魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0072:代表さまと陛下。

 雲一つない晴れ渡った空を、随分と速く翔けている。既に亜人連合国からアルバトロス王国まで半分を切ったそうだ。

 

 何故、地図もなにも見ないまま方角や距離を算出できているのか聞いたところ、私が魔力補填をしている障壁があるので分かりやすいそうだ。王都を離れて二週間近くなるけれど、他の聖女さまは補填をしていないのだろうか。いまいち信憑性がないなあと感じつつも、代表さまの説明だし亜人特有の能力なのか。

 

 眼下に広がる雄大な光景。

 

 前世で飛行機にも乗ったことがない貧乏人だったから、飛行機の旅がどんなものか知らないけれど、障壁を張っているので空気抵抗はないし、飛んできた虫や鳥が当たるなんてこともない。

 あと半分の距離で終わってしまうことを残念に思いながら、後ろを向く。白竜さまを先頭に等しい距離を保って他の竜の方たちが飛んでいる。眼下から見上げれば、渡り鳥が編隊を組んでいるような。そんな形。地上に居る人たちは驚いているのだろうな。今まで見たこともない巨大な竜が群れを成して飛んでいるのだから。

 

 「どうした?」

 

 「地上に居る人たちは、さぞ驚いているだろうなと」

 

 「まあ、この数で飛ぶことはないからな。仕方のないことだろう」

 

 代表さまに声を掛けられる。どうやらこの規模で飛ぶのは彼らも初めてらしい。示し合わせたように、この形になったそうだ。気ままに一匹で亜人連合国を出て、大陸の空を飛ぶのが彼らの普通らしい。番となった雄雌で飛ぶことはあるそうだが、それも滅多になく。

 

 「偶には外に出んとな。良い機会だ、我々はこうして飛ぶこともあると知っておけばいい」

 

 そうすれば気兼ねなく空を飛べるしな、とのこと。今後、自由に竜の皆さまが空を飛ぶ姿が想像できるのだけれど、本当に今まで大陸北西部に引き籠っていたのかと疑問になる。

 なるけれど、やはり彼らには空が似合う訳で。閉じ籠っているよりも、こうして空を飛んで自由を堪能している方が好ましい。

 

 「そなたはアルバトロス王国の貴族について詳しいとみるのだが、聞いてもよいか?」

 

 「私で答えられることならば、なんなりと」

 

 会話が途切れて暫く、代表さまがソフィーアさまに声を掛けた。少し離れてしまったので、ここからは声が聞こえない。代表さまがアルバトロス王国の貴族について、何か興味を引いたようだから、私が関知できることじゃないなと、眼下を見る。

 

 「あれ、王都かな?」

 

 「みたいだな」

 

 「あ、本当だ」

 

 なんとなくいつも見ている光景から、遠くから見る景色を脳内で設計する。まだ小さいけれど、見慣れた王城に城壁が見える。

 王都に近くなった為か白竜さまが速度を落として、高度を下げ始める。どんどんと近くなっていく王都。時刻は真昼間。城壁外に広がっている、小麦畑から私たちを見上げている人たちは指を指しているようだ。

 

 打ち合わせだと陛下方が城壁の外で待っていると聞いているけれど。

 

 王都の真上をいったん過ぎて旋回する白竜さまと後に続く竜の方々。この光景を見て腰を抜かした人居るのでは。

 なんだか悪い気がしてきたから、あとで教会と相談して無料診療所開いてもらおう。人海戦術ならばすぐ終わるだろうし、聖女が私だけなら時間が掛るけれど魔力切れにはならないだろうし。本当に忙しいなあと苦笑いをしていると、野原の一角に大勢の人たちが集まっていた。どうやらアルバトロス王国の出迎えの人たちだろう。

 

 「降りるか」

 

 『ああ、若』

 

 その言葉と同時に出迎えの人たちが居る、少しずれた位置の上で滞空し、少し間をおいてゆっくりと降りていく白竜さまと竜の一部の方々。全て降りることは不可能だと判断したのか、上空に残っている竜の方々がちらほらと。

 

 「先に降ります」

 

 エスコートの為、先にジークが白竜さまの背中から降り、次にリン。続いてソフィーアさま。彼女の手をジークが取って地面へと導く。

 

 「先に行くわ」

 

 「後でね~」

 

 次にエルフのお姉さんズ。順番的に私の番だったのだけれど……気にしたら負けか。身体能力が高いみたいで、エスコートは必要なかったようで、白竜さまの背からぴょんとジャンプして地面に降りる。この高さを飛び降りる勇気と身体能力の高さに驚いていた。

 

 「行こう、聖女殿」

 

 「はい。先に降りますね」

 

 代表さまが先に降りるのは不味いので、先に行こうとすると止められた。そして手を差し出される。一体何事と思いつつも男性が女性をエスコートすることは、なんらおかしい事ではない世の中で。断ったら断ったであとで問題になりそうなので、大人しく彼の手を取る。

 

 「ありがとうございます、代表さま」

 

 「先程、彼女に聞いた。王国では男は女をエスコートするものだと」

 

 代表さまとソフィーアさまが話し込んでいたのはこのことか。確か私を抱き上げた時に貴族うんぬんとかで断ったのから、王国のルールを聞いて反映させたようだ。

 頭の切れが良いのは羨ましいけれど、使い方の方向性を間違えていないだろうか。私をエスコートするよりも、エルフのお姉さんズを両手に引き連れて現れた方がインパクトがある。貞操観念云々は言われそうだけれど。亜人連合国だから気にされない可能性もある。

 

 「嫌よ」

 

 「嫌だね」

 

 心の中を読まないで下さい、お姉さんズ。地面に降りて速攻で否定された。なんで心の中が分かるかなあ……。迂闊に考え事が出来ないじゃないか。

 

 「顔に出ているもの」

 

 「分かりやすい~」

 

 そうですか。もう少しポーカーフェイスが出来るようにならないとなあ。今後はお貴族さまの世界に足をもっと踏み入れそうだから。

 学院でも必須事項として教育してくれれば良いけれど、普通科なら可能性がありそうだけれど、私が通っているのは特進科。先行してお貴族さま教育を確り受けている人ばかりだから、望みが薄そう。

 

 「ほら、腕を取れ」

 

 「失礼します」

 

 身長二メートル近い代表さまとチビの私では、恋人や夫婦ではなくパパと子供にしか見えないような。

 本来ならこのまま陛下方への報告なのだろうけど、代表さまたちを引き連れているから、このまま軽い挨拶を済ませて辺境伯領まで飛ぶのだろう。領主さまへの挨拶もする為、辺境伯さまには連絡を済ませてあると殿下が言っていた。

 

 兎も角、代表さまと国王陛下との挨拶はどうなるかと、目の前に立っている陛下や王妃殿下に公爵さまと、名だたる王国側の面子に目を細めるのだった。

 

 ◇

 

 王都へと降り立って代表さまのエスコートに導かれて、陛下たちの前へと立つと同時エスコートを解くのだった。恐らく聖女を無事に届けたぞというアピールなのだろう。あと仲良くなったというアピールだったのかも。

 

 「よくぞいらした、代表」

 

 「突然の来訪を受け入れて頂き感謝する、アルバトロス王よ」

 

 握手をする代表さまと国王陛下、どうやら平和的にファーストコンタクトを終えたようだ。次に王妃さまとあっさりとした挨拶を終えて、公爵さまと続く。

 

 「では、ヴァイセンベルク辺境伯領へ参られるか?」

 

 「ああ。――その後に時間を頂きたい。聖女殿より、貴国と我が国で取引をと願われた。細かいことや書面に認めるまでは時間が掛るだろうが、手始めの会合の場が欲しい」

 

 「よろしいのか? 貴国は我々人間となるべく関りを持つことはないと聞いているが……」

 

 「構わぬ。我らは変革を求めている。これは最初の一歩となるだろう」

 

 その一歩はゆっくりで良いらしい。亜人の命は人間より長い者が多いから、少しずつ意識を変えていくそうだ。

 代表さまのことだから陛下たちにも、この辺りの事はきっちりと説明するだろう。閉じ籠っていた国が急に他国と取引を始めれば、他国から何を言われるか。

 

 「聖女、ナイ」

 

 「はい」

 

 代表さまとの会話がいち段落した陛下に呼ばれて視線を向けると、その手には花束が。控えていた侍従の人から渡されたのだろう。

 

 「これを。――我が国から少しばかりの気持ちだ。手向けて貰えるか?」

 

 彼から花束を渡される。それを受け取って『承りました』と返事をすると確りと頷いた陛下。気軽な気持ちで言ったことが、どんどん規模が大きくなった上に、大役まで受けてしまった。

 

 ご意見番さま程の竜が空へと還ったのだから、少しくらい派手になっても彼はきっと怒るまい。

 

 ソフィーアさまも公爵さまから小さい花束を渡されているので、どうやらこの話は大分広まっているようだ。数が多いと迷惑だろうから、限定的なものになっているのだろう。誰彼から渡されても、困るだけなので良かったと思う。

 

 「そろそろ、行こう」

 

 ご意見番さまが好きだったという花は私が持っている。派手でも地味でもなく目立たない、どこにでも咲いているような花。貰った一本から増えて、一握り程にはなっていた。枯れないように状態維持の魔術と、紙を水に浸して切り口に当てているから暫くは持つだろう。

 

 そうしてまた代表さまにエスコートされて、白竜さまの背に乗る。

 

 殿下や宰相補佐さまは、王都に残るそうだ。これまでの報告や、これからの打ち合わせを急いで執り行うとのこと。

 申し訳ないが私たちの分もよろしくと言われ、花束を渡されたのだった。護衛を選出した。大規模遠征で十日掛かった道のりが、一時間も経たずに着いてしまうのだから、本気を出した竜の方の速さは本当に凄い。

 

 『飛びますぞ』

 

 その声でまた障壁を張り、一時間。辺境伯領都が見えてきた。また白竜さまは領都の真上を通り過ぎ、大きく旋回しつつ高度を落としていく。王都の時と同じで、領都を守る城壁の外に人影が。先程よりも出迎えの人数は確実に少ないけれど、辺境伯さまと奥方さま、そして王都から転移でトンボ帰りしたであろうセレスティアさまの姿があった。

 

 先程と同じように代表さまは私をエスコートしながら、白竜さまから降りた。私たちの姿を確認すると、辺境伯領の皆さま方が一斉に礼を執る。

 

 「騒がせて済まない。亜人連合国代表だ。この度は我が同族が迷惑を掛けた」

 

 言い方は悪くなってしまうが、ご意見番さまが死を受け入れていれば、周辺に被害をまき散らすことはなかったそうだ。自然に生きるものだから、強い者に淘汰されるのは仕方のないこと。長く生きた故に、理想の死に方に憧れていたのだろう……と代表さまが何とも言えない顔で私に教えてくれた。

 

 「ようこそ、代表殿。理由は国の者より報告を受けました。――此度の事、真に残念でなりませぬ」

 

 「気にするなとは言えんが、致し方のない事だ。貴殿らも被害を受けたと聞いている。水に流せとは言わぬが、禍根はなるべく残したくはない」

 

 代表さまの言葉に続いて、一匹の竜がのしのしと歩いて来て、口に咥えていた大きな籠を地面に置いた。

 

 「大陸では竜の鱗や牙は高値が付くときいた。市場を乱せば価値が下がるだろうが、適切に売り払えばそう下がるものでもあるまい。領地運営の足しにすればいい」

 

 「い、いや、しかしこれは……!」

 

 辺境伯さまが目をひん剥いて驚いている。どうやら本当に珍しいものらしい。私が頂いた物より品質は劣るけれど、おそらく高値が付くと言っていた。納品された時が怖いなあと、いまだ固まったままの辺境伯さまを見つめる。

 

 「加工技術がないと聖女殿から聞いた。問題がないのであれば我が国の職人を紹介しよう。アルバトロス王国ともこの話を付ける予定だ。国を通すなり直接なり好きな方を選べばよい」

 

 辺境伯という国境を守る国の精鋭を務める領だから、お金が良いのか武器関連が良いのか分からなかったので、この話が出た時に選択肢があるようにと代表さまに伝えておいた。タダで作って貰う自分の事は完全に棚の上で。今回の被害賠償は彼が所属していたギルドや国へも請求するようだし。

 

 辺境伯領という国の防衛を担う重要な場所。お金が無くなる=戦力が落ちる、だから辺境伯さまには頑張って貰わないと。

 

 「代表殿、お心遣い感謝致します」

 

 どうやら魅力に負けたみたいだ。話がすんなり進むならそれで良いし、亜人連合国の方も外貨を得られるので、お互いに良い関係が築ければ良いのだろう。契約やらは後の話になるだろうけれど、とりあえずの一歩は踏み出せた。

 

 「ナイ、こちらを」

 

 セレスティアさまに小さな花束を渡される。辺境伯領でもこの話が広まっていたようだ。苦笑いしながら受け取ろうとすると、エルフのお姉さんたちがこちらへやって来た。

 

 「君も彼女の匂いがするね~」

 

 すんすんと鼻を鳴らしながらセレスティアさまを嗅ぐお姉さんB。何だか変態チックな発言だ。

 

 「本当ね、貴女も彼女の祝福を受けたのかしら?」

 

 「え、いえ、その……」

 

 珍しい、いつも堂々としている彼女がお姉さんズの手によって翻弄されている。というか話の内容が端的過ぎて、セレスティアさまの頭の上に疑問符が浮かんでる。

 

 「浄化儀式の際に、セレスティアさまには補助を担って頂きましたから」

 

 ああ、そういうことと納得して頷いたお姉さんズ。

 

 「なら一緒に行けばいいじゃない。関係者だし」

 

 「え?」

 

 「だね~。一緒に行こう」

 

 お姉さんズに背中を押され、花束を持ったまま白竜さまの前に突き出されるセレスティアさま。

 

 「あ、あの……わたくしのような者がこのようなご立派な方に乗っても良いのでしょうか……?」

 

 困惑しつつ言葉を紡ぐと、白竜さまの顔が地面へと下がってきた。

 

 『構いませんよ、お嬢さん。皆さんも私に乗っていますので、お気になさらずとも。貴女のようなお綺麗な方を背に乗せられるのは、嬉しいことでもあります』

 

 遠慮している彼女を説き伏せる為に、口説き文句を言っている白竜さま。そんな台詞も言えるのかとちょっとした驚きだったし、エルフのお姉さんズは『気持ち悪いわね』『似合わないよねえ』と零していた。

 

 「無駄話はそこまでだ。あまり長居をしても迷惑が掛かろう。行くぞ。――では、また」

 

 「はい。ご配慮痛み入ります」

 

 代表さまと辺境伯さまが短く言葉を交わして、竜の背に乗り込む。搭乗者が一人増えたけれど、巨竜の背中の上だ、なにも困ることがない。そうして暫く、ご意見番さまが朽ち果てた場所へと辿り着いたのだった。

 

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