月の瞳は何を覗くか   作:泣沢女神

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04 顔合わせ

 ──挟まれた。少年はそう考える。

 

 上空には斧槍バルディッシュを構えた金髪の少女痴女、平地には杖を構えた高町の少女。彼女らはそれぞれ犬とフェレットの()()と共にいた。

 

 8つの瞳は少年──否、少年の持つ巻物。ポケットに入れらるほどの小さな巻物が、この舞台の主役だった。

 

「……ジュエルシード、といったか」

 

 少年がそう言うと、向けられる()*1がさらに増える。三つ巴というにはいささか多すぎた。

 

「見ればわかる。膨大なチャクラ──エネルギの塊だ。過去の大戦に使われたという原子力爆弾とやらも、これには及ばないだろう」

 

 高町の少女が一瞬固まる。対して、何のことかよくわかっていない金髪の少女痴女をみて、少年は一瞬浮かんだ疑惑を頭の片隅に置いた。

 

「それで──何をしたか、だったか。

 単純な事だ。外からの干渉を受けないよう隔離──有体アリテイに言えば、封印した」

「それで、何をするつもりなんですか」

 

 新たな質問の主は高町の少女。怒りが含まれたその語彙に、少年は嫌な懐かしさを覚えていた。

 

「血は争えないな」

「え……?」

「いや、何でもない。

 質問に答えよう。()()()()()()()()()()。強いて言うなら、暴走しないよう管理することぐらいだ」

 

 信じられない。表情は、揺れる瞳はそう語っていた。

 

 高町の少女にとって、目の前の少年は子猫を容赦なく殺す異常者ヒールであり、街に被害が出ないよう飛び回る同士ヒーローでもあった。聡明でも未だ幼い少女は、その二面性を受け止めきれなかった。

 

「……では、管理ができるのであれば渡してくれるのですね」

 

 金髪の少女痴女の声に、高町の少女はハッとする。

 

「この街──いや、規模を考えるなら()()()か。この星に危害が及ばないなら」

 

 ──暴走しないように管理する。大事なことだ。その恐ろしさは、ジュエルシードを集める過程で嫌というほど感じている。

 

「ええ、安心してください。この()()()()には被害を出さないと約束します」

 

 ──持ち主の元に戻す。これも大事なことだ。()()()()は届ける、善性の少女らしい考えであった。

 

 ならば、だからこそ。管理ができる持ち主に返すべきだと、少女は行動していたのだから。

 

「っ!だめ!」

 

 高町の少女の声は、少年と金髪の少女痴女の取引を中断させるのに十分であった。

 

「ジュエルシードは、ユーノ君の物。管理なら、私たちのほうが適任なの」

 

「そ、そうだ!管理局でもないのに、魔導士が──」

「うるさいねえ、この小動物フェレット。食っちまうよ?」

 

 フェレットと赤い犬が続く。少年はポーカーフェイスを続けながらも、急に増えた単語から内心宇宙猫混乱状態であった。

 

「──情報が足りない」

 

 少年はそうこぼした。

 

「双方、情報が足らないな。どちらの言葉も、私にとってはウソかどうか判別が着かない。間違った方に渡して次元世界とやらが被害を受けるのも嫌だしな」

 

 少年は巻物をコートの中に収める。その行動と共に、金髪の少女痴女おの得物えものを少年に向けた。

 

「この手段は取りたくありませんでした」

「暴力で解決する、か。やはり、後ろ暗い何かがあると見える」

 

 一触即発。この言葉が相応しい環境となり、火蓋が落とされる──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ことは無く、空気を読まない読めない可愛らしい子猫の鳴き声でその場は固まった。

 

 全員の視点は、少年の足元。安心しきった表情で毛づくろいをする、先ほどまでジュエルシードが入っていた子猫だった。

 

「生きて、る?」

「殺してないと言っただろうに」

 

 小動物フェレットか、高町の少女か。どちらかがそうつぶやいた言葉に、少年は冷静に返した。

 

「……ええと、どうしようか、アルフ」

「いや、気にしなくていいと思うけど……」

 

 金髪の少女痴女と赤い犬も毒気を抜かれたようで、互いに顔を見合わせる。

 

 高町の少女──なのはようやく二人を正確に見る。どちらも距離があるため正確には分からないが、同い年ぐらいの背格好だと気づく。

 

 少年は一つ溜息をつくと、もう十分だと懐から出したコインを上に弾く。8つの瞳が弧を描く金属音の主を追っている間、煙幕がその場を包んだ。

 

 

~*~

 

 

 二人の少女とそのお付は急な煙幕に対応できず、ただただ困惑していた。晴れた頃、二人の間にいた少年はいなくなっており、未だ毛づくろいをしている子猫が彼のいた場所を示していた。

 

「レイジングハート、何処に行ったか分かる?」

No. Lost him.すみません、見失いました

 

「バルディッシュ」

Similary, sir.同様です

 

「「But バット……」」

 

 二基のデバイスが同時に主人へと伝える。

 

Discover a Jewelseed, sir.ジュエルシードを発見

Under cat.子猫の下です

 

 毛づくろいを終え周りを見渡している子猫の下、少女たちは緑色の小さく細いそれを見つける。ジュエルシードが消えた時に少年の手元にあった、1つの巻物。

 

 撤退したときに落としたであろうそれは、新たな火種でもあった。

*1
エネルギーのことではなく向けられた感情。殺気というにはぬるい




煙幕玉
 裏の世界の住人、特に忍者と呼ばれた者たちの基本装備。ただ煙幕を張るだけの殺傷力が無いこれは、忍者の隠密行動を確実にする道具として開発・改良が進められた。
 効果を上げる工夫として、マジックの基本である視線誘導ミスディレクションと組み合わせる、多くのパターンが考えられてきた。
 彗星の場合、それはコインであった。高い金属音を出せる薄型円板のそれは、大抵の人が振り向く魔力と、持っていても落ちていても違和感のない日常の象徴でもある。
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