魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0082:教会は。

 各国の代表と冒険者ギルドの上層部が集まる場が決定した。昨日、代表さまとエルフのお姉さんズに同行を願われ、陛下も了承してくれているのならば断る理由はなく。

 

 代表さまたちが帰った後、教会のお偉いさんたち数名も姿を見せていた。

 

 借りている主室ではなく、応接室での対応。嫌な顔をしたのを直ぐに読み取ったのか、ソフィーアさまが応接室で会えばいいとアドバイスをくれたのだ。

 アクロアイトさまはセレスティアさまと一緒に部屋でお留守番をしている。ここで待っていて欲しいと告げると、彼女の膝上に乗ったのだ。滅茶苦茶幸せそうにしているセレスティアさまに、苦笑いをしながら応接室へと行くと、既に苦手な香の臭いが充満していて。

 

 相手が話を切り出すと、私が国側にどっぷり足を浸けたことに不満があるようで『戻ってきなさい』『待遇を良くしよう』と口々に告げられ。

 彼らと共に応接室で顔を合わせた、私担当の神父さまはしきりにハンカチで汗を拭っていたから、教会側も一枚岩ではない様子。神父さま以外は金満な臭いをぷんぷんさせているから、正直苦手。以前にリンも『嫌な感じがする』と口にしていたので、関わらない方が良いのだろう。

 

 一応は教会宿舎から移動の打診は、彼らからもあった。

 

 お断りを入れると『清貧で素晴らしい』『倹約は美徳ですな』とか言い残して去っていき、再打診はなかったので体裁上なのだろう。

 その時はお貴族さま出身のお偉いさんだから、自分の娘を優遇したいからだと考えていたけれど。飛躍的に上がった私の知名度に、急いでこちらへ来たようだ。

 

 爵位も賜るし屋敷も与えられる予定だ。陛下の言葉を反故にする訳にいかないのは、お貴族さまな彼らも分かっているだろうに。

 

 『有難いお誘いですが、国から爵位を賜る予定となっております。それと同時に屋敷も頂くことになりました。この国に住まう者の一人として、王家の方々からのご厚意を無下にはできぬのです』

 

 うん、ごめんなさい。国王陛下ならびに王族の皆さま。面倒だし、しつこそうな顔をしているので、複数形にして圧を高めておいた。

 国が無ければ教会運営もままならないから強くは出られないし、アルバトロス王国の教会系貴族に国を傾けるような力はないと聞いている。

 

 敢えてもう一度言うけれど、教会上層部やお偉いさんはあまり好きになれない。もちろん全員という訳ではなく、単純に私が苦手とする人が多い印象を受けている。

 

 民あってこその国、国あってこその民。民あってこその教会、教会あって……ぶっちゃけ、なくとも困らないと言いたい所だけれど、救われた部分もある。教会の炊き出しで腹を満たしたこともあった。聖女として救い上げられて、今の私がある。もちろん仲間も。

 

 教会は貧しい人たちのセーフティーネットにもなっているし、聖女を管轄する場でもある。

 

 あれ、国の魔術陣へ魔力を補填する聖女の扱いって、どうなっているんだろう。教会所属であることは間違いないけれど、今の私の立場って国に保護されているようなものだ。

 教会の人たちよく文句を……まあ、王国側が説き伏せているのかもしれないし、抗議を封殺している可能性だってある。やりすぎると対立しそうだけれど。

 

 「どうした?」

 

 学院メンバーしかいないので、ソフィーアさまが普段の口調で問うてきた。アクロアイトさまは何を考えているのか、公爵令嬢さまの肩の上に乗って首を傾げ、ぐぬぬとセレスティアさまが悔しそうな顔をしてる。

 

 「あ、いえ。今回の件って教会が全く噛んでいないというか、気配すらなかったなあと」

 

 浄化魔術からここまで教会側の人とは会っておらず、昨日訪れた教会のお偉いさん方が初めてだった。

 

 「教会では対処できん規模だったからな、仕方あるまい。ナイが公爵家で過ごす予定になった時や、離宮に仮住まいすることになった時は抗議がきたそうだが――」

 

 どうして警備が緩い教会宿舎という場所で、国の障壁維持を担う聖女を過ごさせていたのだ、と陛下が一喝したようだ。

 国側も聖女の実態を知らず放置していたのではと、言い返しを試みたけれど陛下に敵うはずもなく。まあ、中途半端な立ち位置に居たのが悪かったかなあ。魔力の高い人はお貴族さま出身者に多く、障壁維持をしている平民なんて聞いたことがない。平民なら、対応がおざなりになっても構わないくらいに捉えていたのかも。

 

 「私が望んだのですが……」

 

 教会や公爵さまの打診を断っていたし。

 

 「本人の望みを叶えていたと言えば聞こえは良いがな。命令もなかったのだろう?」

 

 「"お願いは"ありましたが"命令"はなかったですね」

 

 移り住まないかという打診があっただけだ。打診であれば選択の余地があり、断る一択になるのは当然で。命令と言われれば、嫌な顔をしつつ移り住んでいたとは思う。過去のことだから、今更なにを言ってもしかたないけれど。

 

 「なら、国に文句を言うのは筋違いだろうな。聖女は『教会』という組織に所属して管理を担っているなら『命令』が出来る。まあ、どちらも怠っていたのだから強くは言えんな」

 

 「しかし聖女の衣食住の提供は教会が主体。ケチな教会が痛い目を見ただけでは?」

 

 政教分離を意識しているのか、国が教会へ口を出すことは少ないし、監査が入るとかも聞いたことがない。坊主丸儲けのように教会は国への納税義務を優遇されているようで、美味しい思いをしたい人にとっては良い隠れ蓑だろう。

 

 ――大変だなあ。

 

 国も教会も。組織が大きいし、いろんな人が居るんだもの。世界のみんなが力を合わせれば、平和が手に入るだなんていう人もいるけれど。

 出来るのならば、とっくの昔にそうなっている訳で。そうならないのは結局のところ、世界が滅亡する危機に瀕しても誰かの欲が邪魔をするのだ。

 

 だからこそ、私が巻き込まれる羽目になるのはもう少し先の事であった。

 

 ◇

 

 仕立て屋さんに頼んでいた衣装が届いた。随分と出来が早いので、最優先で作業を行っていたようだ。

 離宮まで届けてくれて、同道していたお針子さんが微調整を施しようやく完成した所。作業を終えお披露目だと、みんながいる部屋へと戻ると、アクロアイトさまが不思議そうに首を傾げながらこちらを見た。

 

 「いいじゃないか」

 

 「ええ、お似合いですわ」

 

 私付きの侍女さんやお針子さんたちが最後の仕上げを眺めているソフィーアさまとセレスティアさまが声を掛けてくれた。真っ先に聖女の衣装を手直したのだけれど、なんだか照れ臭い。

 デザインは既存のものから外れず少しだけオリジナリティーを出せ、という公爵さまのオーダーで。口を挟んだからなのか、仕立て代は公爵家持ちとなっていた。

 

 「二人はどうだ?」

 

 「……はい、とても似合っております」

 

 「うん、可愛い」

 

 少し間を置いてジークがぶっきらぼうに答え、リンはいつもの様に可愛いと口にする。ジークは普段服に関して興味はないし、騎士としての台詞。それに気が付いたのかソフィーアさまとセレスティアさまが、直ぐに反撃に出る。

 

 「ジークフリート、何故そこで間を作る」

 

 「ですわねえ。素敵な殿方ならば間髪入れずに答えていますわよ」

 

 女性陣、しかも高位のご令嬢さまにこう言われては平謝りするしかなく。とはいえジークとリンに話を振ってくれるようになったのは、距離が近づいたみたいで良いことだ。

 『怒られてるー』とジークに視線を送ると『うるさい』とジト目を向けられた。そうこうしていると仕立て屋さんが脱兎のごとく帰路へと就いた。不思議に思いつつ仕立て屋さんの背を見送る。

 

 「随分とお爺さまに絞られていたからな」

 

 やっぱり公爵さまから怒られたのか、仕立て屋さんは。

 

 「何かあったのです?」

 

 事情を知らないセレスティアさまがソフィーアさまに問う。

 

 「勝手にナイと商談したんだよ。エルフの作った反物が余程欲しかったらしい」

 

 ソフィーアさまも間抜けじゃない。あの場に居たのだから、公爵さまに報告を上げていたのだろう。そして仕立て屋さんは公爵さまからお叱りを受けた、と。

 

 「ああ、それはそれは」

 

 どこからともなく取り出した鉄扇を広げ、目を細めるセレスティアさま。

 

 やはり国を通さずに交渉したことは不味かったのだろう。念押ししておいて良かったけれど、余り良い事じゃないみたいだから、勝手に交渉するのはもう駄目だ。

 亜人連合国の人にも悪いし、王国の人にも悪い。人の交流が持てるなら個人でやっても良いだろうけれど、まだ条約締結前だしなあ。政治の素人が簡単に首を縦に振るのは危ないと、心の中に刻んでおこう。あと亜人連合国の方に簡単に頼るのも良くはない。

 

 「明日はギルド本部だな」

 

 「わたくしたちはお留守番ですが、十分お気を付けを。どのような輩が居るか分かりませんもの」

 

 セレスティアさまとソフィーアさまは留守番となっている。護衛は近衛騎士の人が同道するし、私の専属護衛としてジークとリンも居るから、これで十分と判断されたらしい。

 亜人連合国の代表さまとエルフのお姉さんズは一旦アルバトロス王国へ訪れ、そこからギルド本部へと転移魔術陣を使用し、一緒に移動する手筈になっていた。

 

 「ちゃんとギルド本部の国の事情は覚えたか?」

 

 「はい。永世中立国家を名乗り、人口五万人ほどの極小国家――」

 

 普通は他国から支援を得て防衛を担うのだけれど、そこはファンタジー世界。ギルド本部がある国として冒険者が国防を担うそうだ。大丈夫なのかなと心配になるけれど、これまで上手く運用出来ているとのこと。強い冒険者や引退はしたがまだ動ける人を雇っているようだ。

 

 大昔、勇者を名乗った人物が魔物を狩る組織を作り上げ、だんだん広まって最も古いギルドがあった場所をギルド本部と名付け、今に至る。

 

 今は魔物を狩るだけでなく、何でも屋の側面も兼ねており依頼を出し受理されれば、募集が掛けられ冒険者が任務に就く。

 社会基盤が成熟していないので、良い働き口なのだろう。文字が読めなくても受付の人が対応してくれる。そういう人は上のランクになれない仕組みで、読み書きの最低ラインは頑張って勉強するそう。

 

 税金とかどうなってるのかと疑問が湧くが、特殊な国だ。大陸の至る所に冒険者ギルドが存在し、上納金でも撥ねているなら納得できるし。アルバトロス王国は冒険者を重用していないので、ギルドの数は他国より滅法少ないけれど。

 

 「大丈夫そうだな。――あとは各国の国王陛下や王族の姿絵は?」

 

 覚えたか、とソフィーアさま。

 

 「全てではありませんが、教えて頂いた重要な国の方々はどうにか」

 

 本来ならこんなこと覚えなくても良かったのだけれど。結構な枚数の姿絵が机の上に乱雑に置かれている。

 裏側を捲ればどこの国のだれだれ王と書かれていて、この数日は時間が空いている時に眺めていた。関わることはないけれど、粗相のないようになるだけ覚えておけとのこと。あとは逆に近寄ると不味い国や王族の人も教えられている。

 

 来るか来ないかも分からないし、私はアルバトロス王と亜人連合国の代表さまとお姉さんズの横に控えているだけ。だから何も問題が起こりようがないのだけれど、トラブルメーカーとして国から見られているのだろうか。私の扱い酷くないかなあと天井を仰ぎ見る。

 

 「ぶへっ!」

 

 突然飛んできたアクロアイトさまが、私の顔面に張り付き変な声が出てしまった。両手でむんずと掴んでアクロアイトさまを顔から引きはがす。そういえば、雄雌どっちだろう……とお腹を観察するけれど、それらしいものは見当たらない。海洋哺乳類のように隠してあるのだろうかと、首を傾げた瞬間。

 

 「あ」

 

 珍しく手から逃れてベッドの上に避難して一鳴きした。どうやら『やめろ』と言いたいらしい。申し訳ないことをしたなあと考えつつ普段着に戻る為、侍女さんを引き連れて別室へと入るのだった。

 

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