葉を贈ってくれた。ヴァルトルーデさまとジルケさまは良く分からない顔を浮かべている。アルバトロス王国に戻るには少し時間が掛かると、ロゼさんに仕舞って貰っていたお弁当やおやつを取り出し、無事に終えたことをみんなで祝うのだった。

 

 ◇

 

 ――西大陸、某所。大陸会議。

 

 アストライアー侯爵が石配りを無事に終えたことを報告するため、西大陸各国の王、もとい代表者が集まっていた。今日は亜人連合国の代表は用事があると言って不参加になっている。

 

 三年前までは姿を見せていなかったので、これが本来の大陸会議のような気もするが、既知となった者がいないのは少し寂しさを覚えてしまう。各国に宛がわれている控室で私が会議の時間を待っていれば誰かが訪れてきたようで、護衛の者が取次ぎをする。ヤーバン王が訪ねてきたそうで、私は入ってくれと許可を出した。すると出入口の扉が開き、ヤーバン王と護衛の者が数名入ってきた。侍らしている護衛の数が少ないのは、ヤーバン王国故なのだろう。

 

 「アルバトロス王よ、少し話を宜しいか?」

 

 ヤーバン王が部屋に入り直ぐ立ち止まり好戦的な顔になる。彼女の護衛もにやりと良い顔になっており、さてなにを言われるのかと身構え応接用のソファーへと彼女を誘った。彼女が腰を下ろすのを見て、私も同時に腰を下ろし言葉を紡ぐ。

 

 「どうしたかな、ヤーバン王よ」

 

 目の前に座すヤーバン王が背を正し私を射抜く。彼女の視線は獲物を狙うものであるが、私を的としていないのは明らかだ。

 

 「我が国の北にある国……エーレガーンツ王国の王がアストライアー侯爵に無礼な態度を執ったのは承知であろう」

 

 彼女の言葉に私の口の端が伸びる。我が国の者を小馬鹿にした行動であり、創星神さまの使いを務める侯爵に男を宛がおうとした。彼女に女性としての価値はないと言っているようなものであるが、アストライアー侯爵自身は無難に済ませているため我々も厳重な抗議で済ませている。

 侯爵本人も件の国には興味がなく『飛び地を手に入れてもお金が掛かるだけですし、位置的に関わりのない国なので放置が一番かと』と冷めていた。気の強い貴族であれば『面子を潰されたこと許すまじ』と報復を執るのだが、彼女は興味がないようだった。

 

 「もちろん。厳重に抗議をしておいたが、のらりくらりと躱されたな」

 

 そして彼の国も立地的にアルバトロスと離れているためか余裕の態度であった。

 

 「なんと、なんと! 侯爵を馬鹿にしたばかりか、アルバトロスも舐めているのか! これは愉快ですな!」

 

 ヤーバン王がはははと笑う。

 

 「もしアルバトロスがヤーバンの位置にあれば、舐めた態度をと各国の協力を得ていろいろと対策を講じるのだが……なにせ距離がありすぎる」

 

 ふうと私が息を吐けば、ヤーバン王は確かにと一つ頷いたあと表情を少し変える。

 

 「侯爵は移動手段を持っているのだから、攻め入らぬのか?」

 

 「興味がないようだ。飛び地を手に入れても金が掛かると」

 

 小さく首を傾げるヤーバン王に私は侯爵の言葉を伝えた。

 

 「なるほど。侯爵らしいといえばらしいのか……さて、アルバトロス王よ。此度の一件、我々ヤーバンに任せて頂いても良いだろうか?」

 

 「任せるもなにも、貴国を縛るための理由が我らアルバトロスにはないな」

 

 私が言い終えると、目の前の者は玩具を手に入れた子供のように無邪気な笑いを浮かべた。私は彼女の顔を見て叔父の姿を描いてしまう。

 

 「そう言って頂けると助かる。ヤーバンに引き籠っていては未来がないと決意して表舞台に出るようになったが……便利なものですな。各国と根回しができる! ヤーバン周辺の国には許可を取り付けた!」

 

 ヤーバン王国はとんでもない女傑を輩出したのかもしれないと肩を竦め、私はほどほどにと告げ彼女との話を終えるのだった。

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