魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0083:大会議室。

 丸テーブルの上に置かれた小箱を見る。

 

 服と一緒に端切れで作れるものをと頼み、届けに来てくれた仕立て屋さんから受け取ったものだ。コサージュはエルフのお姉さんと妖精さんから頂いた反物で出来ているけれど、それ以外のハンカチやお守り袋は絹で作られていた。

 余った布で作れる分だけで大丈夫と伝えていたけれど、揃えられなかったので気を使ったようだ。数の指定や細かなことは言わなかったから、こちらの落ち度でもある。

 

 一目見れば上質のものだと理解できるし、デザインも繊細で丁寧な仕事をしている。流石公爵家御用達の仕立て屋さん。

 お礼状を後で書くと頭に刻み、小箱を部屋の隅へと追いやる。話の流れと勢いでジークとリン、ソフィーアさまとセレスティアさまに渡そうと考えていたのだけれど上手くいかなかった。

 

 というか、直前でヘタレたと言うべきか。

 

 プレゼント用に包装していないし、お貴族さまのご令嬢二人が喜んでくれるかも分からないし、そもそも渡しても良い物なのか。グダグダ頭の中で考えている内に機会を見事に逃した訳である。

 

 「――?」

 

 ベッドの上で首をフクロウのように傾げるアクロアイトさまに苦笑して、一撫ですると目を細める。明日はギルド本部。朝から転移魔術陣で移動するそうで、今日の夜から侍女さんたちによる、前準備が始まるので少々気が重い。

 

 「頑張ろうね」

 

 何を頑張るのかはさっぱりだけれど、また一撫ですると小さく鳴き声を上げたアクロアイトさま。そうして予定の時間がやってきて、部屋に侍女さんたちがずらりと並ぶ。

 

 「では、聖女さま。明日の支度を始めましょう」

 

 「はい。……よろしくお願いします」

 

 滅茶苦茶気合の入っている侍女さんたちの勢いに気圧され、頭を力なく下げ浴室へ連行されるのだった。

 

 ――次の日。

 

 朝ごはんと着替えを済ませ、今日も一日頑張りましょうということで、ジークとリンと私とで拳面を合わせたと同時、アクロアイトさまが一鳴きする。床からじっと私たちを見上げており、両手を広げるとパタパタと飛び込んできた。

 

 「そろそろ時間だ」

 

 「行こう」

 

 「うん」

 

 護衛の近衛騎士さんや侍女さんを引き連れて、転移魔術陣が施されてある部屋へ行くと、既に代表さまたち亜人連合国の方々とアルバトロス王国国王陛下に宰相補佐さまと外務卿さま、何故か副団長さまの姿。数日前にお姉さんズを見てそわそわしていたのだけれど、代表さまたちは客人となるので我慢していた。副団長さまのことだから、隙を見てコンタクトを試みるに違いない。

 

 「お待たせして申し訳ありません」

 

 時間より少し前だったのだが勢揃いしていたのに驚いて、慌てて頭を下げる。結構ルーズな所があるので、油断をしていた。次からもう少し早めに集まらなければ。

 

 「女性の支度は時間が掛かると言うからな。時間より前だ、気にすることはあるまい」

 

 陛下が穏やかな顔で告げた。謁見場で見る顔とは随分と違うもので、雰囲気も顔と同様に柔らかい。

 

 「先日振りだ。似合っているではないか」

 

 「ええ、素敵よ」

 

 「うん、可愛い~」

 

 彼らの正装なのだろう。先日見た時よりも衣装が凝っているものに変わっているし、お姉さんズも随分と気合が入っている。不穏なことを言っていたし、一体何をする気なのだろうか。

 

 「ありがとうございます。皆さまのお召し物も素敵です」

 

 柔和に笑う代表さまと『ありがとう~』とお姉さんBに、私の服の端を掴んで整えながらふふふと笑うお姉さんA。今回は亜人連合国側の護衛の方も居るようで、獣耳が特徴の強面で偉丈夫な方が多い。この状況を眺めているアルバトロス王国の面々は、不思議そうな顔を浮かべている。

 

 「あと、これを。依頼を受けていたものだ。先に剣二本だけを持ってきた」

 

 「気に入ってくれると良いけれど」

 

 「素材が良いからって職人も気合入ってたからね~」

 

 代表さまが告げると獣耳の護衛さんが、細長いケースを二つ持って開く。以前、ドワーフの職人さん達に制作をお願いしたものだ。

 

 「……凄い」

 

 武器について詳しいことは全く分からないけれど、鍛冶屋さんで見た物より細かい装飾が施されている。 

 

 「手に取ってみるといい」

 

 代表さまがジークとリンに視線を向けた。

 

 「ジーク、リン」

 

 振り返って二人に声を掛けると、一歩出てきて『失礼します』と言って手に取った。

 

 「手に馴染む」

 

 「うん。不思議」

 

 「悪いが今回これを佩いてくれ。――君にはこれを」

 

 代表さまの言葉に一つ頷き『ありがとうございます』と礼を述べる二人。そして何故か私の方を見る代表さまに、進み出てくる副団長さま。

 

 「エルフの方々と共同作業を致しまして、魔術具を作成いたしました。――いやあ、まさか僕がエルフの技術を教えて頂くことになるなんて」

 

 顔がゆるゆるに緩んでいる副団長さまと、呆れ顔のエルフのお姉さんズ。どうやら副団長さまの魔術馬鹿振りに振り回されたか、しつこく魔術について聞かれたか。何故だか情景が浮かんでしまうことに、苦笑いを浮かべる。今回のギルド本部への出頭も護衛を兼ねてついてくるそうだ。

 

 「今までは聖女さまの魔力を抑えるモノでしたが、余剰分は回収されるようになりましたし、段階を上げていきましょう」

 

 アクロアイトさまが私から漏れ出た魔力を吸い取っているし、体内に過剰に流れているものも吸い取ってくれているそうな。抱いているアクロアイトさまを見ると、私の顔を見て一鳴き。

 

 「体の成長は見込めませんが、魔力過剰による身体への負担は少なくなります」

 

 身体の負担よりも、成長の見込みがないと告げられた方がショックなんだけれど、後ろの二人がホッとしているので口にはしない。急に解放しても問題があるから、魔術具で魔力制御を段階的に緩めていくものだそう。慣れれば魔術具なしで日常生活も送っても大丈夫とのこと。

 

 「皆さま、ありがとうございます」

 

 副団長さまから手渡された指輪を受け取り、左の中指へと嵌める。

 

 エルフのお姉さんズと副団長さま、そしてこの場に居る人たちに礼を述べた。おそらく副団長さまやお姉さんズだけではなく、代表さまや陛下以外の方々も関わっているのだろう。裏もあるのかもしれないが、いろいろ手配してくれたのだから。頭を下げるくらい安いものだった。

 

 ◇

 

 ――ギルド本部。

 

 城下町をイメージしていたけれど、普通の小さな街といったところ。街の北端にあるギルド本部の窓から見る景色は、道行く多くの人たちは冒険者の装いだし。喧嘩をしている声も聞こえてくる。

 王都の王城から見る景色とは、随分と趣が違っていて面白い。アルバトロス王国に生まれていなければ、銀髪くんのように冒険者になっていただろうか。

 

 視界の端に映っていた銀髪くんの姿を、きちんと捉える。

 

 失礼な言い方ではあるが、てっきり亜人連合国で処分を下されていると考えていたけれど。本部の中庭で檻の中で猿轡を噛まされている銀髪くん。何もできないので諦めている雰囲気もありつつ、目は死んでいない気がする。

 謁見場で陛下の言葉に萎んでいたけれど、反省は出来たのだろうか。これから彼に訪れる結末は変わらないかもしれないが、己の行動を顧みることが出来ているのと、いないのじゃあ違うと思うから。

 

 「ナイ」

 

 窓から景色を眺めていた私をジークが呼ぶ。予定時間が訪れたようでギルド本部にある大会議室で会談が行われる。

 既にギルド本部上層部は入室を済ませているそうで、あとは大陸各国の代表者の入場を待つばかり。大会議室は特殊な造りとなっており扉が多く設けられ、同時入場が可能だそうだ。そして中は丸い大机があるとかなんとか。

 

 「あ、うん」

 

 彼の声に答えて、窓枠から手を放す。

 

 ジークとリンの腰には彼と彼女専用となるドワーフさんが腕を振るって打ってくれた、両刃の剣を下げている。刀身を少しだけ見ることができたのだけれど、ジークの剣が黒色の刀身がベースに赤のライン、リンの剣が赤色の刀身がベースに黒のラインが入ってる。

 二人の身長に合わせて刀身の長さも違うので、オーダーメイドで作った甲斐があった。あとは試し切りをしたいよねと話し、そのうち討伐依頼で出来るだろうと言ったけれど、その機会はいつになるのやら。

 

 陛下や代表さまの背を追いつつ、最後尾を歩く。ジークとリンに近衛騎士の方々も居るから、正確には違うけれど。しばらく歩くと大会議室の扉の前に着いたようで、みんなが立ち止まり団子状態に。暫くすると、代表さまと陛下以外の方々が少しだけ移動して、私の方を見た。

 

 「聖女、ナイ。前に」

 

 陛下に呼ばれ、空いたスペースに来いと手で示された。そこは扉の前で、右隣後ろにはアルバトロス国王陛下以下王国側重鎮勢プラス護衛の騎士さまと副団長さま。左側には亜人連合国の代表さまとお姉さんズと護衛である獣耳の亜人の皆さま。

 

 「この位置は不味いのではないでしょうか……」

 

 うん、絶対に。不味いし、おかしい。

 

 「構わぬ。身罷られた竜の現身をそなたは抱いているのだ。問題はあるまい」

 

 しれっとした顔で陛下が私に言葉を投げる。それに続いて代表さまが口を開いた。

 

 「我々にとってかけがえのない方だからな。また二度と同じことを繰り返さぬように、周知させねばならん。すまないが、ひとつ我らと踊ってくれ」

 

 道化を演じろと言うことだろう。決められたルールを破ったのは、欲をかいてしまった銀髪の冒険者くんだ。確かに、事情を知らない第二、第三の銀髪くんが出てくれば、王国も私も困るし亜人連合側も気が気でなくなるだろう。

 

 ――腹を括るか。

 

 私の腕の中に居るアクロアイトさまを見ると、それに気がついたのか私の顔を見上げて一鳴きした。

 

 「分かりました」

 

 なるようになるだろうと意を決すると、エルフのお姉さんズから念話のようなものが飛んできた。

 

 『大丈夫だよ~』

 

 『代表に従っていればいいから――……癪だけど』

 

 仲が良いのか悪いのか、冗談なのか本気なのか。よく分からない三人の関係性に苦笑していると、真正面の大扉がゆっくりと開き始めた。

 

 「こういう場所は堂々と胸を張れ」

 

 「視線は真っ直ぐ。誰かと目が合ったなら自分から外すな。不敵に笑ってやればいい」

 

 こういう場に慣れているのか陛下と代表さまが私にアドバイスをくれた。背を真っ直ぐに張ることも、視線を真っ直ぐに見据えることも直ぐに実行できることだ。

 

 「はい」

 

 お二人の言葉に返事をして大会議室の中へと足を踏み入れると、厳しい視線が直ぐに飛んでくる。『あれが……竜』『本当にアレが古から生きた竜の生まれ変わりなのか?』『何故このような場所に子供が』『不釣り合いな』とまあ、私に対するお決まりの台詞のオンパレード。子供が竜を抱いていることが信じられないのか、懐疑な顔を浮かべている。

 

 ほとんどはアクロアイトさまに向けられているが、椅子へ座っていない護衛の人たちからの視線は私に向かってる。綺麗に分かれていることに不思議に思いつつ、扉から真正面にある椅子が三つおあつらえ向きに空いている。

 

 どれかが私の席……というより真ん中なのだろうなあ。

 

 真ん中は嫌だけれど、私が左右どちらか端に座る理由がないような。先程決意した意思が霧散しそうになるのを、必死に抑えつつ歩く速度を若干抑える。やはり代表さまと陛下はそのまま左側と右側の椅子へと歩いて行く。一緒に踊ると決めたのだから踊り切らねば失礼だろうと、真ん中の椅子へと足を運び席へと着く。

 

 『それでは全員揃いましたので、先ずは冒険者が引き起こした今回の内容を、詳しく丁寧にご説明させて頂きます』

 

 大きな会議室全体によく響く声は、拡声器のような魔術具を使用して伝播させているのだろう。真正面に設置されている木で出来た教壇に片手を突き、反対の手で顔の汗を仕切りに拭っているギルド職員の人。

 

 王族を派遣している国もあれば、外務卿や宰相さまを、更には一段下げたような国もある。

 これ、事態の重要度を把握している表れなのだろうか。亜人連合国に近い国々は王さまや王族の方が顔を出している。逆に亜人連合国から遠い国や、亜人差別が根強い国はあからさまに下位職の人を派遣している気が。

 

 丁寧に事態説明されている声を右から左に流しつつ、大会議室に集まった人たちを見て、いろいろと考え始める私だった。

 

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