真・三國無双〜星彩の守り人〜   作:意思を継ぐ者

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ほぼアクション回です。
書いては消して、書いては消しての繰り返しで疲れました。
てか思ったのが張昭の扱いどうすんの?笑笑。
これ一番悩みどこです。
張昭、モブなんですよね無双だと。
なのでもし投稿が遅い時は張昭のことを考えてるんだろうなと思っててください笑笑。


第六話 呂布の亡霊対飛天御剣流 剣龍心、亡霊に苦戦してるってよ

その日は暑く、寝苦しい夜だった……。

この小屋は夏は暑く、冬は寒い……。

勿論、冷暖房などがこの時代にある訳がないので快眠などできるはずもなく、貴重な睡眠時間だけが削られていく。

 

「お〜い 剣義、起きてるか? 今日から見張り番だろ? 遅れるぜ?」

 

あぁ、もうそんな時間か……。

頼んでもないのに、張苞様がわざわざ目覚まし役をしてくれる……。

 

「はい、起きてますのでご心配なく……」

 

「そうか! 楽しみだな!」

 

そう……今日から呂布の亡霊への対策として、街に入る為の門を夕刻から完全に閉鎖し、見張り番を一名多くつけることになったのだが、その一人に僕が選ばれた。

どうやら龐統様の推薦で恐らく先日の龐攻隊の一件での活躍を目の当たりにしたからのようだ。

劉備様や諸葛亮様は僕がまだ子供という事もあって、難色を示したのだが

、「剣義の剣才は図抜けているよ 将来、劉備軍を背負って立つはず

今から色々と経験させるのは悪い事じゃないとあっしは思うけどねぇ」と譲らず、協議を重ねた結果として今夜一日だけという条件付きで僕が選ばれたと聞いた。

 

「いや、何故張苞様が楽しみなんです?……」

 

行くのは僕だ。

張苞様は関係ないはず……ってもしかして……。

 

「まさか着いてくるおつもりですか?……」

 

「おう! 呂布の亡霊とやらと手合わせしてみたいしな! それに剣義だけ危ない橋を渡らせるなんて俺にはできねぇ!」

 

張苞様がまたお節介を拗らせているのか……。

責任感が強いのは良いのだが、何と言うか強すぎるのもなぁ……。

やはり何事にもバランスって大事。

 

「いやその……心配してくださるのはありがたいのですが、これ僕が与えられた任務ですので、連れていくわけには行きませんよ……」

 

「そんな水臭いこと言うなって! 敵はかなりの手練れなんだろ? 俺たちは心配なんだよ」

 

そもそも張苞様は訓練では僕にいつもボロ負けなのに、この自信はどっから沸いてくるのだろうか……。

ん?……てか「俺」じゃなく「俺たち」ってまさか!?……。

僕は嫌な予感がして小屋の入り口の扉を開けると予想は的中していた。

 

「剣義、私たちが着いて行ってはダメなのですか?……絶対にお邪魔はしません 私も苞も星彩も貴方を大切な家族だと思ってます その家族が一人で命を失うかもしれない戦いに行くなんて黙って見てはいられません」

 

「そう……姉上や兄上が言う通り 正直、家族は互い助け合うものだと思う」

 

いやいや、張飛様が留守にするってなったらゆっくり寝れるだの遊びに行けるだの大喜びしていた三人に言われても説得力が……。

 

「でもね、これ連れて行って、もしなんかあったら僕の責任問題になってしまうので本当に僕の事を想ってくださるのなら何卒今日はもう寝室でお休みになってください 僕なら大丈夫ですから」  

 

仮に連れて行った事がバレたら大目玉どころじゃないだろう……。

バレた上、何かあったら首刎ねられてもおかしくない。

しかも張敬様なんてただでさえ身体が強くなくないのに連れ出しはご法度。

でも皆、僕を心配してくれてるのはメチャクチャ嬉しい。

僕が何と言っても、着いてくるって言ってくれるんだろうなぁ。

 

「へいへい、寝ればいいんだろ、寝れば あぁつまんね……」

 

「え」

 

「剣義本人がそう言うなら仕方ない……」

 

「え」

 

「そうですね……私たちは寝るとしますか では剣義、頑張ってくださいね」

 

「え」

 

いやいや、あっさりしすぎだろ……。

もうちょっと粘って説得してくれてもいいのに……。

コイツらもしかして俺が心配ってよりは野次馬気分で言ったとかじゃないだろうな……。

確かに夜遊びしたい年頃ではあるけどさ……。

まぁ気を取り直して、時間も時間だし城門近くまで急ごう……。

張飛様の家から城門までは結構な距離があるので少し、駆け足で向かうことにする。

街の人間は既に寝静まっており、街は不気味なくらい静か。

空を見上げてると綺麗な満月が顔を見せており、その月明かりがあるので今日は真夜中でも辺りが見やすく、ラッキーだ。

でもわざわざ警備を強化する必要あるのだろうか甚だ疑問に感じる。

今頃、荊州の国境には張飛様、関羽様、趙雲様が見怪しい者に目を光らせているだろうからそんなに心配はいらないと思うが……。

と……思っていたら、前方から走って来る二人の兵士が薄っすらと見えて来たので足を止め、呼び止めた。

 

「ちょっとお二人共、どうしたんですか?」

 

この二人の兵士は今日、僕と一緒に門番をする予定だった者たちだ。

何かに凄く怯えている

 

「た、大変だ!……りょりょりょ呂布が本当に化けて出たんだ!」

 

「呂布の亡霊が出たんですか!? 何故、城門を開けたんですか!?」

 

「城門は開けてない! 知らない間にどこからか現れたんだよ! 劉備様の兵は皆殺しっだって!」

 

バカな……。

亡霊なんているわけがない。

しかし城門を開けてないのに現れたとなれば、呂布の亡霊とやらは既に荊州の街に潜伏していたということになる。

まさか荊州の民が呂布の亡霊?……。

 

「と言うか、門番が逃げてきたらダメですよ! 何で戦わないんですか!?」

 

「バカ言え! 相手は鬼神・呂布の亡霊だぞ? 勝てるわけがないだろ!」

 

「そうだ! そうだ! 俺たちは劉備様の軍を抜ける! そうすれば関係なくなるから助かるはず!」

 

「あなたち、恥ずかしくないんですか?……」

 

呆れてそれ以上の言葉が出て来ない……。

何の為にいつも戦闘訓練をしているんだよ……。  

 

「じゃあお前だけ戦え! 俺たちは逃げるからよ!」

 

ダメだ、こりゃ……。

完全に呂布の亡霊だと思い込んでいるようだ……。

そんなやり取りをしていると、何者かが、暗闇に浮かぶ鬼の仮面で素顔を隠し、方天画戟を左手に携えて、殺気を放ちながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

「りょ、呂布だぁぁぁぁ!!」 

 

「こ、殺される!! た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!」

 

僕は呂布とも戦ったこともなければ、実際に見たこともない。

だが何度か見たことあるとは言っていた父が言う通り、頭部には翎子と呼ばれる簪をしていてゴキブ……いや触覚のような飾りは呂布のトレードマークとも言える。

一番の違いは背丈は大きくはなく、むしろ小柄に分類されることだろうか。

呂布の身長は2メートル以上の大男のはず。

この時点で亡霊でも何でもなく、呂布の偽物だと言うことが僕の中では確信に変わる。

しかし誰が何の為にこんなことをやっているのか……。

とりあえず呂布の偽物を追い詰めたら、その真実に辿り着けるかもしれない。

 

気がつくと月明かりが僕たちを薄っすらと映すなか、僕と呂布の亡霊とやらだけがこの場に取り残されていた。

 

僕は逆刃刀を抜き、亡霊との距離をジリジリと詰めていく……。

 

しかし亡霊は方天画戟を構えたまま、微動だにせず、攻撃を仕掛けてくる気配はない。

この亡霊とやらは返し技が得意なのか?……。

とりあえず、このままでは戦局が動きそうにないのでこちらから仕掛けてみよう。

 

僕は神速のスピードで一気に間合いを詰め、その勢いのまま空中に舞う。

 

「飛天御剣流…… 龍槌閃!!」

 

捉えた!……と思ったが、長いリーチの方天画戟を巧みに扱い、龍槌閃を受け流されてしまった。

この世界とは言え、龍槌閃を受け流したり、回避できるのは無双を誇る武将くらいだろう。

例えば、劉備軍で言ったら張飛様、関羽様、趙雲様などがそれにあたり、訓練で手合わせした時には防がれてしまったことがある。

しかし裏を返せば、彼らのような猛者でなければ一撃で敵を葬れる技だ。

やはりそう考えると、呂布の偽物とは言え、油断はならない……。

訓練を除けば、今まで最強の敵であることは間違いないだろう。

 

などと、考えていると打って変わり、亡霊の攻勢が始まる。

 

方天画戟から放たれた突きが、僕の脇腹を掠め、衣服に穴が空いた……。

 

その勢いのまま、連続の突き技が僕を襲う。

 

僕はブリッジの体勢になりながら間一髪で突き技をかわし、カウンターを仕掛けようとしたのだが、横なぎに方天画戟を振われたので真後ろに飛び込むようにして回避する。

 

全ての技が鋭く、正確でかつ速い上、逆刃刀よりもリーチがある。

なるほど……確かに呂布の亡霊と恐れられてもおかしくない技量を持ってはいるが、何か違和感を感じる。

その違和感の一つはさっきまでの恐ろしい程だった殺気が感じられないことだ。

手加減をしているわけではないのだろうが、迷いがあるように思える。

今まで散々、兵士を暗殺してきた割に今更何を躊躇うことがあるのか、少し不思議に思うが、考えられる理由としては僕がまだ子供だからとかか?……。

そして後、もう一つの違和感がまだ掴めないでいる……。

いったい、何なんだ……もう一つの違和感は。

分かりそうで分からないのがモヤモヤする。

やはり戦いの中で答えを出すしかないということか……。

 

今のままの距離ではリーチに優れた敵が有利……。

しかし懐に入ってしまえば、こちらにも勝機が出てくる。

だが敵もそれは分かっているのだろう。

神速のスピードを活かして、亡霊の周りを動き回り、フェイントをかけたりしてみたが一切隙を見せないので間合いに入り込めない。 

では少し、やり方を変えてみようか……。

 

「飛天御剣流……土龍閃!!」

 

僕は飛天御剣流の技の一つである土龍閃を放つ。

この技は刀で地面に衝撃を与え土石を相手にぶつけるタイプと、刀で地面をえぐる様に衝撃を与え土砂とその衝撃波を相手にぶつけたり浮かせたりするタイプがあるが、今回は後者を使用。

 

地面が抉れ、土砂が混じった衝撃波が敵を襲う。

 

だが敵はその衝撃波で空中に舞い上った力を、逆に利用し、方天画戟を振り下ろす。

まさにそれは方天画戟バージョンの龍槌閃と言った感じだろうか……。

が、それを俺は待っていた。

敵には隙がないので、こちらから仕掛けても間合いに入るのは難しい……だが接近戦に持ち込まなければ圧倒的に不利。

なら、向こうから近づくようにすればいい。

 

「飛天御剣流……龍翔閃!!」

 

僕は剣に右手を添え、敵の下から飛び上がりながら剣を寝かせて、敵の喉元を突こうとしたが、さすがだ……。

敵は首を引き、逆刃刀が仮面を直撃する。

 

そのまま敵は地面に落下し、上手く受け身は取ったがその衝撃で方天画戟が手から落とす。

確かにダメージは与えられなかったが、方天画戟を失えば敵を無料化できるだろうから上出来だ。

それに被っていた鬼神の仮面にまともに当たったから、破壊されたはず。

 

さてさて、呂布の亡霊とやらの素顔はどんなものかな?って……え!?……。

破壊された仮面を外し、その中から現れた顔に僕は絶句した。

 

「玲……綺さん!?……」

 

鬼神の仮面の下から現れたのは顔見知り。

先日、少し会話をしただけだが、まさかではある。

まぁ訳有りだとは思っていたが……。

そしてこの時、僕が感じていたもう一つの違和感に気づく。

玲綺殿は怪我している右腕を庇った戦い方をしていて、強攻撃する時は必ず左腕に方天画戟を無理矢理持ち変えている。

だからこそ不自然な動きになり、逆に先読みが上手くいかなかったのだろう。

 

「玲綺殿、貴女は何の為にこんな事を!?」

 

理由が知りたい。

話した感じは確かに上から目線な口調ではあったが、無差別に人を傷つけるような人間には見えなかった……。

 

「私は小さい時に母を戦で失い、地獄のような孤独を味わった……気を許せる友もできず、もう父上しか私にはいなかった! その父上を曹操と劉備に奪われたのだ! 私は父上を再び、伝説の鬼神として復活させ、その娘として歴史に名を残す! 今やっている復讐はその第一歩なのだ!」 

 

ってことはつまり玲綺殿は呂布の娘!?。

りょれいき、りょ玲綺……呂玲綺。

あ……もしかして呂玲綺殿の「りょ」って呂布の【呂】か……。 

僕がやり込んだのは三國無双4までなので最近のキャラに関して言えばさっぱりだから気がつかなかった……。

玲綺殿の気持ちは分からなくもないが、それは間違っていると断言できる…。

今やっていることのはただの闇討ちだ。

闇に紛れ、自分より弱い兵士を襲う……。

夜襲と言えば、多少聞こえは良くなるが、こんなやり方で鬼神・呂布の存在が伝説になることはおそらくない……。

僕が玲綺殿を止めなければ玲綺殿はこれから先も呂布の呪縛と復讐に囚われてしまう。

確かに先日会ったばかりで付き合いが深い訳ではないが「友」でもあることにも変わりはない。

僕が玲綺殿の暴走を止める!。

 

「そこを退け剣義……私はお前と戦いたくはない」

 

「僕は燕人張飛配下、剣龍心 呂布の亡霊を逃すわけにはいきません」 

 

僕だって、出来る事なら玲綺殿と戦いたくはない。

だが玲綺殿の目を覚ますには、全力でぶつかる以外ないのだ。

ここで逃してしまったら、玲綺殿は呪縛から解放されず、修羅の道へと堕ちていってしまう……。

 

「剣義……お前とここで戦わなければならないとは…… 私は悪夢を見ているのか?……」

 

「玲綺殿、一つ忠告しておきます 貴女が過去にどれだけの孤独を味わい、どれだけの想いを背負っているのか僕には分かりません……しかし目の前にあるものから目を背け、大切なものを欠いた今の玲綺殿では僕は倒せませんよ」

 

うわぁ、言っちゃったぁ!!。

実写版のるろうに剣心で修羅に落ちた蒼紫に剣心が言った台詞で僕が一番、カッコいいと思ったシーンだ。

まさか僕が言える事になるなんて、感動しかない。

え?、何ですか? パクり?……。

人聞きが悪い。

僕のはあくまでリスペクトしかしてないカバーであり、断じてパクリではありません。

もう一度言います。

断じてパクリではない。

 

「そうか……そこまで言うなら、私も呂布の亡霊ではなく呂玲綺としてお前と戦う そしてその大切なものとやらを教えてもらおうか……こちらも容赦はせぬが良いな?」

 

そして玲綺殿が僕と戦うべく選んだ武器は落としていた方天画戟ではなく、背中に背負っていた武器だった。

それは両刃の戟を十字に交差させていて、見た事がない武器……。

 

「分かりました 玲綺殿の友としてこちらも全力で挑ませてもらいますよ」

 

月明かりに映った顔を見ると、玲綺殿は微笑していた。

その微笑は敵としてではなく、友、そして自分と対等に戦える者と手合わせできる充実感があるように感じる。

きっと玲綺殿も本質は武人なんだろうと思う。

なら僕もそれに応える……。

 

少しの沈黙があり、玲騎殿が先に仕掛ける。

 

十字戟を回転させながら袈裟斬りを試みてきたので、それを弾き、今度は僕が刺突するが、左薙ぎの攻撃で刺突を弾かれてしまう。

 

その後も玲綺殿の猛攻は続いた。

 

右薙ぎに一回転する技をかわした僕だったが大きく右薙ぎに立て続けに攻撃され、体勢を大きく崩してしまった。

 

体勢を崩した僕の隙を玲綺殿が見逃すはずがない。

 

「これで決めてやろう! 容赦はしない!」

 

十字戟の形体を変化させながら高速で斬り込んでくる。

 

不規則な変化をする十字戟の攻撃をかわしきれず、僕は太腿に一太刀浴びてしまい、血がポタポタと流れ落ちる。

傷自体、深い訳ではないので動けなくなる程ではないが、やはりこの感覚が麻痺している世界でも斬られたらとてつもなく痛い……。

 

「仕留めきれなかったか……」

 

間違いなく方天画戟を使っていた時よりも強い……。

この武器が玲綺殿の本当に使い慣れた武器って言う事か……。

飛天御剣流を使えるのにこんなに苦戦するって信じられない……。

しかも右腕を負傷している女性にだ……。

やはりこの世界は恐ろしい……。

 

「剣義、そろそろ決着を着けるぞ」

 

「そうですね……この一撃に僕は掛けます」

 

僕は一度、逆刃刀を鞘に収め、抜刀術の姿勢に入ると目を瞑り集中力を高める。

全てはこの一瞬で勝負は決まるだろう。

 

僕は雄叫びをあげながら、玲綺殿に突進する。

 

「この勝負、私の勝ちだ!」

 

玲綺殿は僕に向かって、右に一回転して十字戟を横回転で投擲。

この距離から投げらたら、普通は回避できない。

おそらく玲綺殿は勝利を確信したはずだ。

しかし僕は錐揉み状に飛んで、十字戟を回避し玲綺殿の胴を打つ。

 

「な、何だと!?」

 

「飛天御剣流!! 龍巻閃・旋!!」

 

見事に命中すると、玲綺殿の身体が後方に吹き飛ぶ。

 

か、勝った?……。

 

起き上がらない玲綺殿……。

 

一応、手加減はしたので死んではいないはず……。

 

僕が警戒しながら仰向けに倒れている玲綺殿の顔を覗き込むと、唖然としていた。

 

「私は……負けたのか?……何と言う強さだ……信じられん……」

 

玲綺殿は唖然としたままゆっくりと身体を起こし、その場に座り込むとやうやく状況が整理できたようで、僕に軽く微笑む。

 

「もう抵抗はしない 如何なる処罰も受け入れよう 覚悟はできている さぁ私を劉備なり曹操なりに突き出せ」

 

「突き出しませんよ?……玲綺殿にはまだ生きてもらいます そんなことより、腕の怪我大丈夫ですか?」

 

なんかもう、ここまで命懸けの手合わせを一騎討ちですると友情が芽ばえさえする。

そもそも玲綺殿を呪縛から解放するのが目的だったのに、ここで処断されては意味がない。

 

「何を考えている?……戦場において敵に情けは無用 剣義こそ足は大丈夫なのか?」

 

「はい そこまで深くありませんから……玲綺殿、僕はね貴女を敵だと思ってませんよ? 目の前にいるのは呂布の亡霊なんかではなく、僕の友、呂玲綺ですから」

 

「剣義……お前と言う奴は……刃を向けた私を友と言ってくれると言うのか……」

 

「勿論です これからは鬼神の娘としてではなく、呂玲綺という一人の人間として生きてほしいんです」

 

玲綺殿は父である呂布を敬いすぎて、偉大すぎる鬼神の看板を一人で背負い込んでいる。

だからこんな暴走までして……。

 

「あぁ……私は鬼神の娘として、生きる道を選んだ……だがお前と戦ってみて分かった 私は呂布には父上にはなれないのだと……」

 

「当たり前じゃないですか 玲綺殿は玲綺殿です 玲綺殿が経験した孤独から来る寂しさや虚しさ……そんな想いをする人を一人でも減らす為に一緒に劉備様の下で力を振るいませんか? 仁の世を目指している劉備様ならきっとそれができます」

 

そうだ。

玲綺殿も一緒に劉備様に仕えて、武将となれば何か新たな道が広がるのではないか。

僕ははそう思ったのだが……。

 

「劉備が受け入れるはずがない 私は呂布の娘なのだぞ? 仮に劉備がそれを許しても、他の者たちが黙ってはいないだろう……それに父上は劉備のせいで死んだ謂わば仇みたいなものだ」 

 

僕はそれを何も否定できなかった……。

確かに玲綺殿にも一理ある。

呂布の娘と言う大きすぎる看板……。

劉備様は処断を簡単にしないと思うが、登用する、仕えるとなると話は別か……。

何とかならないかな……。

 

「話は全て聞かせてもらった」

 

「りゅ、劉備様!? どうしてここにいらっしゃるのですか!?」

 

「劉備!?……殿……」

 

僕と玲綺殿は慌てて、礼をする。

まさかあの兵士二人が劉備様を呼んだのだろうか……。

いやしかし、兵士の身分じゃ劉備様に直接会うのも困難だ。

いったい何故?……。

 

「剣義、そなたの友を想う気持ちしかと受け取った そして呂玲綺殿、孤独な者のいない、そんな仁の世実現の為、その武を貸してほしい 私がそなたの父上を処断するよう曹操に進言したのは紛れもない事実だ 憎まれても仕方ない だからこそ、もし私が孤独な者で溢れる世を作ってしまった時は遠慮なく玲綺殿、この劉玄徳の首差し上げよう」

 

「私を引き込みたいだと?……大胆なのか、裏があるのか……分かりました……このような私ですが登用していただけるなら、この身捧げましょう ただし劉備様が孤独な者を作り出すなら、御命、この呂玲綺が奪いに参りますのでそのおつもりで……」

 

成立した……。

これは予想外。

どうやって劉備様を説得しようかと思っていたところだったから、手間が省けた。

 

「良かったな 剣義」

 

「私たちのおかげですね?」

 

「これは借りだから……」

 

何故か張苞、張敬、星彩様が物陰から現れる。

 

……。

……。

……。

 

てかストーキングしてたのかよ……。

着いて来てたんなら、少しは助けに入りなさいよ……。

聞く話しによると、張敬様が劉備様にこの事を伝えに行ったらしい。

まぁ自分の息子の許嫁みたいなもんだから、劉備様にも会いやすいってカラクリだ……。

しかしまぁ今回に関しては三人に感謝か……。

その後、玲綺殿は晴れて劉備軍に登用され、劉備様の計らいで他の武将たちには呂布の亡霊だと言うことは伏せられたとさ。

めでたし、めでたし?……

え?、これって、めでたしなん?。

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