魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0075:新たなお土産。

 公爵邸の玄関先横にある停車場でソフィーアさまとジークにリン、私が馬車に乗り込もうとしていた。

 

 昨日の夜、ソフィーアさまから『陛下から呼び出し』と聞いていたのだけれど、きっと卵さまの件だろう。無事に返却できたし、ドワーフの職人さんたちとの繋がりも出来たから、お咎めはあり得まい。

 なら、あとは何があるのかと考えていたけれど、嫌な予感しかない。嫌な予感がするからと言って、陛下からの呼び出しを断れるはずもなく。朝起きて直ぐにご飯を終えると、侍女さん達に囲まれて準備を済ませた。

 

 「よく眠れた?」

 

 「うん」

 

 リンに問われ、短く返事をする。とりあえず報告書は昨日に終えたので、仕事は暫くなし。城の魔力補填も、本来ならば辺境伯領で討伐をしていた予定である。他の聖女さまたちの役目となっていた。

 

 「リンは?」

 

 「ばっちり」

 

 陛下と会うというのに彼女は動じていない。リンは他人に興味がないというのもあるが、緊張していないのは羨ましい。ジークもいつもと変りないようだし、本当にこのきょうだいは肝が太い。

 

 「どうした?」

 

 「ん、二人共緊張していないみたいだから、羨ましいなって」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 凄く微妙な顔を浮かべる、そっくりきょうだい。なんでそんな顔をするのだろうと首を傾げる。

 

 「ナイに言われたくない」

 

 「兄さんと、同じく」

 

 「……酷い」

 

 「酷くはないだろう。あの国で堂々と振舞っていたというのに、何故今更緊張するんだ、お前は」

 

 彼らを相手するよりも良くないか、と私たちのやり取りを少し後ろで見ていたソフィーアさまが声を上げた。あの時はもう開き直っていたというか、卵さまをどうにかして返却しなければ、という思いが強かったので気にならなかっただけで。

 

 「卵さまをどうにかしないと、私に世話が回ってきそうだったので必死ですよ。そりゃ……」

 

 「しかしなあ……その後にお前の一言でドワーフたちとの交易が始まるわ、竜の大群を引き連れて大陸縦断だ。緊張していたらあんな言葉は出ないさ」

 

 王都は大騒ぎだったそうだし、飛行コースだった国々の人たちも腰を抜かしたそうで。すわこの世の終わりかと騒ぎになったようだけれど、事前に連絡を入れていたこともあり大都市部では直ぐに騒動は収まった……収めたそうだ。

 地方や農村部は少し時間が掛るだろう、とのこと。連絡手段が人伝で、事情を知るには時間が掛かる。

 

 「もうヤケクソですよ。どんどん話の規模が個人の手に負えなくなっていましたし」

 

 「国でも持て余すものだったがな!」

 

 くくく、と楽しそうに笑うソフィーアさま。ジークとリンも笑っている。

 

 「だが、あの場所に花を添えられて良かった。ナイの思い付きだったのかもしれんが、国として彼の国へ哀悼の意を示すことが出来たからな」

 

 そういうものは大事らしい。辺境伯さまも花を添える為にセレスティアさまが同行したものなあ。あれ、銀髪くんの所属国の使者さんとギルド長さんは、あの時王都に残り、亜人国からの要求を国やギルドに伝えると急いで戻って行ったが……。

 気持ちの問題だし、後からあの場所へ訪れるだろう。心配になるくらい、一杯一杯の様子だったし。

 

 「さあ、行こう」

 

 最近、何かある度にソフィーアさまが使いっ走りになっている。ソフィーアさまは命令に従っているだけだろうけれど、公爵令嬢さまを私の下に就けるようなことはそろそろ止めて貰わないと。

 

 「はい」

 

 そう言って馬車へと乗り込んで王城へと辿り着く。案内役の近衛騎士の方たちによって、とある場所へと連れてこられた。今度は謁見場ではなく、会議室のような場所。それでも豪華な造りでテレビで見ていた、外交会談を行うような立派な所だった。

 

 「よく来てくれた。聖女、ナイ」

 

 部屋に既に陛下と公爵さまに、宰相さまと、誰か分からない中年男性たちが座して私たちを迎え入れてくれる。陛下がいの一番に声を上げ、近衛騎士の方が席へと案内してくれた。ゆっくりと移動する私に視線が集まっているのが分かる。

 

 「陛下、無事に務めを果たして参りました」

 

 「貴殿の働き、真に大儀である」

 

 笑っているけれど、どことなく疲れているような陛下に、まさか第一王子殿下方に続いて彼も不眠不休に近い状態だったのではと不安となってきた。

 

 「光栄の極み」

 

 「さあ、掛けなさい」

 

 頭を下げて椅子へと座った。私の隣にソフィーアさまが、後ろには起立したままのジークとリン。私が座ったことを確認すると、陛下が口を開く。

 

 ――意訳、爵位と家あげる。

 

 ん、と顔が引きつる。家は予想していた。陛下には何故教会宿舎にと言われたし、代表さまにも苦言を呈されていた。

 お屋敷を貸与されるだろうと予想していたけど、爵位って。だって本来は、お勤めご苦労さまということで、聖女が引退時に頂けるもの。現役の聖女は本来頂けるものではないし、筆頭聖女さまだけが賜るものだ。何でと思うけれど、今回の件は亜人連合国とのパイプが出来た。

 

 諦めるしかない。

 

 こんな場所じゃなければ『何でさ!』と叫んでいただろう。爵位も一代限りのものだろうし、貸与される屋敷も同様のレベルになるのだろう。手続きや物件探しで時間が掛かる――通常よりも急ぐとも――そうだが、必ず賜るとの事。ふうと他の人に分からないように一息吐いて、まだ続いている陛下の説明に耳を傾けるのだった。

 

 ◇

 

 また王都の空に竜が現れたと騒ぎになった。――辺境伯領のあの場所に花を添えた日から、五日後のことだ。

 

 王城には連絡が入っていたようで、直ぐに『聖女さまが呼んだ』のだと騒ぐ王都の民を静める為に兵士の方々が走り回ったようだ。白竜さまよりもサイズが小さいけれど、そもそも彼が巨大すぎる訳で。やって来た中型の竜の方も十分に大きいので、王都の人たちが騒ぐのも止む無し……。

 

 『若さまとお二人から預かってまいりました』

 

 連絡が入っていたので王都の壁の外で待っていたのだけれど、大空で旋回を数度した後にゆっくりと高度を落として、こちらに降りてきたのだった。器用に前足で引っ掛けていた籠を離して、私の前にゆっくりと置いて。

 

 「ありがとうございます」

 

 『戻ったら、一度連絡をとも言付かっております』

 

 恐らく中身は直接連絡出来る魔法具だろう。ジークとリンも使えるように、魔術式を付与する為少し時間が欲しいと聞いていたけれど、まさかこんなに短期間で終わるとは。後ろに控えている二人の為にドワーフさんたちに依頼したものは、少し時間を貰うと言っていたから。

 

 「分かりました。――長距離の移動お疲れさまでした。食事でもご用意をと考えていたのですが、浅学で竜の方々の嗜好が分からず……」

 

 『お気遣いは無用……と言いたい所ですが、少しだけ貴女さまの魔力を頂きたく』

 

 「私の、ですか?」

 

 魔力は回復しているので問題はなく、城の魔術陣への魔力補填もしばらく予定はない。

 

 『ええ。ご意見番さま程の方を空へと還したのです。少し、いえ……随分と興味があります』

 

 「私の魔力が美味しいのかは分かりませんが、倒れない程度でしたら」

 

 彼の言葉に苦笑いを浮かべながら、要望に応えた。どのくらいが適量なのか分からないし、彼が満足できる量となるのか。

 

 『私の我儘を受け入れて頂き感謝致します』

 

 目を細めて頭を下げる竜の方はそのままの状態。おそらくこのまま魔力を渡せば良いのだろう。取りあえず魔力を練って、目の前の彼の鼻先に触れると、少しだけ魔力が減ったのを感じたあと、竜の方が顔をゆっくりと上げた。

 

 『ああ、やはり素晴らしい』

 

 「満足いただけたなら、良かったです」

 

 『勿論、不満などありませんよ。帰り道はゆっくり戻ろうと考えておりましたが、予定が早まりそうです』

 

 「無茶はしないで下さいね」

 

 なんだか鱗に艶が出たような。気持ち身体が大きくなっているような。ん、気の所為だ、気の所為。細かいことは気にしないことにしよう。

 

 『はい。――ああ、再度になりますがエルフの二人に連絡を忘れないで下さいね』

 

 私が怒られてしまいますので、と冗談めかして竜の方が言い残し、大きな身体を空高く舞い上がらせた。首が痛くなるほど見上げていると、フライパスのように体を左右に揺らして、そのまま飛び立っていく。

 

 「……行っちゃった」

 

 地面に置かれた荷物を見る。そんなに大きなものではない。簡単に使えるそうだから、使い方を書いた紙を読んでねと、以前に伝えられている。設置が終わったら、とりあえず連絡を入れてみよう。先程の言葉は『絶対に連絡をしろ、直ぐにしろ』と言われているようでならない。

 

 「だな。まさか直ぐに戻るとは……」

 

 「ね。ちょっと大きくなっていた気がするけれど……」

 

 「気がするだけだよ!」

 

 リンの言葉を誤魔化すように言葉を被せた。二人はそんな私を見て呆れている。

 

 「戻るか。中も確認しないとな」

 

 尤もなジークの言葉に頷いて、待機してもらっていた馬車へと乗り込み、公爵邸を目指し離れの屋敷へと戻った。侍女の人に『おかえりなさいませ』と言われて『ただいま戻りました』と返し、借りている客間へと入る。

 そうして丸テーブルの上に籠を置き、蓋を開けると木箱が二つあったので、取り出して籠の横に置いた。

 

 「なんで二つ?」

 

 「見てみるしかないんじゃないか?」

 

 ジークの言葉に頷いて、右側に置いた木箱を開けるとそこには魔法具と呼ばれるものが入っていた。その上に紙が二枚置いてあったので手に取って読んでみる。

 

 『箱の中身を確認したら連絡してね~』

 

 『使い方は簡単。魔力を通すだけよ』

 

 間延びした声を出すお姉さんBとぱちんと片目を瞑るお姉さんAの姿が浮かび、連絡を忘れるとゴゴゴゴゴと黒いオーラを背中から出しているお二人の姿も浮かぶ。もう一つの箱を確認してからとの事なので紙を元に戻して、もう一つの箱を開ける。

 

 「うわあ……」

 

 「凄いな」

 

 リンが感嘆の声を上げ、ジークが驚いているような声を上げた。そして私は顔が引きつっているのが、自分でも分かる。

 

 「これ、絶対希少品だよね……」

 

 絹のようでいて、絹よりも上質な反物だった。量も結構あるのだけれども……。何の布かは分からないけれど、素人の目で見ても良いものだと判断が出来るのだ。相当に良いものに違いない。

 

 『エルフと妖精のみんなからのお礼だよ~』

 

 『服、作って貰いなさいな。質は良いから、仕立て屋が下手でも少々誤魔化せるでしょうし』

 

 亜人連合国で一夜を過ごした時から、総出で取り掛かっていたそうだ。蚕から糸を拝借したのち織機を使いつつエルフの魔力を通し、妖精さんが鱗粉を振りかける。着用していると魔力の回復が早くなるそうだ。

 困ることは早々ないけれど、魔力の回復が早くなるのは有難い。

 

 絹より更に上位の品質らしいので、公爵さまかソフィーアさまに相談して仕立て屋さんを紹介して頂こう。こんな上質な反物を下手な仕立て屋さんに頼むことは出来ないし、公爵家の紹介ならば腕は一流だろうから。

 

 「何を作って貰おうか」

 

 部屋の呼び鈴を使って侍女さんに、公爵さまかソフィーアさまと話がしたいと言付けた。どうやら彼女たちに頼むと執事さんを経由してお二人のどちらかに、伝わるそうだ。人の手を煩わせるので、少々気が引けるけれど仕方ない。基本的に公爵さまやソフィーアさまの予定なんて知らないのだし。

 

 「お前に送ってくれたんだ。好きなものを作って貰えばいいんじゃないのか」

 

 「うん、そうだね兄さん」

 

 「んー……センスないからなあ……」

 

 服に頓着をしていない生活だった為か、ファッションには詳しくないのだ。

 

 「なら任せればいい。公爵家の紹介なら手堅いものを作ってくれるはずだ」

 

 「だといいけれど」

 

 ジークの言葉に苦笑いをしつつ、二人や残りの仲間にも何か服を作って渡せないかなあと頭の中で考えつつ、連絡用の魔法具に魔力を通すのだった。

 




 ワクチン3回目を済ませてきました! 明日と明後日の更新が無ければ、熱でダウンしている可能性が高いです(苦笑 許して!┏○))ペコ
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