魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0081:来客多し。

 ヴァイセンベルク辺境伯さまが、借りている離宮の部屋から出て行って暫く。

 

 「セレスティア、いい加減にしろ」

 

 「あと少し! もう少しだけですわ!!」

 

 セレスティアさまに止めろと告げる、呆れ顔のソフィーアさま。

 

 セレスティアさまの膝の上には、アクロアイトさまがちょこんと鎮座してる。嫌がるのか心配だったけれど、アクロアイトさまは彼女の膝上に乗ったのだ。

 

 彼女は竜という生き物に目がないようで。先程までの辺境伯さまとセレスティアさまとの話し合いの席でも、チラチラと気にしていた。

 話を終え戻ろうと告げた辺境伯さまに『少し所用がありますので、お父さまはお先に』と部屋に残り、今となる。

 アクロアイトさまをナデナデしているセレスティアさまの顔は、若干だらしない。

 

 ジークとリンも護衛としてこの部屋の壁前に立って、表情には出さないけれどソフィーアさま同様に呆れているのだろう。

 

 「すまないな」

 

 ソフィーアさまが椅子に座る私を見下ろして、代わりに謝ってくれた。

 

 「構いません。時間を持て余していますので」

 

 まだ二日目だというのに隔離生活だから暇で仕方ない。王宮の図書館で本を借りれるけれど、そこに行くにも近衛騎士の人が居る。

 散歩にも護衛の人が就いているし、なかなか部屋の外へと気軽に出られなくなってる。

 向こうも仕事だから笑ってくれているけど、頻繁に出歩けば迷惑にしかならない。

 本は侍女さんに頼んで適当に見繕って貰えばいいだろう。何か散歩以外の暇を潰せるものを見つけないと。

 

 「それに、ああして膝の上に乗せられるのも今だけでしょうから」

 

 セレスティアさまの膝上で、大人しくしているアクロアイトさまを見る。ゆっくり育っていくのか、直ぐに育つのかは分からないけど。

 代表さまが『彼の全盛期は私より大きかった』と言っていたので、それを超える可能性は十分にある。そうなればアクロアイトさまは亜人連合国で暮らす方が良いのだろう。

 

 「ああ!」

 

 セレスティアさまの膝から飛び降り床へ立つと、アクロアイトさまが私を目掛けて飛んで来る。私の肩の上に乗り顔を擦り付けてきた。

 

 「やはり、ナイの方が良いのですね……」

 

 「……触れられただけ良かっただろうに」

 

 しょぼくれた顔をしたセレスティアさまに、ため息を吐いてぼやくソフィーアさま。

 アクロアイトさまなら何時でも触れるから、そんなに気落ちしなくても。まだ顔に顔を擦り付けているので、片手を伸ばして持ち上げる。

 

 「それはそうですが」

 

 「普通なら触れることすら叶わんぞ」

 

 私の肩から膝上に移ったアクロアイトさまは、寝息を立て始めた。

 

 「わかっておりますわ。ですが、お会いした方々は紳士な方が多くて……」

 

 「例外だろう。知性が高いのだろうな」

 

 確かに。お会いした竜の方々は、普通に大陸共通語を使いこなしていた。

 幼そうな竜の方も拙いながらも私と会話出来ていたから、誰か教えているのだろう。教育水準が高いのかもと考えていると、ノックする音が部屋に鳴った。 

 ジークと視線を合わせて一つ頷くと彼が扉を少し開け、見張り番役の近衛兵の方と声を絞り何かを話している。

 

 「領地や人に危害を加えるのならば、容赦は出来ん。妙な感情を抱くなよ」

 

 「それは勿論ですわ。それはそれ、これはこれですもの」

 

 割り切り方が凄いです、お二人共。暴れる竜がいるのならば、代表さまも遠慮をするなと言っていた。

 狩るか狩られるかの勝負に、彼の国の人たちが口や手を出すことはないと。

 逆に無害な者や弱い者に手を出したならば、その時は容赦はしないと言っていたので、また銀髪くんのような人が出ないことを祈るばかり。

 

 扉を挟んでの会話を直ぐに終わらせこちらを向くジークは、二人の会話のタイミングを見計らい声を上げた。

 

 「ナイ、ヴァレンシュタイン魔術師団副団長さまが来ているそうだ。どうする?」

 

 アポイントなんて聞いていないけれど、暇なので構わない。面会内容が告げられないので、割と重要な話なのだろうか。

 一応、ソフィーアさまとセレスティアさまの顔を見て確認を取ると、二人共確りと頷いてくれた。まあ師弟関係みたいだし、問題があれば追い出される。

 私的訪問かもしれないし身構えても仕方ないと、口を開いた。

 

 「問題ないよ。――お通しして下さい」

 

 「は!」

 

 うーん、こんな言葉を使うようになるとは。寝ているアクロアイトさまを撫でながら、少しすると荷物を抱えた副団長さまがやって来た。ちょいちょい見ている気がするけれど、こうして話すのは久方振りのような気がして懐かしさすら覚える。

 

 「聖女さま、浄化儀式以来ですねえ。――随分と昔の事のように思えてしまいます」

 

 「ええ。いろいろなことが身に降りかかり忙しくありましたが、ようやく落ち着きそうです」

 

 この部屋に居るみんなが『そんなわけねーだろ』みたいな視線を私に集める。いや、本当にもう勘弁して欲しいです。あとは何が起こるというのだろう。宇宙から隕石が落ちて、この星が滅亡するくらいしか思いつかないけれど。

 

 「先生。私とセレスティアは退室した方が良いですか?」

 

 「いえいえ、大した話ではないので問題はありませんよ。しかしご歓談中だったのですねえ、申し訳ありません」

 

 歓談中というよりは、セレスティアさまがアクロアイトさまを一方的に愛で、それを呆れた顔で眺めていたのだ。頭を軽く下げる副団長さまに苦笑を浮かべ、壁際に控えていた侍女の方にお茶をお願いする。

 

 「離宮に移られたとお聞きして、僕お勧めの本を選んで参りました。お手すきの際にお読みいただければと存じます」

 

 「ありがとうございます。時間を持て余していたので、嬉しいです」

 

 夜も灯りを使い放題なので、さらに時間を持て余してる。副団長さまから受け取った包みを、リンに預けると部屋の片隅へ置かれた。

 

 「中身は魔術の指南書ですので、読み込んで下さいね。教会は紙で教えず、口頭と実践での説明に留めますからねえ……」

 

 副団長さまが遠い目になっている。言われてみれば教会の人たちからは、口頭で教えられ後は実践形式だった。

 基礎が理解できているならば紙で読み解くのも楽しいですから、と副団長さま。うーん、防御系やバフ系の魔術だけに留まるなという、無言の圧力なのか。深く考えるのは止めようと頭を振って、副団長さまを見る。

 

 「さて、本題です。――陛下から頼まれて、本格的に聖女さまへ魔術指南を行うことになったのは憶えていますよね?」

 

 勿論ですと、一つ頷く。副団長さまに教えを受けるとは思っていなかったけれど、魔術に関しては真摯な人だから心配はいらないはず。

 

 「それと――」

 

 副団長さまの言葉を遮るように、部屋にノックの音が響くのだった。

 

 ◇

 

 副団長さまがやって来て手土産の本を受け取り、話し始めようとしたその時だった。部屋にノックの音が鳴り、来客を告げた。副団長さまと同じくアポイントなんて取っていない。そもそも本日の来客予定は、辺境伯さまのみ。

 

 副団長さまが先客だからお断りするべきだなと考えつつ誰が来たのか聞くと、意外な人物だった。これは断れない人だなと諦めて、入室の許可を出す。

 

 「大した話ではないので僕はお暇しましょうか。このお話はまた別の機会にでも」

 

 「申し訳ありま――」

 

 「――その必要はない」

 

 私の声を塞ぎ、そう言って顔を出したのは、代表さまとエルフのお姉さんズだった。アルバトロス王国の近衛騎士が彼らの護衛に就いているけれど、彼らの国の護衛は連れていない。不意に襲われても返り討ちに出来る実力があるのだろう。

 少し羨ましいなと目を細めると、アクロアイトさまがぬっと顔を上げた。誰が来たのか分かったらしい。

 

 その姿を確認できた途端に、副団長さまとソフィーアさまにセレスティアさまが即座に椅子から立ち上がり、ジークとリンは敬礼を、侍女の方も深々と頭を下げる。アクロアイトさまに机の上に移動してもらったので、少し遅れて私も席から立ち上がり聖女の礼を執る。

 

 「邪魔をしてすまない、気遣いは不要だ」

 

 代表さまが右手で楽にしろと合図を出してくれたので、少しだけ気を抜く。

 

 「急に来てしまったことは詫びよう。こちらの国との交渉が予定より早く終わってな。君が離宮に仮住まいすると聞いたので、無理を言って様子を見に来た」

 

 どうやら王城と亜人連合国を繋ぐ転移魔術陣が運用され始めたようで、以前よりも行き来はしやすくなったらしい。連絡用の魔術具を使うより対面で話した方が、間違いがないだろうと急いで転移魔術陣が設置されたそう。 

 

 「どうぞお掛け下さい。今、お茶を用意しますので」

 

 今しばらくお待ちをと言って、侍女さんの方を見る。明らかに緊張していたけれど、大丈夫だろうか。そんな侍女さんを心配してか、ソフィーアさまが『少し席を外す』と言って出て行った。これならば少しは安心できると、代表さまに向き直る。

 

 「そろそろ服も出来上がるって聞いたし、丁度良いタイミングよね」

 

 「うん~。ちょっと面倒臭いけど、やらなきゃね~」

 

 「二人共、やりすぎるなよ」

 

 椅子に座りながら不穏な言葉を言っているお姉さんズに、止めているのか止めていないのか良く分からない彼も席へと就いた。それを確認して私も席へとゆっくり座る。副団長さまとセレスティアさまは同席する気はないようで、護衛としてなのか壁際へと移動していた。

 

 「あの……一体、何が……」

 

 「三日後に各国の代表とギルドの上層部が集まる段取りが整ったようでな」

 

 ペンギンのように腹ばいしながら這いずって来たアクロアイトさまが、座った私の膝の上によじ登ろうとするのを受け止める。そんな様子をみてお三方は微笑みを浮かべ、直ぐに引き締める。

 

 「そそ。今回みたいな件を二度と引き起こさないように締め上げ……優しく諭して上げないと」

 

 代表さまの言葉に続いて声を出したお姉さんA。締め上げるよりも、言い直した優しく諭すという言葉の方が怖さを感じる。

 

 「一杯脅さ……脅迫……まあなんでもいいや。次はないようにしないとね~」

 

 お姉さんBも変わらない語彙しか浮かばず早々に諦めたけど、顔、怖い。三日後、各国の代表者とギルドの上層部の命はあるのだろうか。

 冒険者の質も問われるだろうし、ルールの改定にそれを守らせる方法。突っ込みどころは沢山あるのだろう。お三方ともやる気満々だし。厳しい監査となるのだろうなと遠い目になるけれど、どうして私が関係あるのだろう。

 

 「君に話したのは、この件に参加して欲しいからだ。彼を連れてな」

 

 代表さまは私を見るけれど、アクロアイトさまはテーブルに丁度隠れて見えない位置。もう一度机の上に移動させても、戻ってきそうだから止めておこう。

 

 「それは……」

 

 即答し兼ねる。一介の聖女が同席して良い場ではない気がするので、陛下にお伺いを立ててからじゃないと。当事者ではあるものの浄化儀式を執り行っただけで、あとは流されていただけだ。自ら行動したことはないのだし。

 

 「この国の王からは許可を得ている。ただ無茶はあまりさせないで欲しいと願われたが」

 

 私に無茶をさせる気なのだったのだろうか。

 

 「君は私たちやアルバトロス王の傍で控えてくれれば良い。段取りはこちらで全て行うし、気楽にしていてくれ」

 

 陛下の許可があって、何もすることもないなら問題はクリアできている。この件はアルバトロス王国や亜人連合国よりも、大陸の各国代表とギルド上層部が一番右往左往しなければならない。ならば、私はのんびりと構えていれば問題はない訳で。

 

 「分かりました。陛下の許可があるのでしたら問題はありません。当日はよろしくお願いたします」

 

 そう言って頭を下げると、アクロアイトさまと目が合う。

 

 「あ、少し相談したいことがあるのですが」

 

 「どうした?」

 

 アクロアイトさまは魔力で育つとはいえ、何も口にしないのは不安で仕方ない。魔力が主食となり、個体差で食べたり食べなかったり、好き嫌いもあったりすると聞いている。

 

 「流石に何も食べないというのは心配で……。適切な食事量やお水の量とかがあるのでしたら、ご教授をお願いしたいのです」

 

 「好きなものを食べさせれば良い、と前にも言ったが……」

 

 「合わないものを食べて調子が悪くなったりするのが怖くて、何も与えていません。ですが流石にこのままは良くないかと考えます」

 

 アクロアイトさまにとって美味しいものがあれば、その方が嬉しいだろうし。でも人間が食べるご飯をあげて良いのか迷うし、とりあえず聞いてみるのが早いだろうと少し前から聞きたかったことを口にする。

 

 「彼は果物を好んで食べていたが……」

 

 「あ、じゃあ今度、街から持って来てあげるよ~」

 

 「そうね。喜んでくれるといいのだけれど」

 

 アクロアイトさまが大きく育つようにと、竜の生態についていろいろと聞き出すのだった。

 

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