「よくもまぁ、顔を見せられたものだな。聖拳のグレン」
ジョゼと対峙して改めて感じる圧倒的なまでの力の差。勝てない。だが、グレンはそれを素直に受け入れるわけにはいかない。何故なら、今自分が引いてしまえば、自分が倒れたら妖精の尻尾はさらに追い込まれてしまうだろう
それは避けなければならない。今一度拳に力を込めて、これまでにないほどの敵意をジョゼにぶつける
「生意気なガキめ。大人しく俺の下についていればいいものを」
「却下する。アンタみたいな下劣な奴の下につくなんて反吐が出る。リタとアリス・・・彼女らを開放するためにも今ここで俺はお前を倒す。俺がこのギルドにいたのはアイツらを開放してやりたかったからだ、アンタに貢献するためじゃあないんだ」
全身を金色の光が包み込み黒かった髪は金色に染まる。これがグレンの本当の力
その拳に宿る光は全てを等しく葬り去る審判の光
「アンタを全力で叩き潰してみせる」
「その程度の力で??倒すだと?舐めるなよ、ガキがぁ!!!」
先ほどよりも早く動き、アリアにぶつけた時よりも強い光がジョゼを包み込み爆発させる。しかし、グレンは手を止めない。少しでも油断して止まればそこで自分は殺される
そんな気持ちがさらに拳の速度を上げる
「竜の裁きを受けろ!竜光乱舞〝天壊〟!!」
拳から肘にかけて光が鋭く収束していく。それは竜の爪を模したトンファーにも似ていた。華やかに繋がれる技の数々。流れるように無駄なくジョゼへと叩き込まれていく。肘、膝を主に使う超近接連打。天壊
攻撃のみを重視した防御を捨てた破壊の乱舞
激しい光の嵐が吹き荒れ、衝撃の余波が部屋中に傷を作り出していく。しかし、それも長くは続かなかった
一際大きな闇がグレンを包み込み、グレンの腹部に鋭い一撃が叩き込まれ地面を削りながらグレンの体が飛ばされる。何とか意識を繋ぎ留めると、グレンは自分の体に喝を入れて震える膝を立たせる。防御をおろそかにしていたため直撃を受けてしまう結果になった
「クソッ・・・あの攻撃の中で・・・反撃してくるなんて・・・」
「いやいや、いい攻撃だったよ。素晴らしいね」
腹部を抑えながら痛みを堪えてジョゼに向き直る。重い攻撃をもらったのは大きかったがそれでもまだ十分に動ける範囲だ
「聖竜爆光拳!!」
足に光を溜めると、地面を蹴ると同時に爆発させ超加速し一瞬にして拳を無数に叩き込む。だが、ジョゼに変化はない
「どうした。もうこの程度の力しかないのか?くっくっく・・・・そろそろ消えてろぉ!」
魔力の波に飲まれて壁に叩きつけられる。肺から一気に空気が抜け、前のめりに倒れていくが膝に力を入れて何とか堪える
そしてここで変化が訪れる。グレンはニッと笑う
ジョゼが内側からダメージを受けたのだ
「グォッ・・!!」
「聖天爆光拳は・・・・俺の魔力を拳に乗せて相手に叩き込み、相手の魔力に反応して増幅し爆発させる技・・・・効果はあまり・・ないみただ・・が。ハハッ・・始めて顔を歪めたな・・・ブサイクな面がさらに歪んで不愉快だ」
「貴様・・・本当に消えてしまえ。もういい。デッドウェイブ!」
闇の波が押し寄せる。グレンは全力で自身の体を光で包み込むが、強すぎる力に押されて来た道を戻るようにあらゆる障害物を砕いて吹き飛ばされる
アリアを倒したフロアの床に叩きつけられてようやく止まった
今度は起き上がることができないほど深刻なダメージを負った
「グレン!」
エルザに呼ばれ、朦朧とする意識の中視線を向ける。ナツの姿は見当たらない
どうやら、人質の救出へ向かったようだ。こちらへ走りよってくる影が見える
「ミラ・・・ジェーン・・・」
「酷い傷・・・!」
ミラジェーンに抱き起こされ、全身の痛みに耐え奥歯を噛み締める
「つ・・よいな・・・流石に」
「喋っちゃダメよ。早く病院へ運ばないと!」
グレンは首を振るとミラジェーンの力を借りて立ち上がる。服はところどころ破れ、そこからは裂傷が見える。他にもあちこちに赤いシミもできている
「これはこれは、妖精の尻尾のみなさん」
その声と共に瞬時に全員が戦闘の体勢をとる。マスタージョゼから溢れる死の気配、それは全員の背筋を凍らせるのに十分すぎるほどのものだった
エルザもボロボロの体を奮い立たせて立ち上がる。そこで、誰よりも早くジョゼに攻撃を仕掛ける二人の姿があった。エルフマンとグレイだ
「や・・・やめろ!!」
グレンの制止の声が届くよりも先にジョゼの魔の手が二人を襲う。強烈な魔法にやられてグレンのさらに後方へと飛ばされる
さらに止めを刺すように追い討ちがかけられる
エルフマン達二人の元へ行けるほどの力は残っていない。近くにいたミラジェーンを抱き抱えるとなるべくジョゼの攻撃から遠ざけるように自身の体を盾にする
爆発に巻き込まれ床に叩きつけられる。ミラジェーンは今の衝撃で気を失ってしまったようだ。目線だけ向けるとエルザの一応の無事も確認できた。だが、グレンの指はもう一本も動かない。エルザが何かを言っているがその言葉も聞き取れない
そのまま闇の中へ引きずり込まれるように意識が沈んでいった