渚さん18歳の場合 ーごめんなさい……友達としてしか見れないかな……ー
美桜さん25歳の場合ーすいません……タイプじゃないので……ー
アンヌ30歳の場合➖悪いが男に興味ない➖
カミーユ22歳の場合➖貧乏な方はちょっと……➖
おたえ殿18歳の場合➖他に好きな人がいるんで➖
とある城の姫の場合➖わらわには許嫁がおるのです➖
ミンミンゼミ♀の場合➖あ? お前みたいな弱い遺伝子の雑魚と一緒になるわけねーだろ➖
星彩の場合➖剣義……私はあなたと一緒にいるより関平といた方が楽しいの 顔もあなたよりカッコいいもの……➖
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
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僕はとんでもない悪夢で目が覚めた。
そうか……僕は寝てしまっていたのか。
いや……上の七人は実際に転生前にフラれた時に言われた言葉だ……。
星彩様にはフラれてないけど、正夢になりそうで怖い……。
そう言えば、呂玲綺とか言う人がお弁当食べるの待ってたんだっけ。
大木に目をやったが、玲綺殿の姿は見当たらず、空っぽの弁当箱だけが僕の前に置かれていた。
友とか何とか言ってた割に消え方、あっさりしすぎたろう……。
そら友達なんかできるわけねーわ。
「ヤバい!?」
もう夕暮れで、カラスが鳴いている。
早く薪を拾って星彩様と合流しないとと思い、慌て立ち上がった俺の真後ろで声がした。
「そんなに慌てなくても私はここにいるわ……」
俺が後ろを恐る恐る振り返ると星彩様が僕の真後ろに立っていた。
「うわっ!? せ、星彩様、いつからそこに!?」
「驚かせてしまってごめんなさい……大分前からいたのだけれど……」
いたのなら起こしてくれればいいのに……。
まぁ寝てしまった僕が百悪いから、何も言い返せないけど……。
「い、いえ……こちらこそ申し訳ございません! 星彩様の護衛が目的なのに寝てしまうとは、一生の不覚でございます……」
睡眠欲って怖い。
少しくらいなら仮眠してもいいだろう……。
そう思ってしまっては最後。
絶対に思っていたより、寝てしまうのは最早、常識。
「昨日は寝れてなかったものね……仕方ない」
「しかし星彩様や張敬様、夏侯姫様だってそれは一緒でしょう?」
「そうね……でも私たちは慣れてるから」
「そ、そんなもんですかね?……」
「うん……そんなもん」
あれって慣れとかで何とかなるもんなのか……。
臭いに関してはそういう部分もあるかもしれないけど、あの二人のイビキは慣れる前にノイローゼになりそう……。
「とにかく急いで下りましょう 夏侯姫様や張包様も心配して……ん?」
おや?……。
星彩様の担いでいる籠……。
魚が一匹もいない……。
どこかで落としたのだろうか。
だとしたら今日のオカズがなしという、非常にマズイ状況になってくる。
「あ、あの星彩様、ご確認なのですが魚はどうされたのですか?……」
「どうもしてない……一匹も釣れなかったから」
え? え? え!?……嘘やん……。
だってあんなに時間使って一匹も釣れないとかある?。
張飛様や張苞様にやり方を教わったことあるから大丈夫だとあんな行く前に自信満々だったのに……。
「一匹もですか!?」
「えぇ 初めてとは言え、正直、悔しい……」
「はい!?……いやでも、張飛様や張苞様からやり方を教わっていたのでは!?」
「教わったのはやり方だけ……実践は今回が初めて」
「そんな淡々と言わないでくださいよ……どうするんですか? 今晩のオカズないじゃないですか!」
まさかまさかのペーパー……。
ダメだこりゃ……。
もう笑うしかない。
はいはい、今日は蒸した穀物だけかな。
どうもありがとうございました。
「それなら心配いらない……こういう場合を想定して、母上が市街地に買い物に行くらしいから」
「え」
夏侯姫様……何故それを僕には伝えてくれないんだ……。
いや、オカズがある点については安心した。
でも市街地に買いに行くなら、何故釣りに行かせたんだよ。
こっちはメチャクチャ眠いのに……。
星彩様と二人っきりになれたのは良かったけど、結局あまり会話すらしてないし……。
「今は父上がいないから……実は剣義が来る前、鮮度に拘って狩りをしたい父上と危険だからと市街地で食材を調達したい母上で揉めたことがあったの」
普段、喧嘩するとこすら見た事ないオシドリ夫婦の印象だがクッッッッッッソ程にどうでもいいことで揉めてたのか……。
てか別に市街地の店でいいだろうに……。
「それは初耳です……で、結局どうなったのですか?」
「揉めてた途中で剣義が来た……」
「はい?……」
「結果、狩りは剣義に任せればいいと言う話しで落ち着いたわ……」
張家恐ろしいな……。
とりあえず張飛様以外は僕が狩りに行くのを反対してくれてたと思いたい。
あの優しさの裏で「まぁ剣義ならいいだろ」と言われてたかと想像したらゾッとする……。
「そ、そうなんですか……とりあえず日が暮れそうなので薪拾いながら、戻りましょうか」
帰り道は薪を拾いながら坂道を下っていくだけなので比較的楽。
本来ならこういう二人っきりの時にたわいもない会話をして距離を縮めるのだろうけど、非モテ街道真っしぐらだったせいか、言葉が出てこない……。
喋ろうとしては言葉を引っ込める。
その繰り返しだ。
下手に喋りかけてキモっ……とか思われてたら嫌だし……。
星彩様なんて真顔で言ってきそうで怖い……。
「そう言えばこうして二人で出掛けたのは初めてね……」
せ、星彩様から話しかけてきたぞ!?。
これは会話を広げるチャンス到来!!。
「そう言われたら、そうですね! いつも一人だったので新鮮でした!」
「そう……それは良かった」
はい、会話終了。
話しが全く広がらず、また沈黙の時が流れる。
まぁ星彩様自体があまり口数が多くないから、本当は僕から話題振らないといけないんだよなぁ……、
だけどそんなガツガツいく度胸は自分にはない……。
せめて関平様くらいイケメンだったらなぁ……。
「ところで剣義、あなたは姉上の事、どう思う?……好きなの? 嫌いなの?……」
「えっ? 張敬様ですか?……」
また星彩様の方から話しかけてきたので、少し驚いたけど何故、張敬様?。
しかも好きか、嫌いかってまた極端な……。
「それは勿論、好きですよ? 嫌いな訳がないじゃないですか」
張敬様は生まれつきの虚弱体質で身体があまり強くない故か、武芸で貢献出来ない分、他に何か皆の為にできることはないかと常に考えているような方だ。
それに張苞様の世話好きは有り難迷惑的なことが多いのだが、張敬様の場合は人が本当に困っているのを見極めてから、行動にするのでいつもメチャクチャ助けられている。
この前は少し、険悪な雰囲気だったけど、そんな日頃お世話になっている張敬様を嫌うなんて有り得ない。
「そう……良かった」
え?、何?……。
会話終了したけど、どう言う意図の質問だったんだよ……、
てか、何か星彩様、不機嫌になってないか?。
「あ、あのぉ……僕の勘違いだったら申し訳ないのですが、星彩様、もしかして怒ってらっしゃいます?」
「別に……」
「ちょっ、ちょっと星彩様!? お待ちください! そんなに早く、歩けません!」
「そうみたいね……先に戻ってる」
そう言うと、星彩様はそのまま歩くスピードを上げるとスタスタと僕を置いて行ってしまう……。
えぇ……なんか僕、星彩様が怒るような事言ったかな……。
これだから女性の気持ちは分からない……。
「腹も減ったし最悪だ……」
そう言えば、お弁当は玲騎殿にあげたらから今日何も食べてないことに気づく。
せっかく星彩様と二人っきりになれたのに何でこうなるのか……。
僕は意気消沈しながら、張飛様の自宅を目指す。
そしてようやく自宅が見えて来たと思ったら血相を変えた星彩様と張敬様とバッタリ出会う。
「ど、どうしたんですか?……」
「あぁ剣義!……実は母上が昼に食材を買いに行くと言ったきり帰ってこないのです!」
「え」
もう日は暮れている……。
確かに昼に出て行ったのなら、遅いかもしれない。
誘拐?……事故?……。
いやいやいや、そんなこと考えたらダメだ。
迷子の可能性だって……それはさすがにないか……。
いや、待て。
夏侯姫様も武器があれば、一兵卒程度なら軽く捻ると聞いたことがある。
つまり武器さえあれば、誰かに襲われたとしても何とかなるはず。
「夏侯姫様は盾牌剣は持って外出されましたか?」
「それが、私は武器も持っていくよう勧めたのですが、民を騒がせたくないからお忍びで行くのでいらないと……」
オワタ……。
最悪の状況だ……。
いや待て。
張苞様の姿が見えない。
もしかして一緒に出かけてたのでは?。
張苞様と一緒なら何とかなるだろう。
「張苞様はご一緒でしたか?」
「それが、苞は関索や関興と遊ぶからと関羽叔父様の家に泊まりに行ったので……」
顔から血の気が引いていくのが、自分自身でも分かる。
だがパニくっていても何も始まらない。
こう言う時こそ落ち着かなければ……。
「とりあえず僕と星彩様で捜しますから張敬様は入れ違いになる可能性もあるので家で待っていてください」
「そ、そんな! 私も一緒に行かせてください!」
「張敬様、お気持ちは分かりますが街を走り回らないといけないですし、もしもの時は戦わなければなりません 今の張敬様ではそれは無理です」
張敬様は走りるとすぐに咳が出てしまって息切れを起こすくらいに身体は弱く無理はさせられない。
こんなこと言いたくないが、足手纏いになる可能性だってある。
「分かりました……剣義、星彩、母上を頼みました」
「はっ! 必ずや夏侯姫様を見つけ出して参ります……」
とりあえず背負っていた薪を下ろし、張敬様に預けると僕と星彩様は夏侯姫様を捜索しに街へと出る。
まだ街に灯りはついているので、好都合。
店が閉まり灯りが消えれば、捜索は難しくなるので見つけるなら今しかない。
「星彩殿はこの辺りの食材市場を重点的に調べてください 僕は北の食材市場を捜してみます とりあえず調べ終わったら、ここで落ち合いましょう」
「分かった……」
僕はこの辺りの市場を星彩様に任せて北にある市場へと走る。
街を必死に走り続け、北の市場に行く途中、駆け回る中で民の会話が耳に入り、足を止めた。
➖龐攻隊が南にある食料市場で暴れてるらしいぞ➖
➖またか……アイツらちょっとでも逆らえば、連行だの切り捨てるだの言い出すから……➖
➖困ったものだ……そもそも、どうしようもない荒れくれ者たちに街を守らせようとするのが間違いなんだよなぁ➖
➖今度、不満がある者を集めて奴らと戦うってのはどうだ?➖
➖やめとけ 腐っても劉備様配下の軍団だ それに部隊長は元々、黄巾賊にいて黄巾の乱で百人斬りをした手練れらしい➖
➖ひ、百人!? そりゃ俺たちが勝てる訳ないな…… 劉備様か龐統様が動くまで耐えるしかないってことか……➖
龐攻隊か……。
龐統様が荒れくれ者を何とか有効活用できないかと考え、作られた治安維持部隊だ。
民同士の揉め事を仲裁したり、敵国が攻め込んで来たら民の盾となり戦うというのが本来の目的らしいのだが、評判は頗る悪い。
この時何かとてつもない嫌な予感が僕の胸を過ぎっていた。
考えたくはないが、夏侯姫様……。
南の食材市場は方角から言えば真逆。
星彩様と別れた場所まで戻る必要があった。
もし星彩様がいなければ待ってる暇はない。
とにかく急がねば……。
と思ったら丁度、星彩も同じタイミングで落ち合うと約束した場所へと姿を表す。
「星彩様! 見つかりましたか!?」
「ダメ……剣義は随分早かったようだけれど、そっちはどう?」
「まだ何とも言えないのですが、北の市場に行く途中で気になる噂を耳にしました」
「気になる噂?……」
「はい……龐攻隊が南の食材市場で暴れていると……」
「龐統殿が作った隊ね……」
「とにかく今は他に情報もないのでそちらに行ってみます」
「そうね……私も行くわ」
二人で頷き合うと僕たちは南にある市場へと走る。
夏侯姫様に何かあっては張飛様に合わせる顔がない。
何とか無事であってくれ……。
そう願いつつ、南の食材市場に到着すると市場は異様な雰囲気に包まれていた。
野次馬のように民が大勢集まっていたが、怒りに満ちた者、怯えている者、そして泣いている者などで溢れ返っている。
僕と星彩様はその野次馬を押し退けて前へ前へと進むと縄で手を縛られた夏侯姫様の姿が発見。
そしてその隣にはまだ物心ついたばかりであろう男の子とその母親らしき女性も縄で縛られていた。
「私が代わりに罰を受ける代わりにこの方たちを解放すると約束したではないですか!……どうして、こんなことを……」
「俺は解放することを考えるって言っただけで、するだなんて一言も言ってないが?」
「そ、そんなぁ……」
僕は敵の情報を即座に視界から入手して、状況を分析する……。
敵は五人……。
思っていたよりは少ない。
「お腹減ったよぉ!!」
そしてその時、男の子が空腹から泣き出してしまった。
すると龐攻隊の一人が男の子を蹴り飛ばす。
「うるせぇんだよ! ガキが!」
「な、何て酷いことを!……」
星彩様の方をチラりと見ると、怒りを滲ませ、殺気を放っている。
たぶん星彩様はもう怒りのバロメーターをオーバーしているのだろう。
僕は剣を抜こうとした星彩を制止する。
「お待ちください 星彩様が手を出してはなりません」
「剣義、何のつもり?……」
夏侯姫様が自分は張飛様の妻だと名乗れば、すぐに解放されるはず。
でもそれをせずに捕虜になっているということは夏侯姫様の性格上、民を動揺させたくない、もしくは自分が解放されて、また矛先が民に向くのを恐れているのかもしれない。
「分かっております ですが星彩様が自ら出て行けば、事が大きくなり民たちの動揺も大きくなることは間違いありません 夏侯姫様の想いを無駄にしない為にもここは僕に任せてください」
腐っても龐統様が作った部隊だ。
逆刃刀を振るう僕と違い、この状況なら星彩様は容赦なく怒りのままに殺めてしまうだろう。
張飛様の親族が龐統様の部隊の人間を殺めたりすれば、責任問題になるかもしれない。
だが、僕はただの一兵卒扱いなので一応配下ではあるが張飛様に迷惑がかかる可能性として言えば大分マシだ。
僕は野次馬たちから抜け出し、龐攻隊へと近づく、
「龐統様配下の治安維持部隊、龐攻隊とお見受け致しました その龐攻隊が何をしてるんですか?」
「剣義!……来てくれたのですね!」
僕が来たことによって夏侯姫の表情が絶望から希望へと変わっていく。
「またガキか……コイツらは俺たち龐攻隊に盾ついた つまり龐統様及び劉備様への反逆罪にあたるんだよ」
「反逆罪? その者たちが何をしたか教えていただけるか?」
「まずこのバカな子供が俺たちにぶつかって来やがってな 親も謝らないしこういうのは街の秩序を乱す」
➖嘘だ! その親子は謝ってただろ!➖
➖そうだ! そうだ!➖
「と、周りの民たちは言っていますが?……それと龐統様はこの事を知っておられるのですか?」
「龐統様は俺に部隊の指揮を委任された つまり俺の行動は龐統様のご意志と思え」
マジで腐ってるなコイツら。
しかしよくこんな奴らが治安維持部隊を名乗ってるな……。
どう見てもチンピラ軍団にしか見えないが……。
まさに虎の威を借る狐とは正にコイツらの為にあるような言葉だな……。
「なるほど……では龐攻軍に忠告します 今すぐ捕虜を解放してください さもなくば痛い目を見てもらいます」
僕の言葉を聞いて、部隊長らしき男がニヤリと笑う。
「それは脅しか? ガキのくせにいい度胸をしているな 喜べ、お前反逆者の仲間入りだ やれ……」
その言葉と共に一斉に三人の龐攻隊が剣を振り翳し、僕に向かってるが、
僕はその一人が剣を振り下ろす前に抜刀し、その勢いで逆刃刀を敵の下腹部に打ちつける。
そしてそのまま流れるように次の敵の剣を弾き、首元に攻撃、もう一人は足を払い、転倒させると柄の部分で腹部に突き刺すように突き立てる。
➖は、速ぇ➖
➖何が起こってるんだ!? 目に見えねぇ!?➖
➖何だあのガキ、強すぎるぞ!?➖
「あっ! お、思い出したぞ! 隊長!! コイツ確か、この前関平様と引き分けたガキだ!」
「じゃあコイツが剣の天才と呼ばれてる剣義って奴か」
「分かってるなら早く捕虜を解放した方が身の為ですよ?」
「黙れ!! 隊長にあの世で詫びろ!!」
僕が挑発すると、顔を真っ赤にしてすぐに突進してくるが、こうなればこっちのもんだ。
激情している敵の攻撃程読みやすいものはない。
僕は背後にジャンプして冷静にその攻撃をかわし、カウンターで敵の腹部を突くと、力なく敵が倒れる。
「さて、後は隊長さんお一人のようですが? まだやりますか?」
「ガキの割には中々やるな……だが戦場で百人を叩き切ったこの俺に勝てるかな?」
龐攻隊の隊長は雄叫びをあげながら、こちらにジャンプして間合いを詰めると剣を横なぎで一閃する。
「剣義!!」
「剣義、避けて!……」
➖イャァッッッッッ!?➖
➖斬られた!?➖
「やはり所詮は強いとただのガキ……ん?……どういう事だ!? 間違いなく捉えたはずなのに!?
困惑する部隊長。
残念ながら斬ったの僕の残像。
「どうしました? 僕の残像でも見てたんですか?」
僕が背後にいると気づいた時にはもう遅い。
「飛天御剣流!!龍巣閃!!」
全身の急所を攻撃する高速乱撃、龍巣閃。
百人斬りかなんだか知らないが、この男程度が防げる技じゃない。
まともに龍巣閃を受けて、その場に倒れこむ部隊長。
ホント、口ほどにもない。
民たちの拍手と歓声が鳴り止まない中、僕は夏侯姫たちの縄を解く。
「あ、ありがとうございます!」
「お兄ちゃん、ありがとう……」
「剣義、助かりました……心配掛けてごめんなさい」
これで一安心……。
いやぁ今日はホントに疲れた……。
勘弁してほしい……。
「け、剣義、後ろに!!」
「クソがぁぁぁぁぁぁ!!」
やると思った……。
油断させといて、不意を突いたつもりだろう。
龍巣閃をまともに喰らって立ち上がるタフさは凄いけど、まぁそれだけ。
僕は振り向きざまに隊長の脇腹に逆刃刀を横に一閃する。
数メートル吹っとんだが、まだ起きあがろうとしていてクソしつこい。
「おやおや、派手にやってるねぇ剣義」
「龐統様……」
いきなり数十人の兵を引き連れて、この龐攻隊を作った龐統様が現れる。
そして龐統様は吹っ飛んだ部隊長の元に歩み寄る。
「あっしはお前さんたちに何と言って、治安部隊を作ったか覚えてるかね?」
「そ、その……龐統様、これはですね!……」
「言い訳は聞いてはいないよ? あっしは治安維持部隊としてお前さんたちを劉備様に推挙した時、何と言ったか覚えてるかと聞いてるんだけどねぇ?」
「治安を守り、弱きを助け、侵略者たちから民を支える治安部隊として結成したと……」
「なぁんだ……よく覚えてるじゃないか その治安維持部隊がどういう了見で治安を乱してるのかねぇ? 全く……食いっぱぐれてまともな仕事に有り付けないお前さんたちをせっかく無理言って配下にしてやったというのに恩を仇で返すつもりかい?」
「龐統様!! 申し訳ございません!! 何卒お許しを!!」
「そいつは無理な話しだ あっしだけならともかく劉備様の顔に泥を塗るとはそれはそれは厳しい御沙汰が待っているだろうねぇ」
連行される龐攻隊を見ながら、俺は一人考えていた。
どうしようもない荒れくれ者の寄せ集めを放置していれば、治安を見出す事くらい必定。
もしかしたら龐統様は全部、推挙した時点である程度この結末を予期していたのかもしれないと言うのが僕の仮説だ。
劉備様は「義」を重んじ「仁」を体現したようなお方であり、きっと荒れくれ者だろうと更生の余地を与え、簡単に処断するようなことはしない。
ではどうすれば、劉備様が処断を考えるか。
まず考えられるのが罪なき民を傷つけるような行いをした時だと思う。
龐統様はいるだけで治安が悪くなり、無差別に民を傷つけ、劉備様の名声にも傷がつく。
だから龐攻隊の者たちを劉備様が処断する方向に持っていき、一網打尽にしたかったのではないだろうか。
これはあくまで僕の推測でしかないが、この後の龐攻隊は解体され、この件に関わっていた者たちは処断、もしくは荊州を追放されている。
勿論、龐統様しか真相は分からないが……。
ただ龐統様は諸葛亮様にも負けず劣らずの策士であることだけは忘れてはならない。
そしてこの後、わざわざ龐統様は僕、夏侯姫、星彩様、張敬様のいる家まで謝罪しに来て、張飛様にも伝書鳩で事の次第を報告したようだ。
さて、難しい話しはここまでにしておこうか……。
結局、そんなこともあり夏侯姫様は食材を買っていなかったので食卓は寂しいことになりましたとさ……。
クソッ! 何て日だ!。