魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~ 作:行雲流水
閉じていた目を開ける。会談場がセッティングされているであろう街へと着いたようだ。妖精さんたちも一緒に飛んできたようだけれど、飽きてしまったのか少し数が減っている。
「着いたわ」
王国の魔術とは違うのか、お腹の中身が浮く感覚を全く感じないまま転移を終えている。どっちが優れているのかは分からないけれど。街は森の中にあった。というかファンタジー世界でよく見る、木の上に建っている家だった。木の上に建てられる程だから、巨木が多いので樹齢とか凄そう。
「さて行きましょうと言いたいけれど、全員は無理だから人数を絞って頂戴な」
馬車はさっきの村へ置いてきているし、銀髪くんたちも檻から出て連れてこられていた。
流石に数が具体性がなさ過ぎて分からないので、聞いてみる他ないと口を開く。
「何人までなら可能でしょうか?」
うーん。手に持っている卵を地面に落としてしまいそうだから、仕舞い込みたいけれど妖精さんたちがふよふよと卵の周りを飛んでいる。このまま手に持っておくしかないのかと諦めて前を向く。
「そうねえ……とりあえず最低限の希望者はどなたかしら」
そう言われたので挙手をすると、指折り数えているお姉さん。ちなみに挙手したのは、第一王子殿下に宰相補佐さまとソフィーアさま私である。
「あと申し訳ないのですが、護衛を数名同行許可を頂けませんか?」
「人間って弱いから強い個体に守って貰うんだっけ?」
指折り数えていたお姉さんAの肩に顔を乗せ、疑問符を浮かべたお姉さんB。
「はい。少々騒がしくなり申し訳ないのですが、お認め下さればと」
お姉さんBの言葉に反論もなにもしないまま、許可だけ欲しいと強請る。
「ふむ。えっと、想定していた人数より多いから、椅子が用意できないけれど構わないかしら?」
「護衛にそのような気遣いは無用です。入室のご許可さえあれば幸いです」
第一王子殿下の護衛を最低限は付けたい。殿下の専属護衛の人たちが二人、一歩踏み出て敬礼する。連れて行って欲しいというアピールだろう。
あと私の後ろに居たジークとリンも一歩出て、私の両横について敬礼を執ったので二人も離れる気はないらしい。無理なら諦める他ないだろう。何かの不手際で相手を怒らせば、私が障壁を張って……逃げられるかなあ。魔力多い方が沢山居るみたいだから、無理だよなあ。
「ん。それならどうにかなるわね。いいわ、この人数でいきましょう」
そう言われて街の真ん中にある、一番大きい巨木へと歩いて行くエルフのお姉さん二人と妖精さんたち。人間が珍しいのか、遠巻きに見られている。
エルフの人が多いから彼らの街……なのかなあ。その中に交じって少数ではあるものの、ドワーフや耳と尻尾の生えている人間っぽい人たちが居る。亜人の国に来たのだなあと普通の感慨を浮かべ、エルフの女性AさんとBさんの後ろ姿を眺めながら、階段を上っていく。
「よく参られた、歓迎しよう」
男性にしては長く伸ばしている黒髪に新緑色の瞳、鼻筋は通っているし彫りの深い顔。背は高く細身。見た目は二十代中頃といった処の男性の姿が。何よりも特徴的なのは額の両横から、黒光りしている立派な角が生えていた。そんな彼に妖精さん数匹が飛んでいき、体をくるくると囲うように舞っていた。
視線は私が持っている竜の卵に釘付けとなっているので、なるべく早く返却したい。そしてエルフの女性AさんとBさんが、彼を挟み込むように左右に立つ。
――もういいかな。
よしと心で唱えて、大きく息を吸って吐く。
「この度の会談の特使をアルバトロス王より拝命しております。聖女、ナイでございます」
そう言って深く頭を下げる私。
「亜人連合代表だ。我々の風習で、個人が認めた者にしか名乗らないとなっている。許されよ」
名前は名乗らない風習なのか。ここまで出会った人達が名乗らないことに合点がいった。けれど呼び名がないというのは、不便極まりない。
「心得ました。――では、代表さまとお呼びするご許可を頂きたく存じます」
先程エルフのお姉さん方が『代表』って言ってたし、この辺りが適当なのだろう。
「ああ、構わんよ。名がないと不便と聞くからな、人間は」
個人を特定できる能力でも備わっているのだろうか。やはり人とは文化が違うようだ。短く目を伏せて、笑っている代表さま。
「代表殿、この度は会談の機会を頂き感謝いたします。――私はアルバトロス王国第一王子、ゲルハルト・アルバトロスと申します。以後お見知りおきを」
「ああ」
塩、塩対応だった。一応次代の王さまなのだけれど、亜人連合の方たちにとっては、気にすることではないのか。
国力とか大陸での知名度ならアルバトロス王国が上かもしれないが、こと戦闘になると亜人連合が突出しているみたいだからなあ。握手をしようとした王子殿下は右手を引っ込めた。妖精さんの件を思い出したらしい。
「――席に案内させよう」
長い一枚板で出来たテーブルへと殿下や宰相補佐さまにソフィーアさまが、エルフのお姉さんによって着席を促されていた。私はどうすればいいのかなと、若干冷や汗を流しながら待っていると、妖精さんたちが服の袖を掴み『こっち』と言葉が聞こえ。
いいのかなと考えるけれど、行くしかないよなあと足を進めた先は、代表さまが座る対面の席。私の左横に殿下、その更に横にソフィーアさま。右横は宰相補佐さまの席順で。亜人連合側は真ん中に代表さま、そして左右をお姉さんAとお姉さんBという布陣。
種族の代表が持ち回りして、四年ごとに代表を務めると聞いていたけれど、随分と少ない気が。ドワーフらしき方もいたので、この場に居てもよさそうだけれど、深く考えない方が良さげだ。
「では今回、我々が亜人連合国へお伝えしたい――」
「――聖女よ、それは必要ない」
まず事態説明からと言われていたので、竜の卵は巾着袋を座布団代わりに机の上へと鎮座させると、代表さまに止められた。
「必要ありませんか?」
「必要はないというより、まずはそちらを確認させてくれ」
「はい」
卵に視線がいっているので、ゆっくりと代表さまの下へ差し出すと、ゆっくりと手を添えて触れた。
「戻ってこられたのか……――聖女殿、これが竜の卵だというのは認識しておられるな」
なんだか呼び捨てから敬称を付けられた気がするけれど、先に質問に答えねば。
「はい。我が国の魔術師から聞いております」
「そうか。――」
銀髪オッドアイくんが、何故ドラゴンを倒せたのかを代表さまの口から聞くことになるのだった。
◇
代表さまが私から視線を外さず、竜の卵についてを語る為に口を開いた。
「この竜の卵の元になる方はね、我々を導いてくれたご意見番のような方だった」
何千、何万、数えることすら億劫になるほど、ずっとずっと長い時間を生きてこられたのだよ、と代表さま。
元々この大陸は竜の住処だったが、人間の数が増えると共に弱い個体から駆逐され生息領域を狭め個体数も減らしていった。大陸北西部を縄張りとしていた卵の元、もといご意見番さまが弱い個体と移住を希望する温和な竜たちを認めて、住まわせたのが始まり。
時代の移り変わりで、竜だった個体が人間の姿へと変化するものが現れた。
彼らは人間から奪われた土地を奪い返すと主張するが、ご意見番さまが止めたそうだ。無意味なことをすべきではない、と。
戦っても双方に被害が出るだけ。そして個体数の少ない我々が負けるのだと。人間は弱い生き物だが、知恵が回る。逃げ込んだこの場所で我々だけの楽園を築き上げる方が、よほど良いと。同族を説得し、また長い時間が流れる。
今度も人間に追われた亜人種たちが助けを求めてくるではないか。竜を追い出したことに成功した人間が、次の標的にしたのが亜人種のようだった。
元々大陸北西部はご意見番さまの根城。彼が逃げ込んできた亜人の保護を決めると、誰からも反対の声は上がらず。人間から追われた者同士、意気投合とまではいかないが、それぞれ適切な距離を保ち互いの文化を守りながら、大陸北西部で生きていた。
――この卵、そんな凄い方だったのか。
「彼はね、もう長くはないと悟り我々の元を去ったんだ」
随分と穏やかな顔と優しい口調で語る代表さまの声は止まらない。
「自分が死ぬにふさわしい場所を探し、そこで朽ち果て大地に還るのだと言ってね」
竜が朽ちた大地は死骸を苗床にして、植物の成長を促す。そうして草木を餌とする小動物が集まり、それを餌とする獣が住処とする。もちろん魔物も例外ではない。自然に従い弱肉強食の世界を生み出すと。
「彼が死ねば魔石が残り大地と同化する――……はずだったんだ」
彼は何の心残りもなく死出の旅へ出たはずなのに。
椅子から立ち上がり五歩程下がって、膝を突き両手を床へ添えて頭も床へと擦り付けた。
「この度は我々人間の欲によって、貴国の大切なお方の尊厳を奪い申し訳ありませんでした」
土下座……で済めばいいけれど。思いつく方法がこれくらいしかない。他のメンバーにもお願いしたいけれど、こんなことしたことないだろうし、身分的に出来ない人たちだから。
自然と共存して生きているというのならば、ご意見番さまの最後の願いを奪ったことは、彼らにとって認められない出来事だろう。死骸となって朽ちていた竜がまさか、死出の旅へと出た温厚な老竜だったなんて。てっきり銀髪くんが、実力で倒したものだと勘違いしていた。
――ああ、胃が痛い。
結局他のアルバトロス王国のメンバーにも土下座に近いことを強要してしまった。席から立ち上がって私の横に並び、みんな膝を突いて頭を下げているのだから。
「貴殿らが頭を下げる必要はなかろう。礼を言わねばならぬのはこちらだ。ただ細かい状況を把握できていないし、浄化儀式を執り行ったと聞いた」
少し細かく聞かせて欲しいのだと、代表さまの言葉と同時にゆっくりと頭を上げた。いつの間にか彼らも席から立ち上がって、こちらへと歩を進めてしゃがみ込み、手を差し伸べられる。
「申し訳ございません」
「謝らなくても良いだろう」
「有難うございます」
差し出された右手に私の右手を重ねようと同時立ち上がる為に足へ力を入れた。
「それでいい。――っ、軽いな」
「え?」
身長二メートル近くある代表さまに抱えあげられた。視線の位置が普段と全く違って、殆どの人を見下ろす形になっており面白いけれど下ろして欲しい。というか、子ども扱いじゃないのかなコレ。いや、でも竜の亜人と聞いているので、彼から見たら私は子供の可能性もある。
「あの……言い辛いのですが、下ろして頂けると」
代表さまの片腕に私のお尻が乗っかっている。不敬にならないよなコレと心配しつつ、落下すると絶対怪我をするので彼の肩に手を置かせてもらった。
「何故?」
「その……女は夫となる男性以外に気軽に触れるものではないと、我が国では教えられていますので」
平民の間ではこの限りではないけれど、お貴族さまとか聖女には当てはまる。詳しく話しても意味はないし、この説明で充分だろう。
「成程、それは失礼した。無知故の無礼許してくれ」
「お気になさらず。――え?」
案外あっさりと納得して下ろしてくれるのかと思いきや、何故かエルフのお姉さんAに引き渡され、再度抱えあげられた。
大きい胸をむぎゅむぎゅと押し付けないで欲しい。リンも大きい方だけれど、お姉さんは更に大きいのではないだろうか。しかも薄着なので割とダイレクトで伝わってくる。
「本当に軽いわね。ご飯ちゃんと……あー魔力量多いから食べても太らない性質かあ。片腕で余裕なんだけど」
「ちょっとズルい。私も~」
ほれ、と両腕を広げるお姉さんB。お姉さんAが『仕方ないわね』と声を出してパスされた。この光景を見ているアルバトロスの面々は何とも言えない顔をしている。
張りつめていた空気から随分と緩いものになっているし、問題があるならば殿下が口を挟んで止めてくれる筈だ。
「あ~君の魔力はかなり親和性高いね。こりゃ妖精たちが懐く筈だわ。でもなんで他の連中にまで懐いているの~?」
「恐らくですが、祝福を掛けたので……」
「祝福って何?」
何、と問われると説明し辛いものがあるような。うーんと頭を捻っていると、助け船が出されるのだった。
「掛けて貰えばいいじゃない。名前からして魔法の一種でしょうし」
エルフのお姉さんたちの間では『魔術』ではなく『魔法』と呼ぶようだ。文化が違うから、こういう所でも違いがあるみたい。
「あ、そっか。ね、ね、掛けてみて~」
「ついでに私もお願い。興味があるわ」
気軽に言ってくれるなあと苦笑い。掛けること自体は構わないけれど、いいのかなあ。アルバトロス王国に所属している人や関りのある人ならば構わないだろう。でも今回は亜人連合の方たちにだし。
一応、殿下にお伺いを立てた方が良さそうだと、黙って殿下の方を見ると軽く頷いてくれたので大丈夫みたい。
「――――"神の加護を"」
魔力を練って詠唱する。取りあえずはお姉さん二人を対象で。
「へえ、面白いわね。魔力が少しだけ上がってる」
「魔力だけじゃない気もするな。なんだか体が軽い」
まあおまじないみたいなものだし、効果は人それぞれと言う適当な代物。運が上がったり体力が上昇したり、魔力が上がったりと様々なんだよね。決まった効果が付与される訳じゃない。
「そろそろ止めろ。――聖女殿、詳しい話を聞かせてくれ」
エルフのお姉さんたちの行動を止める代表さまに『はい』『は~い』と軽く返事をして、椅子へと座るお姉さん方。私はお姉さんBの膝の上である。一体この状況は何事と考えつつ、下ろしてくれと願っても無駄な気がしたので、諦めた。
アルバトロス王国の面々も席へと就いたことを確認して、あの儀式の出来事を事細かく語る羽目になるのだった。
◇
机の上に鎮座していた竜の卵を代表さまが割と雑に掴んで、私の膝の上に置いた。手に持っていろということらしい。
「言葉に表しようもない者が彼を屠ったと聞いた。随分と弱っていたから人間の手で倒すこともできようが、なにもしていない竜に手を出すのはご法度」
何故、手を掛けたと厳しい視線を向けられるけれど、その理由は本人に聞いて頂くほかない。
「いや、すまん。ズレた。――浄化儀式の事を詳しく聞かせて欲しい」
片手で顔を覆って、反対の手で先を促す代表さまに、当時の状況を語る。
――なんで裸に突っ込まないのだろうか。
突っ込んで頂いて女性の尊厳を守れ! とか言って欲しいレベルなのだけれど。事細かく喋ることになったので、裸になったことも彼らに露見したのだけれど、さして興味はないらしい。
あとでエルフのお姉さんズに聞いた話になるけれど『服を着ていない方が魔力の通りが良くなるから』『エルフも儀式系の魔法は脱ぐ時もあるよ~』とのこと。一番最初に全裸を考えた人は、一応効果が上がるという保証は得ていたようだ。
竜が朽ち絶えて何故か狂化して。周囲に影響を及ぼして魔物が狂化して致し方なく浄化魔術を施した。
そこまでは亜人連合側に伝えてあった。ただ彼らの興味はソコではなく、何故魔石が卵へと変貌したのかが知りたいらしい。竜の文化や風習に詳しくないので、あの時の状況を事細かく伝えるしか方法がないと最初に断ると、それで良いとのこと。
――イタイ。
――ダレカ、ワタシヲオネガイ。
――アリガトウ。
朽ち果てようと旅に出た老竜が何を伝えたかったのか。ただ私へと流れてきた感情は痛みに耐える辛さを訴えたから、それを癒し。
生きていれば逃れられない死を穏やかに迎えられるようにと、浄化と共に葬送の魔術を施しただけ。竜から礼を述べられたけれど、満足なものが得られたのかは朽ちた竜にしか分からないものだろう。
「そうか。彼は君に『ありがとう』と述べたのだな」
「恐らくですが。私の頭の中というか心の中に直接感情が流れ込んできました。ですので、捉え方が違う可能性もあります」
「それはあり得ない。心の中へ流れてきたからこそ、種族を超えて伝わったのだ。間違えようもないのだよ」
もちろん君が嘘を吐いているとすれば別だが……あり得ぬだろうと言う代表さまに、小さく頷く。
穏やかに逝けたならば問題はないそうだ。弱肉強食の自然界で生きているのだ。たとえ死出の旅を邪魔されようとも、それは仕方のないことであると。
卵を残した理由は、最後の最後に辿り着くはずだった場所へ辿り着けなかったから。少しばかりの後悔の現れ。己の分身を残して、次は必ず満足のいく死を迎えられるようにと次代に託したのだろう、と。
しかし掟を、課したルールを破った者を許せる筈はないと。
「愚か者の処分は我々に委ねて頂きたい。――構わぬな?」
私では答えかねるので、殿下の方を向く。
「勿論です。彼の者の所属国との話は既に付けてあります。ご随意にどうぞ」
「あ、そうだ。ハーフエルフも馬鹿と一緒に居たじゃない?」
何かを思い出したように、膝の上に抱えたままのお姉さんBが私の頭の上で声を出す。
「あれってどういう状況なのかしら?」
お姉さんBの言葉を継いでお姉さんAが私に問う。
「正しい情報は本人たちに聞くのが一番なのでしょうが、説明を」
ハーフエルフの双子については、説明も必要だからと彼女らの境遇は聞いていた。どうやら銀髪くんが買った奴隷だと。Sランクパーティーを抜けて、ソロBランクの冒険者として暫く活動していたが上手くいかず、魔術と弓を使える彼女たちと偶然に奴隷商から買い上げたという。
アルバトロス王国に奴隷制度は存在しないので詳しくはないが、奴隷印を刻まれているので、命令に従っていただけの可能性もあると。解除する方法があるらしいのだが、術者が居らず奴隷印から解放出来ないまま亜人連合へと一緒に来ることになった。
「ふーん。えっとね、エルフの掟なんだけれど、他種族の人と結ばれるのは駄目なんだよね~」
まあ、そのお陰でエルフの数が減ってきているんだから笑い種よね、とお姉さんB。よいしょと言って私を抱え直す。ちなみに私の足は椅子から浮いている。
「エルフの里でハーフが生まれる可能性はほぼないわ。だから掟を破って里を追い出されたはぐれ者が人間と恋仲にでも落ちたか、無理矢理か……」
「まあ、真実はわからないけれど、生まれてきた子供に責任はないものねえ」
半分とはいえ同胞は同胞。逃げてきたり、保護を求めるのならば匿うのが道理というものらしい。
「ご老人たちはうるさいだろうけど、ウチで預かる。――いいわね、代表?」
お姉さんAが背筋を伸ばし直して代表さまに顔を向け、確認を取った。
「わかった。小うるさい古株は私が黙らせよう」
「話が早くて助かるわ。奴隷印から解放もしなきゃね」
「あ、代表。奴隷印を解放してから、馬鹿の処分を決めてね~」
ちゃんと状況や経緯を知りたいし、奴隷なんて野蛮なことしている人間が愚かで信じられないけれど、とお姉さんA。最初に出会ったときに二人がハーフエルフの子たちを見て『愚かな』と口走ったのは、奴隷制度について蔑んでいたのか。
「ああ。――しかし、また同じようなことが起きても困るな……」
代表さまは、片手を顎に当ててしばし思案している仕草を見せる。一体何を考えているのか、先を急ぎたいけれど、彼の思考の邪魔をする訳にはいかないので、黙って待つしかない。
「愚か者は冒険者という職に就いていると聞いたが、職ということであれば、その者たちを統括する者がいるのではないか?」
「冒険者ギルドと呼ばれる組織が大陸規模で運営されております」
あれ、言葉のチョイスをミスった気がする。これだと大陸全土の冒険者ギルドが亜人連合国に目を付けられたことになるような。間違えたことは言っていないから、いいか。もう少し冒険者の管理をきっちりとすべきだろうし。
あとはアルバトロス王国が他の国から非難されなければ、それでいいだろう。銀髪くんの不法入国についての扱いが良く理解できていないので、陛下や殿下が上手く取り計らうだろう。
「大陸全土にあるということは、更にそれらを統括する者がいるだろう」
「はい。アルバトロス王国は冒険者を重用しておりませんので、あまり詳しくはないのですが、冒険者ギルド本部という組織があると聞き及んでいますが……」
「ふむ、抗議を入れるのも悪くはないな。――引き籠っている我々が外に出ればさぞや驚くだろうなあ……」
代表さま凄く悪そうな笑みを浮かべて、背中から黒いオーラを出しているように幻視するのだけれど。
「面白そうねえ、外に出てみるのも悪くはないわね」
「あー私も行く~。外に興味あるし!」
大陸北西部に引き籠っていたという割には、随分アクティブな方々だ。先程『ご老人』とか『古株』と口にしていたので、そういう人たちは掟を頑なに守っているのかも。代表さまやエルフのお姉さんズの口ぶりから察するに、新しい風でも取り入れたいのだろうか。
彼らの外に出るとの言葉に反応したのか、殿下と宰相補佐さまとソフィーアさまに、ジークとリン以外の護衛の面々の顔色が悪い。そして顔色の悪い殿下に代表さまが視線を向けた。
「ギルド本部とやらに連絡役を頼めるか?」
「ええ、それは勿論です。――ただ我々と同道している者の中に、愚か者が所属していた冒険者ギルドの長が居ります。我が国を経由するよりは、話の伝わりが早いかと」
「確かに。階下へ移ろう、話を付ける」
そう言って代表が立ち上がりすたすた歩いて行くので、残りの面々も一緒に外へと向かうのだった。