魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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2022.5.30投稿 2/2回目


0096:聞き取り。

 屋敷に戻ってお城へ使者を出すと、直ぐに返事が返ってきた。今すぐは無理だから夜に登城してね、とのこと。

 ヴァンディリア王国第四王子殿下とリーム王国第三王子殿下が私と接触を図ったこと、無茶振りくんが吶喊してきたことを簡単に伝えておいたけれど、さてどうなるやら。教会への連絡は、王国の判断次第なので保留にしている。

 

 お昼を簡単に済ませて、私が少しばかり支援している孤児院へ顔を出す。

 

 「久方ぶり」

 

 孤児院の食堂で子供たちの相手をしていた幼馴染兼孤児仲間の様子を見に、顔を出したのだ。ひょっこり顔を出した私に驚きつつ、どうしたものかという顔を浮かべている。

 

 「あ、ナイ……さま?」

 

 「いつも通りで大丈夫だよ。敬称も要らない」

 

 苦笑しつつ、片手を上げて挨拶替わりに。

 

 「えっと……」

 

 「まあ、この状況じゃあ言い辛いだろうけど」

 

 ジークとリン以外で護衛の人が居るわ、ソフィーアさまとセレスティアさまという高位貴族さまのご令嬢を二人侍らせているから。アクロアイトさまはジークの頭の上に避難している。どうやら大勢の子供が苦手らしい。

 孤児院で過ごしている子供たちはジークの事を知っているから、興味から彼に集って『触らせろ~!』『ジーク兄、触らせて!』と懇願してた。まあ、出来ないのでジークは困り顔で『すまない、それは出来ない』と謝っているけれど。慣れたらその内勝手に降りてくるだろうと、スルーを決め込み。

 

 「ちょっと、ね。落ち着かないかも」

 

 肩を竦めて苦笑いをした孤児仲間は、言葉を続ける。

 

 「どんどん名声を上げていくね、ナイは」

 

 「不本意だけれどね。巻き込まれたという方が正しいのかなあ……」

 

 もう泣きたいくらいに巻き込まれていると思う。いや、泣いても許されるような。勝手知ったる孤児院で、勝手に椅子へと腰かけた。

 

 「あのね、少し聞きたいことがあるんだけれど良いかな?」

 

 「構わないけれど、ナイの時間は大丈夫なの?」

 

 最近はここに来ても、直ぐに帰っていたからなあ。もう少し時間を取りたい所だけれど、忙しかったこともある。

 

 「その分は確保してもらったよ。私に付けてくれた人は優秀だから」

 

 そう言ってソフィーアさまの方を見ると、少し照れているような。まあ、いいかと前を向いて孤児仲間へ向き直る。

 

 「教会の上層部に噂ってあるの?」

 

 「え……」

 

 私の言葉にきょろきょろと周りを見る孤児仲間。どうやら口にしても良いのか判断が付かないらしい。

 

 「此処にいる人たちはアルバトロス王国へ忠誠を誓ってて、教会とはあまり関係ない人たちだよ」

 

 信者の人が居るかも知れないが、基本的に彼ら彼女らが優先するのは国である。国に悪影響を及ぼすならば、死ねとか平気で言い放つ人たちで。

 

 「……――ああ、うん。まあ、最近はちょっと酷いよねってなってる」

 

 教会の神父さまやシスターたちは敬虔な人が多いし、仮に野心を抱いていたとしても登れる可能性は低い。

 酷いのは一部の教会系お貴族さま。聖女さまたちが預けているお金を着服しているとか、使い込んで豪遊しているとか噂が流れているそうだ。横領したお金は自領の教会や屋敷に隠しているとか、いろいろと噂されているようで。

 

 「あくまで噂だよ。だから真実かどうかも分からないんだ」

 

 噂で耳にしたことを確かめる術がないから、確証はないと。でも、火のない所に煙は立たたない訳で。おそらく着服してるのだろうなあ。

 しかし、私がお金を下ろした時はきっちりと支払われていたのだが。まあ全財産の三割程引き出したから、使い込みが五割なら分からないからなあ。残金を全額引き出した時に、教会が支払えるかどうかが鍵になりそうだ。

 

 あとは王国と無茶振りくんの話の内容次第かな。

 

 「ん。そこまで分かれば十分だよ、ありがとう」

 

 「でも、ナイは凄いね。――王都のみんなが黒髪の聖女さまは『竜使いの聖女さま』って呼んでるよ」

 

 「ぶっ!」

 

 吹いた。

 

 「汚いよ、ナイっ!」

 

 何それ聞いていないし、竜を使役したことなんて一度もないけれど。噂に尾ひれ背びれがついているなあ。王都の街に出たら大変な事になりそう。大人しく貴族街で暮らしていくしかないの、コレ。

 

 「ごめん……その噂本当なの?」

 

 「うん。一ケ月位前に竜が空を飛んだでしょう。その時にこの大群の竜を従えたのがナイだって――それに……」

 

 未だにジークの頭の上に乗っかっているアクロアイトさまを見る孤児仲間。

 

 「い、いろいろとあったんだよ。本当……」

 

 「あー……うん。その、僕はナイに頑張ってって、応援するしか出来ないから」

 

 眉をハの字にさせて困り顔になる彼。なんだか普通の反応ですごく癒されるんだけれども。みんなは確りしろとかちゃんと振舞えとかだものなあ。

 

 「ありがとう」

 

 「? ……うん」

 

 「あ、そうだ。あと一つ話があるんだった」

 

 そう言って、子爵家で開設する託児所の世話人を住み込みでやってみないかとお誘いを掛ける。子供の世話を出来る人って案外少ないし、身分も高い人は居ないからその辺の問題はクリア出来ている。

 託児所を開設するのは護衛の人たちが休憩所や仮眠室にお風呂として使う別館になるから、女性よりも男性を雇った方が良い気もするし。まあ女性や子供に手を出せば、問答無用だけれどね。

  

 孤児院の職員が足りないなら雇えばいいだけだし、ソレに掛かるお金は私がある程度支援すれば問題はない。

 

 「僕だけがナイの所へ転がり込む訳にはいかないよ」

 

 その年齢で他の仲間に気が回るのは良い事だと思う。

 

 「あ、向こうにも同じ話はしてるよ。適材適所だけれどね」

 

 もう一人の孤児仲間にも声は掛けている。我が家の家宰さまが助手か弟子が欲しいと言っていたので、商家で働いているアイツならば適任だろうと踏んだのだ。こちらもNGが出れば別の人を雇うだけなので、気楽に返事をしてくれとお願いしてある。

 

 「まあ、考えておいてよ。難しく捉えなくてもいいから。じゃあ施設長さんに挨拶したら帰るね」

 

 「分かったよ。ナイはいつも無茶を言う」

 

 「そんなつもりは……言ってるかも?」

 

 生き残る為に無茶を言ったり、無茶を望んだりしたこともあるからなあ。苦笑して、孤児仲間に手を振って孤児院の施設長さんが居る部屋へと行き、先ほどの彼と同じ問い掛けをして同じような返答を頂き。あと、孤児仲間を引き抜くかもしれないという許可も得て、孤児院を後にするのだった。

 

 ◇

 ああ、もう忙しい。けどジークにリン、ソフィーアさまとセレスティアさまに私の護衛付きの人たちや、屋敷で雇っている人たちにも迷惑を掛けているので声に出せない。

 

 「大丈夫か?」

 

 孤児院から屋敷へ戻って、一度身支度をし直して王城へ向かう馬車へと乗り込む前。屋敷の停車場で団子状態になっている中で、ジークが心配そうに私を見て声を掛けてくれた。

 

 「ジーク、ありがと。忙しいけど平気。一気に問題噴出したから大変だけど、ジークは疲れてない?」

 

 「俺は問題ない。お前に付いているだけだからな」

 

 そうは言っても護衛を担っているのだから、気を張っているだろうに。

 

 「そっか。リンもごめんね」

 

 「大丈夫だよ、ナイ。私はナイの護衛騎士だから、謝らなくても良いんだ」

 

 気合を入れ直す為に拳をジークとリンの前に突き出すと、二人も拳を突き出して三人の拳面を軽く合わせる。

 

 孤児院の視察を終え、次は王城で今日の出来事の報告会だ。おそらく護衛の誰かしらが、既に報告を成しているだろうけど、直接聞き取るのも大事なのだ。

 擦り合わせや齟齬がないかの確認もあるし、顔を突き合わせて話すことで、手紙や連絡用の魔術具では分からない微妙な顔の変化を読み取ることも出来るから。その辺りは王国の上層部の人たちは手慣れているから、嘘も吐けない。

 

 「さあ、行くぞ」

 

 「はい」

 

 再び馬車へと乗り込んで王城を目指す道中、ソフィーアさまが私に数枚の紙を差し出した。

 

 「これは……?」

 

 膝上に乗っていたアクロアイトさまを横に下ろして紙を受け取ると、アクロアイトさまはソフィーアさまの膝上に乗る。落ちないように抱き留めたソフィーアさまをセレスティアさまが微妙な顔をして横目で見ていた。

 

 「お前に飛び込んできた自殺志願者の調べが付いた。取りあえず目を通しておけ」

 

 無茶振りくんの代名詞がかなり酷いものになっている。平然と言っているので気にも留めていないソフィーアさま。

 

 「学院生ですものね。素性が明らかになるのは簡単でしたか」

 

 ぱちんと鉄扇を開くセレスティアさま。多分不敵に笑っているのだろうなあ。無茶振りくんを小物扱いである。

 

 「ああ。直ぐに報告が届いたよ」

 

 ソフィーアさまがアクロアイトさまを撫でり撫でりしているのは無意識なのだろうか。まあ、気持ちよさそうにしているから問題はない。取りあえず、彼の身上表や経歴に目を通すべきかと、受け取った紙に視線を落とす。

 

 ――アウグスト・カルヴァイン

 

 地主貴族の継嗣として生まれ、熱心に教会活動に参加しているそうな。ご両親も敬虔な教会信徒で炊き出しや教会に孤児院への寄付を精力的に行っているそうな。

 領地運営をしつつ教会活動にも熱心なので、教会系貴族として名を馳せているそうだ。彼は魔力量もそれなりで治癒魔術を使用できるらしい。治癒院開催時には必ずと言って良いほどに参加し、お布施も無理に取らない。ちまたでは『聖人さま』と呼ばれるようになってきているそうだ。

 

 学院に通う普通科の二年生。学院内での彼は、勉強は出来るようで成績は普通科内だと上位に食い込んでいる。

 素行は品行方正で教諭陣からの信頼も厚いそうな。ようするに優等生の部類になるらしい。

 

 真意はともかく、綺麗な経歴だと思う。

 

 孤児から聖女になった私とは違う。彼が私と入れ替わったら、大陸平和統一とか夢じゃなさそう。優等生故に教会の腐敗が許せなかったのだろう。こういうものはある程度見て見ぬふりをするのも、世の中を渡る術だというのに。

 

 「ナイ、城に着いたぞ。降りよう」

 

 「はい」

 

 いつの間にか王城へ辿り着いていたようだ。扉が開かれ先にお二人が降りる。そうしてリンが顔を出して、エスコートをしてくれた。ありがとうと伝えるとへにゃりと嬉しそうに笑ってる。

 ソフィーアさまとセレスティアさまが、近衛騎士とやり取りをして案内された先は、陛下の執務室だった。中には公爵さまと辺境伯さま、宰相さまに宰相補佐さま、教会原理派の戒律に厳しい老齢の枢機卿さまがいらっしゃった。あ、マジっすかと、王国が教会へメスを入れる覚悟を持ったのだと、悟った瞬間だった。

 

 「聖女、ナイ。こちらへ座りなさい」

 

 執務机に座った陛下と、応接用のソファーにどっかりと腰かけている公爵さま。その横に辺境伯さま、対面には宰相さまと宰相補佐さま、背凭れのある一人掛けの椅子に枢機卿さまが。

 

 「はい。失礼致します」

 

 今日、学院で起こった経緯はほぼ伝わっているだろう。私の護衛についていた騎士の入れ替わりが今日は激しかったから。恐らく私の下と王城へ行ったり来たりを繰り返していたのだと思う。

 陛下に促され、私も一人掛けの椅子へと腰掛ける。その横には枢機卿さま。私が軽く目線を下げて礼をすると、ふっと微笑む。知り合いだったかなあと記憶の引き出しを探るけれど、見つかることはなかった。

 

 「まずは教会の話からだな」

 

 枢機卿さまが居るしね。王子さま二人は彼には関係ないのだろう。ならば話の一番手は無茶振りくんになる訳だ。

 宰相補佐さまが今回の無茶振りくんの無茶を語り始めると、公爵さまや辺境伯さまは深いため息を零している。

 

 「陛下、カルヴァイン男爵家は教会の熱心な信徒、処罰が下るのは致し方ありませんが、どうか温情を……」

 

 枢機卿さまが至って真面目な雰囲気で、陛下に嘆願する。

 

 「それについては聖女次第だよ」

 

 陛下、私に問題をパスしないでよ。なんで無茶振りくんの処罰を私が決めなくちゃならないのさ。どうするよ、みたいな視線をこの場に居る全員が向けてくる。

 

 「彼は身体を地面に擦り付け頭までも擦り付けた上で懇願し、己が望みを叶えました。しかし、これを許せば後に続く者が出てきましょう」

 

 迷惑極まりないよね、後に続く人が出てくるのは。それに『聖人さま』と呼ばれる人物を聖女が蔑ろにしたと噂が流れても困る。陛下たち王国側の人はうんうん頷いているし。

 

 「で、ではカルヴァイン家の処遇は……」

 

 「彼の望みや行動次第でしょうか。己を犠牲にして私を利用したことは構いませんが、学院の生徒が沢山居る中で教会の腐敗を訴えました。証拠は握っていると願いたい所ですが……」

 

 無茶な行動は証拠があった上であって欲しい。流石に人任せだと言われれば、私はキレても許される気がする。

 

 「教会貴族の腐敗の証拠さえあれば、ある程度の許しは頂ける、と?」

 

 「そうですね。糾弾するにしても、証拠がなければ無駄に終わります。時間が経てば、隠蔽や逃げることも可能ですから」

 

 時間を掛ければ、ずる賢い人間は雲隠れや隠蔽に逃亡、なんでもござれだ。そういう人間にはプライドなんてないだろうから、国も教会も簡単に切り捨てる。

 

 「本当に証拠さえあればカルヴァイン家の処遇を軽くして頂けるのか?」

 

 やたらと念を押すなあ、この枢機卿さま。彼にとってカルヴァイン家はそんなに価値のある家なのか。

 

 「それは私の判断ではなく教会や国でしょう」

 

 一介の聖女が下して良い判断ではない。証拠を求めたのは、面倒なことを避けたいだけだ。流石に証拠もなしで、私を頼るのは勘弁して欲しい。

 

 「国としては、聖女を軽く扱ったことを無視できん。だが、聖女の言葉も重い、彼女の言うように証拠次第としよう」

 

 陛下の言葉を目を閉じながら噛み締めるように聞いている枢機卿さま。

 

 「分かりました、陛下、聖女殿。実はカルヴァイン男爵から、子息が男爵へ提出された証拠を私が持参しております」

 

 そっと枢機卿さまの懐から取り出した分厚い黒革の手帳に、一同の視線が集まるのだった。

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